魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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物語は更に加速します


第27話 目覚めた夜天の書

 

 

 

 

 

アリサとすずかが誘拐された事件から1週間過ぎました。

 

気が付けば、もう夏休み直前。

 

毎日暑い盛りの日々が続きます。

 

例によって、はやての家に行く俺達。

 

アリサとすずかも塾はお休みでいつ復帰するか目処は全く立っていません。

 

復帰出来る日が来るのか疑問でもありますが。

 

昨日、シグナムから連絡があって400ページ到達したとの事。

 

それなら、明日に行くと伝えておいた。

 

だから、今日ははやての家は全員勢揃いしている。

 

ちなみに、フェイトは来ていない。

 

アリシアがようやくフェイトと同じ位の体格になったので、こちらに引っ越して来る準備の為だ。

 

……気が付いたら、隣の家が既にウチに買われていたのだが。

 

いつの間に進めていたのやら。

 

とりあえず、近日中にテスタロッサ一家はウチの隣に引っ越して来る予定だ。

 

 

 

 

 

 

はやての家に到着して、俺達はリビングに案内される。

 

リビングに着くと八神家全員揃っていました。

 

アリサとすずかは練習用杖を持ってネギま式魔法の練習でこちらの方は見ていない。

 

まずは集中させないと成功率は低くなるのは当たり前だからな。

 

「プラクテ・ビギ・ナル 火よ灯れ(アールデスカット)

 

「……点かないね」

 

「ウキー! あとちょっとなのにー!」

 

杖からキラキラと光が出てるからあとちょっとなのは確かなのだが。

 

まあ、精進あるのみだ、頑張れアリサ。

 

咆吼してるアリサを後目に俺ははやて達の方を見る。

 

「主はやて、400ページ超えたので管制人格を起動させる事が出来ます」

 

そう言ってシグナムははやてに向けて夜天の書を差し出した。

 

「そっか……いよいよやな。ところで、みんなはその管制人格さんと会った事あるんかいな?」

 

「……会った事はあるはずなのですが」

 

「わりぃ……記憶に無いんだ」

 

俯くシグナムとヴィータ。

 

シャマルとザフィーラも同じように俯いていた。

 

「そっか……。エヴァちゃんは? 知ってる?」

 

【ハイ、知ってますよ。と言っても、完成した数日しか一緒にいませんでしたけど】

 

「ほほぉ~、どんな感じの人や?」

 

【そうですね、そちらのシグナムさんみたいな大人の女性で性格は冷静な感じです】

 

「ほ~、クール美女か……それはええな。で、胸は? 大きいんかいな?」

 

……このタヌキ、やっぱり胸フェチだったか。

 

あんまりシグナムとかシャマルにそう言う事してる様に見えなかったが。

 

【えっと、結構ありましたよ? シグナムさんと同格……だったと思いました】

 

「それは楽しみやな! よし、クールタイプなら眼鏡とか似合いそうやな!」

 

このタヌキはコスプレでもさせる気か。

 

「んな事は良いからさっさと起動させんかい」

 

「焦る男は嫌われるで? あと、夜が早い男も」

 

ニヤニヤ笑いながらはやては夜天の書を手に取った。

 

と言うか9歳児の台詞じゃねぇ。1回、部屋を捜索して怪しげな本は没収しないといけないな。

 

『言っておくが、俺の夜は一回の時間は長いし、回数も半端無いんだぜ?』と言いたかったが、どう見てもろくでもない事になりそうだったので黙っておいた。

 

「良いから、起動しろ」

 

「分かったで~」

 

そう言ってはやては夜天の書を見つめた。

 

全員が固唾を飲んで見守っていた。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

「何て言えばええんや?」

 

全員がすっころんだ。

 

【えっと、特に決まった呪文とかはありませんけど。それなら『我は夜天の書の主なり。この手に力を……封印、解放』と】

 

「エラい中二臭い台詞やけど……ええか。『我は夜天の書の主なり。この手に力を……封印、解放』」

 

そう言うと、夜天の書は光輝いた。

 

解放(ベフライウング)

 

夜天の書は開いて勢い良くページをはためかせる。

 

「うわわ!」

 

【……また、全てが終わってしまった……。一体、幾たびこんな悲しみを繰り返せば良いのだろう……】

 

夜天の書から聞こえてくる女性の声。

 

うむ、リインフォースの声だ。

 

と言っても、今はまだその名は付けて貰ってはいないのだが。

 

「なんや……エラい暗い雰囲気を漂わせとるなぁ……」

 

そう呟くはやて。

 

確かに、暗い雰囲気が漂ってる。

 

ってか、その台詞はちょっと違うと思うのだが。

 

【……ん? まだ、完全状態ではない……?】

 

「えっと、管制人格さんでええかな?」

 

【……その声は……主ですか。はい、私は夜天の書の管制人格です】

 

「そっか。無事に起動出来たみたいやな」

 

【ええ。ですが、そのままですと主のリンカーコアはいずれは……】

 

【久しぶりね?】

 

エヴァが話しかけた。

 

【……その声は……姉上……ですか?】

 

少しビックリした感じの声をあげる夜天の書。

 

【ええ、そうですよ。久しぶりに会うけど、貴女……随分と変わってしまったわね?】

 

【……はい。姉上と別れてから、何代に渡っていろんな人と契約して来ました。ですが、その中に私を改造するマスターがいて……】

 

【それで、今はそんな無茶苦茶になってしまったのね?】

 

【そうです。無限転生機能と防衛プログラム『ナハトヴァール』が……暴走してしまう……壊れた魔導書になってしまいました】

 

【全く。ろくでもない人がいたものですね。安心なさい、私の中にかつての貴女の姿のデータがバックアップとして残ってます】

 

【え?】

 

【だから、私がここにいる限り、貴女はもう『闇の書』とは呼ばせないわ。かつての姿、魔法蒐集デバイス『夜天の魔導書』に戻るのよ】

 

【ありがとうございます、姉上】

 

話は一旦区切りがついたみたいだから、自己紹介しようかな。

 

「話は良いか? エヴァ?」

 

【はい、大丈夫ですよ?】

 

【貴方は?】

 

「初めまして……だな。『武神の魔導書』の主、藤之宮アレスだ。よろしくな?」

 

【こちらこそ、よろしくお願いします。貴方が……姉上の主ですか。しかし、今……姉上の事を『エヴァ』と読んでいましたが?】

 

声だけだからどんな表情してるかよく分からんが、多分不思議そうな顔をしているのだろう。

 

「ああ、名前を付けたんだ。武神の魔導書だと呼びにくいしな。『エヴァンジェリン』と言う名前だ」

 

【そうですか】

 

「そうやな、アレス君の書に名前付けてて私の書に付けない訳にいかへんな。待っててな? ええ名前つけたるわ」

 

はやてはそう言って腕組みしてうんうん唸り始めた。

 

「どんな名前がええやろか……エリザベス……なんか違うな」

 

「アンネ……と言うのは?」

 

「いや、あたしはクラーラと言うのが……」

 

「私はシャルロッテが……」

 

「カタリーナと言うのはどうだろうか……?」

 

八神一家がゴソゴソ話し合ってるのが俺の耳に聞こえる。

 

はやてが言ったのは英語名だが、さすがヴォルケンリッターと言ったところか。

 

全員ドイツ名で言ってるんだが。

 

ちなみにザフィーラ、『カタリーナ』はエヴァがかつて使っていた『キャサリン』のドイツ名だぜ?

 

 

ちょっとうんちく話しになるが、エヴァの前世の名は『エヴァンジェリン・A.K・マクダウェル』と言う名だ。

 

他の二次創作とかでは『A.K』は『アタナシア・キティ』とよく呼ばれてるが、実際には『アタナシア・キャサリン』なんだぜ?

 

もちろん、証拠はある。

 

エヴァの仮契約カードである。

 

 

EVANGELINA(エウアンゲリナ) ATHANASIA(アタナシア) ECATERINA(エカテリーナ) MACDOVELL(マクダウェル)

 

 

ラテン読みにするとこうなるのだ。

 

ちなみに『ECATERINA(エカテリーナ)』はロシア系、ルーマニア系の女性の名で英語圏になると『CATHERINE(キャサリン)』である。

 

 

 

いや~、調べると奥が深いんだな~と思う。

 

「何か……みんなのはエラい強そうと言うか……独特な名前になるなぁ……なしてやろ?」

 

首を傾げるはやて。

 

まあ、あちらは放っておこう。

 

「ま、そんな訳だ。夜天の書さん、もう悪夢は終わりに近いんだぜ?」

 

【そうです。全く、今までの主達は何を考えていたのでしょうか】

 

【ありがとうございます、姉上、アレス殿】

 

「あ~、呼び捨てで良いぜ?」

 

【……分かりました、アレス。これからもよろしくおねがいします】

 

 

 

 

 

「決めた! 夜天の主の名において汝に新たな名を贈る。強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール、『リインフォース』! どうや!?」

 

胸を張ってエヘンと言いそうな雰囲気ではやては言う。

 

うむ、違う名前になったらどうしようかと思ったが、杞憂だったな。

 

「おお、良い名前じゃないか」

 

【良い名前ですわ】

 

俺とエヴァは賛同する。

 

ヴォルケンリッターのメンツも全員頷いていた。

 

「良い名前だね」

 

アリサとすずかの所に行っていたなのはも戻ってきてはやてにそう言う。

 

【ありがとうございます、主はやて……】

 

「さあ、名前も決まった! ……あとはどないするんや?」

 

【そうですわね……私の中にあるバックアップをリインフォースの中にコピーすれば良いのですが……】

 

【姉上、その前に私の中にある自動防衛プログラム(ナハトヴァール)をどうにかしないと……姉上を浸食する可能性があります】

 

ちなみにエヴァもブックモードになってるから、2冊の本が声を出して会話しているのだ。

 

端から見るとかなりシュールな光景である。

 

【ん~……一応ですが私はリインフォースより上位の型式みたいですから、浸食の可能性は低いのですが。でも、改変されてるから私でも浸食される可能性は否定出来ませんわね。自動防衛プログラムを切り離すとか、一時的に停止させる事は出来ますか?】

 

【それでしたら、管理者権限を使用可能にして自動防衛プログラムを切り離す事は可能です】

 

【……なら大丈夫ね。管理者権限を使用可能にするには?】

 

【私を完成させる事です。666ページ集めると可能になります】

 

【分かったわ、リインフォース。当面は666ページまで集める事を目標にしましょう】

 

【はい、姉上】

 

「良かったな、リインフォース」

 

【ありがとうございます、アレス。もし、貴方と姉上がいなければ……私はまた……】

 

「気にするな。悪夢は終わらせてやる」

 

「良かったな、リインフォース。みんな」

 

全員が微笑んでいた。

 

あと、少しで……終わる。

 

もう、呪われた書とも闇の書とも呼ばせない。

 

古代ベルカ式魔法蒐集デバイス……「夜天の魔導書」なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

そして、夏休みが来た。

 

例によって『夏休みの友』だとか、『算数ドリル』、『国語ドリル』だとか、面倒な宿題が沢山出てきました。

 

漢字の書き取りが非常に面倒なのだが。

 

分身体にやらせたろか……?

 

だが、分身体も文句言うだろうな……。

 

仕方ない、自力でやるか。

 

今年の夏休みは面倒な事が多いから、さっさと終わらせておかないと。

 

最後になって発狂したくないからな。

 

と言うわけで、終業式が終わった日の晩に片づける事にした。

 

家に着いて2階に上がり、隣の家を見ると何やら家の掃除をしている人が。

 

見るとテスタロッサ一家だった。

 

窓を拭くプレシア女史、中のふき掃除をしているリニス、アリシアとフェイトは何やら運んでいる。

 

アルフもゴミを片づけていた。

 

しかし、女性だけの家と言うのも大丈夫だろうか?と思ったが、全員下手な一般人より強かった事を思い出す。

 

アリシアだけはまだ普通の子だが、他のメンツが充分強いから大丈夫だろう。

 

強盗とか入ったら強盗がヤバいな。

 

「あら? フェイトとアリシアじゃない。そっか、今日引っ越してきたのね?」

 

「でも、アリシアちゃんとフェイトちゃん……ホントそっくりだね」

 

アリサとすずかは隣の家の光景を見ながらそんな事を言っている。

 

と言うか、普通に俺の部屋に来てるんだが。

 

「にゃ! フェイトちゃんとアリシアちゃんが引っ越して来てるね」

 

扉を開けて現れたのはさっき別れたなのはだった。

 

速攻で私服に着替えての登場だった。

 

「エラい早い登場だな……」

 

俺はまだ着替えていないのだが。

 

……アリサ、すずか。だから普通に着替えてるんじゃねぇよ。

 

 

 

 

 

「アレスちゃ~ん。隣のテスタロッサさんから引っ越しソバ来てるわよ~」

 

下から呼ぶ母さんの声。

 

と言うか、引っ越しソバの知識はどこから仕入れたのか。

 

まあ、プレシア女史だしな……と言うことで片づける事にした。

 

「ほら、行くぞ。早く来ないと全部食べるぞ?」

 

俺は3人に促す。

 

ちなみに、夏休みの宿題をやっていたのだ。

 

アリサとすずかは大丈夫だったが、なのははかなり疲れているのが目に見えて分かった。

 

「ううぅ~休憩なの……」

 

「なのは……アンタ……」

 

「行こ?」

 

アリサとすずかはなのはを両脇に抱えて一緒に降りる。

 

 

 

 

 

リビングに到着すると実に華やかな事になっていた。

 

テーブルの上にあるのは暑い日にもってこいなザル蕎麦だった。

 

ちなみに俺のだけは大盛りのざる蕎麦。

 

まあ、母さんなら俺の事熟知してるから当然なのだが。

 

そして、今更ながら気付いたのは、男性は俺だけじゃないかと言う事。

 

まあ、アリサとすずかが男性恐怖症だから仕方ないのだが。

 

……気分は女子校に紛れ込んでしまった新任男性教師みたいな感じである。

 

「それでは、改めまして……隣に引っ越して来たプレシア・テスタロッサと申します」

 

「こちらこそ、藤之宮直美です」

 

俺の母さんとプレシア女史がお辞儀した。

 

その後、ちょこっと自己紹介をしてから全員で蕎麦を食べる。

 

「そちらのアレスちゃんには大変、お世話になりまして……」

 

「あらあら、アレスちゃんから伺ってはおりますけど……」

 

他愛ない会話が母さんとプレシア女史の間で繰り広げられる。

 

「それで、ウチの娘2人をお嫁さんにして貰いたいと……」

 

一瞬にして他愛なくなってきた。

 

聞こえないフリして俺は蕎麦をすする。

 

 

「む~」

 

 

「?」

 

呻るような声が聞こえたので見ると、なのはが頬を膨らませていた。

 

どう見てもヤキモチです。

 

 

「じー」

「ジトー」

 

 

更に声が聞こえたので見るとアリサとすずかの2人がジト目で俺の顔を見ていた。

 

「……」

 

何事も無かった様に俺は蕎麦に視線を移す。

 

 

「えへへ」

「うふふ」

 

 

「……」

 

嬉しそうな笑い声が聞こえたので見るとアリシアとフェイトの2人がニコニコ微笑んでいた。

 

なんつーか、どうあがいても絶望みたいな雰囲気に思える。

 

と言うか、これ以上いらん事は言わんで貰いたいんだが。

 

「あらあら、アレスちゃんのお嫁さんですか。困ったわねぇ~、お隣のなのはちゃんとバニングスさんのアリサちゃんと月村さんのすずかちゃんもお嫁にって言われてるのにねぇ~」

 

「それはそれは競争率が高そうですわね。(う~ん、ミッドのベルカ自治区は確か……一夫多妻だと思ったけど)」

 

プレシア女史の最後の呟きはしっかり聞こえたが、今は聞こえなかった事にする。

 

「フェイトを頼むよ~」

 

「アリシアをよろしくお願いします」

 

アルフとリニスに頼まれてしまった。

 

え? もう確定事項なんですか?

 

「でも、最終はアレスちゃんが決めることですからね」

 

「そうですわね(もし、2人を選ばなくても妾として送るしかないわね)」

 

プレシア女史が最後にろくでも無いこと言ってるが、俺はそれも無視することにした。

 

全員の視線が俺の顔にザクザクと突き刺さる。

 

「……結婚出来るのは男18歳、女の子は16歳だからな。今すぐには決めないぞ」

 

俺はそう言って蕎麦をすすった。

 

 

 

 

 

―――――八神家

 

 

「はっ!? なんや……出遅れた気が!?」

 

「どうしたのかしら?」

 

「シャマル! 何か、アレス君の家で起きとる気がする!」

 

「何ですって……!?」

 

「なんやろ……何か大きく遅れた気がする……!」

 

「……大丈夫です、私とシグナムがいればアレスちゃんの心は!」

 

「そうやな。2人とも、胸大きいから……それを使えば!」

 

「そうです! アレスちゃんは胸が大きい人が好みと私は予想してます!」

 

「なるほど……それなら私も頑張らんといけんな!」

 

「ええ! アレスちゃんの心をがっしりと掴みましょう!」

 

 

 

 

 

―――――アースラ艦内

 

 

「!?」

 

「どうしました、艦長?」

 

「エイミィ……何か、大きく遅れた様な気がしました」

 

「え? 別に……アースラにアルカンシェル搭載状況に遅れは」

 

「いいえ。アレスちゃんに関わる何か……です」

 

「……はあ……」

 

「……拙いわね……これは早くはやてちゃんを養子に迎えろと言う神託かも知れないわね」

 

「……(艦長の勘はこの場合は99%当たるからね)」

 

「そう言えば、最近アレスちゃんから連絡が無いわね。うん、ちょっと様子がてら見に行ってみようかしら?」

 

『そうは問屋が卸さないわよ! リンディ!』

 

「レティ! 貴女!?」

 

『そろそろ、貴女が行動を起こす様な気がしてたけど。私の予想通りだったわね!』

 

「何よ! 私はきちんと仕事してるわよ!」

 

『嘘仰い! ここんところ、アレスちゃんから連絡が来ないから寂しいなぁ……とか思ってたんでしょ!?』

 

「ぐ! そ、そんなことは無いわよ! (全く、何でこういう勘だけはずば抜けて高いのかしら!?)」

 

『私の目の黒いウチは貴女の好きな様にさせないわよ! さあ、この書類をさっさと提出して頂戴!』

 

「!? 貴女、その書類は期限がまだ1ヶ月あるでしょ!?」

 

『気が変わったのよ! 締め切りは明日! お願いするわよ? リンディ提督?』

 

「く! レティ! 貴女、いつか地獄に落としてあげるわよ!」

 

「……(不毛な争いに見えるけど。まあ、良いか)」

 

 

 

 

 

……?

 

何だろう、はやてとリンディさんが何か決意した様に思えたが?

 

あと、シャマルが何か心外な事を言ってるような?

 

まあ、いいや。

 

ちなみに俺達は俺の部屋に集まってネギま!式魔法の練習大会(?)的な事になっていた。

 

「プラクテ・ビギ・ナル 火よ灯れ(アールデスカット)!」

 

アリシアが持つ練習用杖から小さな火が点る。

 

「あー!」

 

「良いなぁ」

 

ビックリ目で見るアリサと羨望の眼差しで見るすずか。

 

「えへへ、凄いでしょ?」

 

「へ~、出来るようになったんだ?」

 

「うん。でも、リニスの話だと魔法の素質はあんまり無いんだって。これが出来るようになったの1年かかったし」

 

少し俯き気味に話すアリシア。

 

なるほど、1年はちょっと遅い方だな。

 

ひょっとして、アリシアは『気』の方が向いてる可能性があるな。

 

今度、試してみるか。

 

「い、1年」

 

「アレス君の話なら半年から8ヶ月位だって言ってたけど…」

 

「まあ、すずかが言ったのはあくまで平均だからね。中には3ヶ月で出来る人もいれば1年半かかったと言う人もいたし」

 

「アンタはどうだったのよ?」

 

「俺か? 俺は……どれくらい掛かったっけ? エヴァは覚えてる?」

 

【えっとですね……確か……お兄様は1年3ヶ月じゃありませんでした? 私は3ヶ月くらいでしたけど…】

 

「あ~あ~、そう言えばそうだったな。魔力の流れ掴むのに相当時間かかったからな~」

 

「え……アレス君、アリシアちゃんより時間かかってる……」

 

ビックリしてるすずか。

 

なのはとアリサもビックリ顔で俺の方を見てる。

 

「だから言っただろ? 魔法に関しては俺は素質無いって。1000年近く鍛錬してようやくここまで到達したんだからな」

 

「1000年って、普通の人だと無理だよ?」

 

「まあな。少ない魔力で効率良く魔法を行使する技術を磨いてきたからここまで来られたんだ。実際、魔法だけ使用した勝負ならなのはやフェイト、エヴァには絶対勝てないからな」

 

何度も言ってるが、俺は魔法の素質は無いのだ。

 

『気』の方は幸い素質あったのでここまで来ることが出来たのだ。

 

「え? でも、いつもアレスが勝ってるんだけど」

 

「そりゃあ、俺はこれがあるからな」

 

俺はそう言って床にあぐらかいて座る。

 

「第1~第7チャクラ、起動」

 

俺は身体にある7つのチャクラを起動させる。

 

周囲の空気が変わる。

 

「こ、これは……」

 

「うわ、お兄ちゃんに……魔力と違う力が……」

 

「うう、こればかりはアレス君に勝てないの……」

 

「あ、アンタ……その力は……」

 

「これって……アレス君の……本気?」

 

全員一様に驚いている。

 

「身体にあるチャクラに気を通して回して身体能力を上げる戦闘技法、『念法』だ。これを習得してるか俺は全員に勝てるんだ」

 

【元々お兄様はこちらが専門なのですよ?】

 

「なるほど、アンタが強いと言うのはよーく分かったわ。1つ聞くけど、あたし達にそれは使う事は可能なの?」

 

「まあ、可能だな。ちなみになのはも一応使えるが、素質が無いから1段階で止まってる」

 

「え? なのはちゃんも使えるの?」

 

「えっと……一応だけど。でも、アレス君を象としたら私は蟻みたいなものなの……」

 

「なるほど……」

 

「不思議な事に、魔力量が多い人ほど気はあまり上手くないんだ。まあ、この場合だとなのはとエヴァだな。2人は絶望的に気を扱う素質は無い」

 

「にゃはは……」

 

両手の人指し指の先をつんつんとつついて顔を真っ赤にしてるなのは。

 

「なるほど……ね。と言うことは、あたしやすずか、アリシア辺りはまだ気を扱う素質はある……と言うわけね?」

 

「うむ、あるだろうと思う。極希に両方ダメな人もいるらしいが、俺は未だ見たこと無いな。とりあえず、素質があるのは……」

 

俺は全員の顔を眺める。

 

「アリシアが一番あるな。次にアリサ、すずかの順だな。フェイトは多分、なのはとエヴァと大差無いな」

 

「えへへ、あたしが一番あるんだ~」

 

「うう、私はそっちの素質は無いんだ……」

 

「まあ、フェイトは魔法の素質が高いからエヴァやなのはと一緒に魔法の鍛錬だな。で……だ。アリシアはどうする? 俺と一緒に気を扱う方にするか?」

 

「うん! 早く強くなってお母さんやフェイトを守れる様になりたいからね!」

 

着々と進むアリシアチート計画。

 

俺の予想では最低で第5チャクラはまでは回せる様になるだろう。

 

上手くいけば俺と同じ第7チャクラまでいけるな。

 

やり方次第では下手な魔導師より強くなることが出来るな。

 

「むー……」

 

「まあ、アリサとすずかも同時進行だな。まずはチャクラを回すのには座禅を組んで自分の中にある気を感じるようにならないとダメだから」

 

「座禅?」

 

「まあ、座禅でなくとも精神を落ち着かせる事が出来れば良いが……」

 

「……座禅が無難ね」

 

そんなこんなでとうとうアリサとすずかも念法を操る道に一歩踏み込んできた。

 

「さあ、はやての事件を終わらせてゆっくりと修行したいものだな」

 

「アンタ、どんだけ強くなるつもりよ?」

 

「さあ? とりあえず、身体が出来てきたら身体に重力の負荷かけて身体能力を強化する予定だが?」

 

「アレス君、サ○ヤ人になるつもり?」

 

頬に冷や汗を流すすずか。

 

「とりあえず、前世の身体能力に匹敵する力は欲しいからな」

 

「今の状態じゃ……足りないの?」

 

【足りませんね。前世は龍樹を拳だけで沈めていましたから……】

 

 

「ぶふっ!!!」

 

 

エヴァの台詞を聞いてすずかが紅茶を噴き出していた。

 

「龍樹……?」

 

「ほれ、これだ」

 

俺は本棚にあるネギま!の単行本を指差した。

 

「あ~……思い出した。アレね……って! アンタ! あんなのを沈めたの!?」

 

「うむ、殴っても殴ってもなかなか気絶しないから流石に焦ったぜ」

 

「こっちが焦るわよ! あんなゴ○ラみたいなのと肉弾戦とか!」

 

「まあ、今の状態ならちょっと素手で勝てる気がしないな」

 

「にゃあ……これと……」

 

「凄い……」

 

「うわぁ……お兄ちゃん……実はバグキャラだったんだ」

 

ネギま!を見ていたなのは、フェイト、アリシアの3人が驚いた表情で俺の方を見ていた。

 

「ま、そんな訳だ。おっと、返して貰ったダイオラマ魔法球は隣の部屋に置いとくぜ。使うのは良いが、身体の年齢が増えていくと言うことだけは頭に入れて置けよ。調子に乗って入り浸ってたら……俺は責任取らんぞ?」

 

「分かったの」

 

「分かってるわよ」

 

「さすがに……ね?」

 

そんなこんなで時間は過ぎていくのであった。

 

 

 

 




 
フェイトは『魔力』、アリシアは『気』と言う風にしましたw

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