やぁ、諸君。長門だ。もう風邪はすっきり治ったぞ。これで好物の親子丼をいっぱい食べられる。いつもの様に機嫌よく食堂へ向かっていたんだが…
「な、長門さん!おおおおはようございます!」
「おはようございましゅ!」
「あぁ。おはよう。」
私の目の前でぷるぷると震えながら敬礼をしてる二人、駆逐艦の朝潮と大潮だ。この二人が何故だか立ち塞がり私の楽しみの邪魔をしている。あ、決して怒っているわけではない。恐らく二人は緊張しているのだろう。その証拠に私は敬礼を治しているのにいつまでも治していない。
「直って良いぞ?」
「は、はい!」
「はいぃーっ!」
この、やり取りを、すでに五回やった。ちょっと楽しくなってしまった私の落ち度もある。しかし二人をいつまでもここに拘束しておくわけにはいかない。
「(どうしようか…力尽くでもいいが、私がやると入遽ドックへルート固定される。)」
「・・・。」
「あわわわ…」
「(朝潮なんかはもう体が緊張で動かないのをわかっているのか血の気が引いて顔色が悪い。大潮に至ってはもう目を回している。いかんな。こんなところを他の誰かに見られたら私が駆逐艦をいじめているように…)」
「あ、長門さん。」
「あ。」
なんとタイミングの悪い…よりにもよって提督か…顔色が悪い朝潮、目を回している大潮そこに変な格好(艦娘艤装服)した目付きの鋭い大女がいたら間違いなく通報待ったなしだ。提督の顔もわなわなと震えている。あぁいかんな。本当にいかん。
「あ…司令官…うぅ…」
「(なんで泣いた!?)」
「朝潮…!?長門さん!!!」
「・・・。」
「長門さん!あなたがそんな人だとは思いませんでした!」
「(いかんな…また変な方向に話が…)」
「彼女達の最近の遠征の成功率が悪くなっているのは彼女達だけが原因ではありません!!南方での深海悽艦が活発化していたり、気象の不安定さだったり!様々な偶然が重なってのことです!!」
「(そうだったのか。最近は出撃艦に申告してないから全然知らなかった…)」
「それらの不確定要素を考慮せず、大型艦の補給が滞っているのは私の責任になる!!彼女達を責めるのは筋違いだ!!」
「(この提督、有能だがどうにも先走るアホの気がある。有能故に全て対処しているが立ち回りするこちらはたまったもんではない。)」
「・・・。」
「長門さん!」
熱血な提督は一度こうなったらの止まらない。提督の中では完全に駆逐艦に八つ当たりをする戦艦の図が出来上がっているのか。いかんな。というか私はそんなゲスに見えるのか。
「てぃ…」
「司令官…、違うんです!」
「あ、朝潮…?」
おや?
「あ、あの、長門さんは、具合が悪くなった大潮を介抱しようとしてくれたんです…私も、パニックになっちゃって…」
「なに…?」
「えと…だから!決して長門さんは決してそんな八つ当たりとかする人じゃありません!」
なんだか朝潮の中では私は高評価なんだな。なんだかうるっときたぞ。しかし小さな駆逐艦にフォローされるビッグセブンとは…いかんな。
「す、すまない…長門さん…また早とちりを…」
「・・・気にしてない。」
「(めっちゃ落ち込んでる!)」
「提督、大潮を医務室に連れていく。最近の不調のこともあるのでドックを使う許可をもらいに行くかもしれない…」
「わ、わかった…すまん長門…」
「・・・気にしてないんだからな。」
「「(めっちゃ気にしてる!!)」」
私は戦いが全てのやつだと思われているのか。やはりもっとみんなとコミュニケーションを取らないと後々取り返しのつかないことになりそうだ。鳳翔にどうやったらみんなと仲良くなれるか聞いてみよう。
「朝潮、行こう。」
「あっ、はい!」
「長門さん、大潮を頼む。」
「・・・了解。」
「(やっちまったなぁ)」
提督はもう別にいいや。本当に戦闘狂に思われてそうだし。 知らん。もう提督なんて知らん。次の出撃は大型艦を狙うのは順番最後にしよう。それより朝潮と大潮だ。抱き上げたがすごく軽い。まるでマグカップ持ってるみたいだ。
「朝潮、すまなかったな。助かった。」
「いえ…長門さんは、いつも戦場で私達を庇ってくれますし。提督が言うような人には見えなくて…」
「・・・ありがとう。こんど親子丼をごちそうしよう。」
大潮は本当に私を見て目を回したらしい。医務室で目を覚ましてからすごく謝られた。確かに戦艦で体格は他の艦より大きいが…駆逐艦にそこまで怯えられているとは思わなかった。長門ショック!そのあと三人で食堂へ行き、親子丼を食べた。食べ初めてすぐ一航戦が現れたが一睨みで黙らせてやった。食べ終わる頃には朝潮と大潮はいつも見ていた笑顔になっていたので…少し仲良くなれたのかもしれない