世界一可愛い錬金術師がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:スキン集め隊

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ベート君の”俺をツガイにしようぜ”演説が長すぎて早く埋まったから投下。あれ?今頃ベート君ボコボコにしてた筈なのにおかしいなぁ…

次回は徹底的にやるから、どうか…許してください。



10話

この身体、酒は元のカリオストロが愛称で”カリおっさん”と呼ばれるのが納得できるくらいには強かった。

酒類を飲めるのはありがたい。酒は大人が羽目を外せる物の代表的なものだ。ストレスとかたまったらまた飲みあかそう。だが、酒の肴が無性に欲しくなるのはちょっとな…。

そういうのはベルに渋々ながらも押し付けておいた。

「我慢せずに食べればいいのに」って無責任な事いいやがって。こっちにも美少女としての意地ってもんがあるんだ。

くそっ、ベルなんかに焦らされるとは…。

 

「ロキ・ファミリア御一行様のご来てーん!!」

 

猫耳メイド服の店員がそう言った瞬間、店の雰囲気が変わった。この店にいる冒険者らしき様相の者が全員店の入口をジョッキ片手に見ていた。先程までの喧騒の残滓さえ残らずどこか緊張した面持ち。

その様子に疑問を感じたオレはベルを見るが、ベルも一瞬固まったのち、冒険者達と同じように入口を何かが来るのを待ち望んでいるかのようにじっと凝視していた。

 

ロキ、ロキ、どっかで…。

 

あ。あれだ。最初にオラリオに来た時、最もデカかった建物。その建物に高々と掲げられていた旗。

それが確かーー

 

 

「邪魔するでー、ミア母ちゃん」

 

 

 

ーーー道化師の紋様だったか。

 

 

あの赤髪の肩ぐらいまでのポニーテールがファミリアの主神、ロキだろうな。

確かに顔が人懐こそうな笑みを浮かべ、細目でどこか人を小馬鹿にしたような面相は道化師の名と違わない。

いや、だが、あれは…お、男か?露出多いし女か?胸がなーーーいや、ある!僅かに、ほんの僅かだが確かにある!!

 

くっ、人を見抜く力はあると思っていたが、ここまでオレを手こずらせるとは流石道化師だな。

 

「あ、アイズさん…!!」

 

突如ベルが呆けながらもはっきりと呟いた。

ああ、そういえばベルがゾッコンな奴もここにいるんだっけか。ベルは正直分かりやすい。だからその目線を追った。

その先に居たのは金髪金眼のボーッとした無表情な少女。雰囲気で分かる。あれはド天然だ。雰囲気がこう…ぽ、ポワポワ?している。うまく表現できないが、蝶々を見つければ今にもそれにフラフラとついていきそうと言えばわかるだろうか。あんなボケーッとしているのに間違えられたのかオレは……。

まあいい、確かに見た目はアイズ・ヴァレンシュタインも美少女だから文句は言わないでおいてやる。

 

次々とロキ・ファミリアの面々が入ってくるが。あの巨大な館がロキ・ファミリアのものだと確信した。

 

確かに、強い。

 

ウロボロスの存在感には遠く及ばないし、それと常に共にいるオレを驚嘆させるほどでは無いが、今まで出会った冒険者とは格が違う。なるほどな、これが第一級冒険者か。

オレ単体で挑むなら錬金術や魔導書で徹底的な仕込みをして地力でようやく互角ってところか。

さらに向こうは魔法もあるだろうから、それを発動された瞬間オレは詰む。ウロボロスがいるからそうはならないと思うが。

 

「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんな御苦労さん!今日は宴や!飲めえ!!」

 

乾杯、の言葉と共に振動が起き続いてジョッキ同士のぶつかる音が鳴り響く。

 

『酒が足りんぞ、もってこい!』『料理もないぞ!!』

『肉だ、肉!!』『久しぶりのご馳走だ、味わいつつかっこめ!!』

 

うるさ…。あっちはどうやら完全に宴会モードのようだ。冒険者達もロキ・ファミリアの話に耳を傾けつつ、自分達の身内で静かに話し始めた。ロキ・ファミリアの話に耳を傾けているのは遠征でモンスターの話などをしているため、情報を仕入れようとしているからだろう。抜け目ないな。

とはいえ、まだ駆け出しのオレ達にダンジョンの下層の話なんざ必要ない。そのレベルに至った時にはその生態系も既に変化しているだろうし。

 

当分ロキ・ファミリアと関わることもないだろう。さて、オレも身内での騒ぎに戻るか。

 

「ベル。…おい」

 

「あ、アイズさ…」

 

こりゃ駄目だ。完全に向こうに気がいってやがる。重症だな。ったくめんどくせえ。

 

「そうだ、アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」

 

ロキ・ファミリアの全体的に灰色着色の狼人の男が急に大声で騒ぐ。

あいつ、煩いな。さっきから無駄に周りを見下す発言をしたかと思えば、アイズにそれと比較して自分がどれだけいいかの繰り返し。あれだろ?好きだけどどうしても素直になれないから遠回しに自分が優良物件だと言ってるヘタレだろ?

それに、服も小悪そうな服してるが俺に近づくなみたいな感じで、一人でかっこつけてる恥ずかしいやつなんだろ?

 

「帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の五階層で始末した時のトマト野郎の!」

 

 

その言葉にベルがビクリ、と体を硬直させた。がたがたと手が震え、落ちそうになるフォークを強く握る。

…また、面倒ごとの予感。

ロキ・ファミリアの面々が苦渋の表情をしつつも口を挟まないため、調子に乗ってさらに狼人は続ける。

 

「いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえガキが!」

 

「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際に追い込まれてよぉ!可哀想なくらい震え上がっちまって、かおをひきつらせてやんの!」

 

兎、か。…ああ、なるほどそういうことか。隣には真っ赤になって、今にも血が滲みそうなほど手を握りしめているベル。つまり、あいつが言ってる冒険者はベルってことだ。

 

「ベル」

 

「ッ!!な、なにムグぅっ!?」

 

適当にフォークに巻いたパスタを勢いよくベルの口に突き込む。

 

「早く食え。余らせるつもりか?金がもったいねーだろうが。」

 

それを聞いて少しずつ、パスタを咀嚼していく。ゴクリと呑み込んで、オレがなぜこうしたのか気づいたのかハッとした顔になりおずおずと遠慮がちに言いだした。

 

「カリオストロ…あ、ありがとう」

 

「…うっせ、お前が早く食わねえと飯はウロボロスの腹行きだぞ」

 

「…うん」

 

…なんかメチャクチャ気恥ずかしいぞこれ。あー、くそ。エールだ、冷えたエールを寄越せ!!

 

「ああいうヤツがいるから俺達の品位が下がるっていうあよ、勘弁して欲しいぜ」

 

「いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ」

 

いい加減空気を読めクソ野郎!緑髪の麗人の女エルフが嗜めるが、それにも反抗してまだ続ける。

一部の冒険者も、その狼人の言葉に同調して口を塞ぎつつ密かに笑う者も現れた。

それによって一度落ち着いたベルもまた気落ちし、僅かに顔が翳っていく。

 

「なあアイズ、あのガキと俺ツガイにするならどっちがいい?」

 

これだけオレに心労負わせておいて、結局行き着く所は其処なのか駄犬!?

てめえのヘタレを繕うためにオレに手間かけさせんな!

幸いアイズ・ヴァレンシュタインはそれをあっさりと断った事でそれなりに溜飲は下がった。あれは良い美少女だ。

というか、気付け駄犬。お前にだけ彼女が敬語なことといい、どう見ても避けられてるだろうが。

ロキ・ファミリアの女性陣はツガイという子を産む道具のような扱いに嫌悪の視線を向けているため、全体的に悪いファミリアというわけではないようだ。

 

「無様だな」

 

「黙れババアッ。…じゃあお前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」

 

「はっ、そんな筈ねえよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねえ。他ならないお前がそれを認めねえ」

 

 

 

 

 

「ーー雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

 

 

 

ギリッと歯軋りし、椅子が蹴飛ばされる音がして、振り向くが既にベルの姿は店頭に小さい背中しか見る事が出来なかった。

チッ、抑えきれなかったか。

 

 

誠に遺憾だが、あの駄犬の言う事は正しい。力の弱い者は力の強い者にただ奪われるだけ。弱肉強食、それは世界の真理だ。特に如実に実力の差が現れるレベルというものが存在する冒険者達にとってそれはより強いものとなっている。

さらに、アイズ・ヴァレンシュタインはレベル5であり、その分妬み辛みは多い。そのそばにレベル1というベルがいれば格好の的だ。

 

だが、人間とは考える生物だ。そんな下半身的な思考回路だけでどうにかできると思うなクソ野郎。

それに、ベルが目指すのは弱者が強者を踏み越える英雄の道だ。

 

足元、掬われるぞ駄犬。

 

 

まあ、その前に。あの駄犬は”ヘスティア・ファミリア”のベル・クラネルを貶した。

なら、同じ”ヘスティア・ファミリア”のオレが制裁を与えるのも当然だよなぁ?人間は一定のコミュニティを作って生きる。そしてそれを犯されたなら徹底的にぶっ殺すのが人間の性。

 

あと、犬っていうのは人間よりも弱肉強食の中で見るなら下位だ。つまり、

 

 

ーーー黙って犬は人間様に伏せしとけ。

 

 

残っていた料理をウロボロスをこっそりと出して流し込む。ちょっと雑で悪いが今度美味いものをあげるからウロボロスには許して貰おう。

 

「ミアおばちゃん、勘定」

 

「はいよ。…ああ、修理代は要らないよ。冒険者同士の争いで壊れるなんていつものことさね」

 

「なんだ、分かってたのかよ」

 

「伊達に何十年も生きてないよ。それに、いつも争いを止めるのは身内の冒険者かあたしのオタマだからね。争いごとのスイッチなんてすぐわかる」

 

それに、とミアおばちゃんは続ける。

 

「そんな金もらうくらいならウチの常連になってくれた方がいいよ」

 

…ほんとどうなってんだこの店。全員強かすぎる。

 

「じゃ、品のなってない客は調教しないとな。オレ様の通う店にあんなのがいたらオレ様まで品位を疑われる」

 

「あんたも大概だねえ…」

 

最初喧嘩吹っかけてきたのは向こうだしな。ったく、ベルだけが貶されるならともかく、”オレのファミリアの団長”が貶されてるんだから仕方なくファミリアの一員の義務として重い腰を上げてやるんだ。後でベルはオレに泣いて感謝しろ。だからミアおばちゃんとウロボロスその生温かい目やめろと。

 

 

さあ、駄犬。躾の時間だ。

 

 

それじゃ、ウロボロス。威圧おーんっ☆




ベート君いじりに興が乗ったら早く投下する…かも?

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