魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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もちろん、普通に終わる訳がない


第35話 修学旅行〈小学校編〉 中編

 

 

 

 

 

「ううぅん……」

 

窓から明るい光が目に当たる。

 

どうやら、朝らしい。

 

そう言えば、今は修学旅行に来ていたんだよな。

 

昨晩はなのは達に連行されてなのは達の部屋で過ごしていた。

 

ん?

 

そう言えば、俺は昨晩は自室に戻ったっけ……?

 

それに、身体が動かない。

 

柔らかい……女の子と思われる人に抱きしめられているみたいだ。

 

……もしや。

 

俺は目をゆっくりと開ける。

 

目に入ったのは綺麗な金髪。

 

誰だ……? 該当するのはアリシア、フェイト、アリサの3人。

 

「うぅん……お兄ちゃん……」

 

どうやら身体をしっかり抱きしめているのはアリシアの様だ。

 

ちなみに、部屋は和室で畳が敷いてある。

 

雑魚寝が可能である。

 

両手は万歳が出来る様に斜め真上にあげられた状態で妙に柔らかい何かに挟まれている感じがする。

 

首を捻って手の先を見ると……。

 

「……はやて、すずか……」

 

右手を見るとはやてがあろうことか自分の股間に向けて俺の右手を滑り込ませて挟み込んでいる。

 

左手も同じようにすずかが自分の股間に滑り込ませて両太股で挟んでいる。

 

「……」

 

俺は両手を抜け出そうと動かすと……。

 

 

「あん……」

「あぁん……」

 

 

はやてとすずかはあえぎ声を上げる。

 

艶っぽい声を上げるんじゃねぇ!

 

ここで目を覚まされてもロクな事にならないのは目に見えてるので。

 

それと両手が妙に湿っぽいのは気にしない事にする。

 

ふむ、アリサ、なのは、フェイトはどこだろうか?

 

俺は左の方に首を捻ってみる。

 

「……おのれら……」

 

思わず小声で呟いてしまう。

 

視線の先にはなのはとフェイト両人。

 

普通に寝ていれば俺も気にはしなかったのだが。

 

なのはとフェイトは何故か抱きしめ合っていた。

 

しかも、浴衣は結構はだけていて胸とか見える。

 

もの凄く、色っぽい。

 

コレで小学6年生とか将来が末恐ろしく感じる。

 

 

 

「アレス君……」

「アレスぅ……」

 

 

 

なのはとフェイトは俺の名を呼びながら激しく抱き合ってから……口づけしていた。

 

……まあ、見なかった事にしたいのだが。

 

これがまた実にいやらしくキスしていたので。

 

「くっ……!」

 

股間の男性専用アームドデバイスが反応してしまった。

 

朝なので余計に……だ。

 

「うぅぅん……何よこの枕……」

 

視界に入らなかったアリサの声が、何故か俺の股間辺りから聞こえる。

 

ってか、俺の股間辺りに誰かが頭を乗せている様な感じがするのですが?

 

「……もしやと思うが」

 

俺は首を少し上げてから股間の方を見る。

 

アリサが俺の股間に頭を乗せて枕の様にしているのが見えた。

 

どうしてこうなった!

 

もはや意味が分からない領域だ。

 

「アレスお兄ちゃ~ん……」

 

俺を抱きしめているアリシアが寝ぼけて俺の身体をまさぐる。

 

アリシアの白い手が俺の浴衣の中に入って胸をくすぐる。

 

「あ、アリシア……」

 

「えへへへ……」

 

目を覚ましているのか、覚ましていないのか分からないが。

 

実にイヤな予感を感じる。

 

アリシアの手はくすぐる様に俺の胸をまさぐってくる。

 

「き、気持ち良い……」

 

いかん。

 

股間のアームドデバイスが硬度を増してしまう。

 

浴衣ははだけて下半身はボクサートランクス1枚なのだ。

 

その上にアリサが頭を乗せている。

 

「何よ、この枕……。エラい硬く……」

 

アリサが頭を上げて枕元を見る。

 

 

「……」

「……」

 

 

アリサと目が合う。

 

 

 

「……おはようだぜ、アリサ?」

「……おはよう、アレス?」

 

 

 

妙な空気が漂う。

 

「そろそろ起きなきゃまずいんじゃね?」

 

「……まだ大丈夫よ。もうちょい寝かせなさい」

 

「……寝る……とな?」

 

「ええ。アンタのコレ、意外と気持ち良かったから。だから、早く柔らかくしなさいよ」

 

なんつー願いだ。

 

そんないきなり言われて柔らかく出来るかって。

 

「いきなり言われて柔らかく出来るか!」

 

「何でよ」

 

「そう言う仕様だ」

 

「全く、男の身体って意外と難儀なのね。そう言えば、柔らかくするには砲撃を……」

 

「まだ撃てないと言ってるだろうが」

 

「もう! 面倒だから今撃てる様にしなさいよ!」

 

そう言ってアリサは俺のパンツを両手で持つ。

 

「お、おい……何を」

 

「何って? ナニよ? あたしが手伝ってあげるのよ? 感謝しなさい?」

 

「どうやって感謝しろと?」

 

「ほらほら、良いから……」

 

アリサはゆっくりと俺のパンツを下ろそうとしたが。

 

「アリサ? 抜け駆けはダメだよ?」

 

俺の身体をまさぐっていたアリシアが顔を上げていた。

 

「アリシア……」

 

「アリサ? 1人で良い事しようとしてたんでしょ? もう、言えばあたしも協力するのに」

 

状況は変わっていなかった。

 

むしろ、悪化していた。

 

「それに、今ならアリサの望むシチュエーションじゃない?」

 

「……確かに。身動きが取れないみたいね」

 

アリシアとアリサの口がニヤッとつり上がった。

 

非常にまずい展開だ。

 

このままだとシャレにならない。

 

これで仮に横島先生辺りでも来た日には……!

 

目も当てられない状況になる。

 

 

 

「はわわ! ごめん! フェイトちゃん!」

「あわわ! ごめん! なのは!」

 

 

 

なのはとフェイトの焦った声が聞こえる。

 

どうやら目を覚ましてどんな状況だったのか認識したらしい。

 

 

 

「うぅ~ん……」

「なんや……うるさいなぁ……」

 

 

 

それにつられてはやてとすずかも目を覚ましたようだ。

 

「っ! もう! 折角アレスのお手伝いが出来たと思ったのに!」

 

残念そうな物言いをするアリサ。

 

「タイミング悪いよフェイト……」

 

頬を膨らませて不機嫌そうな顔を見せるアリシア。

 

ナイスタイミングだ! フェイトとなのは!

 

俺は心の中で賞賛する。

 

「……夢の中でエラい気持ち良かったのはこういう事やったんか」

 

「アレス君……触りたいなら触りたいって言えば良いのに……」

 

はやてとすずかの声が聞こえる。

 

台詞も不穏当に聞こえる。

 

「……朝起きたらこうなってたんだが」

 

「まあ、アレス君なら好き放題触ってもええけどな!」

 

「そうだね。けど、どうしようか……コレ」

 

すずかは人差し指と親指を合わせる。

 

ゆっくりと離すと指先に付いている液体が糸を引いていた。

 

「……とりあえず、替えてこい」

 

これ以上のツッコミはシャレにならないと思った。

 

「そうやね。まあ、こんなこともあろうかと用意しとったけどな!」

 

タヌキさんや、どんな想定をしていたのか聞いてみたいのだが。

 

はやてとすずかは部屋の片隅の方に行く。

 

片手には換えの下着が見えるが、気にしない事にする。

 

言うかね、普通なら俺の見えない所で着替えるでしょう!?

 

何で平然と俺の視界の入る所で着替えてるの?

 

「アレス君は使用済み下着に興味あるんかな?」

 

よし、後でお仕置きだ。

 

月に代わらなくてもこのタヌキはお仕置きだ。

 

「……」

 

俺は満面の笑みで握り拳を作ってから左手で上から覆い被せる。

 

某世紀末主人公の様に拳をボキリボキリと鳴らす。

 

 

 

「……『あべし』とか言う断末魔叫びとうないで」

 

 

 

「大丈夫だ。『ひでぶ』にしてやる」

 

「そっちもイヤや!」

 

そんな事を叫びながら下着を替えてるはやて。

 

「でも、フェイトちゃんの唇……結構柔らかかった……」

 

「……なのはも柔らかかったよ?」

 

妙な会話が聞こえて来たので見ると、お互いに顔を赤らめさせてるなのはとフェイト。

 

……百合の世界にようこそ?

 

「……よし、これでアレスを狙うライバルが減った」

 

小声で囁きつつ拳を握ってガッツポーズするアリサ。

 

「……お姉ちゃんは応援するよ、フェイト……」

 

なま暖かい視線を向けてるアリシア。

 

「にゃ!? アレス君を諦める事はしないよ!?」

 

「そ、そうだよ!? 確かになのはの唇は柔らかかったけど、やっぱりアレスとキスした方が……」

 

 

 

「チッ」

「チッ」

 

 

 

アリシアとアリサは舌打ちしている。

 

朝からやる会話じゃないと思う。

 

「おニューのパンティやで~!」

 

唐突に来たのははやて。

 

浴衣の前を全開にして大股を広げ、腰に手を当てて立っている。

 

 

 

「…………」

 

 

 

俺は眉間に皺を寄せてしかめっ面ではやてを見る。

 

「何やねん! その残念そうな顔は!」

 

「色気も何も無いポーズだ」

 

「見てみぃ! 流行の横縞模様のパンティやで! 緑か青が定番らしいからここは青を選んだんやで!」

 

そんなの力説されても困るんだが。

 

「それともアレス君はこんな穴開きが良かったのかな?」

 

すずかが手に持ってるのは。

 

妙な雰囲気の布きれ……?

 

「アレス君なら喜ぶかと思ったんだけど……?」

 

どうやら穴が開いてる超マニアックなパンティだった。

 

「……普通ので良い。そんな奇をてらったヤツはいらぬ」

 

何処から入手したんだ。

 

忍さんのお下がりとか言われた日には吹っ飛びそうになるが。

 

 

 

「やっぱりアレス君はピンクが好きだと思うよ?」

「違うよ? 多分、黒だと思う」

「あたしは白だと思うな~」

「赤の下着とかかもしれないわよ?」

 

 

 

何やら妙な会話が聞こえてきたのでそちらを見ると、なのは達が。

 

浴衣をはだけてお互いが身に付けてる下着を見せ合いながら会話していた。

 

「……」

 

俺は視線を逸らした。

 

何か、女子校に迷い込んだ気分だ。

 

「それにしてもアレス君……なんかキツそうだね?」

 

「ん?」

 

声の方を見るとすずかが顔を赤らめさせて俺の股間を眺めていた。

 

股間は未だに朝モード状態だ。

 

「やっぱりすずかちゃんもそう思うやろ!? 言うわけで、アレス君。私に1発撃たせてくれへんかな?」

 

はやてはニヤニヤ笑いながら近寄ってくる。

 

右手は筒を握って上下にこする様な感じで動かしている。

 

「まだ砲撃は撃てないと言ってるだろう?」

 

「ええやん! 今、ここで撃てる様になれば無問題や!」

 

「それをここで公開しろと言うのか貴様は!」

 

「乙女の疑問をここで解決させると言うボランティアだと思って!」

 

そもそも乙女はそんな疑問を持たんわ。

 

これ以上いたらもの凄くイヤな予感を感じるから……逃げるか。

 

「……あ、そろそろ時間だ。部屋に戻る」

 

「え? あ、ちょ?」

 

俺は素早く部屋から抜け出して部屋に戻る事にした。

 

扉を閉める時に『私は諦めへんからな~!』と声が聞こえたが、無視する事にしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

「昨晩は何処にいたのか説明して貰おうか?」

 

「うむ。これは問いたださなければならない事項だ」

 

部屋に帰ったら帰ったで好雄と学が血涙流して俺に追求してくる。

 

まだ寝てると思ってたのだが、意外! 目を覚ましていやがった。

 

「ちょっと、余所の部屋で……」

 

「嘘をつくな! なのはちゃん達の部屋にいたんだろ!」

 

恐ろしい勘だ。

 

「……フンフン……女の子の香りがするぞ……」

 

学が犬の様に鼻を鳴らして匂いをかいでいる。

 

まあ、アリシアとかアリサとかなのはとフェイト以外全員と触れあって寝ていたのだから香りが移っても仕方あるまい。

 

「てめぇ……1人で大人の階段登りやがって! 誰だ! 誰と一緒に上ったんだ!」

 

「もしや……全員とじゃなかろうな!?」

 

「な、な……なん……だと? 六大美少女全員と……だと?」

 

勝手に暴走する好雄と学。

 

放っておいたら全員と関係を持ったと勘違いしそうだ。

 

「……上ってねぇよ」

 

「嘘だっ! こうなったら氷室先生に報告してやる!」

 

学はそんな事を言って部屋から出て行ってしまった。

 

「……」

 

「へへ、これでお前ももう終わりだぜ」

 

俺は唖然とするしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を洗って浴衣から制服に着替えていると学が帰ってきた。

 

明らかにしょんぼりとした様子だ。

 

「どうだった?」

 

「……証拠を見せろって。アレスがなのはちゃん達の部屋に入っていたと言う証拠を」

 

うむ、それははっきり言って無理に等しいな。

 

なのは達が先生に訴えて……と言う流れなら大事になるが。

 

なのは達は120%そんな事しないしな。

 

「……証拠かよ。アレスの身体から漂う香りじゃ……決め手に欠けるな」

 

顎に手を当てて考え込む好雄。

 

「一番良いのは部屋に入ってる、もしくは部屋に入る直前の写真なんだが……」

 

「撮ってる訳無いよな……」

 

「だな」

 

2人は神妙な顔になる。

 

「どうでも良いが、そろそろ朝食だぞ?」

 

既に起きて制服に着替えている正志がいまだ浴衣を着ている好雄と学にツッコミを入れる。

 

 

「……」

「……」

 

 

2人はお互いに顔を見合わせてから……。

 

 

「ヤバい」

「ヤバい」

 

 

急いで準備する。

 

「助かった」

 

「良いって事よ」

 

俺は正志に礼を言っておく。

 

 

 

 

 

 

 

騒がしい朝食も終わり。

 

3日目の今日は……市内散策。

 

自由に行動しても良いのだ。

 

言っても、見て回る所はそこまで無いのだが。

 

前もって決めた班でおのおの回るのだ。

 

まあ、俺が所属する班はなのは、フェイト、アリシア、アリサ、はやて、すずかの6人がいる班。

 

ちなみに、班編制で揉めに揉めたのは言うまでも無い。

 

男子達はなのは達、女子達は何故か俺を入れたがっていた。

 

別に俺を入れてもしょうがないと思うが。

 

散策するのは原爆ドームと平和公園周辺。

 

一見、真面目そうに散策する様に見えるのだが……。

 

「さあ、広島のプチ秋葉原と呼ばれている場所……どんなモノか見せて貰うわよ!」

 

そう言ってアリサは腰に手を当てて立っているのは……。

 

アニ○イト広島店前。

 

1階は書籍を主に扱っていて、2階部分にグッズを扱う店舗。

 

ちなみに、2階店舗隣に同人書籍等を扱うメロン○ックス。

 

更に、アニ○イト前にメイド喫茶が。

 

ここら辺は前世の前世と同じみたいだ。

 

自作パソコンパーツを扱う店もあるし。

 

前世の前世でもお世話になったものだ。

 

そうそう、さすがに制服姿だと拙いからデバイスに登録している私服姿に着替えているぜ。

 

……俺の場合は補導されそうな気がするが、なのは達なら多分大丈夫だろう。

 

わざわざ大人っぽい服装をチョイスしてなおかつ化粧してるように見せてるから。

 

アニ○イトは海鳴市にもあるからわざわざ行く必要も無い。

 

はやてとすずかのお目当ては隣のメロン○ックスらしい。

 

メロン○ックスは海鳴市に無く、電車で1時間の所にあるからホイホイと行ける場所に無い。

 

そこで東方だとかその手の同人ゲームやら同人誌を入手している……みたいだ。

 

ちなみに、俺のポシェットの中には前世コレクションと前世の前世コレクションも入っているからわざわざ買う必要は無いのだが。

 

全員で中に入る。

 

さすがに平日だけあって客は少ないが、客は男性客しかいない。

 

客全員が少し驚いた顔で俺達の方を見る。

 

まあ、なのは達みたいな美少女達がこんな店に入るのは驚くだろうな。

 

※作者でも驚きます。

 

「あ、東方……」

 

「どれどれ?」

 

なのは、フェイト、アリシアが東方系を置いてる場所に向かっていく。

 

「あ、これなかなか見つからなかった……やっぱり地方に来るとある場合があるのね……」

 

アリサは何やら同人誌を1冊手に持って見本ページを見ている。

 

アリサも意外とハマッてるのね……。

 

「さて、と」

 

俺も何か面白いのを探そうかな……と思った時。

 

「アレス君はこっちや」

 

「そうそう、こっちだよ?」

 

はやてとすずかに手を引っ張られる。

 

「……」

 

引っ張られた場所は奥の同人誌コーナー。

 

ただし、18歳未満購入禁止の大人専用同人誌だが。

 

「さあ、私等のおごりや! 好きなの買ってええで!」

 

「アレス君にはお世話になってるから……」

 

お世話してる記憶は無いが、それにしてもこういう返し方ってアリなのか?

 

「……どういう経緯でこうなったんだ?」

 

俺は額に指先を当てて考える。

 

「イヤ~、アレス君の部屋を捜索しても見当たらへんかったし~。どんなのがお好みなのかなぁ~と」

 

「そうそう。エヴァちゃんから一応聞いてるのはどんなのでも大丈夫だっていう曖昧な返答だったし……」

 

〈エヴァ……〉

 

〈えっと……実際そうじゃありませんか〉

 

〈まあ、否定はしないが……〉

 

「特にこだわりは無いんだが……」

 

「なるほど……巨乳だろうと貧乳だろうとどちらでも良いと」

 

「メモやメモや」

 

ホントにメモ取ってるぞ……。しかも表紙に『アレス君のお好み(ハート)』と書かれている。

 

どんな内容なのか確認したいんだが。

 

「じゃあ、背の高いお姉さんタイプと背の低い妹タイプは?」

 

「……それも特にはこだわりないな」

 

「なるほどなるほど……」

 

エラい勢いでメモ取ってるぞ。

 

「お転婆娘タイプとおっとりタイプだと?」

 

「……まあ、どちらも嫌いじゃないな」

 

「……手強い。アレス君の性癖は万能タイプなんかな?」

 

ってか、何でそんな質問に答えにゃならんのだ。

 

ちなみに、周りの客を見ると嫉妬を超えて殺意が芽生えてる視線になっていた。

 

「じゃあ、この同人誌は?」

 

すずかが持ってきたのはネギま!だった。

 

委員長の雪広あやかが主人公のネギを美味しく頂いている同人誌だ。

 

俺はそれを手に取って見本部分を読む。

 

一言で言うと。

 

あやかがネギを襲って頂いている。

 

……そう言えば、前世でも未遂が何回かあったしな。

 

「……実際に近いの何回か見てるし」

 

「ぶはっ」

 

はやてが噴き出していた。

 

「え……前世ではネギ先生頂かれちゃったの!?」

 

俺は即座に認識阻害魔法を展開して周りの客には他愛ない会話の様に聞こえる仕様にした。

 

「いや、未遂が数回あっただけだが……」

 

「未遂……そっちのいいんちょはかなりアグレッシブやったんやな!」

 

「だねぇ~」

 

はやてとすずかは同人誌を見ている。

 

「まあ、私としてはこの襲われてるネギ君の立場もええな~と思ってるんやけどな! 襲う人はアレス君限定で!」

 

「うん、私もはやてちゃんと同じかな。アレス君に襲われたいな♪」

 

俺は何と返答すれば良いんだ?

 

〈お兄様?〉

 

〈うん?〉

 

〈もう、発射出来なくても良いですから皆さんを襲ってみては如何でしょうか?〉

 

エヴァが恐ろしい提案をしてくるんだが。

 

〈何故そうなる?〉

 

〈皆様、いつも悶々とした日を過ごしていそうですので。ここはお兄様が癒して差し上げたら解消なさるかと……〉

 

〈……本音は?〉

 

〈私もお兄様としたいです〉

 

〈……もう6年位待たれんのかい〉

 

〈6年待てばしてくれますか?〉

 

〈……約束する〉

 

〈それなら待たせて頂きます〉

 

エヴァとの約束を交す。

 

何か、とんでもない約束をしたような気がしないでもないが。

 

気にしない事にした。

 

「襲ったら犯罪者のレッテルが貼られるだろ……」

 

「大丈夫や! 訴えるとかせぇへんから!」

 

「私とアリサちゃんの家の力を使えば、そのレッテルは消せるから!」

 

金持ちの恐ろしさを垣間見た気がした。

 

「兎に角、そう言うのはまだ早いからな」

 

 

 

「え~」

「え~」

 

 

 

同時に残念そうな声を上げるはやてとすずか。

 

って言うかね? 周りの男性客の視線が非常に鬱陶しいんだけどね?

 

まあ、確かにはやてとすずかはかなりの美少女に見える。

 

中身はビックリするくらい残念な所があるが。

 

常に思春期に突入している。

 

言っても、他の男子とか女子には普通に接しているが。

 

俺の関する時だけ、発想が斜め上に飛んでいくんだよな。

 

そうそう、アリサとすずかは男性恐怖症が少しだけ改善したぞ。

 

と言っても、間合いを1m位離して会話だけだがな。

 

アリサに至っては鮫島さんと父親と会話出来る様になっていた。

 

3年前に比べて改善はされている。

 

この調子で行けば大人になった頃には元通り……のハズなんだが。

 

何だろうか……? 『そうは問屋がおろさないぜ!』みたいな予感を感じるのは。

 

「とりあえず……や。アレス君が好みそうなのチョイスしとこかな」

 

「そうだね。ちょっと待っててね?」

 

はやてとすずかが俺から離れる。

 

言うか、俺1人だと補導されそうなんだが。

 

「アレ? はやてとすずかは?」

 

俺の所に来たのは数冊の同人誌を持ってるフェイトだった。

 

後ろにも同じ様な感じのアリシアがいる。

 

「……何でも俺好みの本を探してくると言って奥に行ったぞ」

 

「アレスお兄ちゃんの好みか~。コレなんかどう?」

 

アリシアが渡して来た本は……。

 

俺は本を手に取ってみる。

 

「……双恋とな」

 

某雑誌企画で誕生した物語で。

 

主人公が双子の女の子に同時に告白されて三角関係を維持していくと言うトンデモストーリー。

 

 

……。

 

 

 

今の俺とアリシア、フェイトの状況そのまんまなんだが。

 

思わず苦笑してしまう。

 

「あ、お兄ちゃん知ってたんだ。今の私達と一緒だね♪」

 

「うん、この本見てると参考になるよ」

 

確かに、参考になるかも知れないが……。

 

「……ひょっとして実践するつもりか?」

 

渡された本は大人専用漫画版になっていた。

 

分かりやすく言うと、主人公が双子の女の子達に美味しく頂かれていた。

 

あまり細かく描写するつもりはないが。

 

主人公のアームドデバイスが同時に舐められたり……等。

 

モテない男性からみたら銃殺刑に処されてもおかしくないと思うな。

 

「そうだよ?」

 

「うん。アレスは双子萌えじゃないの?」

 

2人はジーッと俺の顔を見つめてくる。

 

全く同じ顔で俺の方を見つめてくる。

 

「……双子は嫌いではないが」

 

 

「良かった」

「良かった」

 

 

2人は安堵のため息をついていた。

 

しかし、双子に縁があるよな。

 

前世では双子の姉妹として。

 

前世の前世では母親は双子だったのだ。

 

今世で母親だった母さんは、前世の前世では伯母だったのだ。

 

ちなみに、サウンドノベルの元祖と言うべき作品……『弟○草』。

 

そのヒロインの名前が前世の前世における母親の名前と一緒。

 

そう、『奈美』。

 

『藤之宮 奈美』が前世の前世の母親で今世は『藤之宮 直美』。

 

『奈美』と『直美(ナオミ)』。

 

何の因果なのかねぇ。

 

俺は心の中で苦笑する。

 

あと、前世の前世では俺は母親似だったとの事。

 

まあ今世も一緒なのだが。

 

翠屋で手伝いしている時も一目で俺と母さんの関係がばれてしまうのだ。

 

初めて来た客でも……だ。それだけ似ている。

 

しかし、たまーに化粧させてくる母さんはどうかと思うのだが。

 

「ツンデレは如何かしら?」

 

俺の背後から声をかけてくるのは。

 

「……アリサ」

 

アリサだった。

 

自分でツンデレと自覚してるのか。

 

「アンタみたいな可愛い男の子はあたしみたいな美少女に虐められるのがお似合いよ!」

 

言ってる事が何かおかしいアリサだった。

 

「……アリサ?」

 

「……何よ、そのなま暖かい視線は。まるで残念な娘を見てる様じゃない」

 

「何で分かったし」

 

「あたしは残念じゃない!」

 

「まあ、そう言う事にしておいてやろうではないか。ハッハッハッ」

 

「何か引っかかる言動ね」

 

アリサはブツブツ言いながらまた大人専用同人誌を手に取って見本ページを眺めている。

 

「あ、これ良いわね……。金髪少女が可愛い男の子を虐めてる……。絵もあたし好みだし……」

 

 

 

……。

 

 

 

やっぱり残念美少女の名は返上出来そうに無いな。

 

周りを見ると、驚きつつも羨ましそうな顔でアリサを見る男性客がちらほらと見受けられた。

 

 

 

 

 

 

客達の心の声

 

 

『さっきから、何なんだあの小僧は!』

 

『うむ。あれだけの美少女を6人も……』

 

『しかも、何の躊躇もなく我らの聖域(18禁コーナー)に突入してきたぞ……』

 

『ってか、あの小僧はここに来るのは早すぎるだろ!』

 

『だが、あの超美少女達に連行されて来たんだぞ?』

 

『パルパルパル……妬ましい妬ましい……』

 

『神は死んだ! 何故にあんな子供にあんな超美少女が6人も!』

 

『我らにも1人分けて貰いたい位だ!』

 

『しかし……だ。同志達よ。彼女達はひょっとして……少年偏愛(ショタコン)……なのか?』

 

『なるほど。金髪の双子は見た目は大学生くらい、他の4人も今年高校卒業しそうな雰囲気が漂っている……』

 

『うーむ、惜しいと言えば惜しいのか。いずれはあの小僧も大人になったら彼女達に捨てられるであろう』

 

『確かに。エターナル・ロリ……いや、エターナル・ショタは二次元だけの存在だからな』

 

『ククク、今のウチだぞ……。後々に後悔するがよい』

 

 

 

 

 

 

 

 

……?

 

何だ?

 

周りの奴らの視線が『せいぜい今のウチに可愛がって貰うが良い』と言いたげな視線になったぞ?

 

こいつら、どんな想像してるんだ?

 

まあ、良いか。

 

俺は携帯を取り出して時計を見る。

 

そろそろ昼を迎えそうだ。

 

このまま入り浸るのもアレだから出ようかな。

 

「そろそろ出るか?」

 

「あ……そうだね。もう昼だし」

 

なのはを見かけて俺は話しかけるとそう返答してくる。

 

……手には大人専用同人誌が数冊。

 

見ない事にした。

 

「にゃはは、アレス君が好きそうなのをチョイスしといたからね」

 

何故に全員、俺に大人専用同人誌を見せようとするのか。

 

「……まあ、せっかくの修学旅行だから何も言わないが」

 

俺がそう言うと、周りにいた男性客数人が驚愕の表情でこっちを見ている。

 

さっきから何なんだ、こやつら?

 

鬱陶しい位で実害はないから放っておくが。

 

 

 

 

 

 

 

客達の心の声

 

 

『なん……だと……?』

 

『修学旅行だと?』

 

『確か、今日修学旅行でこの市内に来ているのは……』

 

『うむ。確か、関東にある【私立聖祥大学付属小学校】しか来てないはず』

 

『詳しいな』

 

『あの学校は関東圏でも美少女が勢揃いしているので有名だ』

 

『ああ、ネットでも写真が出回っているからな』

 

『……待て。そう言えば、あの金髪の双子は……私立聖祥大学付属小学校の非公式ランキングで常に1位~6位に入ってる……』

 

『……!! 思い出した! 確か、【アリシア・テスタロッサ】と【フェイト・テスタロッサ】ではないか!!!』

 

『待て、同志達よ。他の4人も……』

 

『間違いない。【聖祥大学付属小学校六大美少女】と名高い……』

 

『【高町なのは】、【アリサ=バニングス】、【月村すずか】、【八神はやて】じゃないか!』

 

『実物を見るのは初めてだが……確かに可愛い』

 

『……アレで小学生……だと?』

 

『……ええい! 聖祥大学付属小学校の女子は化け物か!?』

 

『だが、あれだけの美少女が……』

 

我らの聖域(18禁コーナー)に来る……』

 

『ある意味将来が楽しみだな』

 

『と言う事は。あの小僧は……?』

 

『……あの姿で小学6年生……?』

 

『バカな。アレはどう見ても小学3年生止まりだ。あれで6年生なら……』

 

『……!!! エターナル・ショタ……だと?』

 

『何と言う事だ! 彼女達はあの小僧に……』

 

『骨抜きだな』

 

『やはり神は死んだ! 美少女が集まる所には美少女が集まるのか!?』

 

『……唯一の救いはあの小僧が大人でイケメンじゃない所だな。これでイケメンなら……』

 

『うむ、某五次聖杯戦争の狂戦士みたいに吼える所だったな』

 

『あれは諦めるしかあるまい。我らは我らでエターナル・ロリを探そうではないか!』

 

 

 

 

 

 

……?

 

何だ?

 

今度は諦めの顔をしだしたぞ?

 

よく分からんが、さっさとここから出ていった方が良いな。

 

妙な感覚を感じつつも俺達は店から出ていく。

 

さあ、次は何処に行こうかな。

 

 

 

 

 

アニ○イトから出て左に30m位歩いた所にある『松○(○屋とも言う)』にて昼食を済ませた俺達。

 

ちなみに、中にいたサラリーマン風の人や学生風の人達は俺達を見て少し驚いたみたいだったが。

 

確かに、歩いているとなのは達は注目を集めている。

 

主に、男ばかりだが。

 

しかし、まだ12歳でこれなら中学や高校に上がったらもっと凄まじい事になるのだろうか?

 

……。

 

まあ、そこら辺は考えないでおこうか。

 

「な~、次は何処に行こうか?」

 

はやてはウキウキしながら俺の前を歩いている。

 

さてさて、ここら辺にあるのは……。

 

イエローサ○マリン、と○のあな、パ○コン工房…。

 

フィギュアは……まあ、わざわざこちらで買わなくとも通販で入手は可能だし。

 

と○のあなは……また同人誌買えってか?

 

パソコンは今は組む必要性が無いし。

 

何故なら、既に3台組んで家にあるからだ。

 

高性能マシン、予備、ネット用の3台。

 

ちなみに、高性能マシンは俺以外使えないようにパスワードを入れてあるがな!

 

そして、はやてとアリサが意地でも中のデータを見ようと頑張ってるが、未だに見る事が出来ていない。

 

やましいモノは入ってないのだが。

 

それを説明しても2人は納得していない。

 

何故なら、前世の写真と前世の前世の写真を入れてあるからだったり。

 

ふと、見たくなる時があるんだよな。

 

迂闊にアルバムに入れておきたくないし。

 

まあ、レイハさんとバルディッシュ卿にパスワードを解く様に依頼したはやて、なのは、フェイトには後でお仕置きをしておいたがな!

 

主犯格のはやてにはそれ相応のお仕置きを……。

 

そこいら辺は読者諸兄の想像に任せるとしよう。

 

「……そう言えば、こっちにゲーセンがあったな」

 

松○から南方面に30m歩くと……。

 

アーケードになっていて、すぐの所に『タ○トーステーション』と描かれたゲーセンがある。

 

赤いインベーダーが目印だからすぐに分かるよな。

 

ここの2階はフィギュアとかの景品が多いのだ。

 

設定がキツいがな!

 

気が付いたら財布の中身が消え去ると言う事態もあるのだ。

 

もっとも、俺の場合はそれなりに景品は頂いているが。

 

「ウッキー! 何よこのアームは! 貧弱にも程があるじゃないのよー!」

 

今日もアリサは元気です。

 

フィギュアが景品のUFOキャッチャーの前で咆吼するアリサ。

 

まあ、ゲーセンのUFOキャッチャーの握力は赤ん坊以下に設定されてるからな。

 

ある程度金をつぎ込まないと取れない仕様になってる。

 

撲殺天使の金棒(エスカ○ボルグ)で筐体ぶっ壊すなよ?」

 

「あたしがいつそんな物騒な金棒で物を壊したって言うのよ!」

 

「いや、だって……アリサなら……ねぇ?」

 

俺は後ろにいるすずかに向かって訪ねる。

 

「えっ……と……ノーコメントで♪」

 

苦笑いしながらすずかはそう返答する。

 

「すずか……そこは否定しなさいよ」

 

力無くうなだれるアリサ。

 

「にゃはは♪アリサちゃんならそんなモノ使わなくても拳で充分だよ♪」

 

手に数個の景品を持ったなのはがやってくる。

 

「どの口が言うんか! この口か!」

 

アリサはそう怒鳴ってなのはの両頬をつねり上げる。

 

「い、いふぁい! いふぁいよ! ありふぁちゃん!」

 

涙目で叫ぶなのは。

 

「ほらほら、騒ぐと店員につまみ出されるぞ」

 

「そもそもアンタがいらない事言ったからでしょ!?」

 

「俺が景品取ってやるから」

 

「そ、そこまで言うなら、勘弁してやらないでもないわよ?」

 

頬を赤くするアリサ。

 

「どれ、仕方ないなぁ」

 

俺は筐体の前に立って景品を眺める。

 

……。

 

なるほど、絶妙な位置に置いてるな。

 

100円で取るのは無理だ。

 

最小限の出費で取れば良いだけの話。

 

俺は硬貨投入口を見る。

 

1回200円で3回500円。

 

500円でこのフィギュアを取れば充分だろう。

 

出来は悪くない。

 

「……どうなの? 取れないの?」

 

少し不安そうな顔で俺を見るアリサ。

 

「……500円あればイケる」

 

そう言って俺は500円硬貨を投入する。

 

アームを横に移動する。

 

次に奥に移動。奥に移動は立体感覚が必要だから意外と難しいのだが、俺の目は大丈夫だ。

 

「……」

 

アリサはごくりと喉を鳴らす。

 

「……まずは1回……」

 

アームが景品をずらす。

 

前に穴があってそこに落とすのが定石。

 

そもそも、こんなでかい景品掴める訳が無いんだが。

 

「……なるほど、掴んで取るわけじゃないのね」

 

アリサがそう呟く。

 

そんなに簡単に景品取られたらゲームセンターもつぶれるぞ。

 

「それで、次はここ」

 

俺は更にアームを移動させて景品を移動させる。

 

「う、上手いじゃない……」

 

「それで、次はここで……落ちるハズだが」

 

そう呟くと、アームは景品をずらしてから穴に落とす。

 

ゴトンと音を立てて筐体の下にある受け取り口に落ちる。

 

俺はそれを手に取り、アリサに差し出す。

 

「……あ、ありがと……」

 

頬を赤くしながら景品を取るアリサ。

 

「上手くいったな」

 

俺は周囲を見ると……。

 

 

「アリサちゃんばっかり……」

「上手いなぁ~」

「じ~」

「お兄ちゃん、取って欲しいのがあるんだけどなぁ~」

「お願い……出来るかな?」

 

 

いつの間にか来ていたなのは達がいた。

 

羨望の眼差しで俺を見ている。

 

「ああ、分かったよ」

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、もう勘弁してください……」

 

俺の目の前で華麗なDO☆GE☆ZAをするのはこのゲーセンの店員だった。

 

何で土下座される状況になってるのか……だって?

 

そりゃあ、さっきから500円で景品を取りまくっているからだろう。

 

追加してはコイン1枚で取られるんだからゲーセンとしてはたまったものでは無いだろう。

 

ちなみに、後ろでは景品を沢山持ってホクホク顔のなのは達が立っている。

 

客達も驚いた顔で俺達を見ている。

 

大半がなのは達を見て驚いているみたいだが。

 

この景品をいくらで仕入れているかは知らないが、少なくとも500円で1つ取られては大赤字なのは間違いない。

 

「そっか、それじゃあそろそろ出るとしようか」

 

「そうだね」

 

俺達はゲーセンから出る事にする。

 

 

 

 

 

 

 

出る時になのは達の景品は俺の魔法のポシェットに入れておく。

 

デザインは俺が持っても違和感ない仕様にしている。

 

「あの店員の顔は見物だったわね」

 

「ああ、俺が景品を取るたびに顔色が青くなっていったからな」

 

まあ、今日は厄日だったと諦めてもらうしかないな。

 

どうやら、アリサは3000円程つぎ込んでいたみたいだ。

 

……。

 

アリサは令嬢でお金持ってるんだから3000円位で目くじら立てなくても……と言ったら。

 

『1円笑う者は1円に泣くのよ!』と叱られた。

 

なるほど、バニングス夫妻は良い教育を行ったみたいだな。

 

さて、そろそろ帰ろうかと思った矢先。

 

アーケード街は人が溢れている。

 

しかし、俺達の前には妙な集団が歩いている。

 

学ランを着ていて、しかも長い学ラン。

 

スキンヘッドにリーゼント。

 

どう見ても一昔どころか二昔前の不良といったところか。

 

今時あんなのがいる事自体が驚きなんだが。

 

人数は10人前後。

 

しかも、視線は俺達の方を見ている。

 

……妙な予感を感じる。

 

もう、典型的なパターンが目に見えて来た。

 

男達は下卑た笑いを浮かべながら俺達の方に向かってくる。

 

周りの人達も関わりたくないのか、皆避けている。

 

「へっへっへっ、可愛い姉ちゃんがいるじゃねぇか」

 

「こりゃあかなりの上玉だぜ」

 

「おうおう、俺達と一緒に遊ぼうぜ」

 

典型的な誘い文句だ。

 

今時こんな誘い方で来る女の子はいないだろう。

 

いや、昔でもいないか。

 

アリサとすずかは俺の後ろに隠れる。

 

……背が低いからあまり意味がないようにも思えるが、まあ良いか。

 

周囲の人達もこちらを見ないように歩いている。

 

なるほど、こいつ等はここら辺で暴れてる有名な奴らなのか。

 

と言う事は多少手荒な事をしても大丈夫と言う訳かな?

 

「残念だが、彼女達は遊びたくないそうだぞ?」

 

俺は不良達の方を見ながらそう言い放つ。

 

「あん?」

 

「何だ? このガキ?」

 

「オメーには言ってねぇんだよ。さっさと帰ってママのオッパイでも飲んでな!」

 

「ギャハハハハハハハハ!!」

 

不良達は大笑いする。

 

「ふん、群れでないと行動出来ないのか、貴様等は?」

 

「……何だと?」

 

「このクソガキ……言わせておけば!」

 

不良達の様子が変わる。

 

やはりこの程度で頭に血を上らせるのだからやりやすいと言えばやりやすい。

 

「全員は離れていてくれ。この程度の奴ら……数のウチに入らない」

 

「うん」

 

「そやね。アレス君なら余裕やろね」

 

「気を付けなさいよ? 油断大敵よ?」

 

なのは達は少し離れる。

 

「来いよ。俺をそこら辺の子供だと思っていると……痛い目見るぜ!」

 

俺は左手を前に出して構える。

 

空手っぽい構えに見えるが、古流武術の型と思って貰えれば良いだろう。

 

「やっちまえぇ!」

 

「こんなガキ一捻りだぁ!」

 

一斉に襲いかかってくる不良達。

 

俺は冷静に対処すべく、様子を見る。

 

まず、1人目が上から殴りかかってくる。

 

上背を生かした力任せのパンチだ。

 

そうそう、目の前の不良達の身長は平均180㎝位だ。

 

皆、体格が良い方だ。

 

最も、体格が良いからと言って勝負に勝てるのかは別物だが。

 

「ふっ!」

 

俺は手首を掴み取り、勢い良く投げる。

 

「どわぁ!?」

 

1人目は地面に叩き付けられてその場で身動きが取れなくなる。

 

一応、手加減はしてるからそんなに大きな怪我はしてないだろう。

 

「こ、このやろぉ!」

 

続けて2人目がミドルキックを繰り出してくる。

 

意外と良い形に蹴りを入れてくるが……。

 

「ふっ!」

 

俺はそれを足で止める。

 

交差するように相手の蹴りを止める。

 

「な!?」

 

「遅い!」

 

俺は相手の懐に潜り込み、下から掌底で相手の顎目がけてかする様に当てる。

 

「ぐがっ!?」

 

これで脳を揺らして一時的に動けないようにする。

 

「これで2人目」

 

「な、何だこのガキ……」

 

「恐ろしく強い……」

 

不良達は少し躊躇している。

 

周りの方も驚いた様でざわざわと少し騒がしい。

 

「こんなガキ1人に何手こずってやがる! 一斉にかかれぇ!」

 

リーダー格らしい男が指示を出す。

 

俺の周りに取り囲むように来る不良達。

 

見ると、いつの間にか鉄棒やナイフとかを取り出している。

 

周りのギャラリー達もさらにざわめいている。

 

さて、警察が来ると色々面倒だな。

 

普通にやっても勝てるし。

 

ここは二度とこういう事をしないように恐怖を植え付けておく必要がある。

 

となると、攻撃をかわしていても効果は少ない。

 

攻撃を喰らって無傷なら……普通の人は恐怖する。

 

やはり、この線で行くか。

 

この大勢の観衆の中でやるのは少し気が引けるが。

 

「はあ~、やるしか無いか~」

 

「アレス君! 後ろ!」

 

なのはの声が聞こえる。

 

まあ、後ろから攻撃が来るのは分かってるが。

 

「後ろががら空きだぜぇ!」

 

と言う声と同時に頭に何かが当たる感触がする。

 

ゴィンと音が聞こえる。

 

鉄で出来た何かで殴ったのだろう。

 

「……な、何なんだよ……てめえは……」

 

俺は後ろを振り返る。

 

不良が持っていたのはこのアーケード街の真ん中に設置している自転車に乗ってはいけないと指示した赤い看板。

 

結構大きめでこれを振り回すのはなかなかの力がいると思うが。

 

だが、相手が悪かったな。

 

「相手が悪かったな」

 

俺は男が手に持っている看板の支柱部分を握る。

 

 

 

グシャ

 

 

 

 

アルミ缶を潰す様に、難なくと支柱部分が潰される。

 

「ひ、ひぃ!」

 

周りのギャラリー達も息を呑む声が聞こえる。

 

「残念だが、そんなもんで俺を倒そうと考えない方が良いぜ?」

 

俺は人指し指を立てて、それを左右に振る。

 

周りの不良達も動きが止まっている。

 

「さて、噛みつく相手を間違えたと言う事をしっかりと教えてやろう」

 

俺は指をゴキゴキと鳴らしながら不良達に近づく。

 

不良達はその場に座り込んで後ずさりする。

 

〈お兄様?〉

 

〈ん?〉

 

〈警察が近づいていますわよ?〉

 

〈ん、分かった〉

 

エヴァからの念話が頭に響く。

 

「警察だ! ここを開けろ!」

 

観客達の後ろの方から男の声が聞こえる。

 

台詞からして警察のようだ。

 

〈警察が来たみたいだから逃げるぞ〉

 

俺はなのは達全員に念話を飛ばす。

 

なのは達は俺の方を見て頷いた。

 

「これに懲りたらもうこんな事は止める事だな」

 

俺はそう言うと、観客達の頭を飛び越えてその場から逃げ出した。

 

なのは達も同じように逃げ出したのであった。

 

 




 
厳島神社に行ってもこんなでかい鹿はいませんw

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