スピードスター森崎   作:AMDer

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さあ、早速改変です。そして端折りまくりです。


第二話 トップはぼっち

 森崎駿の朝は早い。寝るのも早い。帰るのも早い。飯を食うのも早い。彼のスピードに着いていけるものは彼の人生において僅かであり、故に孤高であった。でも、まあ全く居なかったわけでもなかったが。多分。

 

2話 トップはぼっち

 

 早いと速いは密接に関係しているが、明確に分けられるべきだと森崎は思う。

 えっ、入学式のあとどうしたかって?そりゃこってり絞られたさ。しょぼくれてIDカードを受け取りに行ったら超美人さんが受け取っていた。時間から考えるに彼女が総代の司波深雪さんだったのだろう。入れ替わりの際に軽く会釈をしあい、いやーこりゃさっさと帰ってクイックドr(ry。

 話を戻そう、入学式の日は早くに登校したが、始業日の今日は速く登校した。登校時間は至って普通である。信号の周期は昨日の時点で把握していたため、家からノンストップで登校できた。1-Aの教室に入って挨拶をすると、何人かが返してくれる。そのまま自分の座席に向かいIDカードをそう、…インサートし端末を立ち上げる。そして履修科目に目を通していく。今の時点で登録もできるのだが、まだその時ではない。

 速さとは何か?それは競技的な意味を持つ”はやさ”だ。つまりスタートは同じでなくてはならない。

 始業のベルが鳴り響き、その旋律に心を躍らせる。間もなくして担当の教諭が入室してくる。見た目中年のいかにも真面目そうな男だ。彼は軽い自己紹介を済ませると、次に学校についてと履修科目についての説明を始める。それを聞きながら心を落ち着かせていく。まだだ。まだだ。

 

「これから皆さんの端末に本校のカリキュラムと施設に関するガイダンスを流します。その後、選択科目の履修登録を行って、オリエンテーションは終了です。分からないことがあれば、コールボタンを押して下さい。カリキュラム案内、施設案内を確認済みの人は、ガイダンスをスキップして履修登録に進んでもらっても構いません」

 

 端末に視線を落とす。大丈夫、クールだ。

 

「履修登録が済んだ生徒は退室しても構いません。但し、静かにお願いします」

 

 それではと、端末にガイダンスが流れる。スタート位置がわからなければ一番にはなれない。そう思い昨晩、森崎はガイダンスの動画を予習していた。トロトロしたタイトルが流れる前にスキップし、確認していた科目をキーボードを駆使して登録していく。余りの速さに後ろの生徒は自分の端末ではなく森崎とその端末を見ていた。そうしてるうちに森崎は登録を終わらせ、一分かかっていないことを確認し、満足した足取りでそそくさと退室する。

 

 

 

 

 ドヤ顔で退室した森崎は途方に暮れた。暇だからだ。取りあえずジュースを買い、屋上へと向かう。学校の地理を抑えるためだ。実際にはただの暇つぶしだったが。そうして屋上への扉を開けると、先客がいた。まさか…。そう思い近づくと見知った顔であることに気付く。

 

「ミキヒコ、久しぶりじゃないか」

「?、あー駿か、本当に久しぶりだね」

 

 久しぶりに会ったミキヒコは顔に少し影が落ちていた。自分の肩に少し目をやり、その陰は濃くなる。まだ一年経たないが魔法の事故に遭ったらしい。それ以降うまく魔法を使えなくなったとも聞いていた。

 

「サボりか?」

 

 その話題に触れないようにしつつ本題に入る。

 

「わかってるだろう、オリエンテーション前に履修登録を終わらせて退室してきたのさ。どうしても、あの浮ついた空気が気に触ってね。僕らは補欠なのに」

 

 良かったこいつは”早く”に履修登録を終わらせたんだ。そう内心で安堵しつつ、話題がネガティブな方向にそれ多少げんなりする。

 

「これからさ。努力を怠るやつは置いて行かれる。一科生も二科生も」

 

 慰めだ。魔法は血筋に依存する。子供でも知っていることだ。しかしミキヒコは天才児ともてはやされていた。才能は間違いなくある。

 

「そう思って努力してきたさ。でも結果が見えてこないんだ」

 

 入学したのに満足していないか、いやかつては神童と呼ばれた男だ。当然なのかもしれない。魔法が失敗するのが怖いのか、いや違うか。自分の限界を知るのが怖いんだ。前のように魔法を使いこなせてもそれ以上は無理なんじゃないかと思ってる。はじめて知る挫折か。自分への不信は魔法の効果を鈍らせる。なにか自信を持たせる切っ掛けがあればいいんだが。

 

「今は努力の時だよ、ここが終着点じゃない。通過点に不満を持ったってしょうがない」

 

 当たり障りのない言葉しか出てこない自分が恨めしい。

 

「今度、うちに来るといい」

「いやでも」

「かつての同門のよしみだ、な。理由は俺が吉田の術式を隠匿しているかだ。どうだ?」

「…わかったよ」

 

 こうして訪問を約束させ、あとは他愛ない会話に花を咲かせる。

 

 オリエンテーションが終わり、教室内は束の間の休息に会話も弾む。もっとも話題はネガティブなものだ。

 

「あいつ見たかよー、してやったりって顔してたぜ。誰も競争なんてしてねーのに」

「あいつ入学式のときウィードと一緒に座ってたやつだよな、見かけはブルーム、中身はウィードってか」

「本当、あんなやつと一年過ごさないといけないのかよー」

 

 一人、早くに履修登録を済ませた森崎に関する話題だ。その内容はある少女が不機嫌になるには十分な内容だった。表には全く出さないが。

 

「変わった人だったね」

「まあ人それぞれだから」

 

 おさげとちびもなんか言ってる。

 

 次の時間は引率ありの学内見学だ。ちらほらとすれ違う2科生が羨ましい。教諭がつくのは一科の特権だが煩わしくもある。贅沢かもしれないがいまは一科のデメリットを味わってる気分だ。そんな態度が目についたのだろう。放射系魔法施設のところで教諭に質問をされ、端的に答えたら不十分だと言われた。その補足を指名された司波さんが見事に回答する。不良を貶して優等生を持ち上げる。実に見事な教諭っぷりと司波さんの態度に見蕩れ、自分も態度を改めなければと襟を正す。

 

「午後からは各自自由に授業を見学してください」

 

 そう締めくくり午前の授業は終わった。各自既にグループを作っているようで思い思いに散っていく。一つでかい団体があったが。教室に戻りゼリー状の食事をとる。現在午後1時前。概算では5時半には帰宅予定だが、念のために30秒チャージしておく。午後の予定は一つだけ決まっていた。生徒会長七草真由美の実技だ。かの有名な妖精姫の実技を拝んでおきたかった。あとは適当にぶらつく予定だ。道連れも欲しかったが森崎は歩くのが速い。ペースを気にせずにいいかと考え、端末で地図を開く。近辺の交通情報やイベントを確認し、最後に経路の再検討を行う。そうスピードスター森崎の帰宅はすでに始まっているのだ。




優等生の内容がうろ覚え、ガイダンス後の退室は禁止
他もろもろ

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