魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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エリキャロ登場です


第38話 赤髪の少年と桃髪の少女を保護したんだが……

 

 

 

 

 

「えっと……ここら辺かな?」

 

「……だな。明らかに、妙な魔力と言うか……何かを感じるぞ」

 

俺は今フェイトと2人でとある管理世界に来ている。

 

執務官としての仕事である。

 

俺とフェイトは執務官の試験を受けて合格したのだ。

 

原作のフェイトは2度落ちているが、こっちのフェイトは1発合格である。

 

まあ、俺と一緒に勉強していたのと、あっちの世界みたいになのはは撃墜されて大怪我していないからでもあるのだが。

 

何故か、俺も一緒に試験を受けようと言う事で受けたら。

 

合格してしまったのだ。

 

……この試験って、難しいので有名なのだが。

 

と言っても、前世で法律関係とかしこたま勉強して大方は頭に入っているので何とかなるものでもあった。

 

とりあえずは、この世界にあるらしい違法研究所を潜入・捜査するべく俺とフェイトは来ている。

 

まあ、よほどの事が無い限り大丈夫だとは思うが。

 

いよいよとなれば、フェイトだけでも強制転移させて逃がすつもりでもある。

 

「……この下にある森の中……怪しいよね?」

 

「……だな」

 

俺とフェイトは今は空中を飛んでいる。

 

眼下に広がるのは、木が生い茂っている森。

 

さしあたっては何も無いように見えるのだが。

 

右目で見ると、妙な力の流れを感知する。

 

何かがおかしい。

 

「とりあえず、降りてみるか?」

 

「うん」

 

俺とフェイトは森の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――研究所内

 

 

 

「所長、管理局の職員が来ました」

 

「何? どんなヤツだ?」

 

「金髪の美女と小柄な少年です」

 

所長室で報告を受ける所長。

 

「……ほほぅ……コレはたいそうな美人じゃねぇか……」

 

「……まあ、確かにそうですが」

 

下卑た薄笑いを浮かべる所長。

 

「そうだな。捕まえて、研究素材だ!」

 

「……大丈夫ですか?」

 

「どう見ても、若い経験不足なヤツらだ。罠でも張っておけ」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見つけた」

 

「……だね」

 

俺とフェイトの前にあるのは、妙な岩山。

 

しかし、岩肌を見ると妙なボタンが見える。

 

「……押してみるぞ?」

 

「うん」

 

俺がボタンを押すと低い音を立てて岩肌部分が開く。

 

隠し扉だ。

 

巧妙に隠された入り口。明らかに怪しい。

 

「油断大敵……だぜ?」

 

「うん……」

 

俺とフェイトは様子を窺いつつも入り口かな中に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

人工的建造物の通路。

 

金属剥きだしではあるが、明らかに人の手で作られた通路だ。

 

俺とフェイトはゆっくりと進む。

 

今の所は、何の気配も感じられない。

 

奥の方に人がいるみたいではあるが。

 

「……長い通路だな」

 

「……だね」

 

カツカツと俺とフェイトの足音が木霊する。

 

すると、少し広い部屋に出る。

 

20m辺りの正方形の部屋。

 

壁は金属で覆われていて、リベットで打ち込まれた無骨な作り。

 

目の前には重たそうな金属の扉。

 

実に、嫌な予感を感じる。

 

……ここの研究所は、確か……違法な人体実験をやっているって話だったよな。

 

俺はリンディさんに聞いた話を頭に思い浮かべる。

 

管理局員も数人、行方不明になっているらしい。

 

……俺とフェイトも、興味が湧く実験体に見られる可能性はある。

 

実験体を無傷で入手するには?

 

毒とかは駄目だ。

 

麻痺か……麻酔で眠らせる。

 

俺は周囲を見る。

 

天井にある妙な形の……ノズル。

 

ガスとか気体を噴出する形に見受けられる。

 

麻痺させるガスとかはあまり使われないから……麻酔ガスの可能性が高い。

 

〈フェイト?〉

 

〈どうしたの?〉

 

俺はフェイトに念話で問いかける。

 

〈フェイトは何分息を止める事が出来る?〉

 

〈ん~っと……鍛錬してたから……10分くらいなら〉

 

それって結構凄い事だと思うんだが。

 

〈……それならいけるか。俺もソレくらいならいけるし〉

 

〈どういう事?〉

 

〈多分、麻酔ガス辺りを噴射して俺達2人を眠らせる。その後は、お楽しみってヤツだ〉

 

〈……分かった〉

 

フェイトはゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 

俺も同じように深呼吸をする。

 

すると、天井の方からプシューっと何かが噴出される音が聞こえだした。

 

〈フェイト、息を止めてから眠ったふりをして倒れるんだ〉

 

〈分かった〉

 

俺とフェイトは息を止めてガスを浴びる。

 

眠くなった演技をしてからその場に倒れる。

 

〈大丈夫か?〉

 

〈うん、大丈夫〉

 

フェイトからの返信。

 

どうやら大丈夫のようだ。

 

少し経つと、奥の扉が開く音が聞こえる。

 

足音からして……6人だな。

 

呼吸音からしてマスクを装着しているみたいだ。

 

俺は目をつむっているが、大体の様子は分かる。

 

「しめしめ……だな」

 

「これは……超大物だな!」

 

「こんな美女は一生お目にかかれないぞ!」

 

男達の声が聞こえる。

 

「ち、こんな子供かよ……」

 

「同じ様な美女がもう1人来てくれたら良かったのによう」

 

足と手を持って抱きかかえる男達。

 

〈フェイト、様子は分かるか?〉

 

〈ん……目をつむっているからちょっと分からないかな……。あ……胸触られた……〉

 

〈……死なすか〉

 

〈お願い〉

 

俺は目をつむりつつ、腕を素早く動かして男が装着しているであろうマスクははぎ取る。

 

「!?」

 

男は驚いた様子だったが、力を失ってから俺を床に落とす。

 

寝息が聞こえてきた。やはり、睡眠ガスだったか。

 

「お、おい!?」

 

足を持つ男が驚いた様子で声を上げる。

 

俺は素早く手を伸ばして同じようにマスクをはがす。

 

「!? てめぇ……」

 

そして、そのまま力を失って倒れる。

 

即効性のガスみたいだな。

 

俺は目を開いて起き上がり、フェイトを担いでいる男達を見る。

 

「な!?」

 

「ガスが効かないのか!?」

 

瞬時に間合いを詰めてフェイトを担いでいる男達のマスクもはぎ取る。

 

「ふが……」

 

「……ふごぉ……」

 

同じように意識を失って倒れる。

 

〈目を開けて良いぞ?〉

 

〈ん。やっぱり手際が良いね……〉

 

〈長年の鍛錬の賜物ってね〉

 

〈私も目を瞑っても戦えるようにした方が良いのかな……?〉

 

〈……日常生活で目を瞑って過ごせるようになれたら大丈夫だぜ?〉

 

〈……無理かも〉

 

俺とフェイトはそんな念話をしつつ扉をくぐって奥に進む。

 

 

 

 

 

 

 

――――――所長室

 

 

 

「……なんて事だ……!」

 

「どうされました?」

 

「……研究データを持って逃げるぞ」

 

所長は顔を真っ青にしていた。

 

「え……?」

 

「『金色の死神』と『闇の魔人』だ」

 

「ッ!?」

 

部下は所長の言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべる。

 

「うっかりしていた……まさか、闇の魔人があんな小柄な子供だったとは!」

 

悔しそうな表情を浮かべる所長。

 

数年前から聞いていた噂を浮かべる。

 

曰く、遠距離からの攻撃もかわす。

 

曰く、近接戦闘に挑もうものなら当たらない。

 

曰く、漆黒のベルカ式魔法陣が足下に浮かぶ。

 

曰く、黒髪で前髪に一部金髪が混じり、右目は蒼い瞳で左目は漆黒の瞳である

 

曰く、捕まったら最期。100%管理局に引き渡される……。

 

曰く、10人で挑んでも余裕で負ける。

 

つまり、チェックメイトである。

 

所長はデータディスクを手に取る。

 

「残念だったな」

 

子供の声が所長室に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

所長室と思われる部屋に来ると、逃げだそうとする人物が2人。

 

どちらかが所長と思われるが。

 

「くっ……こんなに早く……」

 

「……」

 

2人は立ちつくしている。

 

「さあ、大人しくして貰おうか」

 

俺はゆっくりと2人に近づく。

 

「ああ……」

 

所長と思われる年上の中年男性の男は手に何かを?

 

「このまま大人しく捕まると思うかぁ!」

 

男は床に何かを投げる。

 

その瞬間、まばゆい光が俺の目に飛び込んでくる。

 

「っ! てめぇ!」

 

「どんなに強かろうが、目を封じられたらどうにも出来まい!」

 

視界を失ってどんな状況か分からなくなってる。

 

最も、普通の人ならここで逃げられるのだろうが。

 

俺の横を通り過ぎようとする2人。

 

「逃がすと思うか!?」

 

俺は2人の前に立ちはだかる。

 

「なっ!?」

 

「どけぇ!」

 

部下と思われる男が殴りかかってくる。

 

上からのパンチを俺は首を傾けてかわし、カウンターで男の腹に目がけて拳を食い込ませる。

 

「ぐぇぇ!?」

 

男はその場にうずくまる。

 

「畜生! こんなのありかぁ!?」

 

所長は棒みたいなモノを振りかざして来る。

 

上から殴りかかってくるみたいだ。

 

「残念だったな」

 

俺はソレを右手で難なく受け止める。

 

「っ!?」

 

「大人しく寝てろ」

 

左手からの攻撃で顎にかする様にパンチを出す。

 

「ぐが……!?」

 

脳を揺さぶられ、所長はその場に倒れる。

 

「さて、捕獲完了だな」

 

俺は男2人を縄で拘束する。

 

 

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

「うん、職員から聞いた話だとここらしいよ?」

 

俺とフェイトは施設のとある一角に来ている。

 

制圧後に管理局の職員達が来てここの職員達を連行していったのだ。

 

目の前にあるのは重々しい扉。

 

鉄で出来ていて、上部に鉄格子が付いていて中の様子を見る位しか出来ない仕様。

 

俺の身長だと届かないのだが。

 

話によると、プロジェクトFで造られた人造人間がここにいる……らしい。

 

プロジェクトF……確か、プレシア女史が関わっていたはずだが。

 

フェイトも同じ様な存在だし……な。

 

「開けるよ……?」

 

「ああ」

 

フェイトは鍵を持って鍵を開けてからドアノブを持って捻る。

 

ゆっくりとドアを開いて中に入る。

 

中は色々な物が散乱している。

 

明らかに大暴れした様な感じだ。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

俺とフェイトはお互い顔を見合う。

 

それから部屋の中を見る。

 

「フー!」

 

声が聞こえる。

 

何だろう、口を塞がれた様な感じの声だ。

 

「アレス……あそこ……」

 

フェイトが指し示す先には。

 

赤毛の男の子が猿ぐつわされて、手足を拘束されてベッドの上に横たわっている。

 

俺達を睨むような目で見る少年。

 

世の中の全てを恨む……そんな感じに見える。

 

「……どうやら、散々な実験で人間自体が憎くなってるみたいだな」

 

「……」

 

「さて、と。どうする?」

 

「……」

 

フェイトは無言で赤毛の少年を見つめている。

 

多分、この子が『エリオ・モンディアル』のハズ。

 

「……連れて帰ろう。この子は……私が保護しないといけない。そんな気がする」

 

「そうか。この件はリンディさんに報告しておこうか」

 

「そうだね」

 

さて。

 

問題は、どうやって連れて帰るかだが。

 

「どうやって連れて帰る?」

 

「ん~……とりあえず、アレス……眠らせて?」

 

「……それが無難か。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック  大気よ水よ(アーエール・エト・アクア)白霧となれ。(ファクタ・ネブラ)この者に一時の安息を。(フイク・ソンヌム・ブレウエム)眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)』」

 

赤毛の少年の顔周りに霧が発生する。

 

すると、少年はそのまま眠りについた。

 

「便利だね……」

 

「まあ……な」

 

「……(そう言えば、はやてもこの形式の魔法使えるんだったけ。今度お願いしてアレスを寝かせれば良いのか)」

 

「……」

 

俺はフェイトの顔を見つめてる。

 

……何か、邪な匂いを感じるんだが。

 

「……(はやてと一緒に……でも、アレスの初めてを奪えるならソレくらい目を瞑ろうかな……)」

 

何だろう、もの凄くロクでもない事を考えてる様に見えるのは。

 

「フェイト?」

 

「あ、ごめん! それじゃあこの子連れて行くね?」

 

「いや、俺が連れて行く。途中で目を覚ましたら面倒だし」

 

「そうだね。うん、お願いする」

 

俺は赤毛の少年を担いでからフェイトと一緒に研究所を後にする。

 

そして、そのままフェイトの自宅に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトの家に辿り着いた。

 

赤毛の少年の拘束を解いて多少暴れても大丈夫な部屋に入れる。

 

柔らかいベッドに寝かせておく。

 

この部屋には余計な物は置いてないので暴れての大丈夫なのだ。

 

「全く、同じ研究者として恥ずかしいわ」

 

そう言って赤毛の少年の頭を撫でるプレシア女史。

 

「そうですね。こんな年端もいかない子供をモルモットだなんて……」

 

リニスさんは絞ったおしぼりを少年の額に乗せる。

 

「うぅ……痛い……痛いよ……」

 

うなされる少年。

 

「そう言えば、キズとか治療していなかったな。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 汝が為に(トゥイ・グラーティアー)ユピテル王の(ヨウィス・グラーティア)恩寵あれ。(シット)治癒(クーラ)』」

 

俺は治療魔法を少年にかける。

 

少年の身体が少し輝いてから、大人しく眠りにつく。

 

 

「お見事」

「お見事です」

 

 

プレシア女史とリニスが褒めてくる。

 

「褒めても何も出ないぞ」

 

「私から出してあげるわよ?」

 

妙に頬を赤くするプレシア女史。

 

コレを受け取ったら……何かヤバい気がする。

 

「……気持ちだけ受け取っておく」

 

「そう? 欲しくなったらいつでもあげるわよ?」

 

何をあげる気だ、何を!

 

「……何ヲ?」

 

「そりゃあ、貞操……とか?」

 

「……親子丼をしろと申すか」

 

「親子丼と双子丼を同時に味わってみる?」

 

そんな大人の漫画的な展開をやれと申すか!

 

「……社会的にヤバいだろ」

 

「そうかしら? 愛する人の為ならソレくらい……ねぇ?」

 

艶っぽい目で俺を見るプレシア女史。

 

「ほらほらプレシア。アレス君が困ってるわよ」

 

ナイスだ、リニスさん!

 

「アリシアとフェイトを頂いている時に乱入すれば良いだけの話です」

 

全然ナイスじゃないです、リニスさん!

 

むしろ悪化してます!

 

「……とりあえず、この子をどうするか決めようぜ」

 

「そうね。フェイトが帰ってきてからにしましょう。アレスちゃんに貞操をあげる云々はまた今度ね」

 

「……」

 

そう、フェイトは今リンディさんに報告に行ってるのだ。

 

とりあえず、今はフェイトが帰ってくるのを待つだけだ。

 

しかし、貞操貰っても……俺にどうしろと?

 

 

 

 

 

 

 

「リンディさんに報告したよ」

 

そう言ってフェイトはリビングに戻ってくる。

 

「そうか、どうだった?」

 

「とりあえず、こっちで療養しても良いって。ミッドの方も今は施設が満杯だって」

 

なるほど。

 

まあ、この家なら治療施設も整っているから問題は無いだろう。

 

プレシア女史もリニスさんも治療の腕は確かだし。

 

「それで、あの少年の身元は分かった?」

 

「うん、『エリオ・モンディアル』って言う名前。モンディアル家の子供の……クローンだって」

 

「……そうか」

 

フェイトの台詞で一同の雰囲気が重くなってくる。

 

「……プロジェクトFの子供なのね……」

 

「プレシア……」

 

「私のせいでもあるわね」

 

「……母さん……」

 

「フェイト。あの子は貴女の弟よ」

 

「……そう……だね。私と同じ……か」

 

「私が、完成させなければ……あの子だってあんな辛い思いはしなくても……」

 

「ストップだ。過去を悔やむより、今と未来を考えよう」

 

俺は話が湿っぽくなりそうな所を止める。

 

「……そうね。アレスちゃんの言うとおりね。起きてしまったからには……これからの事を考えましょ」

 

「そうですね。それじゃあ、エリオ君が起きても良いように何か食べる物を作っておきますね」

 

そう言ってリニスさんは立ち上がってキッチンの方に向かう。

 

「……そう言えば、アリシアとアルフは?」

 

「アリシアはまだ仕事みたいね。アルフは……ザフィーラさんの所に行くって言ってたわ」

 

なるほど。

 

そう言えば、アルフとザフィーラの仲は結構良好だったな。

 

……そのうち、恋人同士になるかもな。

 

結構お似合いだし。

 

「私は様子を見てみるね」

 

「俺も行こうか。そろそろ目を覚ますかも知れない」

 

俺とフェイトはソファーから立ち上がる。

 

「何かあったらすぐ呼びなさいよ?」

 

「ああ」

 

俺とフェイトはエリオが眠っている部屋に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、大人しくしてる寝てるかな~」

 

俺はエリオが寝ているドアを開ける。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

怒鳴り声と共に殴りかかってくるエリオ。

 

「起きてたか」

 

目の前にベルカ式魔法陣の盾を展開して防御する。

 

エリオはそれに阻まれてこちらに攻撃を当てる事は出来ない。

 

見ると、エリオの手は電撃がほとばしっている。

 

やはり、フェイトと同じ電気の変換資質を持っているようだ。

 

「落ち着け」

 

「うるさいうるさいうるさぁーい!」

 

目に涙を浮かべながら何度も殴りかかってくるエリオ。

 

さて、どうやって落ち着かせるべきか。

 

眠らせるのも意味が無い。起きるたびにこれでは進まない。

 

「落ち着いて、エリオ!」

 

「うるさい! あんた達も、僕を……実験に使うんだろ!」

 

フェイトも説得を試みるが、エリオを聞く耳を持たない。

 

ん~、ここは……何度攻撃をさせても効かないと言うのをアピールした方が良いか?

 

そのウチに体力が切れて疲れてくるだろうし。

 

「フェイト、少し俺から離れてろ」

 

「え、う、うん」

 

フェイトは俺から少し離れる。

 

その間にもエリオは俺に連続で殴りかかってくる。

 

なかなか良い攻撃力を持っていると思う。

 

「ふぅ、久しぶりに使ってみるか」

 

【お兄様、電撃が入ってますけど……大丈夫ですか?】

 

「まあ、何とかなるだろ」

 

【気を付けてくださいね?】

 

俺は全身に力を入れて、足を内股に閉じる。

 

空手とかに伝わる防御方法だ。

 

股を閉じるのは金的を防御する為。

 

そして、装甲手楯(パンツァーシルト)を解除する。

 

「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

エリオの攻撃が俺を襲う。

 

流れるような打撃が上半身に打ち付けられる。

 

電撃が流れるが、この程度なら問題ない。

 

「うあぁぁ!!」

 

何度も何度も俺の身体を殴りつける。

 

しかし、俺にはほとんど痛みを感じる事はない。

 

重力で高負荷をかけられた俺の身体は骨密度、筋繊維の硬度は常人を遙かに上回っているのだ。

 

前も見せたが、鉄パイプで殴られても鉄パイプの方が負けるのだ。

 

1分近く殴られていたら、段々と攻撃数が少なくなってきた。

 

「うあぁぁ……」

 

エリオは体力尽きたのか、その場にへたり込む。

 

「手が……痛い……痛いよ……」

 

見ると拳部分の皮がはがれ、血が流れている。

 

「ったく、無茶するからだ」

 

俺はエリオに近づく。

 

「……っ」

 

「暴れるな。『治癒(クーラ)』」

 

俺は無詠唱魔法でエリオの手を治療する。

 

「え……」

 

「殴り方がなってないからこうなるんだ。今度、拳の使い方を教えてやるよ」

 

「え……?」

 

キョトンとした表情で俺を見るエリオ。

 

「えっと……もう大丈夫?」

 

フェイトがおそるおそる近づいてくる。

 

「ああ、ようやく落ち着いたみたいだ」

 

「うん」

 

ゆっくりと近づいてくるフェイト。

 

「……」

 

「駄目だよ? こんな事しちゃ」

 

そう言ってエリオの頭を撫でるフェイト。

 

「……ハイ……」

 

何が何だか分からない……と言った表情を浮かべてるエリオ。

 

「よし、こんなもんだろ。痛むか?」

 

「えっと……痛くないです……」

 

「よし。立てるか?」

 

「あ、ハイ……」

 

エリオは立ち上がろうとするが、少しふらつく。

 

「いきなり運動したからか?」

 

俺は腕をエリオの肩に回す。

 

フェイトもエリオの右手を持つ。

 

「ゆっくり……よし。こっちだ」

 

「……」

 

ベッドの方に向かって連れて行く。

 

「ほら、座って横になれ。まだ本調子じゃないだろ」

 

「……ハイ」

 

エリオはベッドに入り、横になる。

 

「晩ご飯まで少しかかるから、それまで休んでろ」

 

「ハイ……」

 

「えっと……何か聞きたい事ある?」

 

フェイトはエリオの頭を撫でながら問いかける。

 

「ここは……何処ですか?」

 

「私のお家。第97管理外世界だよ」

 

「……僕を……どうするんですか?」

 

「どうもしないよ? エリオの好きにして良いんだよ?」

 

「え?」

 

驚いた顔でフェイトを見るエリオ。

 

「当面は、身体を元に戻す事かな。だいぶ痩せてるからな……」

 

「そうだね。ここで身体を元に戻してそれから考えようか?」

 

「苦い薬も、痛い注射も無いんですか?」

 

「無い無い。見たところ、病気とかはなさそうだから……美味しい物を一杯食べて貰おうかな?」

 

「ありがとうございます……」

 

目に涙を浮かべるエリオ。

 

「自己紹介がまだだったな。俺の名はアレス。藤之宮アレスって言うんだ」

 

「私はフェイト。フェイト・テスタロッサだよ」

 

「僕は……エリオ。エリオ・モンディアルです」

 

「よし、それじゃあ晩ご飯が出来たら呼ぶからそれまではゆっくりしていろ」

 

「……ハイ……」

 

「それじゃあ、また後で来るね?」

 

俺とフェイトはエリオの部屋から出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

リニスさんが鼻歌を歌いながらキッチンで料理している。

 

その隣ではフェイトも手伝いをしている。

 

プレシア女史はソファーに座って本を読んでいる。

 

ちらりと題名を読んでみると……。

 

 

 

 

『これで決まり! 可愛い男の子を更に可愛く見せる百の方法!』

 

 

 

 

……。

 

見なかった事にしておく。

 

たまに俺の方をチラチラと見るのは……。

 

本の内容と俺を合わせてるに違いない。

 

変な事を言い出さなきゃ良いんだが。

 

俺はプレシア女史の様子を窺いつつも目の前にあるココアを飲む。

 

「ただいま~」

 

玄関の方から声が聞こえる。

 

どうやら、アリシアが帰ってきたみたいだ。

 

歩く音が聞こえてきて、リビングの扉が開く。

 

そして、アリシアは開口一番にこう言った。

 

「お母さん、女の子拾って来ちゃった」

 

……そこら辺でネコの子を拾ってきたみたいに軽く言わなくても。

 

「……」

 

プレシア女史はアリシアの方を見ている。

 

頬には一筋の冷や汗が流れいてる。

 

「……」

 

俺もどんな言葉をかけて良いのやら。

 

アリシアを見ると、背中には桃色髪の女の子がおんぶされてる。

 

……ってか、この子ってキャロじゃね?

 

そう言えば、エリオと大差ない年齢だったから生まれているのは問題は無い。

 

問題なのは、キャロを保護したのはもっと後だったと思うのだが。

 

ル・ルシエの里はこんなに早くキャロを追い出したんかい!

 

まあ、既に原作は崩壊してるからこんな事もあるのだろう。

 

これから先はどうなるか分からないし。

 

「……とりあえず、ソファーに寝かせましょうか」

 

「だな」

 

アリシアに背中の女の子をソファーに寝かせるように指示する。

 

放浪の旅をしていたのだろう、ボロボロの服を着て少しうすら汚れている。

 

見たところ、怪我とか病気といった雰囲気は感じられない。

 

多分、体力が限界に来ていたのだろう。

 

アリシアは洗面器に水を入れて持ってくる。

 

「はい、これ」

 

「ああ」

 

アリシアは濡らしたタオルを渡してくる。

 

俺はそれを手に取ると女の子の顔を拭く。

 

汚れが取れて、白い肌が見える。

 

「で? どういった経緯でこの子を?」

 

「うん、第6管理世界でちょっと探索してたら見つけたんだ」

 

「第6管理世界?」

 

「確か……アルザスって言う場所がなかったかしら? 召喚師の一族がいたと思ったけど?」

 

プレシア女史が顎に手を当てて考えてる。

 

「そう、そんな場所あったよ。で、この子を連れて行ったら……」

 

途端、アリシアの表情が険しくなる。

 

「行ったら?」

 

「この子は、災いを呼ぶ子だって。引き取ってくれって」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

俺とプレシア女史は言葉を失う。

 

「……この子も」

 

後ろでフェイトが顔を青くしている。

 

「フェイトはいらない子じゃないよ! あたしの大事な妹だもん!」

 

「ううん、今日……私と同じプロジェクトFの子を引き取ってきたんだ。その子も……身寄りが無くて……」

 

「……そうだったんだ……」

 

アリシアはそう言って桃色髪の女の子の頭を撫でる。

 

「あらあら、晩ご飯追加しないと少し足りないかしら?」

 

リニスがこちらの様子をうかがいながらそう言う。

 

「そうねぇ……メニューをもう1品か2品追加かしら?」

 

「分かりました。追加しますね」

 

リニスはそう言うとまたキッチンに引っ込む。

 

さて、どうしたもんかねぇ。

 

そんな事を思いつつ俺は桃色髪の少女を眺めていた。

 

 

 

 

「ううぅん……」

 

桃色髪の少女は少しうなってから目をゆっくりと開ける。

 

「お、目を覚ましたぞ」

 

「!!」

 

少女は目を見開いて飛び起きる。

 

「ほらほら、急に起き上がると身体に悪いぞ?」

 

「……ここは……何処ですか?」

 

少女は少し脅えながら問いかけてくる。

 

「ここは第97管理外世界であたしの家だよ?」

 

アリシアは満面の笑みで少女に返答する。

 

「……管理外……世界……」

 

少女は反芻するように呟く。

 

「えっと、お名前教えてくれるかな? あたしはアリシア。アリシア・テスタロッサだよ」

 

「アレス。藤之宮アレスだ」

 

「……キャロです。キャロ・ル・ルシエです」

 

「じゃあ、キャロちゃん。簡単に事情を教えて貰えるかな?」

 

「ハイ……」

 

キャロから事情を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャロから聞いた話は前世と前世の前世で見たアニメと一緒だった。

 

強すぎる力と、制御しきれていない力の為だ。

 

そもそも、制御の仕方を教えられないお前等にも問題あるだろうに。

 

小学生に因数分解の問題を出して『解け』と言われて解ける訳がないだろう。

 

「そんな訳で、各地を転々としてました。ですから、体力が回復したら出ていきますんで……」

 

「駄目だ」

 

俺は即答する。

 

「え?」

 

「そんなの、出来なくて当たり前だ。誰も教えていないんだからな」

 

「そうだね、いきなりそんなの出来る方がおかしいと思うよ?」

 

「むしろ、出来たら出来たで別の問題が出そうね」

 

俺、アリシア、プレシア女史の順で答える。

 

「え……と?」

 

困惑した表情で俺達を見るキャロ。

 

「どうする? プレシアさん?」

 

「どうするもこうするも。この子もウチで引き取っちゃいましょう」

 

即答だった。

 

「ミッドの施設は?」

 

「リンディさんに聞いたら今は空いてないって」

 

「そっか、それならウチが良いかも。アレスお兄ちゃんもいるし……」

 

ウンウンとうなづくアリシア。

 

何故に俺がいると都合が良いんだ?

 

「何故に俺?」

 

「お兄ちゃんなら何とかしてくれるんでしょ?」

 

「……まあ、何とかするつもりだけど」

 

「ほら、これなら宇宙戦艦ヤマトに乗ったつもりで大丈夫だね♪」

 

どんな例えだよ。確かにあの戦艦は公式チートに近い耐久力と再生速度を持ってるがな!

 

「どんな例えだよ……」

 

「言い得て妙でしょ? リンディさんに報告してくるね」

 

アリシアはそう言ってリビングから出ていく。

 

「あの……私の召喚する竜は危険なんですよ? 皆さんに迷惑をかけたくないです……」

 

目に涙を浮かべるキャロ。

 

「大丈夫だよ」

 

キッチンからフェイトが来る。

 

「あれ?」

 

「あ、私はフェイト。さっきのアリシア姉さんの妹なんだ」

 

「そっくりです……」

 

「双子だからね。大丈夫だよ、アレスがいる限りそんな事にはならないから」

 

そう言ってフェイトはキャロの頭を撫でる。

 

「そうよ。アレスちゃんなら何とかしてくれるわよ。あ、私はアリシアとフェイトの母のプレシアよ」

 

「……そう……なんですか?」

 

「ええ。こう見えても、アレスちゃんは私達の中で一番強いから」

 

「凄いです……」

 

俺の顔をジッと見つめるキャロ。

 

「とりあえず、体力回復までこの家で過ごして貰うからな」

 

「……分かりました、お世話になります」

 

キャロはそう言ってお辞儀した。

 

 

 

 

 

 

 

「いつの間にこんな可愛い住人が増えたんだい? あ、あたしはアルフ。フェイトの使い魔だよ」

 

「私はリニス。プレシアの使い魔をやってます」

 

食事前にアルフとリニスが自己紹介をする。

 

「あの……エリオ・モンディアルです……」

 

「キャロ・ル・ルシエです……」

 

2人はおそるおそる自己紹介する。

 

「ほらほら、ここはもう2人の家だから。もっとゆったりして頂戴?」

 

「あ、ハイ……」

 

「ハイ……」

 

「それじゃあ、自己紹介も終わった所で頂きましょうか」

 

 

 

『頂きます』

 

 

合唱してから食事に入る。

 

 

「美味しい……」

「美味しいです……」

 

 

エリオとキャロは驚いてスープをすする。

 

「ありがとうございます。お代わりは沢山あるから遠慮無く言ってね?」

 

 

 

「はい」

「はい」

 

 

 

黙々と食事を取るエリオとキャロ。

 

見てると微笑ましく見える。

 

しかし、いきなり2人増えて食費とか大丈夫だろうか。

 

プレシア女史もリニスも管理局で嘱託としてたま~に働いているが。

 

そこまでの給料が出てるのだろうか。

 

……でも、考えてみたら全員働いているから……何とかなるか?

 

〈プレシアさん?〉

 

〈どうしたのかしら?〉

 

〈いきなり2人増えたけど、食費とかは大丈夫なのか?〉

 

〈コレくらいなら大丈夫よ。いざとなったらアレスちゃんのお家にフェイトとアリシアの2人を差し上げるから〉

 

何それ。2人を担保にするつもりかいな。

 

〈……まあ、大丈夫って言うなら良いけど〉

 

俺はツッコミを入れるのを止めておいた。

 

2人も喜んで来そうだし。

 

そんなこんなで食事は滞りなく進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、1人で洗えますよぅ……」

 

「駄目だよ、きちんと洗わないと」

 

弱々しい声エリオの声と優しく言うフェイトの声が聞こえる。

 

俺は今、テスタロッサ家の風呂に来ている。

 

全員で仲良くお風呂タイムである。

 

しかし、無駄に大きく作ってあるんだが。

 

湯船に入ってるのはプレシア女史、リニス、アルフ。

 

桃色肌で程良く暖まってるのが分かる。

 

俺は今、キャロの背中を洗ってあげているのだ。

 

「あ……あの……」

 

「どした?」

 

「い、いえ……何でも……無いです……」

 

力を込めすぎないように、丁寧に洗っている。

 

キャロの前ではアリシアが座っていて、キャロの頭を洗っている。

 

「女の子は髪が命だから、綺麗にしておかないとね」

 

そう言ってわしゃわしゃとキャロの頭を洗っている。

 

隣を見ると、フェイトとエリオは対面に座っている。

 

丁度、頭を洗って貰う所なのだろう。フェイトは手にシャンプーを取っている。

 

……。

 

フェイトが動くたびに大きな胸がたゆんたゆんと揺れている。

 

エリオはソレを見るたびに顔が赤くなっている。

 

頑張れ。フェイトとアリシアの胸はもはや凶器扱いにしても良いだろう。

 

アレで中学1年とか、もはや将来が末恐ろしい。

 

確か、Dカップ迎えたとか言ってたし。

 

止まっても良いはずなのだが、2人の話ではまだ胸が張ってるとか。

 

まだ大きくなるんすか!?

 

これだと原作を上回るんですけど!

 

クーパー靱帯切れちゃいますよ?

 

「お兄ちゃん? 背中終わった?」

 

「ああ、良いぞ」

 

「じゃあ、目をきちんとつむっててね。開けるとしみるよ~」

 

「ハイ……」

 

アリシアはシャワーをキャロの頭から当てる。

 

……。

 

まあ、普段から見慣れてると言っても……確かにこの胸は反則だな。

 

重力に負けることなくきちんと形を保った胸。

 

揺れるたびに痛そうに見えるが、意外と痛くないらしい。

 

「……ん?」

 

アリシアが俺の顔を見る。

 

 

 

「……」

 

 

「……揉みたい?」

「揉まない」

 

 

 

「舐めたい?」

「舐めない」

 

 

 

「好きにして良いんだよ?」

 

 

アリシアは両手で胸を持ってゆさゆさと揺らしている。

 

「……また今度な」

 

「いつでも待ってるよ♪」

 

さすがにエリオとキャロがいる前でそんな事出来るわけ無いだろ!

 

まあ、いなくてもしないが。

 

その後は皆で仲良く湯船に漬かる。

 

エリオは終始顔が真っ赤だった。

 

逆上せなければ良いが。

 

そんなこんなでお風呂タイムは過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、おやすみ~」

 

「おやすみ~」

 

「お、おやすみなさい……」

 

「おやすみなさいです……」

 

「……おやすみ」

 

俺とフェイト、アリシア、エリオ、キャロの5人は1つのベッドで並んで寝る事になった。

 

幸い、今日は俺の家でお泊まりの日ではないから問題は無い。

 

真ん中に俺、右にキャロ、左にエリオ。

 

キャロの隣にアリシア、エリオの隣にフェイトといった順だ。

 

キャロは俺に抱きついて来る。

 

エリオも何故か俺に抱きついてくる。

 

って言うか、フェイトとアリシアの両名は段々と俺の方に寄ってくるんだが。

 

キャロとエリオが挟まれるだろ。

 

 

 

「……ありがとう」

「ありがとう……」

 

 

エリオとキャロの声が聞こえた。

 

2人の顔を見ると、目はつむっていたが少しだけ涙が流れていた。

 

俺は2人の頭を撫でながら眠りについた。

 

 

 

 




 
エリオ&キャロ登場w



アリシアファン「揉ませて舐めさせて!」

アリシア「おととい来な!」

アリシアファン「うぎゃあぁぁぁぁぁ!!」

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