やぁ諸君。長門だ。今日は艦隊のみんなと外食に出る。提督に外出許可をもらいに行ったときいくらなんでも当日は・・・等という空気の読めない事をぬかしたので右手を挙げたら二つ返事で全員分書いてくれた。提督というのは器がでかくないとな。
「ほ、ほんとにいいの・・・?その・・・長門・・・?」
「わーい!長門さんありがとう!」
「ああ、好きなものを食べろ。」
そして雷の言うイタリア料理の食べられる場所というのは・・・白とエメラルドグリーンの装いが可愛らしいガルデーニアというファミレスだった。・・・なんか聞き覚えがあるんだよな。何故だろうか、というかこの世界にファミレスなんてものがあったのだな。もっとこの世界について目を向けないといかんな。戦い以外を知らなすぎる。
「長門さん・・・不知火達も呼んでいただきありがとうございます。」
「気にするな。おやつを用意すると約束したからな。」
「長門さん!ごちそうしていただきありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「朝潮達も遠慮無く食べろ。お金は心配しなくていい。全部私の奢りだ。」
「あーっ!暁!それは私のピザ!」
「い、一枚くらいいいじゃない!」
「はわわ島風ちゃんもお姉ちゃんも喧嘩しちゃダメなのです。」
「うん・・・このチョコアイス・・・力を感じる・・・」
「喧嘩するくらいならまた新しく頼めばいい。響も、アイスおかわりするか?」
「ヘーイ!ドリンクバーおまちどおさまネー!」
「長門・・・いくらやすいからってこの人数で好きなだけ食べたら結構な額よ?大丈夫なの?」
「この長門を舐めてもらっては困る。お財布もビッグセブンだ。」
「わぁー長門さんのお財布可愛いですね。」
「わかるかプリンツ。」
ファミレスの一角がわいわいと賑わう。これだ、みんなでご飯。こういうのがしたかったんだ。両隣には電と雷、膝には島風と響、向かいに暁、周りに朝潮、大潮、不知火。ここが天国か。
「うふふ・・・長門さん、良かったですね。」
「鳳翔・・・いや、これも雷の名案のおかげだ。」
「ふふーん!もーっと頼っていいのよ!」
「これからはそうすることにしよう。」
隣の雷を撫でたらどや顔した。なんて可愛らしいんだ。
「長門・・・チョコアイスをおかわりしたい。」
「わかった。金剛、すまないがベルをおしてくれ。」
「オッケー!長門の他に何か頼む人はいますカー?」
「金剛、私とプリンツにチョリソーとビールを頼むわ。」
「ヘーイ・・・昼間からアルコールデースカー?」
「な、いいじゃない!」
「構わない。」
「金剛!わたしとローマにキャベツのペペロンチーノとマルゲリータピザを頼むわ!」
「えっと・・・不知火にムール貝のオイル焼きを・・・」
「おぅっ!はーい島風!辛味チキン!」
「駆逐艦の皆さんは晩ご飯が食べられなくなるまで食べてはいけませんよ。」
「「「「はーい」」」」
ああ・・・平和だ・・・あの戦争がまるで嘘のような気分になってくる・・・塩と血と肉が焼ける臭いが充満する戦場がほんとに・・・遠い過去のような・・・長門になる前もこうして友人とファミレスで団欒するようなことがあったのだろうか。今となっては友人がいたのかすらわからないが・・・この感覚を懐かしい、楽しいと思うならきっと良い友人に囲まれていたんだろう。なんだか薄ぼんやりと思い出せそうな気がする。こんな感じのテーブルで、友人と、騒ぎながら・・・ドリンクバーを取りに行って・・・ポテトをかじりながら夢を語った・・・そんな風景が・・・思い、出せそう、な・・・
「・・・と・・・がと・・・」
「・・・ん」
「長門!」
「ッ!?・・・どうした!?」
ちょっとぼんやりしてしまった。気がついて周りを見渡すと全員が私を見つめている。何か、こう、驚いているみたいだが、そんなに見つめられると照れる。
「長門・・・どうしたの?大丈夫?」
「ビス子・・・なんだそんな驚いた顔して、エスカルゴでも食べたか?」
「違うわよ!長門、貴方具合でも悪いの?」
「いや、そんなことないが・・・」
「じゃあ、どうして泣いてるの?」
泣いて・・・?ふと手を顔にやると暖かいものを感じた、以外と洒落にならないくらい涙を流していて私も驚いてしまった。
「あ、あああ、あの・・・やっぱり、迷惑だった・・・かしら・・・」
「ご、ごめんなさい長門さん・・・私達わがまま言っちゃって・・・」
顔を青くしてイタリアはうつむいてしまい、申し訳なさそうにローマが謝罪した・・・いかんな。これはいかん。せっかく楽しい食事なのにそれを求めた私が壊してしまっては・・・
「・・・なに、迷惑だなんて思っていない。ただ、平和だな・・・と思ってな。」
「長門さん・・・」
「平和・・・そうね長門、貴方戦い過ぎたのよ。平和を謳歌したって全然許されるわ。そうでなければ戦った意味がわからないわよね。」
「す、すまんなせっかくの楽しい食事を台無しにしてしまって。ほら金剛、注文はしてくれたのか?プリンツもビールを早く飲まないとぬるくなってしまうぞ。イタリアとローマもそんな顔をするな。故郷の味はそんな涙の味はしないだろう?鳳翔、すまないが私にアイスティーを持って来てくれないか?」
「・・・はい、わかりました!」
「ありがとう、ビス子。」
「いいのよ。私も連合艦隊組んで鳳翔と一緒にあなたと戦った親友じゃない。」
ああ・・・嘘をついてしまった。鳳翔もビス子も自分は私の親友だと言ってくれている者などほとんど現れないと思っていた・・・だからこそ私が転生者などという奇々怪々な存在だと言うのが申し訳なくなる。
「ふふ・・・みんな、本当にありがとう。」
こうして私達はガルデーニアで夕方まで食べて鎮守府に帰ってからも鳳翔のご飯を同じ面子でたらふく食べた。その時駆逐艦の子供達がファミレスでいっぱい遊んできたと言ったのが聞こえたらしく一航戦の二人が泣きながら私にすがりついてきた。お前ら一航戦の誇りはどうした。しかし楽しい一日だった。出撃申請をしてドックと格納庫で一日を過ごす以前の日々とは大違いだ。こうしてみんなと仲良くなると決めてそこそこ経つが仲良くなれてきただろうか。いちゃいちゃできているだろうか。そんなことをぼんやりと考えながら自室の扉を開けた。
「さて、今日も楽しかった。明日は空母と重巡のみんなと飲みにでも行くか。」
そうだ。お酒を飲む、というのは長門になってから試してなかったのだ。はたしてお酒は強いのか弱いのか・・・ともかくどういった誘い方をしようk
「姉さん!!!」
「ほあぁっ!?なんだ!?だれだ!?・・・陸奥!?」
「これを見て姉さん!」
「・・・?」
陸奥は姉妹艦、私の妹だ。その、この陸奥とはあまり仲良く出来ている感じはしない。何故なら私が戦いに傾倒しすぎて構ってやれず寂しい思いをさせてしまったからだ・・・その結果。
「練度150認定書と、通算撃破艦4000隻突破勲章・・・か?」
「そうよ!これで姉さんも受けてくれるでしょう!?私との単艦演習!!!」
私以上のバトルジャンキーになった。強くなれば、私に並べる、目を向けてもらえると思って強くなりつづけているらしい。つい先日私のマネをしてル級を殴りつけて腕を粉砕骨折して帰ってきたのを覚えている。
「どうなの!?受けてくれるの!?」
「ま、待て陸奥・・・」
すこしクレイジーになりすぎて・・・もうなんて接したらいいかわからないんだ。
「ケッコンカッコカリもして練度150!!これで姉さんに負けない!!!提督にはもう演習場を抑えてもらってる!あとは姉さんが受けるといえばそれでいいのよ!!」
「陸奥、落ち着け!もう夜だから!騒ぐとうるさいやつ集まってくるから!」
「姉さん!これではっきりさせる!絶対に、絶対に私の方が強いんだから!!!」
・・・私のしってる陸奥はエロいお姉さんの陸奥で、こんな鬼のような女ではない。誰か助けて。