魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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変態に技術と知識をむやみやたら与えてはいけませんw



第26話 男と女の違い、すずかの決断

 

 

 

 

 

「ん……」

 

雀の鳴き声で目が覚める。

 

起きようとしたが、両腕をしっかりと握られて起きあがれなかった。

 

そう、両隣にアリサとすずかが可愛い寝息を立てて眠っているのだから。

 

しかし、母さん。この事を見越して……このベッドを買ったのか?

 

俺達が今寝ているベッドは特注サイズと言っても過言でない、7人は並んでも大丈夫な位大きなベッドだったからだ。

 

2人はしっかりと俺の腕を掴んで放す気配は微塵も無かった。

 

昨日、母さんが帰ってきて、アリサとすずかに全てを話した。

 

それを聞いて2人は大喜びしていた。

 

まあ、しばらく俺の家でお世話になるのだからな。

 

今日はアリサとすずかの着替え等を持って来るとの事。

 

幸い、部屋は結構空いてるし、2人増えるのは全く問題は無いのだ。

 

と言うか、2人は平然と俺の部屋で着替えるのだが。

 

小学校低学年の体育の着替えじゃないんだが……。

 

まあ、いいか……。

 

そうこうしてたらエヴァが起こしに来る。

 

寝ぼけ眼で2人は目を覚まして起き上がる。

 

「おはよう、アリサ、すずか」

 

俺は焦点が合ってない2人の顔を眺めながら挨拶する。

 

「……おはよ……アレス……」

 

「おはよう……アレス君……」

 

「ほれ、朝だぞ。学校に行くんだぞ?」

 

 

「……」

「……」

 

 

2人はまだ寝ぼけてるみたいだ。

 

男なら容赦なく関節技の1つでもかけて目を覚まさせるのだが、この2人にそんな事するわけにもいかない。

 

「しょうがねぇなぁ……」

 

俺はとりあえず、すずかに抱きついた。

 

「ひぇい!?」

 

驚きの声をあげて目を覚ます、すずか。

 

そのあと、更に俺はアリサに抱きつく。

 

「ひゃっ!?」

 

同じように驚きの声を上げてアリサも驚いた。

 

「朝だぞ? 遅刻するぞ?」

 

「アンタはぁ! 朝からレディに何て事するのよぉ!」

 

起き上がってアリサは俺にパンチを繰り出してくる。

 

「そんなことしてる暇があるなら、顔を洗うなり準備してくれよ」

 

俺はアリサのパンチをかわしながら部屋から出る。

 

「待ちなさい! レディに朝から抱きついて許されると思うの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

今日もパンとミロ、サラダに目玉焼きだった。

 

目の前にはアリサ、左斜め前にすずかが座ってる。

 

隣にはエヴァも座っている。

 

ちなみに、父さんは既に仕事に出ていた。

 

「アンタ、今日もミロ? たまには大人のあたしみたいにブラックコーヒー飲んでみるとかどう?」

 

そう言ってコーヒーを飲むアリサ。

 

はて?

 

アリサってミルクと砂糖入れていたような気がしたのだが?

 

そんな事を思いつつ俺はアリサがカップを口に付けてブラックコーヒーを飲む所を見つめた。

 

 

「にがっ」

 

 

アリサの小声が聞こえてきた。

 

単に大人ぶっていただけだった。

 

「今、『にがっ』って聞こえた気がしたのだが?」

 

「き、きき気のせいよ! 朝から空耳が聞こえたんじゃないの!?」

 

顔を赤くするアリサ。

 

「ほらほら、ミルクと砂糖を入れたらどうだ? ん~?」

 

俺は口元を釣り上げて笑いながらミルクと角砂糖を入れてる容器を指差す。

 

「う、うるさいわね! あたしはアンタより大人なのよ!? だからブラック飲むのよ!?」

 

そう言ってアリサはブラックコーヒーを飲む。

 

その度に苦虫を噛み潰したようなしかめ面していた。

 

「アリサちゃんったら……」

 

隣で苦笑しているすずか。ちなみに、すずかは紅茶に角砂糖を1つだけ入れて飲んでいた。

 

 

 

 

 

2人の制服と本日の時間割分の教科書等が届けられて。

 

あっと言う間に着替えて登校となる。

 

家を出ると、なのはが待っていた。

 

「アレス君おは……アリサちゃん、すずかちゃん?」

 

驚いた顔で俺達を見るなのは。

 

「おはよう、なのは」

 

「おはよう、なのはちゃん」

 

「おはよう、アリサちゃん、すずかちゃん……。2人とも、昨日はアレス君の家にお泊まりだったの?」

 

「うん、ちょっと……事情があって……」

 

「ごめんね。昨日はちょっとゴタゴタがあって……」

 

俺達は歩きながらそんな会話をする。

 

「そうなんだぁ……今日は私も泊まって良いかな?」

 

俺はアリサとすずかの顔を見る。

 

2人はゆっくりと頷く。

 

まあ、なのはなら別に問題は無いよな。

 

……しかし、アリサとすずかが誘拐された事件は言わざるを得ないのか。

 

実際には俺が関わる事件なのだが。

 

だが、なのはやフェイト、はやてだって無力化されてしまえば2人と同じ様に陵辱される可能性は大いにある。

 

アリシアも似たようなモノだな。

 

プレシア女史とかリニス、フェイトにアルフがいるからそう簡単に……と言いたいが。

 

昨日みたいな空間干渉系だと後手を踏んでしまう。

 

……やはり、魔導師がやった事件と言う事で皆に話した方が良いかもしれない。

 

こういう事例があると話せば、少しは警戒出来るだろうし。

 

俺だって四六時中皆と一緒にいられる訳じゃない。

 

だが、話すにしても内容が内容なだけに被害者の許可を得ないとダメだな。

 

「……なあ、アリサ、すずか。昨日の事件、なのは達に話しても大丈夫か?」

 

俺は2人の顔を見ながらそう言った。

 

「昨日の……事件?」

 

なのはは不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「ああ、ちょっとした……事件だ。アリサとすずかに関わる事でな。2人が良いと言えば、話せるんだが……」

 

アリサとすずかはお互い顔を見合わせていて、頷いた。

 

 

「良いわよ」

「良いよ」

 

 

あっさりと了承を得た。

 

「エラいあっさりと許可を出したな……」

 

「……まあ、なのは達にあたし達みたいな目に遭って貰っても困るし……」

 

「そうだね……。あんな目に遭うのは私達だけで充分だよ……」

 

2人はそう言って俯いた。

 

「えっと……な、何があったの?」

 

なのはは困惑した表情を浮かべていた。

 

「そうだな。今日学校が終わった後、はやての家に行こう。そこで話そうか」

 

「そうね」

 

「そうだね」

 

「……うん、分かったの」

 

そんな感じで俺達は学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

『あっ』と言う間に放課後になったぜ。

 

別段、今日はこれと言った事は起きていない。

 

強いて言えば、男性教師が担当だった教科は全て女性に変わったと言う事だな。

 

バニングス家と月村家が手を回したのだろう。

 

伊集院先生の接点が更に減ってしまったな。

 

……しかし、転生者のハズのあの先生は別に何もして来ないんだよな。

 

現状維持なのか、それとも……あの闇の書暴走事件の時に介入してくるのか。

 

ちなみに暴走事件は起こるのは間違いないと思う。

 

夜天の書の防衛プログラムを切り離すのは確実なのだろうから。

 

そう言えば、そろそろ400ページになると思うのだが。

 

今度、確認しておこうかな。

 

そんな事を思いつつ、俺達ははやての家に到着した。

 

 

 

 

 

勝手知ったる他人の家と言う訳でもないが、俺達はいつもの様にはやての家に上がる。

 

中に入ってはやての部屋に行くと主のはやてにフェイトとアリシアがいた。

 

3人とも読書タイムだった。

 

そう、昼休みにこっそりと分身してからプレシア女史の所に行き、事情を説明しておいたのだ。

 

無論、『しっかり教えておいてね♪』と非常に良い笑顔で言われたのは言うまでも無かった。

 

ちなみに、アリサとすずかの許可も得ている。

 

「あ、いらっしゃい」

 

はやては視線を上げて俺達の方を見る。

 

「久しぶり……かな?」

 

「みんな、久しぶり~」

 

フェイトはちょくちょく蒐集で会ってるが、アリシアと会うのは久しぶりだな。

 

結構成長した様に見える。

 

「久しぶりだね、アリシアちゃん」

 

和気藹々と挨拶を交わす。

 

「あ、お茶用意せんとあかんね」

 

「良いよ、俺が準備する」

 

そう言って俺は分身する。

 

分身体はキッチンに向かって行った。

 

「……つくづく思うけど、アンタって完全犯罪が出来るわよね?」

 

アリサがジト目で俺の方を見る。

 

「そうやね……アリバイ作れるし。こんなんじゃ推理小説にならんわ!」

 

「まあ、確かに可能と言えば可能だが。だからと言って俺はそんな事しないぞ」

 

「まあ、確かにアンタはそんな殺人事件とかはしないと信じてるけど……」

 

アリサは周りの皆の顔を一周してから言った。

 

「浮気とか完全に出来るわよね?」

 

「……」

 

いきなり何を言うのか、このツンデレパツキンは。

 

「だって、そうでしょ? アンタ最大12人まで分かれる事が出来るんでしょ?」

 

「うむ」

 

「ここにいるのは……1……2…………6人。つまり、あたし達全員に1人ずつ付いていても後6人はフリー。ほら、あたし達の知らない所で女の子を拐かして来る事も可能よね?」

 

 

 

「そうやね……」

「そうね……」

「そうだね……」

「うん、可能性はあるね……」

「可能性は否定出来ないの……」

 

 

 

チミ達、そこは否定して貰いたいのだが!

 

「待て待て待て! 俺はそんな事はしないぞ!?」

 

「ホントにぃ? アンタ、実際こうやって6人の女の子を囲ってるじゃない」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

全員が俺の顔をジッと見つめてくる。

 

12の瞳が俺の顔をジロジロと見ていた。

 

え? 何か、四面楚歌状態なんだけど?

 

「……俺にどうしろと?」

 

「そうやね、まあ……私達はアレス君に骨抜きにされたんやから……」

 

「そうだね……」

 

「にゃはは、それは否定出来ないね」

 

アリサ以外が苦笑していた。

 

「ぶっちゃけ、あたし達の中で誰が一番好きか言いなさいよ!」

 

顔を真っ赤にして言い放つアリサ。

 

「あ、それ私も興味ある」

 

「アレスお兄ちゃんの好きな人か~」

 

テスタロッサ姉妹は輝いた目で俺の方を見る。

 

一番好きな人……だと?

 

俺は全員の顔をそれぞれ見る。

 

なのは……ちょっと子供っぽくて明るい女の子。

 

フェイト……落ち着いた雰囲気でたまに天然が入った発言する女の子。

 

アリシア……元気溢れる快活な女の子。

 

はやて……明るくて、冗談が言い合えるつき合いやすい女の子。

 

アリサ……お転婆で、口喧嘩とかするけど一緒にいると元気が出てくる女の子。

 

すずか……大人しいけど、一緒にいると落ち着ける女の子。

 

 

 

選べる訳ねえだろうが!

 

全員それぞれ個性があって俺は好きなんだから。

 

誰が一番好きかと言われても……全員好きなのは間違いない。

 

うむ、夜道で背中から刺されてもおかしくない発言だな。

 

「誰が一番好きかって……俺は全員好きなんだけど……」

 

 

「へ?」

「へ?」

「へ?」

「へ?」

「へ?」

「へ?」

 

 

「いや、だって……なのははなのはで良いところあるし、フェイトはフェイトで良いところあるし……全員良いところあるし……」

 

俺は全員の顔を見つめてから言った。

 

「それに、誰かが誰かの代わりにすることは出来ないよ。アリサがすずかの代わりにならないし、はやてがアリシアの代わりは出来ないし。比べたくないんだ。全員、個性があって……。良いところもあれば悪いところもある。人間なんだから、それは当たり前なんだ」

 

神だって個性があるのだから。

 

「だから、俺の中では全員が1番好きなんだよね」

 

そう言って俺は頬を指先でポリポリとかいた。

 

全員、頬を赤くして俺の顔を見ていた。

 

「チィーッス! お茶お届けしましたー!」

 

キッチンに行っていた分身体が戻ってきた。

 

「ん~? 本体の。お前、また何かやらかしたか?」

 

「やかましい、分身の。良いからさっさと元に戻れ」

 

「へいへい」

 

そう言って俺は分身体と合体する。

 

「……お茶にするか」

 

俺はお茶の準備をする。

 

「……この……女ったらし……!」

 

「反則やね……!」

 

「アレス君は浮気者なの……!」

 

「アレスお兄ちゃんはこうやって女の子を毒牙にかけるんだね……!」

 

「アレス君……ダメだよ……そんな事平気で言っちゃ……」

 

「アレス……反則だ……」

 

全員のジト目が俺に突き刺さった。

 

「何でじゃ!」

 

 

 

 

 

 

お茶を全員で飲んで一息つく。

 

「さあ、昨日来られんかった理由を話して貰おうかな!」

 

鼻息荒く俺の方を見るはやて。

 

俺はアリサとすずかの顔を見る。

 

2人はゆっくりと頷いた。

 

「さて、昨日来る事が出来なかったのは、途中でアリサとすずかが誘拐されたからだ」

 

「……え?」

 

「う、嘘……」

 

アリサ、すずか以外の4人は驚いた顔をしていた。

 

「ああ。はやての家に来る途中、公園で休憩していたらアリサとすずかの2人が次元の穴に引きずり込まれたんだ」

 

「次元の穴……?」

 

「まあ、八雲紫のスキマみたいなもんだな。俺がジュースを買っている間の僅か15秒足らずの出来事だったんだ」

 

「まさに神隠しやなぁ……」

 

「それから俺はエヴァに頼んで2人の居場所を探してから救ったと言うわけだ」

 

「へぇ~」

 

「えへへ、お兄ちゃんは2人の王子様って訳だね!」

 

「まあ、それだけで済めば良かったんだがなぁ……」

 

俺はため息をついた。

 

「まだ、何かあったの?」

 

不安そうな顔で俺とアリサ、すずかの顔を見るフェイト。

 

「うむ、それなんだが……」

 

あの件を話すには、まず知識を知っておかなければならない。

 

俺はポシェットの中から本を取り出した。

 

小学生向けの……性教育の本だった。

 

きちんと人数分ある。

 

高校生とか中学生向けのはまだ早い内容だから、彼女達には見せられない。

 

「……えっと……アレス君これ……」

 

顔を赤くしてるはやて。

 

そうか、知ってるんだな、はやては。

 

「……まあ、いずれは知らなければならない事だ」

 

俺だって、こんなのを女の子に教えるとか恥ずかしいわ!

 

「それじゃあ、一通り読んで貰おうか」

 

「ごめん、私まだこっちの言葉はまだ……」

 

「私も~」

 

「そうか、まあ……解説してやるよ」

 

アリシアとフェイトに解説しながら話は進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃあ~……」

 

顔が真っ赤ななのは。頭から湯気が出てる様に見える。

 

「そうなんだ……」

 

「ほぇ~」

 

同じように顔が赤いテスタロッサ姉妹。

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

アリサ、はやて、すずかの3人は無言だった。

 

無論、顔が赤いのは言うまでもない。

 

「とまあ、こうやって子供って出来るんだ」

 

俺も顔が赤いのは分かる。

 

顔が凄く熱いから。

 

エアコン、かかってるよな?

 

うん、かかってる。

 

さっきからヒンヤリとした空気が流れてる。

 

「……じゃあ、アレスお兄ちゃん。お兄ちゃんと私がしたら……私とお兄ちゃんの子供が私に出来るんだね?」

 

「……まあ、そうだな」

 

「お兄ちゃんの子供欲しいなぁ~」

 

こう言うんじゃないかと思ったよ!

 

だからまだ早いと俺は思ったわけで。

 

「アリシア、ダメだよ。私だってアレスの子供欲しいんだから」

 

この姉妹は全く……やはり似てないようで根本はそっくりなんだから。

 

「フェイトちゃんもアリシアちゃんも何を言ってるん? アレス君の子供は私だって欲しいんよ?」

 

だから、タヌキさん……貴女も何を言ってるんだ!

 

「にゃあ……アレス君の子供……私も欲しいの……」

 

収拾がつかなくなるんだが!

 

「ええい! おのれら! 俺はまだ身体が子供作れる状態じゃねぇんだよ!」

 

「そうなの?」

 

「全く、こう言うのは女の子が早く迎えるの。大体、みんなアレを迎えてないだろ?」

 

「……アレって……アレ?」

 

「ああ、月一起こるらしいのアレだ。アレも迎えてないのにしたって子供なんか出来るか!」

 

「あはは……」

 

苦笑いを浮かべるなのは達だった。

 

「とまあ、男と女の身体の違いは分かったと思う。さて、子供作りの時は……まあ、『快感』が得られるんだ」

 

「快感?」

 

「簡単に言うと『気持ち良い』と言う事だな。好きな人とだとなおさら気持ち良いのだが……」

 

俺が言うと全員がジーッと俺の顔を見ていた。

 

その表情は何か期待を込めた眼差しだった。

 

「……何を期待しとるか知らんが、実演とかはせんぞ?」

 

「いけずやなぁ、アレス君は」

 

全く、耳年増になったな……。

 

「さて、と。話が脱線したが、普通は男と言うモノは大人の女性が子供作りの対象になるのだが……」

 

俺は全員の顔を一瞥する。

 

「たまにいるのが、全員みたいな可愛い少女を見て欲情する戯け者がいるんだ」

 

その言葉を聞いて全員が顔を赤くしていた。

 

「ん?」

 

俺は全員の顔を眺める。

 

「そこでサラッと可愛いとか言わないでよ」

 

「何故に? 可愛いのを可愛いと言っても別に問題は無いだろ?」

 

「それは……まあ、そうなんだけど……」

 

すずかはしどろもどろになって答える。

 

「まあ、要はアリサとすずかはそんな奴らに強制的に子供作りを迫られた……これは『強姦』と言うんだが。つまり、2人は昨日はそんな目にあったのだ」

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

なのは、フェイト、アリシア、はやては無言になった。

 

「そのせいで、2人は……大人の男性に近づく事も、近づいて来られる事もダメになったんだ」

 

「……そう言えば、今日の学校の先生が皆女の人になったのも」

 

なのはは顎に手を当てて思い出していた。

 

「ああ。2人の保護者が学校に指示しておいたんだ。2人の授業担当は全て女性教師にしてくれと」

 

「……そっか。まあ、確かに……アレを見せられたらなぁ……」

 

はやても過去に誘拐された時、同じように見せられていたのだ。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

俯くアリサとすずか。

 

「まあ、そんな訳で当分は2人は俺の家で同居生活を送る事になったんだ」

 

「ん~……まあ、そんな理由ならしゃあないけど。ところで、私等はいつも通りにお泊まりに言ってもええんやろ?」

 

「それは構わないが?」

 

「そうだね、私達もずっとお泊まりにしようか?」

 

「ぶ~! あたしも泊まりたい~!」

 

なんか、このままだとずっと俺の家で全員同居生活を始めそうで怖いのだが。

 

「……ってか、2人が泊まるのは一時的なもんだぞ? ずっとじゃないんだぞ?」

 

「そうなんか? でも、将来はずっと一緒になるんだから今からでもええやん?」

 

はやてはサラリとそんな事をのたまう。

 

「いや、独立したなら構わないが。今は親の世話になってる以上、あんまりそういうのは」

 

「にゃ? 直美さんなら多分大喜びじゃないかな? 『アレスちゃんのお嫁さんが沢山出来る~♪』って」

 

なのはの台詞を聞いて否定出来ない俺がそこにいた。

 

と言うか、独立する時は100%泣いて引き留めそうだ。

 

「まあ、兎に角。当面はアリサとすずかの2人は俺の家で過ごす事になったからな」

 

そう言って俺はこの事について終わらせる事にした。

 

 

 

 

 

ちょっとした談笑を全員とかわしていた。

 

すずかの様子を見ると何か神妙な顔をしていた。

 

「どうした? 何か……気になる事でもあったのか?」

 

俺はすずかに話しかけた。

 

「……えっと……実は……みんなに言いたいことが……」

 

いつもより小さい声で話すすずか。

 

……もしや、月村家の秘密である『夜の一族』の事を言うのだろうか。

 

「そっか。アリサ、すずかが何やら言いたいことがあるそうだぞ?」

 

「ん? そうなの? すずか、何かあったの? アレスにキスでもされそうになったとか?」

 

「なんでやねん」

 

思わずはやての口調が移ってしまった。

 

「アレス君私の真似せんといてやー!」

 

騒ぐはやてを無視する。

 

「なあ、アリサ? 何故に俺がすずかにキスを迫らないといけないんだ?」

 

「ん~……何となく? あんたなら何事も無かったかのようにそのまま自然にキスとかしそうだし?」

 

実に心外な台詞であった。

 

ちなみに、迫るより迫られる方が多いのは秘密である。

 

「……俺はそんな事しないぞ」

 

「そうやね、アレス君は迫るより迫られそうな感じや」

 

このタヌキ、意外と勘が良いな!

 

「あ、何となく分かるかな」

 

フェイト……お前もか!

 

「にゃあ……そう言えば、私……アレス君とキスした事無かった!」

 

いらん事思い出さんでも良いぞ、なのは。

 

「え? なのは、アンタ……アレスとファーストキスしたこと無かったの!?」

 

「意外……てっきり私達と知り合う前に既にしてると思ったのに」

 

なのはの台詞で驚いてるアリサとすずか。

 

「ならお兄ちゃんのファーストキスはあたしが貰うー!」

 

いきなり飛びかかってくるアリシア。

 

俺はアリシアの両肩を掴んで止める。

 

ええい、こんな公開処刑的なファーストキスがあるか!

 

前世の前世でも似たような状況だったと言うのに!

 

「だ、ダメだよアリシア! 私だってアレスのファーストキス欲しい!」

 

「あかんあかんあかん! 認めへんで! 私が貰うんや!」

 

「にゃー! アレス君と一番長いつきあいの私が貰うのー!」

 

「ダメだよ! なのはちゃんとは既に済ませてると思ったから諦めてたのに!」

 

「アレス! 何でなのはとファーストキス済ませてないのよ! お陰でアンタのファーストキス奪いたくなったじゃない!」

 

アリサは逆ギレしていた。

 

ってか! お前のいらん台詞でこんな事態を招いたんだろ!

 

「あ、アリサのいらん台詞のせいだろうが!」

 

「アンタ、あたしに口答えする気!?」

 

「なんぼでもしてやるわ! なんなら、そのうるさい口を俺の口で塞いで黙らせてやろうか!?」

 

「へぇ?」

 

アリサが口元を釣り上げて笑う。

 

邪悪的な雰囲気が漂ってくる。

 

周りを見ると、全員の目が据わっていた。

 

非常にヤバい状況になってしまった。

 

この状況では……誰を選んでも角が立ちそうだ。

 

〈お兄様……どうしてこんな面白い状況になるのですか?〉

 

エヴァが問いかけてきた。

 

〈面白いもんか。こういう修羅場は第三者の立場で見るのが面白いんだ。当人の立場はろくなもんじゃない!〉

 

〈まあ、私は面白いですけどねー〉

 

エヴァ、ちょっと拗ねてないか?

 

〈何か、打開策は無いか?〉

 

〈無いですわよ? ええ、こんな女の子に揉みくちゃにされてウハウハしてるお兄様なんか知りません!〉

 

やっぱり拗ねていた。

 

と言うか、どうすればこの状況がウハウハに見えるのか不思議なんだが。

 

〈今夜、晩ご飯の時にあーんして一緒に風呂入って一緒に寝てやるから〉

 

〈……仕方ありませんね。お兄様、二重身(ドッペルゲンガー)を使えば良いんじゃないですの?〉

 

〈その手があった!〉

 

〈お兄様、たまーに抜けてますわね?〉

 

〈ほっといてくれ……まあ、今夜してやるからな?〉

 

〈楽しみにしてます♪〉

 

エヴァとの念話を終えて、俺はアリシアから離れる。

 

「誰を選んでも角が立つと言うなら!」

 

俺は二重身で6人に分かれた。

 

「……確かに」

 

「そうか、その手があったか!」

 

「にゃあ……アレス君便利だね」

 

全員が目を丸くしていた。

 

そして、俺達はなのは達の肩を掴んでそれから初めてのキスを交わした。

 

もっとも、数年後には更なるとんでもない事態になるのは……この時は思わなかったがな!

 

 

 

 

 

「あ、あああ、アンタはぁ!!! 舌を入れるなんてぇ!!!」

 

「何事も経験だろ?」

 

向こうで分身体の俺とアリサが戦っていた。

 

いや、リンゴの様に顔を真っ赤にしたアリサが一方的に殴りかかっていて分身体の俺はそれを軽快に避けているだけの話だが。

 

どうやらディープキスしたみたいだ。

 

初めてのキスにそれは……いかがなものだろうか。

 

ちなみに、俺は舌でさくらんぼの枝を結ぶことが出来るのだ。

 

「……あっちの俺はほっといて良いぞ」

 

なのは達は苦笑しながら分身体の俺とアリサの様子を見ていた。

 

あ、捕まってアリサにテキサス・クローバーホールド決められてる。

 

 

 

「ノ―――――――ッ!!!」

 

 

 

おおぅ、自分の分身だが、見てるだけで痛そうだぜ。

 

「ウホッ、アリサちゃんは大人の階段昇ったいうことか?」

 

はやてがニヤニヤしながら眺めていた。

 

「話がずれたが、すずかは何を言おうとしたんだ?」

 

「……えっと……ね? 私の一族の事なんだけど」

 

それからはすずかの話を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

・人間ではなく、血を吸う吸血鬼みたいな『夜の一族』と言う名の種族

・弱点は特に無い

・身体能力が普通の人より高い

・別に血を吸わなくても弱る事は無い

・特定の時期になると血を吸いたくなる衝動が襲ってくる

・異性にこの秘密を喋る場合は伴侶になってもらうか、一生黙っていて貰う。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じであった。

 

「へぇ~」

 

「ほぉ~」

 

全員、そんなに驚いた感じではなかった。

 

俺の方がある意味上なのだから。

 

「アレス君なら……絶対に私の事、バケモノ扱いしないと思ったから」

 

確かにその通りである。

 

前世が『吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)』だった俺だとその気持ちは分かるのだ。

 

いやー……ずっとバケモノ扱いだったからね。麻帆良に行くまでは。

 

「まあ、前世が似たようなモノだったからね……」

 

苦笑する俺。

 

「にゃ? そう言えば、お兄ちゃんも……知ってるの?」

 

なのはが訪ねてくる。

 

「知ってるよ。つき合う時に話したって」

 

なるほど、恭也さんは既に知ってると。

 

「はぁ~……ここんところ驚く事ばかり……」

 

ため息をつくアリサ。

 

「ごめんね……黙ってて……」

 

「良いわよ。あたしだって、同じ立場なら……かなり躊躇すると思うから」

 

「そうやね~……他の人と違うのって……目立つやんなぁ~」

 

「でも、アレスお兄ちゃんに話したって事は……」

 

「アレスをお婿さんにするって事……だよね?」

 

アリシアとフェイトは顔を見合わせていた。

 

その言葉で全員が一斉に沈黙した。

 

「……仮に伴侶にならなくても一生喋らないぞ」

 

俺は一応釘を刺しておいた。

 

【大丈夫ですよ、お兄様はきちんと皆さんのこと愛してくれますから♪】

 

突然何を言い出すのかな?エヴァちゃん?

 

その言葉を聞いて全員頬を赤くしていた。

 

「俺より良い男は世の中沢山いるぞ?」

 

ため息をつきながら俺はそう言った。

 

 

 

「それは無いの」

「いないと思うな」

「アレスお兄ちゃんよりいい男なんていないよ?」

「あかんよ。私はアレス君が一番好きなんやで?」

「私もアレス君の事好きだよ?」

「仕方がないわね! あたしもアンタの事好きなんだからね!」

 

 

 

とりつく島も無い様だった。

 

「ところで……思い出した事があるの」

 

なのはは紅茶を一口飲んでからそう切り出した。

 

「何を……だ?」

 

「私とアレス君が初めて会った日。そして、2日後にお父さんが意識不明の重体から回復したの」

 

ああ、あの時の事か。

 

なのはの父、士郎さんを魔法で治療したのだ。

 

……少しだけ、きな臭い予感がするが。

 

「……そう言えば、なのはと知り合った時は士郎さん入院していたよな」

 

「……それってかなり都合が良くないかな?」

 

「偶然とは重なるモノだ」

 

俺はそう言って紅茶を一口、口に含んだ。

 

「ホントに? アレス君、何かしたんじゃないのかな?」

 

そう言って俺の目を見つめて来るなのは。

 

なのはの瞳はユラユラと揺れて少し潤んでいた。

 

「……そうやな。アレス君は前世の記憶を持ってる位だから……病院に忍び込んで魔法使って治療とかしてそうやな」

 

だから何でそんなに的確に核心を突いてるんだよ、このタヌキ娘は!

 

「あ~……なんか容易に想像出来るわね。で? アンタ何かやったんじゃないの?」

 

「し、知らん! 知らん!」

 

「ん~? アレス、妙に汗かいてない? 背中がビッショリだよ?」

 

そう言って俺の背中を撫でて来るフェイト。

 

「お兄ちゃん、何か隠してるのバレバレだよ?」

 

「何も隠してはおらぬ!」

 

そう言うとすずかは俺の方に寄ってくる。

 

「……? ど、どうした?」

 

すずかはいきなり俺に抱きつき、左の頬に流れる汗を……舐め取った。

 

暖かく、柔らかい舌の感触が頬を走る!

 

 

 

「この味は! ……嘘をついてる味だよ……アレス君!」

 

 

 

ブチャラティやったよ! この子は!?

 

「すずか……アンタ……凄い大胆な事やってる事に気付いてないの?」

 

「うわ~、リアルブチャラティやってるわ……。私もやりたかったな……」

 

はやてもろくでも無いことを言ってるが、今は無視だ。

 

「へぇ~汗の味で嘘かホントか分かるんだ」

 

「なるほど……今度試してみようかな……」

 

フェイト、貴女がそれすると色々シャレにならないから止めてください。

 

「すずかちゃん、アレス君……嘘ついてるんだね?」

 

「うん」

 

しかもなのはがソレを信じ切ってる!

 

「さあ、アレス君? 私に嘘や隠し事は無しって言ったよね?」

 

「……」

 

俺は立ち上がろうとしたが、いつの間にかアリサとフェイトが来て両肩を掴んでいた。

 

ちなみに、すずかは抱きついたままだった。

 

【もう、お兄様ったら、素直に言えば良いのに。士郎さんの治療はお兄様が行いましたよ?】

 

エヴァが暴露してしまった。

 

「エヴァ―――――――――ッ!!!」

 

「アレス君の嘘吐き!」

 

そう言ってなのはは抱きついて来た。

 

「嘘吐きのアレス君にはお仕置きだよ?」

 

そう言ってなのはは俺の唇に唇を合わせてくる。

 

柔らかい唇の感触が唇に伝わる。

 

「んちゅ……」

 

舌を俺の舌に絡ませてくる。

 

「おほ」

「わっ」

「わー」

「……」

 

20秒位流れただろうか。

 

そしてなのはは口を離す。

 

「アレス君はずっとお仕置きだからね?」

 

なのは、それはお仕置きではないぞ。

 

 

 

 

 

結局、なのはにばれてしまった。

 

まあ、他の家族には言わない事を約束したが。

 

別に、ハーレム作るつもりは無かったのだがなぁ。

 

気が付いたら、全員のフラグを建ててしまったようだ。

 

ま、良いか。

 

将来、彼女達に良い伴侶が現れたら祝福してやろう。

 

わざわざ、俺でなくとも良いからな。

 

さて、そろそろ夜天の書が400ページ超えたと思ったが。

 

物語もいよいよ大詰めと言った所だな。

 

ちゃっちゃと終わらせて、転生者共を捕まえるかな。

 

 

 

 




 
すずかファン「我々の業界ではご褒美です」

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