魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ- 作:八坂 連也
眠りについてから1時間余り。
突然、隣家からあふれ出す魔力。
どうやら獲物が網にかかったみたいだな。
それじゃ、行きますか。初戦だな!
俺は母さんを起こさない様に起きたつもりだったが。
「お仕事?」
しっかりと起きてました。
「ああ、隣の高町家から魔力があふれ出している」
黒いジーンズを履き、黒いシャツを着る。
「行ってらっしゃい」
「怪我、すんなよ?」
父さんまで起きていた。
「あはは……大丈夫だよ。それじゃ、行って来ます」
俺は玄関から外に出た。
-なゆた視点-
今日引っ越してあのガキ……。
間違いなく転生者だ。
今日別れるときに出した……あの魔力!
普通の子供があんな魔力をきちんと制御してたまるか!
おのれ……! なのはとイチャイチャする計画を邪魔されてたまるか!
なのはは俺のモノだ!
あの神から貰ったこの力があれば……あの程度のガキに負けるものか!
さあ、出て来いよ。真っ先に退場させてやるからよ!
俺は魔力を解放した。
すると隣の藤之宮家から出てくる気配。
ビンゴ!
やっぱりあのガキは転生者!
さあ、ぶち殺してやるよ! ククククク!
-なゆた視点・終了-
「やっぱりてめぇ……転生者だったか」
子供らしくない歪んだ笑みをうかべるなゆた。
「ああ。転生者……だな」
「来いよ。真っ先に退場させてやる」
「そうか。それは楽しみだな。で? 何処で戦るんだ?」
「今日出会った公園だ」
そう言って俺達は移動する。
閑散とした公園。
こんな時間に子供がいたらびっくりだ。
当然、公園内には猫1匹すらいなかった。
「さて、1つ聞きたい」
「何だ?」
「お前は、なのはをどうしたいんだ? 血が繋がってる……兄妹なんだろ?」
「決まってるだろ? なのはは俺のモノだ! ずっと一緒に……結婚もさせず、俺とずっと過ごすんだ!」
「そうか……。よく分かった。お前は……この世界にいてはいけない!」
「ほざけ! そうだな、助けが来ない様に、念入りに結界を張って」
周囲に現れる結界。今の俺では破る事は厳しそうだ。
さて、どんなモノか……お手並み拝見と行きましょうか。
俺は第1チャクラを起動して一気に全力回転まで上げる。
「さあ! 雑魚はさっさと……」
なゆたの周りに現れるのは。
剣、槍などの武具。しかも、1本1本が魔力を秘めた……魔剣、聖剣!
ほほぉ!
やっぱり数々の二次小説で好んで使われる能力だよな!
「死ねぇ!!!」
一斉放出される宝具。数は30強か。
隙間無い様に見えるが。
「よく見ると、隙間があるんだよ」
俺はそう呟いて降り注ぐ剣や槍の間をかいくぐる。
「なっ!?」
なゆたの目が見開かれる。
そりゃそうだろう。高速で放たれる武具の弾丸を何の気無しにかいくぐるのだから。
それに手に闇の力で作った手甲を纏って、宝具を叩いて逸らしているのだから。
「な、何なんだてめぇ! あの高速の射撃の中を!」
「ふむ、確かに速いが。狙いが雑だな。もうちょっと練習した方が良い」
「おのれぇ! これならどうだ!」
更に現れる宝具。
数は一気に100本位はいったであろうか?
それが波状となって襲いかかってくる。
「さっきよりはまだマシになったな。だが……」
僅かな隙間をぬって俺はそれを全てかわす。
薄皮一枚切れる位の傷を負ってはいるが全く支障は無い。
「お? 今のはなかなか良かったぞ?」
目の前に飛んでくる剣を俺は難なくはじく。
「くそくそくそ! 何なんだよ! 何なんだ一体!」
なゆたは大声で叫びながら次々に空間から宝具を射出する。
もはや英雄王より凄いんじゃね? この攻撃。
マシンガンで撃つくらいの速さになってるぞ。
「な、何で当たらないんだよぉ! この化け物ぉ!」
「ああ、よく言われるな。それと、この程度の速さでは足りないぞ。これの3倍の速さにして貰わないとな」
そう言って俺は飛んで来る剣を右手で一瞬の内に掴み、なゆたに向かって投げる。
「!?」
なゆたの右頬をかすって飛んで行った。
どうやら反応出来なかったみたいだな。
そりゃそうだろう、音が後から飛んで行ったみたいだからな。
「ち、畜生! こうなったら!」
なゆたの手に握られたのは……円筒状の奇妙な……剣?
そして先の部分が回転を始める。
ああ、英雄王の『
さすがにアレを避ける程の身体能力は無さそうだ。
無論、防げる程の盾は今は作れない。
「それじゃ、使いますか」
俺は左手の人差し指にはめられている指輪を掲げた。
「起動せよ。
そう呟くと指輪から煙の様な蒸気が噴き出した。
「ぶわっ!」
むせかえるなゆた。
「ぐほっ!」
俺もむせかえしていた。こんな煙みたいな蒸気が噴き出すなんて聞いてないぞ、ゼルディア様!
「てめぇ! 何しやがった!」
なゆたの怒声が聞こえる。
視界がほとんどゼロに近くなった。
周りが全く見えない。
身体が……少しずつ変化していくのが分かった。
背が少しずつ伸びて行く。
そして、魔力と気が溢れてくる。
右手を後ろに回す。柔らかい髪が手に触れる。
間違いない。前世の姿、『アリス・マクダウェル』に戻ったのだ。
この状態なら竜種すら素手で殴り倒していたのだ。
ちなみに、服装は麻帆良学園女子中等部の制服だ。
少しずつ煙の様な蒸気が晴れて来る。
目の前に現れたのは10代後半位で身長が175㎝位の中肉中背の男。
眼鏡をかけていて容姿もごく普通の平均的な感じで服はブレザータイプの学生服。
「な、何しや……」
俺の姿を見てなゆたは呆然としていた。
「ようこそ」
「な、何で……エヴァンジェリンが……さっきのガキは!?」
「その前に、自分の姿を確認してみてはいかが?」
「な、何?」
目の前のなゆたは自分の身体を見て……叫んだ。
「な、なんじゃこりゃあ!? 何で前の姿に……! てめえ! 何しやがった!」
なゆたは右手を掲げる。
「出ない!?」
「バカね。貴方は今は前世に戻ってるのよ? 前世の貴方は『普通の人間』だった事、忘れたの?」
「そ、そんな……バカな!」
なゆたはその場に座り込んだ。
「さて、アタシの名前は……『アリス・マクダウェル』。貴方が知ってるのは妹の方よ」
「な、何だと!? エヴァに姉が居ただと!? そんなの聞いたこと無いぞ!」
「そりゃそうでしょ。平行世界で存在していたのだから」
「そ、そんなのアリかよ!」
「アリなのよ。さて、貴方はこの世界に紛れ込んだ『存在してはいけない存在』。よって、一度死後の世界に戻って貰うわ」
「そ、そんな……巫山戯けんな! 俺はあの神に殺されたんだぞ!」
「まあ、その点に付いては謝らせて貰うわ。ごめんなさいね」
俺は頭を下げる。
「え?あ、ああ……」
「そうね、大人しく従ってくれるなら……それなりの優遇はさせて貰うわよ?」
「……た、例えば?」
「う~ん、転生先は貴方が元々いた世界がベースだけど」
ゴクリ。
なゆたは生唾を飲む。
「人生の伴侶が貴方の大好きな『高町なのは』ちゃん似の女の子になるんだけど?」
「乗ったぁ!!!」
0.5秒でなゆたは了承した。
「話が早くて助かるわ」
「ああ」
嬉しそうな笑顔を浮かべるなゆた。うむ、どう見てもアッチ的な想像をしてる顔にしか見えない。
「良かったわね。ここで拒否してたら……」
「してたら?」
「痛みが快楽になるような死に方を選んで貰ってたから」
俺はそう言って魔力を込めて犬歯が牙になるように伸ばす。
「うぉ!」
「そして、魂に刻みこんで来世では超ド級のM体質になってるわね。3回くらい輪廻転生したら元に戻ると思うけど?」
「そんな変態体質はイヤじゃ!」
なゆたは身体を抱えて震えていた。
「それじゃ、交渉成立と言う事で」
そう言って俺は天界に念話を飛ばす。
3分後に現れたのはこっちの天界の死神役の天使だった。
ちなみに女の姿であるが、大鎌を持っているのは仕様らしい。
男の要望をしっかりと伝えてから天使はなゆたを連れて天に昇って行こうとした所で。
「あ、高町家の人にはどうすれば良いのかしら?」
俺は天使に訪ねた。
「そうですね……ちょっと聞いてみます」
「あはは、楽しみだな~」
トリップしてるなゆた。これは放っておいても大丈夫だろう。
「返答が来ました。元々存在していなかった様に記憶等全てを書き換える……と」
「なるほど。分かったわ」
そう言うと今度こそ天使となゆたは天に昇って行った。
しばらくすると身体が縮み始める。
どうやら効力が切れて元の戻るみたいだ。
「さて、とりあえず1人目だな」
今回はあっさりと終わったが。
次はこんな風に終わるとは思いがたい。
「そう言えば、この世界を管理してる神は……あいつか」
思い出されるのは、2m近い身長で筋肉隆々のマッチョ神。
髪も眉毛も無い風貌で子供が見たら絶対泣き叫ぶレベル。
しかも、声は『ぶるぅああぁぁぁぁ!!』と吼えたらよく似合う声。
※世間では『若本ヴォイス』と呼ばれている。
更に服はブーメランパンツをギリギリに面積を減らした超危険なパンツ一丁。
ぶっちゃけ言うと真・恋姫無双に出てきた貂蝉の口を小さくして髪と眉を無くした顔なんだけどね。
だが、口調は相当な紳士的と言う始末。
「あいつ、多分恐育……いや、教育されるだろうな」
その神はそういったロリで性的欲望を満たす的思考は大嫌いなハズだから教育するだろう。
主に、肉体的言語を使用して。
「ま、転生したらバラ色人生……のハズだから大丈夫だろう、うん」
俺はそう呟いて家路についた。
「ただいま~」
玄関に入ると母さんが立っていた。
「お帰りなさい、アレスちゃん」
そう言って抱きついて来る。
「か、母さん待ってたの?」
「いいえ。何となく、帰ってきそうな感じがしたから3分位前に待機してたのよ」
ナニその恐ろしい勘。
「あはは……」
「さあ、寝ましょう」
そう言って母さんは俺の部屋に引っ張って行く。
そしてそのままベッドの中に入って眠りについた。
ちなみに、母さんは抱きつき癖が時々発動する。
そして今回は逃げられない様に抱きつかれたのであった。
「ふぅあぁ」
大きなあくびをしてベッドから起きる。
母さんは既に起きた後で、どうやら朝食の準備をしている様だ。
キッチンに行くと、父さんは既に仕事に出かけた後だった。
「あら、アレスちゃんおはよう」
「おはよ、母さん。ところで、今日から俺はどうすんの?」
「そりゃあ、幼稚園に行って貰うわよ? 既に連絡してあるからね」
そう言って朝食を出して来る。
「あ~、分かったよ」
ま、5歳児だし。うん、隣のなのはも一緒と言う事になるな。
朝食を済ませ、幼稚園の服に着替える。
家を出て隣に行くと丁度行くのであろうか、恭也さんと美由希さん、そしてなのはも出てきた。
「おはようございます」
「あら、アレス君おはよう」
「おはよ、アレスくん」
「おはよう……」
「なのはちゃんも幼稚園?」
「うん」
「そっか、アレス君となのはは同い年だもんね」
「はい」
「それじゃ、途中まで一緒に行こうか」
「うん」
俺達は一緒になって登校した。
幼稚園で登校と言うのはおかしい気がしないでもないが。
ちなみに、恭也さんは不思議そうな顔で俺の方をチラチラと見ていた。
おかしいな? 別に何もしてないんだけどな?
幼稚園も終わる。
バスで帰宅する。
「う~ん」
うなっているなのは。
「どうしたの?」
「うん、お家に帰っても……1人だし」
「そっか。お父さん居ないし、恭也お兄ちゃんも美由希お姉ちゃんもお店の手伝いだもんね」
「うん……」
「なら、一緒に遊ぼうよ」
「良いの?」
「良いよ。母さんに聞いたら、母さんも翠屋の手伝いするって。だから、なのはちゃんと一緒に遊んでなさいって」
「……うん。アレス君、遊ぼ!」
とりあえず、今日の所はなのはと遊ぶ事になった。
まあ、このまま士郎さんが寝たきりと言うのもなのはに良くは無いだろう。
父親の存在と言うのは結構大きいのだから。
だから今夜は病院に忍び込んで……治療する。
魔法を使って。
これで、4年先に起きる事件まで、ゆっくりと過ごそう。
昨日の様に真夜中に行くことにする。
ちなみに母さんが何処の病院に入院しているか聞いていてくれたのですぐに向かう事にする。
さすが母さん、俺の事を良く分かってらっしゃる。
「行ってらっしゃい」
そして今宵も母さんに見送られて家を出る。
病院に着いた。
先程救急車が来たから少し騒がしくなっている。
夜は看護師さんも少ないから救急の方に集中してるから都合が良い。
「よし」
俺は夜間専用口から進入する。
「さて、士郎さんの病室は……」
俺は病院の通路を歩く。
気配遮断はさんざんやって来たので一般人にばれる事は無い。
これってフツーに泥棒出来るんじゃね?と思うが。
目の前には『高町士郎様』と書かれたプレート。
ドアを開けて入る。
ピッ……ピッ……と規則正しく心音を計る音が聞こえる。
個室で士郎さんがベッドの上で眠っていた。
「ほぅ……これは手酷くやられたなぁ~」
俺は士郎さんの様子を見て呟いた。
体中に巻かれた包帯。
どう見ても重傷人にしか見えない。
「下手したら死んでたかもな」
その時、廊下の方から響く音。
俺は瞬時にベッドの下に潜り込む。
音は部屋の前を通って過ぎて行く。
「やれやれ、長居は無用だな」
俺はベッドの下から抜け出て立ち上がる。
「それじゃ、回復しましょうか。完全回復となると問題だから……そうだな。初級呪文で大丈夫だろ。もっとも、俺のは効力は中級以上だがな」
ポケットから指輪を取り出し、右手の人差し指に装着する。
ちなみに、これは前世で使っていた指輪でもある。サイズは自動で変わるように改造済み。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック
すると士郎さんの身体が光輝き、顔色が良くなっていった。
「よし……これで大丈夫だろう」
「う~……う~ん」
まずい。今目を覚まして貰っては困る。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック
空気中の水分を使った眠りの霧を士郎さんの顔に当てる。
「う……」
寝息を立てて士郎さんは眠りについた。
これなら明日の朝辺りに目を覚ますハズ。
さて、用も済ませたし、帰りますか。
俺は病院から抜け出し、速攻で家に着いた。
部屋に帰ると母さんが眠っていた。
……もはや何も言うまい。
俺は母さんの横に潜り込んだ。
眠っているにも関わらず、母さんは分かったのかすぐに抱きしめて来た。
そしてそのまま俺は眠りについた。
昨日と同じ様に目を覚まし。
昨日と同じ様に幼稚園に向かう。
なのはは昨日と同じ雰囲気を覆っていた。
ふむ、どうやら士郎さんが目を覚ましたと言う連絡はまだだったみたいだな。
多分、今日帰った時に聞くハズなんだが。
一緒にバスから降りる。
なのはと別れてから家に入ると今日は母さんが居た。
「おかえり、アレスちゃん」
「ただいま。聞くまでも無いけど、翠屋は?」
「ええ。ご主人様が目を覚ましたって事で臨時休業」
「そっか」
「凄く嬉しそうにしてたわよ、桃子さん」
「そりゃ良かった」
「お疲れ様、アレスちゃん」
「はは、大した事はしてないよ?」
「嘘ばっかり。アレスちゃんの魔法のおかげよ?」
「きっかけだよ。俺の魔法が無くても士郎さんは回復していた」
「ええ。でも、アレスちゃんのおかげで早く回復して、みんなが笑顔になってる。違う?」
「まあ、そうだけど……」
「それじゃ、夕飯の準備ね」
母さんはそう言うと立ち上がった。
さて、俺は部屋に戻るとするか。
部屋に帰って窓を開ける。
隣の家から凄い勢いで飛び出して行く人物。
「やれやれ。美由希さんも結構お転婆なのかな?」
猛スピードで病院に向かって走って行く美由希さん。
そして、なのはを連れて。
「にゃ~! お姉ちゃんどうしたのぉ!?」
「良いから! 黙ってお姉ちゃんに着いて来なさい!!」
……なのはの肩が外れない様に祈っておこう。
それから1週間。
翠屋で開かれる全快祝い。
士郎さんはあれから1週間で退院して高町家に帰ってきた。
そして、藤之宮家一同も招待された。
「初めまして、藤之宮アレスです。よろしくお願いします」
俺は士郎さんに挨拶した。
「はは、初めまして。なのはの父、高町士郎だよ」
そう言って士郎さんは頭を撫でてきた。
「アレス君、こっちに来て~」
なのはの明るい声が聞こえる。
やっぱり、早く治して良かったな。
あの体験があったから……彼女のあり方がああなったのかも、知れないな。
「うん。士郎おじさん、それじゃ……」
「ああ、行っておいで」
俺は士郎さんの所から離れ、なのはの元に向かった。
-士郎視点-
「とーさん」
「ん?」
呼んで来たのは恭也だった。
「とーさんは……気にならないか?」
恭也の視線は……なのはと遊ぶアレス君だった。
「ひょっとして、あの子の歩き方……かい?」
「やっぱり、とーさんも気付いてたか…」
そうなのだ。私も少し気になったのは、アレス君の歩き方。
まあ、前髪に一部金髪が混じってたり、右目が蒼いと言う特徴も気にはなるが。
だが、それを差し引いても、とても5歳児とは思えない。
長年、武術をやってきた……そんな達人と思える様な歩き方だった。
「俺は結構同級生とか街中で子供を見てきたが、あんな歩き方をする子供は1人もいなかった……」
恭也が呟く様に言う。そうだろう。私も長年生きて来たが、あんな歩き方をする子供は見たこと無い。
「だろうな。私も、恭也と同じだ。初めて見た」
「とーさん……どうだろう? もし、あの子が『御神』の技を身に着けたとしたら?」
「……間違いなく私を超えるだろう。恭也は?」
「はは、俺も同じ意見だよ、とーさん」
「そうか。どうだ? あの子なら……なのはとは?」
「ああ。問題無い。下手な男より……よほど良いと思う」
「私も同じ意見だ。あの子なら、なのはを任せても良いかも知れん」
「分かった。とーさんがそう言うなら任せてみよう」
そう言うと恭也は立ち上がって桃子の方に向かって行った。
なのはは良い伴侶を見つけたのかも知れないな。
-士郎視点・終了-
……?
何だろう?
変なフラグが立った様な気が。
まあ、良いや。とりあえずは小学3年生迄は大きな事件は起きないだろう。
祝いはかなり遅くまで繰り広げられて。
俺となのは眠くなっていた。
「う……ん……」
「ね、眠い……」
「あらあら……」
「さすがにこの時間はもう寝る時間よ」
母さんと桃子さんの声が子守歌の様に聞こえる。
「それじゃ、アレスちゃんを連れて……」
「……直美さん?」
「ん? どうしました? 桃子さん?」
「ごにょごにょ……」
「なるほど。分かりました」
何か……妙な予感を感じないでもないが……眠気に勝てない。
俺は母さんに抱きかかえられて意識を失っていった。
チュン……チュン……。
雀の鳴く声が聞こえる。
そう言えば、昨日は士郎さん全快パーティーしてたんだよな。
そして、母さんに抱きかかえられてベッドに入った。
入ったのは良いけど、何で……栗色の髪が……見えるんだ?
首を左に向けるとスースーと寝息を立てて眠ってるなのはの姿。
意味が分からないんだが!
そしてなのはは絶賛俺にしっかりと抱きついて離れないんだが!
その後、なのはは目を覚まして『ふえぇぇぇぇぇぇぇっ!?』と大声を上げていたのは言うまでも無かった。
朝食後、なのはが隣に帰った後、母さんに聞いてみた。
「桃子さんが、『なのはあげるから……アレスちゃんの母親にもなりたい』って」
「意味が分からないんだが……」
「多分、あたしと同じ理由?」
母さんと同じ……だと? もしや、桃子さんにも
将来に色々と不安を覚えるが、今はどうしようも無い。
とりあえず、4年後に起こる事件までは平穏なんだ。
ゆっくりと、過ごさせてもらうぜ。
桃子さんェ…