やぁ・・・諸君・・・長門だ。昨晩陸奥が私の部屋に押し寄せてきて、帰ってもらうまで大分苦労した。夜戦忍者と二水戦の強い人、オマケに四水戦のヤバイ人まで来て大変だった。
「なるほどねぇ・・・それで陸奥さんが演習場を一人で押さえたんだね。」
「そうよ。さぁ姉さん、一晩待ったんだから答えを聞かせてくれる?」
「はぁ・・・」
正直陸奥は異常だ。こんなになってしまったのも私に責任があるのだが・・・考えてみてほしい。当時、深海棲艦の太平洋大侵攻があったあの頃は姉妹で仲良しなどしてる場合では無かったのだ。それこそ鎮守府にいても一時間生き延びたら万歳出来る程攻められていたのだ。一隻建造してる間に連合艦隊が失われるなんてことが何度あったかわからない。それはそれは戦闘一辺倒にもなって愉快な会話もするなど出来なかったのだ。
「長門さん、私からもお願いです。陸奥さんは努力を惜しまず練度を上げてきました。それもこれも貴方の為ですよ?どうか一戦だけでもやってもらえませんか?」
「むぅ・・・」
・・・やりたくない。だがこのままだと陸奥は無謀な事に手を出し始めるだろう。交友が無かったとはいえ可愛い妹だ。取り返しのつかない状況になってからでは遅い。しかし・・・
「陸奥、提督。正直私はこの申し出を受けたくない。」
「なっ・・・!」
「そうか・・・」
「考えてもみてくれ、ケッコンカッコカリも済ませた練度最高の戦艦とかたやケッコンカッコカリもしていない旧査定練度の、しかも戦闘から退いてしばらく経つ過去の戦艦。演習なんてしなくてもどちらが強いかなど一目瞭然じゃないか?」
私は、こう、仲良くなる方法など一緒にご飯を食べるくらいしか知らない。ならばそれで私は攻めようと思う。戦闘とは相手を如何に自分に優位な状況に持ち込むかが肝だ。
「だからな陸奥、それよりも食堂でごh」
「ふざけないで!!!」
「おぅっ!?」
「そんなの絶対認めないわ!!姉さんは太平洋の英雄でしょ!?絶対的な強者でなければいけないのになんなのそれは!?」
「ま、待て陸奥、お前は私より強くなりたいのか私に強くあって欲しいのかどっちなんだ・・・?」
「出撃申請もしないで鎮守府でだらだらと遊んでばかり・・・不抜けた姉さんのままなら私があの頃の姉さんに戻してあげるわ!!」
わなわなと震え、陸奥は 右手を構えて 渾身の一発を 放とうと している !▼
待て待て待て私でも戦艦のパンチなんか食らったらすごい痛いしなにより上官の前でそんな暴力沙汰なんて独房じゃすまないっtぐわああああああああああああ
「らぁっ!!」
「ぐわあああああああっ!?」
「ああっ!?長門さんが女性があげるべきではない悲鳴で転がった!?」
「はぁっ・・・はぁっ・・・どう!?これでも私の演習受ける気にならない!?妹に吹き飛ばされて悔しくないの!?」
「うぐ・・・あぁ・・・だ、大丈夫さ、すまないな陸奥。少し頭が冷えた。やはり演習は受けない。私とお前に必要なのは、対話だよ。演習で殴り合うんじゃない。それに妹に殴られるんだったらいいさ。必要ならいくらでも殴れば良い。もっと穏やかに平和に話をしよう。」
「くっ・・・くっそぉおおお!!!」
「陸奥!くそなんて言葉使うんじゃnぐわあああああああ!?」
ぐっはああああ痛いいいいいいむっちゃん流石!鍛えてるだけありますね!二代目大戦艦パンチを襲名していいですよ!!脳みそがゆさぶられて星が飛んでるよやばい。
「な、長門さぁん!?はっ!む、陸奥さんダメです!暴力はダメです!」
「離して提督!このふぬけ姉はわたしが更正してやるんだから!!!」
「アドミラル!!何ごt長門!?」
「提督ご無事ですか!?」
「ああ、ビスマルクに鳳翔さん・・・陸奥さんを止めてください!」
「わ、わかったわ!陸奥!少しお痛が過ぎるわよ!!ふんっ!」
「きかないわよ!」
立ち上がったら陸奥とビス子が史上空前限界バトルだ!ってビス子がカウンターを喰らって・・・!?
「あああっ!?」
「きゃあっ!?」
「ビスマルク!?鳳翔さん!!」
ビス子と鳳翔がくんずほずれつ・・・ってそんな場合じゃないぞ大変だ!
「ふんっ!口ほどにもないわね。」
「ほ、鳳翔・・・?!大丈夫か!?」
「いたた・・・ええ、すみませんちょっとすりむいただけです。」
鳳翔・・・すりむいただけって結構な怪我だぞ!?ああ、痣から血が・・・!
「ちょっと長門!私の心配はしないのって鳳翔!?大変!!!」
「ビス子は頑丈だろ!?それより鳳翔を医務室へ運ぶんだ!ビス子頼む!」
「わかったわ!!動かないでね鳳翔!」
「え、ちょ・・・抱っこなんて・・・はわわ!?」
「・・・ちっ、また姉さんは・・・」
「陸奥さん!やりすぎです!!独房で頭を・・・」
「待て提督。なぁ陸奥・・・」
「なに、姉さん?」
陸奥・・・演習場、行こうぜ・・・久々にキレちまったよ・・・
「今のが、お前の手に入れた強さか?」
「ええ?そうね。もう高速戦艦程度の攻撃じゃびくともしないわ。どう?以前の私より大分強くなったと思わない?」
「さぁな。確かに努力して得るものはあったように見える。だがそれは強さなんかじゃあないな。」
「へぇ・・・」
「お前の演習、相手になってやろう。」
「あら?あらあら、急にどういう心変わりをしたのかしら。さっきまで乗り気じゃなかったのに。」
「姉妹だからな。姉の強さが欲しいならくれてやろうと思ってな。」
「な、長門さん!陸奥さんは・・・」
「提督、演習場を空けてくれ。あと私と陸奥の艤装に補給を。実弾で頼む。」
「なっ!!何を考えているんですか!?そんなの許可できませんよ!」
「すまない、提督。これはこの長門の切実な願いだ。」
「・・・っ!」
やはり戦闘一辺倒でも出来ることがあったかもしれないな。戦い方を教えてやるとか戦術指南とか出来ることはいくらでもあったな。やはり私の怠慢が招いた結果か。・・・妹との仲が良くなくてなにが皆と仲良くだ。笑われてしまうな。
「・・・危険だと判断したら止めますよ。」
「すまない。」
「ふふ・・・やっとね。良い勝負にしましょう姉さん。」
「ああ。」
・・・鳳翔があの様子だと。昼食と夕食の親子丼は無理だな。覚悟しろよ陸奥、食い物の恨みは怖いぞ。お前もあの戦争でそれは充分知っているだろう?