やぁ諸君。長門だ。敵が攻めてきている。大淀や翔鶴達を逃がすんだ。私か?私は戦う。そういう命令だしな。馬鹿野郎お前私勝つぞお前。
「・・・。」
「みんな艤装は付けたな?順次抜錨し、大淀、間宮、明石を中心に輪形陣で千歳基地に向かえ。私が殿を勤め、津軽海峡に出た後に別行動だ。南方よりラバウル、ショートランド、パラオより救援がでる手はずになっている。」
「ママ・・・」
「私はこの救援が来るまで大湊の町を、本土を守らねばならない。諸君らの武運を祈る。」
「ママ!!」
「・・・なんだ夕立。」
「夕立も行く!!」
「ダメだ。」
「どうして!!一人で行ったら死んじゃうっぽい!!」
「死なん。戦艦は簡単に殺せんぞ。」
「今はそんな冗談聞きたくないっぽい!!!」
「グダグダいうまえに抜錨し・・・」
「電探に感!伏せて!!!」
工廠を抜けようとすると爆音が響き、地面が大きく揺れる。ちっ・・・もう来たのか。
「敵の攻撃だ!!!早く行け!!!」
「艦載機、発艦しま・・・」
「翔鶴!!艦載機はいい!!早く行くんだ!!!」
「でも!お母様が!!」
「三式弾装填!!!てぇーっ!!!」
46センチ連装砲が火を噴くと三式弾が天井を突き破り上空を飛んでいく。破裂音が響いたあとに甲殻のような残骸が雨の様に降り注いだ。きたない。
「見ないで撃ったんですか・・・!?」
「早くでろ!!」
出撃ドックに走り海上を駆ける。煙を上げているのは・・・工廠、大型建造ドックか。
「やはり大型建造ドックをピンポイントで狙ってきたか。ありゃもう使えないな・・・」
「警備府が・・・」
「次発装填!!ってぇーー!!!」
衝撃波と爆音が響き八門の砲から三式弾を吐き出す。空中で破裂しタコヤキを撃ち落としていく。
「ひゃー・・・三式弾すごいにゃしい」
「当然だ。私を誰だと思ってる。」
「あれ・・・見て・・・!!」
湾内を進む我々は地上に着陸(?)するタコヤキを見た・・・何をしているんだ?
「これは不可抗力だ。敵に大型建造ドックを渡すわけにはいかんな。撃てぇーーー!!!」
放たれた三式弾が工廠を吹き飛ばした。もともと引火しやすいものが大量にあったからか大爆発を起こして出撃ドックと入渠ドックを巻き込んで吹き飛んだ。うーんまた作ってくれ。南無。
「まぁまた作ればいいしな。」
「電探に感有り!・・・これは、撤退している?」
「大型建造ドックを壊したからか。ならば今の内だ。行くぞ!!」
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津軽海峡に出ると、偵察に出していた零式水観から報告があった。岡崎沖に敵の大艦隊を発見とのことだった・・・ここまでか。
「大淀、提督はなんと?」
「工廠を破壊の判断はよくやったと。そして無事でいてくれ・・・だそうです。」
「無理な相談だな。大淀、私はここで別れ、敵の迎撃に移る。」
「長門さん・・・やっぱり、一緒に逃げませんか・・・?無理ですよ、一人で艦隊を相手にするなんて・・・」
「それでも命令だ。やらねばならん。」
「ラバウル周辺からの救援が来るなんて何時間かかるんですか!高速出撃艦を使ったって半日以上かかるんです・・・」
「それでも救援は来るじゃないか。それだけで十分だ。」
「わかり・・・たくありませんが・・・わかりました・・・」
「長門さん!私、お料理も上手になったんですよ!!親子丼、美味しいって言わせてみますから!だから・・・」
「・・・それはいいがなんで私の中華鍋持ってるんだ?」
「これがあればいっぱいお料理作れますから!」
「・・・長門さん、やっぱり死に急ぐ人だったんですね。」
「馬鹿野郎明石お前私は勝つぞお前。」
「私は・・・嫌いです。長門さんのこと。」
「そう言いつつ結構面倒見てくれたじゃないか。」
「それが、仕事なので。私の仕事減らさないでくださいね。」
「わかった。めちゃめちゃめんどいのを持って来てやる。」
まったく、私の決意を揺らがせるような事言わないでくれよ。
「・・・ほら、早くいけ。」
「長門さんも、さっさと倒してくるのよ。いいわね?」
「・・・みんな千歳で待ってるにゃしい。」
「あの・・・私、出来れば、御一緒したかったです・・・」
「・・・また、肩車してね・・・」
みんなが背を向けて出発した・・・と思うと私の横に水を切る音が二つ・・・はぁ・・・子は親に似るというのはこういうことか。
「白露型駆逐艦、四番艦夕立・・・ステキなパーティーするっぽい。」
「翔鶴型装甲空母一番艦翔鶴、お供しますお母様。」
「何をしてる。」
「ママを守るっぽい!!!」
「お母様一人にはさせません!私も付いて行きます!!!」
「そうか・・・頼もしい娘達だ・・・」
「ママ・・・!」
「お母様・・・」
そしてわからず屋だ。私は46センチ砲を二人に向けて・・・撃鉄を落とした。
「ぽぎゃあーっ!?」
「きゃあああっ!?お、お母、様・・・なにを・・・?」
「五十鈴、聞こえるか。敵の先制攻撃により夕立、翔鶴の二人が大破した・・・曳航を頼む。」
『・・・わかったわ。私と名取で曳航する。すぐにいくわ。』
もちろん撃った砲は空砲だ。しかし至近距離で接射すれば爆風と衝撃で充分な威力になる。すまんな・・・私は娘に手を上げる駄目な母親だ。
「お前達はここで五十鈴達がくるのを待て。」
「マ・・・マ・・・や、だぁ・・・!」
「お母様・・・いか、行かないでください!お願い、お願いします・・・!!お母様・・・!!!」
「・・・。」
私は何も言わず進む。水観からは報告が途切れた・・・撃ち落とされたのだろう。後ろで二人が悲痛な叫びをあげているが聞いてはいけない。・・・聞いてはいけない。
「提督、敵艦隊を確認・・・長門、出撃する。」
『・・・了解。翔鶴と夕立が大破したらしいが長門さんは大丈夫か?』
「心配ない。この程度ではキズ一つつかないよ。」
『頼もしいな・・・長門さん、絶対生きて帰ってこいよ。』
「無茶を言う・・・おおざっぱに敵は基地型1、空母40、戦艦40、巡洋艦70、駆逐艦80以上の大艦隊だぞ。」
『帰って来てもらわないと困るんだよ・・・長門さんには俺の結婚式でスピーチをやってもらう予定なんだからな。』
「おお!すると相手は大淀か。」
『よ、よくわかったな・・・』
「こう見えても私も女子だからな。」
『大きな娘がいると聞いたが?』
「おい結婚式で暁の水平線まで吹き飛ばしてやろうか?」
『おお、怖い怖い。』
「しかし、めでたいな・・・これでは覚悟が揺らいでしまう。」
『そんなこったろうと思ったからな・・・手を打たせてもらった。』
「ふふ・・・お前はいい提督だよ。会ったときは若造だと思って・・・」
『・・・よせ。』
「おっとコレもダメか。なかなか手強いな」
『油断も隙もない。』
「なぁ提督よ。」
『なんだい?』
「翔鶴と夕立、そっちに着いたら暴れると思うから、ちょっと伝言を頼む。」
『・・・ああ。』
「聞き分けの悪い子は嫌いだ、とだけ。」
『・・・確かに、伝える。』
「ありがとう・・・おっと。敵艦見ゆ。なんとまぁ・・・待ち構えてるぞ。」
『・・・数は?』
「・・・1、2、3、4、5・・・ああもう!動くなよ!お前さっき数えたぞ!」
『・・・戦艦長門、敵の大艦隊との接触を確認。これより戦闘に入れ。』
「了解。」
『・・・ピーーー・・・これ、ザーーーーなが、さガーーーー・・・ブツッ』
「強制的に無線封鎖か。」
「ヒサシブリネ・・・ナガト・・・」
「誰だ。」
「ヒドイワネ、アレホドアツクヤリアッタノニ、ワスレルナンテ。」
巨大な口の艤装に一体化した体、黒い髪に白い肌。特徴的な角・・・なんだこいつは・・・
「敵の顔をいちいち覚えてるなんて面倒くさいんでな。」
「アラ、ジャア、コレヲミタラオモイダス?」
そう言って取り出したのは長門型のボロボロの砲、見覚えのある砲だ。長門型なのに取り付けられているのは35.6センチ・・・間違いない泊地強襲作戦で使った私の艤装!!!
「お前・・・泊地棲姫か・・・!!!」
「アナタタチノヨビナナンテ・・・ナンデモイイノ・・・デモオモイダシタノネ・・・!!!」
「ああ・・・生きていたなんてな・・・それにしても随分イメチェンしたんじゃないか?」
「ソウネ・・・アナタヲシズメタクテ、ズーットカンガエテルウチニイロガカワッチャッタワ・・・!!」
「重い女だな。」
「モウイイワ・・ハヤクシズミナサイ!!!」
無数のタコヤキが発艦すると同時に敵の艦隊も砲撃を開始した。空が砲撃と艦載機で埋まる。思い出すな・・・泊地強襲作戦の時もこうだった。ただあの時と違うのは一人なのと、一歩も引けないこと。
「モウ…トベナイノ……トベナイノヨ……ワカル?…ネェ」
「知るか!!ぐっおおっ!!!」
砲撃を避けつつも弾を徹甲弾に切り替える。その間にも嵐のように砲弾が降り注ぐ。
全砲撃が集中するとこんな風になるのかとのんきに考えていると肉薄した駆逐ロ級が水中から現れた。
「グオオオオッ」
「ジャマだっ!」
お得意の大戦艦本気パンチで後ろに続いた重巡リ級ごとバラバラに吹き飛ばす。ふむ、結構本気だったけどこの程度か。なまったかな・・・
「・・・!」
「次は戦艦かっ!!!ってぇーーーー!!!」
一門の砲から放った徹甲弾は戦艦タ級の上半身を吹き飛ばし、離れた位置にいた重巡ネ級、戦艦ル級も貫通、空母ヲ級に着弾して爆散した。
「ナガト・・・サスガネ・・・ソンナアナタヲシズメタクナル・・・!!!」
「ちょっと平和ぼけしたくらいだが・・・」
『ザーーーー・・・がと・・・ガーーーー』
「提督か!聞こえるぞ!こちら長門!」
『ザーーーー・・・これで、聞こえるか!!!助かった霧島さん!!長門聞こえるか!!』
「ばっちりだ!現在敵艦隊と交戦中!!基地型は泊地棲姫の発展形だ!!」
『泊地棲姫って・・・何十年も前の姫級じゃないか!?どうして!!』
「知らん!だが存外私は深海棲艦にモテるらしい・・・このっ!!!」
通信の途中だが近づいて来たイ級を蹴飛ばして近くにいたハ級にぶつける。おちおち通信もしてられない。それと一緒にタコヤキの機銃と爆撃を避けながらは大変だ。
『なんだそれ・・・』
「交戦して最初に重ーい告白を受けたよ。返事は砲弾でしてやるつもりだがな。」
『わ、わかった・・・これより佐渡より発現した基地型深海棲艦を泊地水鬼と呼称する。長門さん、先ほど通信で北海道が見えたと五十鈴から報告を受けた。無事着きそうだ。』
「それは、このッ!!良かった!!でりゃあっ・・・敵艦の掃除も今のところ順調だ。長門の敵ではない。」
『すまない・・・こんな事をまかせてしまっt』
「ヤクニタタナイガラクタドモメ・・・ナガトォ!クライナサイ!!」
「うわぁぁっ!?くそっ・・・20インチか・・・」
「フフフ・・・ヨソミシナガラジャツラインジャナイ・・・?」
『長門さん・・・いまの声は・・・』
「泊地水鬼だ・・・ふふ・・・空に笑いたくなるような数の航空機が見えるよ。」
一斉に爆弾が投下され機銃を撃ちながら近づいてくる艦載機・・・これは避けられないな・・・三式弾の換装も間に合わ・・・
「ダカラ…ナンドキテモ……オナジナノヨ…!シズメナガトォ!!」