・・・。
「マダ・・・ラクタ・・・!!・・・マダ!・・・ウフフ・・ワタ・・・メルノ・・・」
「・・・った!?・・・く・・・ってぇぇーー!」
「なが・・・!・・・うこ・・・!こう・・・ざい・・・!!!」
「・・・カマ・・・?ガラク・・・ズメ!」
「・・・オオォォォォ!!」
「ま・・・い!!すい・・・い!・・・っしゃ!」
「・・・・ァァァ!!ゴボ・・・」
「バケ・・・かいめ!」
・・・。
「うわ・・・しいこうそ・・・やいわ。」
「どう・・・がとは、・・・れいになっ・・・」
「・・・がは、わた・・・ずまんよ。」
「ながとさ・・・さすが・・・かんね。」
「やくそく・・・な。」
なんだ・・・眩しいし、うるさい・・・おちおち寝かせてもくれないのか。ほんと、戦場は地獄だな。
「長門!!」
「意識が戻った!?おーい明石!速吸!バケツもう一個だ!!」
「はい!」
「長門、いま助けるから!遅くなって、ごめんなさい・・・」
扶桑・・・?伊勢・・・?何もお前たちまで地獄に来ることはないだろうに・・・情けも慈悲もないとはこのことか。
「第一砲塔、目標敵重巡、第二砲塔、目標敵駆逐2、第三砲塔三式弾切り替え、敵航空機、第四砲塔、敵戦艦。撃てぇー!!」
地獄も戦争中なのか・・・?仏が攻めてきたのか・・・?まぁいい、だけどうるさいんだよなぁ・・・
「バケツ!お待たせしました!」
「長門、ごめんなさい!」
「・・・?わぶぶぶぶぶ」
私の刑は湯攻めか・・・なんか妙に頭がすっきりしてきた。私は、そうだ泊地水鬼との戦いで!
「ぶはっ!!扶桑ぉぉぉ!!!溺れさす気か!!!」
「長門!良かったぁ・・・戻ってきたのね・・・!」
「戻っ・・・んんん?」
扶桑、伊勢、二人とも艤装もないのに水上にたっているぞ・・・!?どうなっているんdな!?辺りを見渡せばたくさんの艦娘、駆逐艦から戦艦まで、艦種は様々だ。私は確か一人で戦っていたはずだが・・・
「私は、確か・・・泊地水鬼に沈められたはず・・・?どうなってるんだ?そ、それに、扶桑!お前艤装はどうした!?こんな戦場のど真ん中に砲も持たずにくるなんて・・・!?」
「ふふ・・・大丈夫よ。」
「ああ、艤装はちゃんとある。」
そういうと扶桑と伊勢の周りに焔のようなものが揺らめくと艤装の形にまとまって・・・う゛ぇぇええ!?
「な・・・おま・・・それ、夕立と一緒の・・・!?」
「やっぱりそうなのね。」
「そっか、じゃああの噂の新型艦娘ってのはドロップ艦から開発だったんだな・・・」
「・・・????全然話がわからん・・・私は沈んだ筈では・・・」
「大丈夫よ、長門は私が沈ませなかった。」
「明石の泊地修理と新型高速修復材のおかげでな。」
「新型・・・?」
「ああ・・・とまぁお話は後だ。まずは一杯食わせてくれたアイツに礼をしなきゃな。」
「ええ・・・私の妹にここまでしてくれたんだから・・・ちゃんとお礼しなきゃね?」
「い、妹だと?お前達には山城と日向という妹が・・・」
「山元三姉妹の妹は、あなたよ、長門?」
「はぁ・・・まぁ、いい。」
「ほら、病み上がり悪いが、復活してこれから敵を殲滅するって味方を鼓舞してくれ英雄のお姉さん?」
「・・・は、はぁ・・・わかった・・・」
いつの間にか直っている艤装・・・おかしいな確か右半分吹き飛んだ筈なのだが・・・体もおかしい所は何もない。むしろ古傷の火傷までキレイになっている。新型高速修復材、恐るべし。
「やぁ諸君!!長門だ!!!不覚にも敵の攻撃を受け、大破したがもう心配はいらない!!!諸君らの力を合わせ、悪名高き泊地の名を冠す水鬼をいざ討ち滅ぼそう!!戦艦、前へぇー!!!」
ざざと波を切り、伊勢型、扶桑型、長門型と並ぶ。長門は私を会わせ二人、もう一人には見覚えのあるヘアピン・・・まさか。
「もしかして、君は・・・単冠湾の?」
「気づいたか、英雄。」
「か、解体されたんじゃ・・・」
「貴方に救われた。貴方にあの病院を紹介されなければ、こうして再び戦場に立つなど出来なかった・・・そして今ここに集まった艦娘全てが、過去何らかの形で貴方に救われた艦娘ばかりだ。」
「さっぱり・・・実感がわかんな。」
「それより早くしなければ、食い止めている物達も限界はある。」
「ああ・・・目標、泊地水鬼!各艦、全砲門、開けーっ!!!」
「コォォォォノォォォォ!!!ガラクタドモォォォォ!!!」
「しまっ・・・」
泊地水鬼が重巡達の攻撃をかいくぐり、やつの20インチ砲が私に向かい牙を剥いた。
復活即大破は悲しすぎやしないか・・・
「オオオオォォォォォォッ!!!!ナガトォォォォォォォ!!!!」
「ハアアァァァッ!!」
だが私には20インチだろうが51センチだろうが関係無い。また・・・帰れるのであればわざわざその可能性を捨てる等というバカはあしない!
「フンッ!!!!」
鋼と鋼がぶつかり砕けるような甲高い音がして20インチ砲弾を裏拳で弾き飛ばした。
絶好調のようだな。
「良い調子だ。」
「流石だな英雄。」
「それほどでも。」
改めて狙いを定めると泊地水鬼が重巡艦娘や軽巡艦娘に邪魔をされ、獣の雄叫びのような叫びをあげている。そんなに私が憎いか・・・
「一斉射!!!撃てェーーーーッ!!!」
爆音と共に鋼鉄の塊が産声を上げて飛んで行く。砲弾は泊地水鬼に吸い込まれるように向かっていき、命中炎上・・・頭を失った深海棲艦は泥のように溶けて海に帰った・・・この様な形で大湊防衛線は無事終了した。しかし私にはたくさんの謎が残った。扶桑、伊勢の艤装。戦線復帰不可能と言われた長門。文字通り完全修復された私・・・帰ってお茶でも飲みながら、ゆっくり聞くとするか。
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『・・・こえるか?こちら長門。』
「長門さん!?」
「ママ!」
「お母様ぁ!!!」
『・・・マイクに近いぞ。夕立、翔鶴。大分苦戦したが、援護艦隊が到着。泊地水鬼を撃破し、大湊防衛に成功。これより、千歳に向かう。』
「長門さん?こちら渡辺。援護艦隊とは・・・」
『替わりました。援護艦隊旗艦の扶桑です。お久しぶりですね、渡辺さん。』
「お久しぶりってことは山元元帥の!」
「わしがどうかしたかの。」
『提督?扶桑です。なんとか、間に合いました。』
「間に合った・・・ということは、あれは成功だったのかの?」
『長門救出と実戦試験を同時だったのですが・・・良好です。問題ありません。』
「わかった・・・」
『・・・山元提督、長門です。今回のこと、私には何がなんだか・・・』
「それもこっちに来てから説明しよう。長門、無事で良かった・・・」
『・・・わかりました。』
「ママぁああああ!!!」
「お母様・・・あぁっ・・・」
「ちょ・・・翔鶴!?明石!明石ぃー!」
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「・・・通信終わり。さて・・・さっくり説明してもらうぞ扶桑。」
「ふふ・・・そうね。長門の驚いた顔も面白いけどそのままだと威厳に関わるわね。」
「ふざけている場合ではない!轟沈同然だった私を復活させたこととか、戦線復帰不可能と言われた単冠湾の長門、そしてお前達の不思議な艤装だって!なにがなんだかわからんよ・・・」
援護艦隊は結構な大艦隊になるのだが艤装を出したままにしているのは私だけ。みんな夕立と同じように艤装を出したり消したりしていた。どうなっているんだ本当に。私だけ仲間はずれだ。
「まず・・・長門が知らない間に起きたことね。本営では妖精さんの技術を解析することを進めていたんだけど・・・以前はうまくいってなかった。ここまでは知ってるわよね?」
「ああ、妖精さんは、教えてくれたこと以上は決して話さなかった。」
「山元提督が元帥になってからまた妖精さんとのコミュニケーションが再開して新しいことを教えてくれるようになったの。それが新型艦娘。」
「新型、艦娘?」
「ええ・・・この新型艦娘の技術は以前私達が生まれた時よりも遥かに上位の技術だった。しかし人間でも再現出来る程度に抑えられた・・・」
「ふむ、それがどう関係しているんだ?」
「新型は今の艦娘と作りが根本的に違う。その為に建造、改修、入渠、解体全てのシステムが見直されることになったのよ。」
「・・・ふむ。」
「建造は時間が短縮され、改修は今まで船魂の強化程度にしか行えなかったものを体や艤装までいじることが出来る様になり、入渠も時間短縮、効率化、新型高速修復材の登場。解体は艤装と船魂のつながりを解除し、体を人間にして普通の女の子にすることが出来るようになった・・・」
「お、多すぎてわからんよ・・・」
「その、改修、今は近代化改修と言うそうだ。それを受けると艤装を艦娘の意志で出し入れ出来る様になる。」
「長門・・・」
「英雄、本当に世話になった。あの時、あの場所で貴方に出会わなければ私は解体されるだけだった・・・感謝する。」
「その、長門は近代化改修で艤装と体を改修して戦線復帰したと・・・?」
「ああ、だがやっぱりまだ不確定な技術らしくてな。近代化改修を施したら、見てくれ、屈曲煙突だ。どうやら元の姿通りに、と言うわけにはいかなかったようだ。妖精さんが散々謝ってくれたよ。」
「若返ったのか・・・!?」
「そういうことになる。」
「私もーちょっと前まで指一本動かせないくらいの重症で、寝たきりだったんだけどなー。近代化改修したら・・・この通りだ。」
「飛行甲板・・・!?伊勢は老けたのか!?」
「だれがババアだ!!」
「そんなことは言ってない!」
「こんな感じで・・・今この援護艦隊にいる艦娘はみんな横須賀の軍病院で戦線離脱してた子達だったの・・・みんな大侵攻を生き抜いた猛者だけど。」
「・・・へぇ。」
横目で皆をみれば確かに眼光が違う。戦士の目だ。頼もしいったらありゃしない。
「それだけじゃない・・・みんな貴方と戦ったことがある艦娘達なのよ?」
「・・・私は昔は戦いばかりになりすぎて、そんなに日常は覚えていないんだが。」
「いいのよ・・・私達が、覚えているもの!」
「・・・ありがとう扶桑。」
「それで近代化改修が終わったところで、舞鶴が強襲されたって連絡がきたんだけど、もう遅くて・・・そうしたら大湊に侵攻中だって聞いたじゃない?みんな、長門を助けに行くって息巻いちゃって。大本営書記の権力をちょちょっとして、出撃してきたの。」
津軽海峡を進みながら・・・いろいろ考えをまとめようと・・・だめだ。難しい、要するに・・・
「時代が変わるって事か・・・」
「・・・でも、戦いは続くわ。」
「戦いは終わっても英雄は語られつづけるぞ?」
「こりゃー山元三姉妹の伝記とか出るかね?」
「もう、伊勢・・・誰にかいてもらおうかしら?」
「はっは!誰か文章が書ける奴がいたか?私は無理だ。」
「伊勢と長門には最初から期待していません!」
「なにぃー!?」
「なんだと!?」
「ふふふ・・・艦種は違えど、本当の姉妹のようだ。私はまだ単冠湾で陸奥が建造されていないから羨ましいよ。」
「すぐ会えるわ。きっと。だってこれから時代が変わるもの。」
「お前も長門だろう?しっかりしろ。」
「そうだな、どっしり構えて・・・気長に待つよ。」
「うむとりあえずは・・・だ。帰ろう、提督のもとへ。」
思えば転生してからすごい人生だった。長門として生きてきた時間は波瀾万丈、獅子奮迅だ。海の隅々まで戦いまくった。
「おおぉー!」
「提督!おおぉーい!!!」
もう元の自分がどうだったか忘れてしまった。忙しすぎて。戦いすぎて。
「長門さんは入渠ドック・・・ってあれ?傷一つ無いな・・・むしろキレイになった・・・?」
「な・・・!提督!貴様大淀という者がいながら!!!」
「ま、待て長門さん!違う!そういう意味じゃなくて!拳!拳しまって!!」
「英雄よ、貴方の提督は面白い人だな!」
「長門?渡辺提督はそういう意味で言ったわけではないのよ?わかる?」
「わかっている。私を単身突撃させたんだ・・・これくらいの冗談許せ。」
「寿命が縮んだ・・・じゃない。長門さんはとりあえずドック!他の援護艦隊の皆さんは補給の後、出撃をお願いします!」
気がついたらどの艦娘ともあんまり仲良くなれてなかった。ぼっちになってた。陸奥とさえも会話はあまりない。
「出撃、ですか・・・」
「ああ、AL海域でまだ水鬼が二体と北方棲姫が残っていて・・・連合艦隊の決戦支援艦隊として出て欲しい。」
「わかりました・・・皆さん!聞きましたね!!私達はこれからAL海域に出発します!久しぶりの戦闘ですが・・・なまっている場合ではありません!友を、救いに行きましょう!!」
「「「「「「オオオーーーーッ!!!!」」」」」」
「ありがとう、扶桑さん・・・補給はこっちです!」
「・・・。」
これはいかん。ちょっと忘れていたがやっぱり転生はいちゃいちゃしてなんぼだろう。
「・・・?長門さん?長門さんはドックですって。」
「仲間外れは良くないなぁ提督。」
「何言ってるんですか!長門さんは轟沈同然だったんですよ!!それを・・・」
「大丈夫だ!」
「!?」
「大丈夫・・・なんてったって、最強の友達と。」
「夕立、準備万端ぽい。」
「翔鶴、いつでも行けます。」
「最強の娘達と一緒だからな。」
「・・・ビスマルクさんに知られたら俺どうなるんだろう・・・?」
「どうとでもなるさ。」
なので少し、積極的になっていこう。
「戦艦長門、出撃する!」
戦艦長門、出撃する。
---完---