魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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今回はちょっとシリアス路線に走ってみました


第24話 壊れてしまった心〈前編〉

 

 

 

 

-アリサ視点-

 

 

 

 

「へっへっへっ……今からお嬢ちゃん達に男の味ってヤツを味わって貰うからよ」

 

そう言って作業服を着た男はズボンをずらした。

 

「ひぃ!」

 

「あ……あ……い、いやぁ……」

 

あたしは逃げようとするが、手足を違う男数人に押さえられて身動きが取れなかった。

 

「運が良いぜ? こんな早くに『男』を知ることが出来るんだからなぁ!」

 

そう言って男はあたしにのし掛かってきた。

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――っ!!!」

 

 

 

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――っ!!!」

 

あたしは全身の力を込めて起き上がる。

 

「ハア……ハア……」

 

動悸が激しく、脳が酸素を求めている。

 

身体は汗だくだった。

 

周りを見ると、誰もいない。

 

当たり前だ。ここはあたしの自宅で自室なのだから。

 

部屋の中は暗いが、そろそろ夜明けなのだろうか―――窓の向こうは少し明るくなってきていた。

 

「……夢……」

 

あたしはそう呟いた。

 

「また、あの夢……」

 

思い出される悪夢。

 

そう、あの夢は……今から1ヶ月半位前に誘拐された時の……夢。

 

あの時はアレスに助けて貰った。

 

あたしは、あの男の股間は何だったのか。

 

気になったので、家にあった家庭の医学書とかで調べて、知ってしまった。

 

『子供の作り方』

 

男と女の身体の違い。

 

子供って、ああやって出来るんだ……と。

 

でも、アレがあたしの中に……。

 

そう考えただけで寒気が起きた。

 

いつぞや、お風呂でアレスとユーノのを見た時は少し驚いた。

 

そう……アレスのを思い出していても別に大丈夫。

 

でも、夢のは……、ダメ。

 

もし、あの時、アレスが助けてくれなかったら。

 

あたしは……どうなってたかな。

 

アレが……あたしのここに……。

 

想像していたら、目から涙が溢れてきた。

 

恐い……。

 

恐いよ……。

 

大人の男が、恐い。

 

あの日以来、あたしは男の大人に近寄るのが恐くなった。

 

近寄られるのはもっと恐くなった。

 

どうしちゃったのかな……あたし。

 

パパや、鮫島でも……身体が強ばる時がある。

 

学校でも、男の先生が……席の近くを通るだけで……。

 

同級生は大丈夫なのに。

 

こんなんじゃ……ダメなのに……。

 

誰か……助けて……アレス……助けて……。

 

あたしは布団を頭からかぶってもう1度寝ようとした。

 

眠れなかった。

 

うとうとしているうちに、鮫島が起こしに来たのであたしは仕方なく起きた。

 

 

 

 

-アリサ視点・終了-

 

 

 

 

 

 

 

-すずか視点-

 

「へっへっへっ……今からお嬢ちゃん達に気持ち良くなってもらうからよぅ」

 

「ひっ!」

 

そして男はアリサちゃんにのし掛かろうとする。

 

「いやぁ!」

 

抵抗するアリサちゃん。

 

「何処を見てるんだ?」

 

私の手足を押さえ、同じ様に男がいた。

 

「ひぃ!!」

 

「さあ、『夜の一族』はどんな具合かな?グフフフ……」

 

「え?」

 

何で……この男は……私が夜の一族だと言う事を……!

 

「意外そうな顔をしてるじゃねぇか。こちらは何でも知ってるんだぜ?お前等一族は人の生き血を啜らないと生きられない『バケモノ』だって言う事をな!」

 

「ち、ちが……う……違う!」

 

「違うモノか。貴様の姉だって、恋人の血を啜っているじゃねぇか!」

 

「ち、違う……アレは……身体を維持する為に……」

 

「認めたな? お前の姉が……血を吸うバケモノだと……認めたな!?」

 

「っ!」

 

「さあ、バケモノと分かったからには……バケモノがどんな具合か……味わわせて貰うぜぇ!!」

 

男が私にのし掛かってくる!

 

どんなにもがいても、手足は動かない!

 

「いやぁぁぁぁぁ―――――――――――――っ!!!」

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁ―――――――――――――っ!!!」

 

私は全身全霊を込めて全身を動かした。

 

目が覚めると、見知った天井。

 

頭を起こして、周りを見ると……自分の部屋だった。

 

無論、周りには誰も居ない。

 

身体は汗だくで、気持ち悪かった。

 

「夢……だった……」

 

私は、安堵した。

 

1ヶ月半位前にあった誘拐事件。

 

あの時、私はアリサちゃんとはやてちゃんと一緒に誘拐されたのだ。

 

運良くアレス君に助けて貰ったけど、もし……アレス君が来てくれなかったら。

 

それを思うと背筋が寒くなってきた。

 

男の膨らんだ股間。

 

私はそれが何なのか、知ってはいた。

 

子供を作るために必要な……モノ。

 

お姉ちゃんの部屋でこっそりとその手の本を2、3回見たことがあった。

 

そう思ったら身体が強ばってきた。

 

前にアレス君とユーノ君と一緒にお風呂に入った時、見させて貰ったことがある。

 

アレス君のはそんなに恐いとは思わなかった。

 

でも、夢に出てきたアレは……ダメ。

 

大人の男の人が全部……あんなのだったら。

 

恐い。

 

恐くて近寄られない。

 

近寄って来ないで……。

 

でも、何で夢の男は私が夜の一族だと言うことを知っていたのだろうか。

 

夜の一族とは、血を飲んでいる、所謂吸血鬼の事である。

 

これは、アリサちゃん、なのはちゃん……そして、アレス君にも言ってない……事実。

 

やはり、みんなに知られるのが恐いのかな。

 

そして、私はあの事件以降、大人の男の人が恐くなってしまった。

 

幸い、私の家にはお姉ちゃん、ノエル、ファリンしかいない。

 

学校では、男の先生が……恐い。

 

どうしても、忘れられない。

 

……恐いよ、アレス君……。

 

助けて……アレス君……。

 

私の目には涙が溢れていた。

 

今日、学校でアレス君に抱きつこう。

 

そうすれば、少しは落ち着く。

 

アレス君、私が血を吸う一族だって知ったら驚くかな?

 

でも、アレス君だって……前世は『吸血鬼の真祖(ハイディライト・ウォーカー)』だったから……そんなに驚かないかな?

 

そうだ……アレス君なら……私の秘密、喋っても大丈夫……かな?

 

でも、アリサちゃんやなのはちゃんはどう思うかな。

 

やっぱり、私の事、バケモノ扱いするのかな。

 

やっぱり、喋るのは止めておこう。

 

……まだ、起きるには早い。

 

もう少し、寝よう。

 

私はそう思って、布団を頭からかぶった。

 

ようやく、眠りにつけそうな所でファリンが起こしに来た。

 

 

 

 

-すずか視点・終了-

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの様にエヴァに起こされ、朝食を取る。

 

昨日はなのは達のお泊まりの日ではなかったので、エヴァもキーホルダーから実体になっている。

 

俺の目の前にはパンとサラダ、そしてミロ。

 

隣にエヴァが椅子に座り、同じメニューが目の前に並んでいた。

 

朝はかったるいと言うか、喋るのがおっくうになるので無言でパンを囓る。

 

エヴァも俺の朝はめんどくさがり状態を知っているので、同じく無言でパンを囓っている。

 

ちなみに、俺はTシャツにボクサートランクスでエヴァもTシャツにパンティと言う出で立ち。

 

母さんも、苦笑いしながら俺とエヴァの様子を見ている。

 

だって、そろそろ夏で暑くなるし。

 

と言うか、結構暑くなってきている。

 

ちなみに、なのは達がお泊まりの時はさすがに短パンをはいているが。

 

食べ終わり、エヴァはペンダントになって俺の首元に。

 

そして、歯を磨いて着替えていつもの様に学校に向かう。

 

 

 

 

 

なのはと一緒に歩き、途中からバスに乗る。

 

いつもの様に後部座席にはアリサとすずかが乗っている。

 

2人の間は1人座れる様になっていて、アリサ、すずか両名は空いた真ん中部分をポンポンと叩く。

 

俺にそこに座れと言うことか。

 

これもいつもの事なので、俺は間に座る。

 

なのはも慣れた様で、すずかのとなりに座る。

 

 

「おはよう、アリサ、すずか」

「おはよう、アレス、なのは」

「おはよう、アレス君、なのはちゃん」

「おはよう、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

 

挨拶を交わしてから、談笑が始まる。

 

始まったのは良いが、アリサ、すずかの2人は俺の手を握って離さない。

 

しかも、小刻みに震えていたのだ。

 

そう言えば、半月位前から2人ともこんなことがあったな。

 

会話を交わしつつもアリサとすずかの顔を見る。

 

僅かだが、顔色が良くない。

 

しかも、少し目が赤い。寝不足なのだろうか?

何かがひっかかる。

 

俺は何かを忘れていないだろうか?

 

〈お兄様?〉

 

〈ん……? どうした?〉

 

〈アリサさんとすずかさんの気が少し乱れています。身体の調子が良くないみたいですわ〉

 

エヴァからの念話。彼女はデバイスになってからそういう気とか流れを読めるようになったらしい。

 

〈なるほど。やはり、不調なのは間違いないみたいだな〉

 

〈はい。ただ、原因が分からないのが〉

 

〈だよな。そこまで分かったら医療デバイスとして活躍しても良いよ〉

 

〈シャマルさんとコンビを組んでですか?〉

 

〈うむ。しかし、シャマルとコンビを組むのは良いが、俺のデバイスが無くなるんだが……〉

 

〈えへへ、そうですわね。お兄様と一緒が良いですもん〉

 

〈まあ、そう言う訳だ。とりあえず、アリサとすずかの様子は見ておくか〉

 

〈そうですわね。一過性の物であれば良いのですが〉

 

エヴァとそんなやりとりをしつつ俺達は学校に向かう。

 

 

 

 

 

 

本日も滞りなく終わりました。

 

昼休みは、何故かすずかが抱きついてきました。

 

それを見たアリサも『アンタ、すずかに抱きつかれてタダで済むと思ってんの!?』と言って何故か抱きついて来る始末。

 

なのはは『2人ともずるいよー!』と言って俺の背中にのし掛かってくる始末。

 

お陰様で、昼休みの屋上では嫉妬に燃える男子生徒達の視線が厳しいこと厳しいこと。

 

まあ、俺には効かないがね!

 

そして今日もなのはは魔力蒐集で俺は八神家で魔法の講師。

 

はやて、アリサ、すずかの3人でネギま!式魔法の練習である。

 

意外とスジが良いのか、3人とも杖を振るった時に光が少し出るようになったのだ。

 

もう少ししたら、火も灯せるようになると思う。

 

まあ、実を言うと俺が魔力を通して火を灯させる技もあると言えばあるが。

 

魔力に慣れてない身体に強制的に魔力を通すと言うのははっきり言えば身体に良くないので俺はそれは3人には喋っていないのだ。

 

出来れば、少しずつ慣れて貰って魔法を行使して貰いたいのが俺の本音。

 

そのうち、プレシア女史からダイオラマ魔法球を返して貰うから今度はその中で練習しようかと思ってる。

 

……多用すると色々アレだから週に1回程度にしようかとも思ってる。

 

なのはと別れ、俺達ははやての家に向かう。

 

アリサとすずかも今日の塾はお休みなのだ。

 

それは良いのだが、2人は今日に限って腕を組んで来る。

 

……別にそれは良いのだが、妙におかしい。

 

2人は、何かに脅えている?

 

俺が抱いた印象だった。

 

「……今日は何故にそんなに腕を組んでくる?」

 

「良いじゃない! こんな美女に組んで貰えるなんて嬉しいでしょ!?」

 

顔を茹で蛸の様に真っ赤にしているアリサ。

 

怒って真っ赤なのか、照れて真っ赤なのか。

 

多分、両方だからもの凄く赤いのだろう。

 

「アレス君は……腕組まれるの……嫌?」

 

すずかも頬を赤くして俺に聞いてくる。

 

「嫌じゃないが」

 

確かに、女の子と一緒に腕を組んで歩くのは嫌ではない。

 

前世の前世では、嫁さんと一緒に歩いた事もあるし、一時期は仲間ともデートまがいな事もしたものだ。

 

……問題は、俺の嫁さんとその仲間の2人は身長が175㎝と女性にしては高かった。そして俺は身長135㎝だった。

 

言いたいことは分かるな?

 

つまり、俺はその2人と腕を組んだら足が地に着かず、宙ぶらりんで引っ張られるのだ。

 

男としてかなり悲しいぞ、それは……。

 

まあ、それはさておき。

 

「そっか。なら良いよね?」

 

屈託のない笑顔で俺を見るすずか。

 

顔が近いよ? あんまり近づくと口と口がくっつくよ?

 

「ふっふふぅ~ん?」

 

横からアリサがニヤニヤ笑いながら俺の顔を見る。

 

「なんだよ?」

 

「アンタ、顔を近づけられると顔が赤くなるの?」

 

「え?」

 

「アンタの顔、真っ赤よ?」

 

言われてみると、顔が熱いような気がする。

 

夏の暑さのせいかと思っていたが。

 

「……夏だからな」

 

まあ、確かにすずかに顔を近づけられて少し恥ずかしいのは確かだが。

 

「本当にに夏の暑さのせいかしら?」

 

「どれどれ、あたしも顔を近づけて確かめてみよう」

 

そう言ってアリサも俺の顔に近づいて来る。

 

吐息が首筋に当たってくすぐったい。

 

「や、やめ! あ、暑いだろ!」

 

「あらあら? 今は日が陰ってるんだけど?」

 

ニヤニヤと邪悪的な微笑みで空を指差すアリサ。

 

「……と、とにかく! 少し暑くなったからジュースを飲む!」

 

俺は途中にある公園に寄ってジュースを買うことにした。

 

 

「照れちゃって」

「照れてるね、アレス君?」

「照れてなぞおらぬ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

アリサ、すずか両人を木陰にあるベンチに休ませてから俺はジュースを買う為に自販機に向かう。

 

周りを見ると、俺達と同等か、少し小さい子供数人が遊具で遊んでいた。

 

うむ、実に平和である。

 

少し暑いが、まあそこまででも無い。

 

夏が近い……いや、もう夏になってるのか。

 

しかし、海鳴市は雨はあまり降らないのだろうか?

 

今年は梅雨らしい梅雨ではなかったように思える。

 

まあ、いい。2人のジュースを買って持っていくとしようか。

 

アク○リアスで良いだろ。炭酸はゲップが出て大変だろうし。

 

それとも、すずかはトマトジュースが良かったかな?

 

そんな事を思いつつ、俺はボタンを押してジュースを購入。

 

ジュースを3本抱えて、アリサとすずかの元に帰ろうとした時。

 

 

 

「何よこれ!?」

「アレスくーん!」

 

 

 

俺は目を疑った。

 

アリサとすずかの2人は……足下に出来た空間の穴に引きずりこまれたのだ!

 

〈お兄様!〉

 

〈分かってる!〉

 

俺は即座に駆け寄るが、僅かの差で2人は穴に落ちてしまった!

 

そして穴はすぐに閉じてしまって飛び込む事も出来なかった。

 

10秒と満たない数秒の出来事に俺は呆然としてしまった。

 

周りを見ても魔力等の力は感じられない。

 

「っ! くそぉ!」

 

やられた。油断した!

 

多分、コレは転生者の仕業!

 

俺が離れた隙に2人を誘拐したのだ。

 

〈お兄様、申し訳ありません! 私が付いていながら!〉

 

〈いや、エヴァの責任は無いよ。しかし、何の力も感じられなかった……〉

 

思い起こされる、2人の足下に現れた、空間の穴。

 

まるで、神隠しに遭った……神隠し?

 

まさに、今の状況は神隠しだ。

 

周りを見ても他の子供達や保護者は全く気付いていない。

 

それはそうだ、普通の誘拐ならさらわれる時には高い確率で目撃される。

 

真夜中とかなら例外だが、今は午後。まだ日中なのだ。

 

〈相手の能力は次元干渉系か。その手のヤツは沢山いるからな……〉

 

〈ですわね。まあ、私もお兄様も影を使って空間転移出来ますし〉

 

〈だが、ああやって空間に穴を開けて干渉するヤツはだいぶ限られて来ると思う。エヴァ、アリサとすずかの位置特定出来るか?〉

 

〈ええ、今サーチしています。これは、相当の手練れでしょうか? 2人の位置が……絞れません!〉

 

〈ちぃ! 頼む! 今はエヴァが頼みなんだ!〉

 

〈大丈夫です! 私に任せてください!〉

 

俺はベンチに座って何事もないフリをしてエヴァからの探査結果を待つ。

 

「落ち着け……今ここで取り乱しても仕方ない」

 

 

 

 

 

 

 

-アリサ視点-

 

……何だろう?

 

身体が動かない?

 

その前にあたしは……確か、アレスとすずかと一緒にはやての家に行くハズだったような?

 

あたしはゆっくりと目を開けた。

 

見たこと無い部屋。ごく普通のマンションの一室に思える。

 

ただ、カーテンが閉められていて部屋の中が薄暗い。

 

「っ!? 何よコレ!?」

 

あたしは動こうとしたが、手足が何かの器具に固定されていて全く動かないのだ。

 

しかも、足は大股を広げるようにしてあり、隠そうにもどうにも出来ない。

 

「くくく、目が覚めたみたいだね?」

 

「誰よ!?」

 

あたしは声の方に向かって顔を向ける。

 

薄暗くて見えにくいが、大人の男性であることが分かった。

 

……いや……何よ……これ……。

 

心臓が……鼓動が跳ね上がる。

 

いつかの、誘拐された時と状況が……似ている。

 

ゆっくりと近づいて来る男。

 

見た目はかっこよさそうに見えるけど、あたしは気に入らなかった。

 

雰囲気と言うか、何かがあたしの癪に触る。

 

「は、離しなさいよ! あたしをどうしようって言うのよ!」

 

「……どうする? もちろん、決まってるじゃないか!」

 

男はそう言ってあたしの服を破る。

 

素肌が露わになる。

 

「いやぁ!」

 

「グフフフフ! 綺麗な肌だねぇ!」

 

そう言って男はあたしのスカートもナイフで破り、その場に捨てる。

 

「やめて……やめてよぅ……」

 

あたしの目から涙が溢れて来る。

 

ああ……あの時の続き……。神様は……あたしに過酷な運命を与えるのね?

 

「ハハハハ、あのアリサがこんなに弱く、泣き虫だとはね……良いよ……素晴らしい!」

 

そう言って男はあたしの胸に顔を近づけ、舌を出して舐める。

 

「ひぃ!」

 

「良いねぇ……少女の汗……美味しいねぇ」

 

男はゴクリ……と唾を飲み込む。

 

嫌だ……気持ち悪い……嫌だよぅ……。

 

「嫌……嫌……やめて……」

 

「やめる? 何を言ってるんだい? 君はこれから僕のモノになるんだよ?」

 

そう言って男はあたしのパンティをナイフで切り裂いて、破り捨てた。

 

「おお、綺麗な色だねぇ」

 

そう言って男はあたしの股間部分を凝視していた。

 

「見ないで……見ないで……っく……」

 

もう嫌だ……何で……こんな目に……。

 

アレス……助けて……助けて……何で助けに来てくれないの?

 

早く来て? 前みたいにコイツをぶっとばしてよぅ……。

 

「くくく、これは楽しめそうだよ!」

 

男はそう言ってズボンを脱いだ。

 

「ひぃやぁぁぁぁぁぁ!」

 

あたしはもう、恐怖しか残っていなかった。

 

「ふははは、大丈夫だよ? ちょっとした儀式の後はこれの事が大好きになるんだからね。お友達のすずかちゃんと一緒になってね」

 

そう言って男はゆっくりと近づいてくる。

 

「さあ、アリサちゃん……いただきます」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

-アリサ視点・終了-

 

 

 

 

 

-すずか視点-

 

 

「……ん……」

 

私はいつ眠ったのだろうか?

 

確か、アレス君とアリサちゃんと一緒にはやてちゃんのお家に行って……。

 

「そうだ!」

 

公園で足下に穴が開いて……落ちたんだ。

 

私は周りを見渡す。

 

どこかのマンションの一室みたいだけど?

 

私は薄暗い部屋の中を見る。

 

すると、アリサちゃんが奇妙な器具に固定されていた。

 

アレは、お姉ちゃんが持ってる大人な漫画の中で見た……確か、産婦人科で使う診察台……だ。

 

アリサちゃんはそれに固定されて身動きが取れなくなってる!

 

男がアリサちゃんに近づき、服を破ってる!

 

それにしても、おかしい。あっちの声が全く聞こえない。

 

兎に角、アリサちゃんを助けないと!

 

私はベッドから降りようとした。

 

「おっと、お嬢ちゃんはこっちだぜ?」

 

野太い男の声が響いて私は腕を掴まれた。

 

「っ!?」

 

体格の良い男が私の腕を掴んでいたのだ。

 

私の頭に誘拐された時の記憶が戻る。

 

「へっへっへっ……」

 

イヤらしい笑い声をあげる男。

 

ダメ……身体に力が入らない……。

 

「だ、誰?」

 

「誰か? だって? そんな事はどうでも良いことだぜ。1つ言えるのは、お嬢ちゃんに気持ち良い事を教えてあげるお兄さんってとこだ」

 

その言葉を聞いて私は……身体が強張る。

 

「い……いや……」

 

「へへへへ、その言葉も俺との行為が終われば出なくなるぜ?」

 

そう言って男は私の制服を鷲づかみしてから力を入れて破る。

 

「いやぁ!!」

 

抵抗するも力が入らない! 上着から中に来ていたシャツを全て破られ、上半身裸になる。

 

「ふへへへへ、少し膨らんでるじゃねぇか」

 

男は私の胸を見ながらイヤらしい薄笑いを浮かべる。

 

気持ち悪い……。気持ち悪いよ……。

 

「どれ、下もいらないな」

 

「いやぁ!」

 

そう言って男は私のスカートを掴み、強引に脱がす。

 

抵抗するも、無惨にも私はスカートを脱がされる。

 

私はパンティ1枚になってしまった。

 

「へへへ、青縞模様のパンティか……嬉しいねぇ」

 

そう言って男は着ていたシャツを脱ぎ、ズボン、そしてパンツ一丁になった。

 

「!」

 

私は男の股間を見て絶句しそうになる。

 

「こ、来ないで……!」

 

私は尻餅をついた状態で後ずさりする。

 

「そう言うなって。なぁに、俺との行為が終わった後はコレが欲しくてたまらなくなるからな? へへへへ……」

 

「イヤ! いやぁ!」

 

私は更に後ろに下がる。

 

「……っ壁!」

 

背中に当たる感触。どうやら壁に当たったみたいだ。

 

「さぁて、おしまいだぜ? すずかお嬢ちゃん……いや、夜の一族のお嬢様?」

 

 

 

……え?

 

 

 

今、この男は……何て言った……?

 

『夜の一族』のお嬢様……?

 

何で……私の名を知ってるのよ? 何で私が……人と違う……夜の一族だって……知ってるのよ!?

 

何で何で何で?

 

男は私に近寄り、左手で私の両手首を押さえる。

 

近寄る男の恐怖に私は力が入らない!

 

「な、何を……言ってる……の?」

 

「おやおや、しらばっくれるのか? 人の生き血を吸うバケモノの一族だろ?」

 

「ち、違う! 違うわよ!」

 

「何を言ってるのかな? お嬢ちゃんのお姉ちゃんは……恋人の血を吸ってるんだろ?」

 

 

 

!!!

 

 

 

何で、お姉ちゃんの事を……恭也さんの事を……知ってるのよ!

 

「ち、違う……! 違う違う違う!」

 

「くくく、あちらのお友達がすずかちゃんの事を知ったら……どんな顔するかな?」

 

「!」

 

「お友達を騙していたんだからねぇ? 嫌われるかも……しれないねぇ?」

 

「そ……そんな……事……」

 

私が恐れていること。

 

親友のアリサちゃんやなのはちゃんに嫌われる……事……。

 

もし、知られて疎遠になったら……恐い……。

 

「さて、コレもいらないよなぁ?」

 

男は右手で私のパンティを掴み、一気に千切る。

 

「いや! いやぁ!」

 

私の目から涙が溢れてくる。

 

もう、イヤだ!

 

男なんて……男なんて!

 

アレス君! アレス君! いつかみたいに……来てよ!

 

早く来て、こんな男……倒してよぅ!

 

「それじゃあ、夜の一族のすずかちゃんの大事なモノ、頂くぜぇ!!」

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

-すずか視点・終了-

 

 

 

 

 

 

〈見つけました!!〉

 

エヴァの声で俺はベンチから立ち上がる。

 

〈よし! すぐに行けるか!?〉

 

〈ハイ! 隣街のマンションの一室です!〉

 

〈よし、そのマンションの入り口に転移だ!〉

 

〈了解です!〉

 

俺の足下にベルカ式魔法陣か広がって周囲の景色が変わる。

 

 

 

 

 

着いた先はいつぞやフェイトが使用していたマンションに似ていた。

 

〈……この部屋か?〉

 

〈ハイ。この部屋の中にアリサさんとすずかさんの反応があります〉

 

〈よし。ところで、敵の数は?〉

 

俺はマンションの入り口の表札を見る。

 

だが、名前がかけられていなかった。

 

〈……2人います。どうしますか?〉

 

少しだけ、やっかいではあるな。

 

二重身(ドッペルゲンガー)で2人に分かれて行っても……。もし、敵が強いなら。

 

この作戦は100%成功させなければならないのだ。

 

もはや、出し惜しみは無しだ。

 

〈エヴァ、今回は一緒に頼む。万が一を考えて二重身(ドッペルゲンガー)はやらない〉

 

〈了解です。影の転移で行きますか?〉

 

〈ああ。敵の虚を突くにはもってこいだ。それと、今回だけは俺も許せない。アレを……使うぞ?〉

 

俺は自分の握り拳を見る。開いて閉じて、拳に力を入れる。

 

〈……はい。私も、お兄様の気持ちは……分かります。だから、使います。『綾野式・裏』を〉

 

エヴァがキーホルダーから実体になる。

 

俺の隣に金髪の少女が立っていた。

 

ただで済むと思うなよ? 転生者共め!

 

俺とエヴァは影に沈み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

影から頭を出すと、男が器具に固定されたアリサにのしかかろうとしていた!

 

「っ!」

 

俺は影から上半身を出して、男の左ふくらはぎ向けて左腕を伸ばし、指を食い込ませる。

 

「っいぎゃぁ!?」

 

男は驚いて下の方を見る。

 

俺は瞬時に男の背後に取り付いて、左腕を男の首に回し、締め上げる。

 

「が……がはっ!?」

 

男が背中側に重心を崩し、俺は右足で男の右膝部分を蹴る。

 

更に男はバランスを崩して背中から倒れそうになる所で、俺は右手を男の腰の中心、背骨向けて思いっきり押す。

 

指が食い込み、血が流れる。

 

「奥義・蜂刺殺(ほうしさつ)!」

 

俺は一気に体重を後ろにかけて、男の背骨を押す。

 

 

ゴキリ

 

 

鈍い音が響いた。

 

「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 腰が……腰があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

男はその場でうずくまって動けなくなる。

 

そう、俺は男の腰……背骨をずらして『椎間板ヘルニア』にしたのだ。

 

一撃で戦闘不能に追い込み、人体を破壊する技の一つ。

 

これが、古流武術綾野式・裏奥義・蜂刺殺。

 

本来なら絶対に使わないのだが、相手が外道なら……俺は容赦なく使う!

 

「おらあぁぁぁ!!!」

 

俺はうずくまった男に更に攻撃を繰り出す。

 

右腕の筋肉を切断し、両足の股の筋肉を切断する。

 

全て、指で行う慈悲のない攻撃。

 

そして、最低限血が出ないようにして戦闘不能に追い込む。

 

「あぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

男の声が響く。

 

だが、俺は一切止める気無く無慈悲に男の身体を破壊する。

 

骨を砕き、筋肉を切断する。

 

痛みの余り男は気絶したのだろうか、声をあげなくなった。

 

口から泡を吹いていた。

 

俺はポシェットからロープを取り出し、男を縛りあげる。

 

周囲を見渡してから、俺はアリサを発見した。

 

服は全て脱がされ、産婦人科で使う診療台の上で縛られていた。

 

顔を見ると、涙を流した跡があった。

 

俺は涙をこらえながらアリサの手足を縛っていたロープを闇の剣で切る。

 

「くそ……間に合わなかったか?」

 

診療台の下を見るが、血の跡はなかった。

 

どうやら、すんでの所で間に合ったみたいだ。

 

俺はアリサをお姫様抱っこでかかえて、床に寝かせる。

 

顔を近づけると息はしているので、命に別状はないだろう。

 

「……すまん、アリサ……」

 

俺はポシェットから毛布を取り出し、アリサの身体を包む。

 

……エヴァの方はどうなったのだろうか?

 

俺は薄暗い部屋の中を見渡した。

 

 

 

 

 

 

-エヴァ視点-

 

 

「それじゃあ、夜の一族のすずかちゃんを頂くぜぇ!!」

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

私が見たのは、すずかさんにのし掛かろうとする男の姿だった。

 

いけない!

 

私はすぐに影から飛び出して男の首を掴み、後ろに引っ張る。

 

「ぐげぇ!?」

 

男は後ろに重心を崩して倒れる。

 

私はすずかさんの前に立ち、身を守るように仁王立ちする。

 

「つぁ……だ、誰……」

 

男が私の顔を見る。

 

「……エ、エヴァンジェリン……!?」

 

男は驚いて立ち上がった瞬間、私は瞬動で間合いを詰めて男の前に立つ。

 

「初めまして。そして、さようなら」

 

私はそう言って、男の頭を両手で挟むようにして……技を繰り出した。

 

「裏奥義・菩薩掌(ぼさつしょう)

 

 

 

パァーン

 

 

 

乾いた音が周囲に響く。

 

「……」

 

男は何事も無かったかの様に見えたが。

 

「……っ!」

 

すずかの声がかすかに聞こえた。

 

私の目の前の男は……目から、鼻から、耳から……血を流して……倒れた。

 

頭と私の手の間、僅か数㎝の間を揺さぶる様に頭を叩き付け、脳を揺らす奥義。

 

一瞬にしてボクシングのパンチドランカーの様にする。

 

これで、彼の脳はズタズタだ。

 

「……」

 

私はすずかさんの方を見た。

 

すずかさんは半放心状態で私の顔を見ていた。

 

「……エヴァ……ンジェリン……?」

 

小さな声で呟く声が聞こえる。

 

私はすずかさんの所に向かう。

 

ベッドの上で全裸で座っているすずかさん。

 

「はい、私の名前ですよ?」

 

私はすずかさんに微笑みかけながら続けた。

 

「アレスお兄様のデバイス『武神の魔導書』管制人格、エヴァンジェリンと申します。よろしくお願いします、月村すずかさん?」

 

私はそう言ってすずかさんの前で一礼した。

 

すずかさんは唖然とした顔で私の顔をただ見ていた。

 

 

-エヴァ視点・終了-

 

 

 




 
外道も行きすぎるとこうなります

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