「さて二人の処罰がきまりました。」
「・・・むぅ」
「しょ、処罰・・・」
「はい。実弾演習という危険な演習で無線を切り、長門型という強力な戦艦二人が私闘をしたこと・・・特に英雄とまで言われている長門さんは反逆罪に問われてもおかしくありません。」
「は、反逆罪!?ちょっと待って!演習を挑んだのは私よ!?」
「ですが事実は事実です、金剛さんも大破していてここ横須賀だけではなく周辺地域まで危険に晒したんですよ。わかっていますか?」
「・・・。」
「そ、それなら提督も許可したじゃない!」
「・・申し訳ないのですが、本営の判断では私を騙した、という結果になっています。」
「そんな・・・」
「ですが、まぁ上もすごい戦績を残している二人を手放したくないんでしょう。私もなんとか二人が軍法会議に掛けられるようなことにはならないように回避しました。これでも英雄を率いた提督です。」
「・・・。」
「そ、それで私達はどうなるの・・・?」
「・・・二人が一緒の鎮守府にいることは危険と判断されました。」
「・・・!」
「そんな・・・」
「陸奥さんには残ってもらいますが、長門さんは大湊に行ってもらいます・・・自業自得とはいえ事情は察します。このような結果になってしまうとは・・・力量不足を感じます。すみません・・・」
「いや、提督のせいではない。我々の落ち度だ。解体されなかっただけましだ。」
「うぐ・・・!」
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「・・・というわけになった。」
「そんな・・・!」
「くっ・・・アドミラルはなにをしているの・・・!」
「長門さん・・・」
深夜の食堂でビス子、鳳翔、朝潮に集まってもらい提督からの処罰の内容を話した。三人は驚愕を隠しきれず、ビス子はグラスを握りつぶし、鳳翔にひっぱたかれている。いたそう
「そこでお前達に頼みがある。」
「・・・わかりました。なんでもいってくださいね長門さん。」
「朝潮も!尽力致します!」
「まっかせなさい!」
「ありがとう・・・頼みというのは陸奥のことだ。」
「陸奥さん・・・ですか?」
陸奥はここにきてからうつむいたまんまだったが名前を呼ばれてびっくりしてる。演習の時とは大違いだな。
「ああ、そうだ。陸奥は私に似てあまりコミュニケーションは得意ではない。それをお前達に助けて欲しい・・・」
「ね、姉さん・・・!せっかくこれから変われると思ったのに・・・離ればなれなのに・・・」
「陸奥・・・これが生涯の別れというわけではない・・・」
「姉さん・・・」
「長門さん・・・」
「いいなぁ・・・」
「良い姉妹愛ね長門・・・!」
「それに長門型なら力尽くで会いに来られるぞ。私達が組めば敵はない。」
「それは冗談抜きでやめてくださいね?」
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諸君、長門だ。というわけで大湊警備府に所属することになった。せっかく陸奥と仲良くなれるかと思ったが・・・まぁ実弾を持って本部の監視から抜ければどうなるかなんて明白だな・・・落ち着いた様子だったが心配だ・・・まぁビス子と鳳翔、朝潮に頼んだから平気だろう。だがコミュ症の私があたらしい鎮守府でやっていけるか・・・いかんな。こんな弱気では長門の名が廃る。気合いを入れていこう。そしてむつ市にはついたんだが・・・警備府はどこだ。
「すみませーん!」
「む・・・君は大湊の大淀か。」
「はい!お迎えにあがりました!太平洋の英雄さん?」
「長門でいい。」
「あら、そうですか?英雄さんに失礼がないようにと思ったんですけど・・・あ、お荷物お持ちしますよ。」
「ああ、すまない。」
ふむ・・・大湊の大淀は横須賀のうちの大淀とくらべて明るくてどこか少女臭がする。・・・なんだよ少女臭って。ちなみに横須賀の大淀はくたびれたOLみたいだった。同じ艦娘でも根本的な性格は変わらずとも個体差で大きな差が出る。例えば同性愛に目覚める大井もいれば菩薩のような大井もいるのだ。
「うちではまだ戦艦が一人もいないので苦労をおかけするとは思いますけど・・・」
「いや、大湊はそれを補うほど水雷戦隊の練度がたかいじゃないか。連合艦隊で一緒になった天龍から聞いたぞ。」
「うちの天龍さんが・・・あ、ここです。」
「すまんな。」
「天龍さん、よく連合艦隊に参加したって言ってたのでまかせじゃなかったんですね。」
「なんだ、知らなかったのか?」
「はい、私は最近建造されましたので。」
少女臭の原因はこれか。若々しいのではなく、本当に若かったんだな。それと比べると大侵攻時に建造された私はおばあちゃんくらいになるのか・・・?ぐぬぬなんだか悔しくなってきたぞ。
「ぴぃっ!?な、長門さん・・・何かお気に召さないことがあったでしょうか・・・?」
「ん?いや・・・なにも・・・」
「え、えと・・・あの、お片付けがすみましたら提督が執務室に顔を出して欲しいそうです~!じゃ、じゃあこれで私は失礼します~!」
「ああ。」
急に行ってしまったな・・・何か急用でも思い出したか?荷物も大した物・・・ないしさくさくと片付けてしまおう。まずはみんなからもらった餞別を大事にしまおう。えーっとこれは島風からもらったカチューシャ・・・これは鳳翔からの中華鍋・・・これは金剛からのティーカップ・・・これは響からのアイススプーン・・・これ、は・・・新しい財布。これは不知火がくれたんだっけ、なぜだか一番泣いていたのは不知火だったなぁ。ぐしゃぐしゃの顔で大潮と一緒にやってきた時は驚いた。
「・・・こんなものか。」
さっそく執務室へ向かおう。ここの提督はどんなやつだろうか・・・
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「やばいだろ!大淀!なんてことしてくれたんだよ!」
「だ、だって提督!天龍さんが大侵攻阻止の連合艦隊に参加していたなんて嘘だと思ってたんですよぉ!」
「ばっか!天龍は現存する艦娘の中でも大侵攻を生き抜いた相当な古株の第一期艦娘なんだぞ!!よくきくただの遠征番長とはわけが違うんだぞ!!」
「そ、そんなこと言われてもぉ!」
「ほら!もう長門さん来たから落ち着け!」
『・・・取り込み中だろうか?』
「そ、そんなことないぞ!入ってくれ!」
「失礼する。」
ふむ・・・若そうな提督だ。横須賀のとは大違いだな・・・大丈夫だろうか。しかし上官は上官だ。それに北方から未だ続く深海棲艦の侵攻を防いでる提督だ。信頼は出来るだろう。
「本日付で着任しました。長門型戦艦一番艦の長門です。」
「よく来てくれた。横須賀のバアちゃんから話は聞いている。」
「バアちゃん・・・?」
「あの人の教え子なんだ俺は。無事あの人の訓練過程を終えたやつらはみんなバアちゃんって呼んでる。」
そんなことしてたのか、全然気づかなかった。横須賀の提督・・・熱血で人が良くて有能なのは一緒に戦ったから知ってるけど・・・バカだから誰かに教えられたのかなぁ・・・?
「苦労したな。」
「やはりわかりますか。」
「ああ。私も、提督の艦娘だったからな。」
頭を下げた大湊の提督を見るに予想通りだった模様。まぁ良しとしてここ大湊でやることを教えてもらわねば・・・また・・・戦いの日々に戻るのも・・・悪くは・・・いや悪い悪い。せっかくみんなと仲良くなるって決めたのに左遷なのだから。少しくらいふてくされてもいいだろう?
「私は、何をすればいい?聞けば戦艦はほとんどいないと聞く。そして水雷戦隊の練度が他と比べ高いのも。私は必要か?」
「ええ、ちゃんと説明しますよ。その前に一息つきまs」
「おおーい!提督-!!第二遠征艦隊帰投したぜ・・・!?」
「お前は・・・」
「全身の火傷痕・・・錨のチョーカー・・・頭の電探・・・そぉかぁ!今度来るって言ってた戦艦はあんただったのかぁ!」
他の天龍と違いカッコ付けではない眼帯、特徴的な電探、頼もしい声・・・変わらない、あの頃と一緒の姿だ。彼女も私の友人だと胸を張って言ってくれる人物の一人だ。
やはりいると聞いていたからいつかは会えると思っていたがこんな急に来るとは
「久しいな・・・天龍。」
「へへっ!よく来たな長門!歓迎するぜ!」
「コラーッ!天龍!今は応接中だろうが!ノックして入ってこないか!!!」
「へいへい・・・」
執務室に乗り込んできたのは遠征の報告書を出すためだったらしい。こういう不遜なところも変わらないな。新しい場所で不安だらけだったが彼女がいれば安心出来そうだ。大湊でも新しい友達を作り、艦娘といちゃいちゃする。この目標を忘れずに頑張って行こう。一番の懸念される問題はここの食堂の親子丼の味が、目下の不安対象だ・・・それは今日中に調査せねばな。