魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ- 作:八坂 連也
『あかいあくま』に取り憑かれた模様ですw
※うっかり属性付与
夏休みに入って数日経った。
暑い日が続き、外では蝉が五月蠅い位に鳴いていた。
と言っても、今は朝なので其処まで暑くはなっていないが。
目が覚めてゆっくりと上体を起こす。
横にはアリサとすずかの2人が眠っている。
スースーと寝息を立てて特に変わった様子は無い。
アリサも大人しいなら実に可愛い。
「うっさいわねアレス! ほら、あたしの……むにゃむにゃ……」
タイミング良すぎてビックリしたんだが!
アリサの寝言に心臓をバクバクと鼓動を激しくしながら俺はゆっくりとベッドから出る。
「うん?」
机を見ると指輪が2つ、置いてあった。
デザインは……『前世に戻る』と言う『
「……おかしいな? 寝る前にこんなもんあったか?」
更に見ると、封筒が置いてあった。
そこに書かれていたのは、『闇の軍神アレス殿へ』と書かれていた。
「っ! 見られたらどうすんだ!」
小声で怒鳴りながら俺は封筒を手に取って破って中を見る。
中には便箋らしい紙が入っていたので俺は取り出して、それを開いた。
『追加機能を搭載した『理』の指輪を送る。それを装着すれば、1時間限定で前世の姿に戻る事が出来る。従来の相手を前世の姿に戻す機能はそのままだ。有効活用してくれ マッチョ神』
と書かれていた。
『追伸・前の指輪は返却してくれ』
更にそう書かれていた。
なるほど、わざわざ霧を出して前世に戻らなくても装着して前世に戻る事も出来るようになったのか。
前世のスペックならば死ぬ率はかなり減るからな。
『
2つあると言うことは、エヴァにも装着させろと言う事だな。
双子の真祖とか、もはや悪夢に近いだろうな……と思いつつ俺は指輪を装着する。
前の指輪は転移させる。
アレは人間界にあってはいけないモノだからな。
あと、手紙は細かく破ってからゴミ箱に捨てておいた。
「ふぅ……」
深い深呼吸をする。
俺は今は学校のプールに来ていた。
唐突にプールに来たくなった……訳でなく、伊集院先生の様子を見る為に来たのだ。
なのはとフェイトは蒐集に、アリシア、はやて、アリサ、すずかはダイオラマ魔法球の中で魔法の練習だ。
はやて達には余り入り浸るなと釘は刺しておいたが。
多分、大丈夫と思いたい。
さて、ソレはさておき。
俺の前にはプールの監視員をやってる伊集院先生の姿が見える。
容姿が容姿だから傍目から見るとすごく格好良く監視員を行っている様に見えるが……。
俺の目は誤魔化されないぞ。
伊集院先生の視線は……女子ばかり追っているのだ。
だが、その視線は……欲望を帯びた視線ではなく……何というか、娘を見守る父親みたいな印象を受けるのだ。
ますます分からなくなる。
報告では転生者は幼い女の子を性愛対象にする堕ちた者達ばかりのはずだが。
……やはり、接触して追求するしかないな。
さて、どうやって接触するかだが。
下手な接触は拙いしなぁ。
っと、見ると伊集院先生は俺の方をジッと見ているぞ。
俺と目を合わせる。
「……」
「……」
少ししたら、伊集院先生は視線を外した。
確か、魔眼の類は持っていなかったはずだが。
真意が全く分からない。
やはり、接触するしかないなぁ。
よし、プールが終わって昼になったらちょっと職員室に行ってみるか。
「失礼します」
俺は職員室に入る。
夏休みだから先生の人数は少ないが、何人かの先生は書類か何か作業を行っている。
「あら、藤之宮君」
担任の先生が俺に話しかける。
「あ、伊集院先生はおられますか?」
「いるわよ」
先生の視線の先には弁当を黙々と食べる伊集院先生の姿が見えた。
……何か、哀愁を漂わせてる様に見えるんだが。
「ありがとうございます」
俺は黙々と弁当を食べてる伊集院先生の方に近づくと。
俺の目には妙なモノが入った。
伊集院先生の視線の先。
女の子の……人形。
フィギュアだった。
5㎝位のデフォルメされた小さなタイプだったが、俺はソレを見て声を上げそうになる。
この世界には存在しないハズのモノだからだ。
そして、呟いてしまった。
「綾波……レイ」
「!?」
伊集院先生は驚いた顔で俺の方を向いた。
「……先生……」
「藤之宮君……君は今……」
「綾波レイ……と言いました」
「……何故、その名を知ってる? この世界には存在しないハズなのに……」
「……屋上に行きましょうか。ここでは……拙いです」
「……分かった」
屋上に上がる。
丁度、日が陰っていて直射日光の暑さは感じられない。
屋上には誰もいない。
伊集院先生にベンチの方に行くよう促される。
俺はそれに付いて行く。
伊集院先生はベンチに座り、俺はその前に立つ。
「……ふぅ。アレス君、君も転生者なのかい?」
単刀直入だった。
「……まあ、そんなもんですね。ただ、俺は頼まれただけですが」
「何を、頼まれたんだい?」
「……伊集院先生、1つ聞きたい。貴方は、なのは達の事をどう思ってるんですか?」
俺の正体を伝える前に、伊集院先生の本音を知りたかったのだ。
なのは達にそこまで付きまとう事をしないで、ただ学校の先生を続けている伊集院先生。
「……まあ、彼女達と何かしら縁を持ちたかったのは事実だよ。だけど、学校の先生を続けていくウチにね」
伊集院先生は一呼吸置いて、俺は生唾をゴクリと飲み込む。
「小学生の女の子を眺めている方が良いと言う事に気付いてね」
俺は足を滑らせた。
「勘違いしないでくれよ? 僕はイエス! ロリータ! ノー! タッチ! を信条にしてるからね」
なるほど、つまりはいずれは大人になっていくなのは達に固執するより、小学校の先生をやって色々な女の子を眺めている方が良いと言う事か。
限りなくクロに近いグレーゾーンだが。
だが、事件を起こしていたらこうやって教職員になる事は不可能だし。
一応は……真面目にやってると言う事だろうか。
何かしら被害が起きていたならさっさと天界に送り返してやるのだが。
今現在はこの学校で騒ぎを起こした訳でもない。
……気と魔力の波長をエヴァに記録させておくか。
事件を起こさないと信じて今はこのまま続けさせるか。
「……まあ、先生の言葉を信じますが。俺は先生を転生させた見習い神の上司に頼まれて、この世界に転生した奴らを捕まえに来たのです」
「何と!」
「先生はギリギリセーフですが、もし少女を傷つけるとかそう言う行為をした時は天界に戻って貰います」
「……分かった。僕としても、この学校はなかなか楽しいからね。大人しくさせてもらうよ」
一応は交渉は成立したみたいだ。
しかし、こんなので……結婚は出来るのだろうか。
まあ、人それぞれだから俺はそこまではツッコミは入れないが。
「それに、僕の能力を使えばなのは達だってずっと幼い姿でいるからね」
なるほど。なのは達の人形を作って飾っておくわけか。
まあ、人形なら……実質被害は無いな。
ただ、本人達に知られると精神的苦痛が出るかもしれないが。そこら辺は……言わないでおこうか。
実物大人形持ってはいけないと言う法律は無いしな。
「……その言葉を信じてますよ。それでは」
俺は伊集院先生と別れた。
今日はヴォルケンリッターの4人と魔力蒐集だ。
なのはとフェイト、恭也さんと美由希さんは用事があって来られないとの事。
……なのはとフェイトははやて、アリサ、すずか、アリシアの4人と過ごすとか。
……。妙な悪巧みとか考えていないだろうな。
〈女の子は色々と秘密が多いのですよ? お兄様?〉
〈それはまあ、そうなんだが〉
エヴァにそう言われると信じるしかない。
まあ、多分大丈夫だろうと思うのだが。
「それじゃあ、アレスちゃんは私と一緒に行きましょうね~」
そう言って俺の手を取るのは後方支援担当で参謀を務めるシャマルさんだ。
「待て? シャマル?」
そう言ってレヴァンティンを鞘から抜いて構えるシグナムがいた。
言うまでもなく、目が据わっていた。
ヴィータとザフィーラは顔に手を当てていた。
『ダメだこりゃ』
声は聞こえなかったが、2人の様子を見てそんな声が聞こえてきた。
「シグナム? 貴女は一人でも充分に戦えるわ。でも、私は後方支援担当だから護衛が必要なのよ? そうなると必然的にアレスちゃんが私の護衛に付く事になるのよ?」
言ってることは至極正論なのだが、シャマルは俺をしっかりと抱きしめていてなおかつ頭を撫でている状態だった。
どう見ても説得力が皆無だ。
「シャマル、なんて羨ましい……じゃなくて! そんなにひっついたらアレスちゃんに迷惑だろう! 離れろ!」
「そんな事無いわよね? こんな美人のお姉ちゃんに抱きしめられて嬉しいわよね?」
シャマルさん、其処でそんな話題を振らないで下さい。
まあ、シャマルは意外と胸が大きいんだが。
「の、望むなら私も抱きしめてあげるぞ? いつでも良いんだぞ?」
顔を赤くしてるシグナムがいる。
最近、この2人だけバグが進行してるように思えるのだが。
〈ヴィータ、俺はどうすれば良いんだ?〉
〈あ、あたしに振るなよ〉
やはりヴィータでは無理か。
俺は無言でザフィーラを見る。
無言で視線を逸らすザフィーラ。
普段は頼りがいがあるが、この時だけは不甲斐ない状態になるんだよな。
「あ~? シグナムはザフィーラ、シャマルはヴィータと行けば? 俺は1人でも大丈夫だし」
「……」
「……」
明らかに落胆してる表情で俺の顔を見るの止めて貰えませんかねぇ?
「あんまり我が儘言うと……嫌いになるかも知れませんよ?」
「行くわよ! ヴィータ!」
「さあ!行こうか、ザフィーラ!」
ザフィーラの手を掴んで飛ぶシグナムとヴィータの襟首を掴んで飛んでいくシャマルがいた。
「シャマル! あたしはネコじゃねぇ!」
怒鳴るヴィータ。
そんな感じで4人はおのおのの場所に飛んでいった。
〈上手くいきましたわね?〉
〈ああ、このままだと俺にとんでもない事が起こりそうだったからな〉
〈確かにそうですわねぇ。でも、シャマルさんが後方支援担当ですから正論と言えば正論でしたけど〉
〈そうなると、これから先ずっとシャマルと一緒になるだろ。シグナムが不利になる〉
〈お兄様は優しいですわね?〉
〈別に、優しいわけじゃないんだがな。平等にしないと、不公平って言うのは嫌いなんだ〉
〈うふふ、そう言うことにしておきますね♪〉
〈……〉
さて、俺も獲物を探すとしようかな。
「!?」
【お兄様】
「ああ、これは……どうやら転生者っぽいな」
散策していたら突然現れた気配。
気と魔力は……それなりにある。
一体、どんな能力なのだろうか。
俺は現れた気配に向けて飛んで行く。
「……」
「……」
俺の目の前に現れた男。
銀髪で如何にも……な容姿の美男子だった。
何処かで見たような感じではあるが。
思い出せない。
「くくく、既にはやて達と接触していたのか」
男はイヤらしい笑みを浮かべていた。
「……貴様は?」
「ふん。貴様の様な小僧、さっさと殺してはやてと恋仲になるか」
典型的な外道転生者の様だ。
この様な輩はさっさと退場をお願いしようかな。
「エヴァ、結界を頼む」
【了解です、お兄様。
俺と転生者の周囲が魔力結界に覆われる。
これでネコの子1匹出入りが出来なくなる。
「くふふふふ……」
男は突然、笑い出した。
「……何がおかしい?」
「これが笑わずにいられるモノか。今まで出会った奴らは……貰ったチート能力で勝てると慢心して俺に勝負を挑み、全員負けて来た」
「……それがどうした?」
「逃げられないように、わざわざ結界を張って……むざむざ俺に殺されたんだよ。バカな奴らだった」
何が言いたいのだろうか。如何に自分の能力が優れているのか自慢したいのだろうか?
「前世は無力な人間だったと言うことを忘れて、貰った能力で有頂天になって……な」
「なん……だと?」
少しだけ、きな臭い予感を感じた。
「さあ、てめぇはどんな姿に戻るのか! 見させてもらうぜ!」
ヤツの身体から噴き出す霧の様な蒸気。
もしや、ヤツは!
「お前の能力は! 前世に強制的に戻すのか!?」
「ご名答! 幽遊白書にもあっただろ? 蔵馬が人間から前世の妖弧・蔵馬に戻ったシーンがよ! だが、転生者共の前世は全て人間! 普通の人間が、魔力と気を扱う俺に勝てる道理があるわけないだろ!」
そう言って高笑いする男。
なるほど、よく見たら男の容姿は妖弧・蔵馬に似てるのか。
どうやら、この霧はヤツ自身には作用しないみたいだ。
だが、実に残念だったな。
〈運が悪いですわね、あの転生者〉
〈ああ。わざわざ、俺とエヴァを最強状態に戻してくれるのだからな〉
俺は心の中で大笑いしていた。
わざわざ、自分から虎の穴に飛び込んで来てくれたのだから。
ことわざであったな。『鴨が葱を背負ってやって来た』と言うのが。
今回の場合は、更に鍋と調理器具まで背負っていた状態だ。
俺とエヴァの身体に変化が起こる。
エヴァは本の状態から前世の吸血鬼の真祖に戻る。
俺も同じ様に吸血鬼の真祖に戻る。
「さあ、どんなブサイク面を……!」
男は俺とエヴァの姿を見て絶句した。
さて、口調を前世の時の口調に戻そうかな。
「あら、どうしたのかしら? アタシの姿に見覚えがあるのかしら?」
「お久しぶりですね、お姉様?」
アタシはエヴァと互いの顔を見合っていた。
今の服装は、学生時代のブレザーだった。
ちなみに、中等部の制服だ。
「あ、な、な……何で……エヴァンジェリンが……2人……」
顔を青くして絞り出す様な声で喋る転生者。
「初めまして、アタシの名はアリス」
「私の名はエヴァンジェリンと申します」
アタシとエヴァはピッタリ息を合わせて一礼する。
「アリス……? エヴァンジェリン……?」
「まあ、貴方が知ってる世界ではエヴァは一人っ娘だったと思うけど、アタシがいた世界では双子だったのよ?」
「ッ!」
「それにしても、わざわざアタシとエヴァを最強状態に戻してくれるなんて、感謝するわ」
「な、何で……お前等の前世は……人間じゃなかったのか?」
「あら? アタシとエヴァは貴方達と違って頼まれたのよ。貴方達みたいな存在を捕まえてくれと……ね」
「そ、そんな」
後ずさりする転生者。
「あら、折角アタシ達の姿を見たのだから」
「そうねですわねぇ? ちょっと、お相手をお願いしようかしらね?」
「ひ……ひぃー!」
アタシは有無を言わさず転生者に襲いかかった。
「金髪幼女恐い金髪幼女恐い金髪幼女恐い……」
虚ろな目をしてブツブツ呟く転生者。
縄でグルグル巻きに縛り上げて身動きが取れない状態にしている。
「しっかりトラウマを植え付けてしまいましたね……」
「良いんじゃないの? また転生したら今度は真人間として生きることが出来そうだから」
アタシとエヴァは顔を見合わせていた。
「転生者を引き取りに……」
アタシ達の前に現れたのは男性型の天使だった。
「アレス様、また女の子として転生されたのですか?」
「うるさいわね。こいつの能力のせいで前世の姿に戻らされただけよ」
そう言って転生者の背中を軽く蹴る。
「ふぎゃっ!」
「そ、そうでしたか……。てっきり、女の子の姿の方が気に入られてしまったのかと思いましたよ?」
「それ以上ナメた事言うと、神界に戻った時に特別稽古(と言う名の
「ナマ言ってすいませんでしたー!」
器用に空中で土下座する天使。
たまーにこんな事を言う天使がいるもんだから、アタシの神界において威厳が無いのか悩む時がある。
「えっと……お姉様って……神界ではそんなに偉い方では無いのですか?」
エヴァはちょっとの期間しか神界にいなかったから、アタシの立場の事は詳しくは知らないのだ。
「えーっと……」
視線が右往左往している天使。
「まあ、詳しく説明してなかったアタシが悪いのだけど。アタシが存在する世界では、アタシが1番下の神よ。役職上はね……」
「役職上……ですか?」
「そう、役職ではね。人間の会社で言えば、ヒラ社員みたいなもんよ」
「ヒラ社員ですか……」
苦笑いのエヴァ。
「その代わり、戦闘においての強さは1、2位を争うわね。アテナ姉さんとはほとんど互角と言ったところかしら」
「アテナ様ですか。1度しか拝見しておりませんでしたが。確かに、強さのオーラと言うか強者の感じをひしひしと感じましたわ……」
「ま、役職が上がると色々と面倒な事も起こるからアタシは今のままで充分だわ」
「そうなのですか」
「それじゃあ、コイツはお願いするわね」
「分かりました」
そう言って、天使は転生者を連れて転移した。
「……」
「……」
アタシとエヴァは顔を合わせる。
「いつになったら元の姿に戻るのかしら?」
「……さあ?」
まさか、ずっとこのままのハズは無いだろうと思う。
幽遊白書でも効力は一時的のモノだったし。
戻らなかったら非常に困る。
しかし、どれくらいの時間で元に戻るのだろうか?
このままではヴォルケンリッターの面々と顔を合わせられない。
「はあ……しばらくはこのまま雲隠れしておきましょうか。見られたら説明するのが面倒だし……」
「そうですわね。たまにお姉様と一緒に過ごしたかったですし」
しかし、エヴァは若干百合の気があるのでは無いかとアタシは思うことがある。
いえ、アタシがどんな姿でも好きなのでしょうね。
「さあ、結界を解いて……!?」
「お姉様!?」
「紫電一閃!!!」
聞き覚えのある声と共に結界が切り裂かれる。
「アレスちゃんは大丈夫!?」
直後に聞こえるのはシャマルの声だった。
……もしや、アタシの反応が結界で無くなったから、シグナムとシャマルが暴走して……。
「ぜぇぜぇ……アレスの事になると驚異的な力を発揮しやがる」
「……全くだ」
結界が解けてアタシとエヴァの前に現れたヴォルケンリッター。
「……非常に拙いわね」
「ええ、これはどうしましょうか」
お互い、頬に冷や汗を流しているアタシとエヴァ。
「アレスちゃんは無事か!? さあ、アレスちゃんを傷付けたヤツはレヴァンティンの錆にしてやる!!!」
「アレスちゃん! 怪我したなら私が癒してあげるわよ!」
予想通り暴走しているみたいだ。
「……全く、あたしとザフィーラの事も……ん?」
「……見覚えの無い娘がいる」
ヴィータとザフィーラの視線がアタシとエヴァを捉える。
「……む?」
「あら?」
同じようにシグナムとシャマルの視線もアタシとエヴァを捉えた。
「……」
「……」
「……」
「……」
全員が怪訝な表情に変わる。
「……」
「……」
アタシは頬をポリポリと掻いて、エヴァは視線を右往左往させている。
「……ここにいた黒髪の男の子がいたと思うんだけど? オメー、知らないか?」
ヴィータが目を細めてアタシに問い訪ねて来る。
「そうよ! 黒髪で右目が蒼くて左目が黒くて、クリクリした可愛い目で、小鼻で小さな口の可愛い顔した男の子よ! 知らない!?」
半狂乱になりかけのシャマルがそこにいた。
「何処に隠した? 言わねば斬る!」
目が据わってるピンクの侍はどう対処すれば良いのか。
「……」
ザフィーラと目が合う。
「……」
しばし見つめ合っていると。
「……ひょっとして、アレスか?」
何で分かったし。
野生の勘と言うヤツだろうか?
〈凄いですわね、ザフィーラさん。共通点は1つしか無かったはずですし〉
〈確かにねぇ……。エヴァ、貴女もアタシと同じで右目が蒼いはずなのにね〉
〈……そう言えば、そうでしたわね。でも、それだけで分かるのは凄いですわよ?〉
〈そうね。野生の勘が働いたのかもね〉
「……ザフィーラ? オメー、何言ってるんだ?」
「そうですわよ。確かに、この子達の右目はアレスちゃんと同じ蒼い瞳ですけど……」
「……だが、何故か知らないが。私もこっちの金髪の少女がアレスちゃんと重なって見えるんだ」
シグナムはアタシの顔を見ながら呟く。
「シグナムまで何を……あら? 確かに、見える……わ。どういう事なの?」
全員が困惑していた。
「もうちょっと待てば、アタシの正体が分かるわよ」
アタシはそう呟いた。
「え? 何を言って……」
その時、アタシとエヴァの身体が光り輝いた。
「っ!?」
「眩しい!」
その直後、元の身体に戻った俺と隣には漆黒で真紅の装飾が施された魔導書が浮いていた。
「……」
「……」
「……」
「……」
全員が呆然と俺の姿を見ていた。
エヴァはペンダントになって俺の首にかかる。
「ま、こういう訳だ」
「ちょ、ちょっと待て! どういう訳かさっぱり分からないぞ! 説明しろ!」
顔を赤くするヴィータがいた。
「これは……さすがにアレスちゃんでも見逃す事が出来ない事象だわ?」
「ああ……。たっぷりと説明をして貰おうかな。でなければ、私とシャマルも主はやての様に可愛がって貰うしかあるまい!」
シグナムの最後の台詞は無視した方が良いのだろうか。
「分かったよ。とりあえず、はやての家に帰ってから説明するよ」
ここで説明するより、はやての家に帰ってから説明した方がいいだろう。漫画も置いてあるし。
こんな事なら説明しておくべきだったよなぁ。
『うっかり』前世の姿を見られてしまいましたw