魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ- 作:八坂 連也
原作乖離は更に進みますw
とりあえず、グレアム氏との対談の約束をこぎ着けた。
さてさて、他の皆にもこの事は話しておこうかな。
勝手な事をしたから皆キレるかもしんないなぁ~。
殺されないように覚悟しとこ。
魔力蒐集が終わってから全員、八神家に集まる様に言っておく。
本日休みだった人にも連絡して来るように伝えておいた。
集まったのは俺、なのは、フェイト、ヴォルケンリッター、ユーノ、ユナ、アルフ、恭也さんに美由希さん。
それとプレシア女史とアリシア、リニス、家主のはやてとアリサ、すずか。
全員勢揃いだぜ!
女の子比率が高いから部屋の中が非常に華やかな感じではある。
石鹸とかシャンプーとか甘~い香りが漂っているが。
全員が俺の方を向いていた。
「いきなり呼び出すなんてアレスちゃんったら。それで? 何か起きたのかしら?」
カップを傾けて中にある紅茶を飲むプレシア女史。
「うむ、単刀直入に言うと、昨日の夕方に管理局のヤツに襲われた」
俺がそう言うと、部屋の空気が変わった。
え……? 何か、室温が15℃位下がった様な気がするんですが?
「……それは聞き捨てならない話ねぇ?」
カタカタと手を震わせて紅茶を飲むプレシア女史。
「……ああ。確かに、聞き捨てならん話だ」
「コレは由々しき事態よねぇ?」
瞬時に騎士甲冑を纏ってるシグナムとシャマル。
ソレを見てからため息をつくヴィータとザフィーラが居た。
「アレス君を……襲ったの?」
「アレスを……?」
「それはあかんなぁ~……。実にあかんよ?」
「ええ……はやてちゃんの言うとおり、非常にいけない事だね?」
「……許さない」
「アレスお兄ちゃんを……殺そうとしたの? 許せない!」
なのは、フェイト、はやて、すずか、アリサ、アリシアの順に喋る。
全員、瞳が濁ってる様に見えるんだが!
なのはの様子を見て『ちょ、ちょっと!恭ちゃん助けて!』とか『すまん……無力な兄で済まない、美由希』とか言ってる兄妹がいたが、無視した。
フェイトの様子を見て『ひぃ~! フェイトが修羅になった~!』と言ってるアルフが居たが、コレも無視した。
ユーノとユナはお互い抱きしめ合ってガタガタ震えていた。ちなみに顔は真っ青である。
リニスは『さすが、アリシアとフェイトですね。これならいつでも
「さあ、アレスちゃん? その管理局員は誰なのか喋って貰うわよ? 私自らの手でこの世から消し去ってあげるから……」
狂気の微笑みを繰り出すプレシア女史。
いつでも
「私も手伝うよ……母さん。アレスを襲うだなんて!」
もうやだ、バーサーカーテスタロッサ親娘。
「待て待て待て。見ての通り俺は無傷だし、相手は返り討ちにした」
ここで止めないと全員で管理局に殴り込みに行きかねん。
俺が参戦しなくても管理局の半分以上は破壊出来るだろう。
「流石だね」
「ってか、アレスは何をしたの?」
ユーノとユナが聞いてくる。
「うむ、話せば長くなるのだが」
俺は昨日起きた事を洗いざらい話した。
「私のせいでアレス君が襲われたんか……ごめん……ごめんな……アレス君」
今に涙を流しそうな雰囲気のはやて。
「はやてのせいじゃないよ。どのみち、この夜天の書に関わっていた以上、なのはやフェイトだって襲われていたかもしれないよ?」
「確かに」
「うん、私やフェイトちゃん、お兄ちゃんやお姉ちゃんだって同じように戦いになったかも」
「そうだな。しかし接近戦なら何とかなるが、遠距離となると」
「ん~……私と恭ちゃん一緒なら何とか引き分けくらいに持ち込めるかもしんないけど……」
ぶっちゃけ、高町兄妹ならそのうち何とか勝てるようになると思うのは俺だけだろうか?
縮地みたいな神速持ってるからそれをマスターした日には下手な魔導師より強いと思うのだが。
「しかし、許し難いな。我らだけでなく、主はやてまで一緒に封印するとは」
歯ぎしりしながらシグナムは呟く。
「ああ。あたしもはらわたが煮えくりかえる思いだぜ」
ヴィータも同じ様に歯ぎしりしていた。
「確かに、その気持ちは俺も分かる。だが、もしも……だ。このままこの壊れた夜天の書を放置していたら、シグナム。君はどうしていた?」
俺はシグナムの目を見ながら問い訪ねた。
「アレスちゃんが前に言った様に、主はやての下半身麻痺が進行して……多分、我らは蒐集を始めていたでしょう」
「そして、何も知らずに666ページ集めて……どうなる?」
「……主はやてごと取り込み、この街……いや、この世界を滅ぼしていたかも……知れません」
「だろうな。もしくは、あの姉妹がやって来て君達は封印か滅ぼされていた可能性も、ある」
「確かに、損害を考えると……はやて。貴女を夜天の書ごと封印した方が良い結果になったわね」
プレシア女史が口を開いた。
「だからって!」
「ああ。だからと言ってそれが許される訳じゃない。だが、グレアム氏はそれしか方法が無かったんだ。アルカンシェルと呼ばれる魔導砲で滅ぼしても転生機能で違う世界に転生してまたその世界で暴走して多くの命を奪って……。イタチごっこだよ。永遠に続く……な」
俺が呟くと、全員が口を閉じてしまった。
【ですが、私がここにいるならもう大丈夫です。私と夜天の書は99%同じ構成で作られた魔導書。しかも、私の中には作られた頃の夜天の書のデータがバックアップとして残っています。これさえあれば、夜天の書はかつての姿に戻ることが出来ます】
俺の首にかけられたネックレス、エヴァが喋る。
「ほんま、アレス君とエヴァちゃんがおって助かったわ。私は……アレス君にどうやって恩返しすればええんやろか?」
「さあ? とりあえず、元気に歩く姿を見せてくれれば良いさ」
俺はそう呟いて紅茶を飲んだ。
「言う事は、早く歩けるようになってアレス君に嫁げと言う事やな? 了解や!」
「ぶふぅ!」
俺は豪快に紅茶を噴き出した。
「わぁ!」
目の前にいたユーノがシールドを張る。ミッド式の魔法陣が展開された。
「何でそこまで話が飛躍するんだよ!」
「仕方無いやんか! ここまでやって貰ってお金で済む問題じゃあらへん!こうなったら私の身体をアレス君に捧げるしか無いやんか!」
「主はやてが捧げるなら私も捧げるしかあるまい!」
「私もよ! アレスちゃん! シグナムほどナイスバディじゃないけど……私の身体を好きにして!」
はやて・シグナム・シャマルの3人は暴走させたら始末に負えん!
「……わりぃ。あたしの身体じゃ、さすがにアレだからさ。でも、困った時はいつでも協力してやる」
「うむ。遠慮無く頼んでくれ」
「じゃあ、時にこの3人の暴走を止めてくれ」
俺はヴィータとザフィーラに頼んでみた。
「すまねぇ……まだ死にたくねぇんだ……」
「……不甲斐ない我らを許してくれ」
やっぱり役立たずコンビの2人だった。
「……いくらはやてちゃんでもそれは許し難い行為だよ?」
「ダメだよ、はやて。私だってアレスに身体を捧げたいんだから」
「ちょーっとそれは了承し難い行為だよ?」
「はやて? どさくさに紛れて自分だけ良い思いしようとしてないかしら?」
「アレスお兄ちゃんはそう簡単に渡さないよ?」
予想通りの展開。
俺は恭也さん、美由希さん、ユーノ、ユナ、アルフ、リニスに救いの目を差し向けた。
「すまない、忍を残して逝くのは」
「ごめん、あたしも将来結婚したいし」
「無事を祈ってるよ」
「ユーノを残して逝きたくないよ」
「ちょっあのフェイトを止めるのは……あたしも死にたくないし」
「諦めて下さい♪」
実に薄情な言葉を言われてしまった。
俺はプレシア女史に目を向けた。
「アレスちゃん? アリシアとフェイトをよろしくお願いするわ」
『四面楚歌』と言う単語が頭をよぎった瞬間だった。
また例によって勝負が始まった。
なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかの6人による七並べだった。
白熱した勝負が繰り広げられていた。
俺はプレシア女史に話しかけた。
「なあ、リンディさんにプレシアさんの事話して良いか?」
「ん~……以前のジュエルシード事件がどうなってるかよねぇ。輸送船のアレが只の事故なのか故意的に起きた事故なのかが管理局にどう伝わってるか……」
「なるほど。そこら辺をちょっと探ってみるか。もし、プレシアさんが指名手配されて無かったら?」
「その時は喋っても良いわよ。フェイトの事も大丈夫」
ふむ。多分、リンディさんは食い付いて来るな。
「分かった。俺の楽観的予想なら大丈夫そうだが。ちなみに輸送船のアレは証拠を残した記憶は?」
「もちろん無いわよ。事故を装う様にしたんだから」
まあ、どんな手を使ったかは聞かないが。
「分かった。今度会った時に聞いてみる」
「そうね。しかし、リンディさんとは仲良くなれそうね」
「どして?」
「だって、アレスちゃんを襲った奴らを厳重に処罰しようとしたからね」
そう言って頭を撫でてくるプレシア女史。
「まあ、そうだが」
「だからね? こっそり私に教えて頂戴? どんなヤツだったのか。私直々にお礼をしてあげるから」
プレシア女史の目は黒く輝いていた。
今なら視線を合わせただけで人を死に追いやることが出来そうだ。
「いや、その気持ちだけ受け取っておくよ」
これ以上あのアリア・ロッテ姉妹の敵を増やしたらマジでシャレにならんと思う。
「そう? もう、アレスちゃんは優しいのね♪」
そう言って抱きしめてから頬を撫でてくるプレシア女史。
俺は心の中で苦笑するしかなかった。
と言う訳で約束の日が来ました。
本来なら、俺だけ来るはずだったのですが。
「ほー、ここが時空管理局本部かー」
「確かに大きいな」
「でけぇ……」
俺の後ろに居るのは八神ファミリーの面々。
『アレス君だけに任せるなんて嫌や! 私の事なんだから私も加わるで!』
と言う事でグレアム氏との会談に来ることとなりました。
入り口にいるのですが、周りからの視線が突き刺さります。
男性職員の視線はシグナムとシャマル。一部にヴィータとはやての両人をジロジロ見てる。
一部のお前ら……
女性職員の視線は大半が俺。たまにザフィーラ。
そしてその女性職員達の視線は肉食獣的な雰囲気を帯びていた。
ここの管理局本部の女性職員はショタが多いんかい!
微妙に嫌な予感を感じるが、とりあえず中に入ろうか。
グレアムさんの応接室に案内されて中に入ると。
グレアムさん、リンディさん、レティさん、クロノの4人がいた。
クロノは俺の顔を見てから手を前に出して拝むようにしていた。
どうやら、『すまない、この2人を止めることが出来なかった』と言いたいのだろう。
まあ、クロノじゃ止めることは出来まい。
無論、俺でも無理だがね!
さて、グレアムさんは別段変わった様子は見受けられないが。
リンディさんはレティさんはニコニコ微笑んでいた。
実に嬉しそうに見える。
そう言えば、アリアとロッテの2人はどうなったのだろうか。
少し気になったが、以前リンディがあの2人にお仕置きするような事を言っていたのを思い出したので聞くのを止めておいた。
触らぬ神に祟り無し、頭に浮かんだことわざだった。
似たようなヤツで『触らぬハゲに抜け毛無し』と言う言葉も浮かんだが、アレは
「初めまして……だね。私がギル・グレアムだ」
「こちらこそ、嘱託魔導師をやってる藤之宮アレスです」
「あの、八神はやて……です」
そのあと、次々と自己紹介をする。
「さて、本日ここに赴いたのははやてが持つ『夜天の書』に関する事です」
「夜天の書? 闇の書では無いのかね?」
不思議そうな表情で聞いてくるグレアムさん。
「はい。私が持ってるこの書、『武神の魔導書』のデータから明らかになっております」
俺の手には黒色で真紅の装飾が施された本がある。
「……数々の文献でも名前だけ載っていて存在を誰1人として確認した事なかった幻の……魔導書。まさか、この目で見ることが出来るとはな」
「しかも、闇……いえ、夜天の魔導書の姉妹機だったなんてね」
グレアムさんとレティさんの2人は驚いた顔で俺の持つ魔導書を見つめていた。
「アリアさんとロッテさんから全てを聞きました。夜天の書はこちらで元に戻す予定です」
「そうか。ならば、私が立てた計画は全て白紙に戻す。すまない……」
そう言ってグレアムさんははやての前で土下座する。
「グレアムおじさん……」
場が湿っぽくなって来たが、そこは切り替える様に誘導する。
「さて。グレアムさんにお願いがあります」
「……どんなお願いかね?」
「お願いするのは、はやてが独立するまで資金援助を打ち切らないようにすることですね。あとは、気軽に八神家に遊びに来て欲しい」
「アレス君?」
「見ての通り、はやてには母親、父親がいない。最近になってシグナム達がいる様になったが……」
「……そうだな。そうさせて貰うよ」
「グレアムおじさんがお父さん代わりかぁ……ほんなら、お母さんは誰になるんかな?」
はやての呟きで反応する人がいた。それはリンディさんとレティさんだった。
「その手があった……! はやてちゃんを義娘にしてアレスちゃんと結婚……そうすればアレスちゃんは義息子に!」
「グリフィスも妹がいたら喜ぶでしょう!」
2人のとんでもない呟きに俺はクロノの顔を見る。
「……」
クロノは無言で首を横に振った。
やはりクロノでは荷が重すぎるか。
「何故2人が今日の会談に喜びながら来たのか理由が分かったよ……」
グレアムさんは苦笑しながらリンディさんとレティさんの様子を見ていた。
「オメーも大変だな……」
ヴィータのボソボソと俺に語りかける。
「……いつもの事だ」
俺はそう返答しておいた。
いちいちツッコミを入れていては話が先に進まなくなるからな!
しかし、この暴走淑女×2はどうすれば良いのか。
ふむ、フェイトがリンディさんの養女になるフラグはキッチリとへし折ってるからな。
このままはやてがリンディさんの義娘になるのは問題ないだろう。
「さあ、はやてちゃん♪私の事はお母さんと呼んで良いのよ?」
「ダメよ、はやてちゃん♪こんなお母さん持つと将来は超甘党になって糖尿病になるわよ?」
はやては2人に詰め寄られて視線を右往左往させていた。
「主はやてに任せます……」
「はやてちゃんの好きな方を選んで下さい」
シグナムとシャマルははやてに丸投げしたようだ。
確かに、どちらが母親になっても2人には特に問題は無いだろう。
はやてが俺と結婚したら自動的に2人も一緒に付いて来るのだから。
「え、ええっと……アレス君は? お義母さんにするなら……どっちがええかな?」
何で俺に話を振るのかねぇ!?
ぶっちゃけ言うと、どちらがなっても同じ未来しか思い浮かばないんだが。
「な、何故に俺に話を振る?」
リンディさんとレティさんの視線が俺の方を向く。
一言で言えば、羨望の眼差しと言うのであろうか。2人とも『私がお義母さんが良いわよね?』と目で語っていた。
「アレスちゃんはどちらがはやてちゃんの母親にふさわしいと思う?」
「もちろん、こんな何でもかんでも砂糖漬けにする人より私よね?」
何気なく毒を吐くレティさん。
まあ、確かにリンディさんのあのお茶はどうかと思うけどね。
ちなみに2人の目は光り輝いていた。
目から光線でも出せるんじゃないかと思えるくらいに。
「俺は2人ともどちらでも問題は無いのですが。それよりも、他の家族の意見は聞かれないのですか?」
「え?」
「え?」
2人は驚いた顔で俺を見る。
「確か、リンディさんにはクロノが、レティさんには息子さんがいると伺っていますが?」
「アレス、君は……」
「クロノは黙ってなさい!」
有無を言わさずクロノを黙らせるリンディさん。
「まあ、引き取った先で兄妹の折り合いが悪くなるようならちょっと考え物ですよねぇ?」
ぶっちゃけ言うと、クロノもグリフィスもはやてをないがしろにする様な人物ではないと知ってるが。
「確かに、はやてちゃんと仲が悪くなるのは……問題ね」
「うちのグリフィスに限って……。でも、あり得ない話では無いわね」
2人は顎に手を当てて考え込む。
「上手いな……」
「見事に責任を2人の息子になすり付けてるぞ……アイツ……」
ヴィータとザフィーラのヒソヒソ声が聞こえる。
「さすがね。はやてちゃんの目は間違っていないわ」
「ああ。さすがは我らの主。そこに痺れて憧れます」
シグナムとシャマルの会話。
シグナムははやての部屋でジョジョでも読んだのだろうか。
確かにジョジョ全巻は存在はしているのだが。
「ふむ……この2人をこうも手玉に取るとは……侮りがたいな」
グレアムさんも目を細めて顎に手を当ててリンディさんとレティさんの様子を見ていた。
「さあ、クロノ? 妹が欲しくないかしら? 義妹だけど、欲しいわよね? ね?」
クロノに詰め寄るリンディさん。
クロノは冷や汗を流しながら後ずさり、壁際に追い込まれていた。
こちらからはリンディさんの顔は見えないが、かなり迫力あるのだろう、クロノの目が涙ぐんでいた。
「え? えっと」
返答に窮するクロノ。ここでいらないと答えたら……どうなるかはすぐに予想出来る。
レティさんは通信を開いていた。
空間ディスプレイには12歳位の少年が映っていた。
眼鏡をかけていて、レティさんに似ている。
「グリフィス? 妹が欲しくないかしら? 欲しいわよね? 欲しいと……言いなさい!」
もはや脅しに近いんですが。
『い、いきなりどうしたんですか!? 母さん!?』
混乱しているグリフィス少年。
まあ、母親から通信が来ていきなり妹が欲しいわよね?と問われたら混乱するわな。
〈お兄様も人が悪いですわね。クロノさんとグリフィスさんに丸投げするなんて〉
〈仕方ないだろ。この場で俺が選んだら、片方が自殺しかねない勢いになりそうだったし〉
〈確かに、そうですわね〉
〈それと、面白そうだったし〉
〈やっぱり、人が悪いですわね〉
エヴァと念話で会話していると、驚きの声があがっていた。
「な、何ですって!!? 妹はいらない!?」
声の主はレティさんだった。
どうやら、グリフィスはいらないと返答したようだ。
「あ、ああー、妹が欲しかったんだ、はやてみたいな妹がー」
明らかな棒読み口調のクロノ。
そりゃ、折れるだろ。リンディさんから闇のオーラみたいなのが立ち上って見えるし。
俺の目の錯覚かも知れないが。
「コレで決まりね?」
満面の笑みでレティさんの方を向くリンディさん。
「ちょっと待ちなさい、リンディ! グリフィス、どういう訳か説明して頂戴!」
『だって、いきなり妹が欲しいって……ネコの子貰ってくるみたいに言われても』
「別に人さらいみたいな真似してる訳じゃないのよ!」
『え? 母さん……いつ男の人を見つけたの?』
目を大きく開いて驚いた顔でレティさんを見るグリフィス。
「違うわよ!」
『それなら、いきなり妹なんて出来ないよ? 母さん……人は独りで子供出来る訳じゃないから』
「そっちから離れなさい! 兎に角! 貴方が『うん、良いよ』と言えば万事解決なのよ!」
レティさん、それはもはや力技ですよ?
『母さん、ソレを言ったらいきなり僕に妹が出来そうじゃないか。理由を説明してよ』
「しょうがないわね! 簡潔に説明するわ!」
そんな訳でレティさんはグリフィスに説明をする。
『なるほどね』
「分かったかしら? だから、『うん』と言いなさい!」
『母さん……僕は別に妹はそこまで欲しくは無いんだけど。それに、そっちのクロノさんが欲しがってるじゃないか』
苦笑いしているグリフィス。
「……貴方にはアレが本当に欲しがっているように見えるの!?」
「あー、はやてが妹なら良いなぁー」
明らかな棒読み口調を続けるクロノ。
『うん、見えるよ』
サラリと言うグリフィス。
「……今度、貴方の眼鏡を調整しに逝きましょうか? 眼科か眼鏡屋に」
微妙に発音が違うんだが。
「そう言うわけで、ごめんなさいね~、グリフィス君?」
『あ、ハイ。それでは失礼します』
リンディさん満面の笑みで通信を切る。
レティさんは膝と両手を床について絶望的なポーズを取っていた。
彼女の周りの空間だけ、何故か暗さが増していた。
「と言う訳で。家族の同意も取れたから……はやてちゃん? 私の事はお義母さんと呼んで頂戴ね?」
「あ、は、ハイ……お義母さん……」
「う~ん……これで後ははやてちゃんとアレスちゃんが結婚すれば全てが叶うわね」
「まあ、こんな母だが……。不肖な兄になるかも知れないが。これからよろしくな?」
「はい、お義兄ちゃん」
「! お義兄ちゃん?」
びっくりした顔ではやてを見るクロノ。
……シスコン化してるのか?
「あの……お兄ちゃんって言うのダメ?」
「……いや、全然構わない」
「良かった~それなら、これからよろしくお願いします、クロノお義兄ちゃん?」
「……妹が増えて良かったな、うん」
大丈夫か? こいつ。
その後は、ヴォルケンリッターのメンツはクロノをどう呼ぶか、一悶着あったが。
シグナムは「義兄上」
ヴィータは「義兄貴」
シャマルは「義兄さん」
ザフィーラは「義兄者」
と言う風になった。
頑張って大きくなれよ、クロノ。
あとは、完成が近くなったらリンディさん、クロノ、グレアムさんは地球に来て貰う。
その他諸々の段取りを確認しあって夜天の書に関する会談は終了した。
はやてとヴォルケンリッターの面々はグレアムさんと話していた。
丁度、アリアとロッテも来たのでややぎこちないが、会話している。
「リンディさん?」
「ん? いやねぇ~お義母さんで良いのよ?」
既に頭の中でははやてと結婚してる事になってるんかい!
「いやいやいや、まだ結婚してませんが」
「でも、それは確定事項でしょ? なら問題無いわ♪」
問題だらけだわ! 管理局内でんなこと言ったらどうなるか、たまったもんじゃねぇ!
「いえ、さすがに局内では。とりあえず、今まで通りで呼ばせて貰います」
「もう、アレスちゃんったら。それで? どんな用事かしら?」
俺はレティさんを立ち直らせようとしてるクロノを見ながら喋る。
「最近、魔導師と知り合ったんですよ」
「へぇ?」
リンディさんの目が少し細くなる。
「名前は『フェイト・テスタロッサ』。ミッド式の魔法を使いますね」
「テスタロッサ? まさか?」
「知り合いにいるんですか?」
「いえ、昔……管理局の動力炉の研究していた人に『プレシア・テスタロッサ』さんと言う方がいて」
「そう言えば、母親がそんな名前でしたよ?」
「っ!」
驚いた顔で俺を見るリンディさん。
「まあ、なのはが先に知り合ったんですがね。そしたら、2人とも仲良くなって。それで、今は一緒に夜天の書の魔力蒐集に協力してもらってるんですよ」
「なるほど……いえ?でも、テスタロッサさんの娘さんは……確か……事故で……」
ブツブツ呟くリンディさん。
どうやら、ジュエルシードの件は知らないみたいだ。
コレは好都合と言えば好都合だな。
「そう言えば、双子のお姉さんがいましたよ? アリシアって言う名前の」
「……! まさか……!」
「プレシアさんが何か悪いことしたんですか?」
俺は少し悲しそうな顔でリンディさんに尋ねる。
「いえ、大丈夫よ。特に何もしてないわ。(そうよね……。人造魔導師と言う証拠は……無いし。あの事故以降、噂は聞いてないし)」
「まあ、機会があったら紹介しますよ。魔導師としての腕は結構良いみたいですし」
「そう? それならお願いするわね、アレスちゃん♪」
「ダメよー! それ以上リンディに戦力を増強させないわよ! アレスちゃん! 貴方だけは私の所に来て頂戴!」
レティさんがいきなり乱入して叫びだした。
「何を言ってるのよ貴女は! アレスちゃんは私の直属の部下よ!」
「認めないわよ、リンディ! 貴女はいずれアレスちゃんの義母になるんでしょうが! だから、今のウチでも私に貸しなさい!」
「何を戯けた事を! なのはちゃんを貸してあげるわよ!」
「くっ! それはそれで悪くないけど……ダメよ! やっぱりアレスちゃんよ! 頭撫でたりほっぺたスリスリしたいのよ!」
わー、本音が出ましたよ、レティさん。
「本性を現したわね? アレスちゃん、間違ってもレティの部屋で2人っきりはダメよ? 上がりたくもない大人の階段を上がるかも知れないわよ?(私だって頭ナデナデしたりほっぺたスリスリしたいわよ!)」
「何をアレスちゃんに刷り込んでるのよ! ごめんね? このオバハンは砂糖の取りすぎで時々頭が呆けるのよ?」
「貴女こそ何を吹き込んでるのよ! あとオバハンって何よ!!」
ああ、リンディさんとレティさんの口喧嘩は止まらない。
クロノはレティさんに吹っ飛ばされたのか知らないが、床で大の字になって気絶していた。
〈お兄様ってモテモテですわね?〉
〈俺は何か違うと思うのだが?〉
〈やっぱりそう思います?〉
〈なんか、マスコットって感じなんだよね〉
〈あー、確かに。直美お母様や、プレシアさん、桃子さんも似たような感じですわね〉
〈何だか変な世界だよな、ここって〉
〈ですわね。本来なら、あのお二方もしっかりした提督なんでしょうけど〉
〈微塵も感じさせないくらい暴走しとる〉
〈ですわね。でも、見ていて飽きが来ないですわね〉
〈それは言えてるな〉
といった念話をエヴァと交わしつつ、俺はリンディさんとレティさんの口喧嘩を眺めていった。
はやてがリンディさんの養女になるフラグが立ちましたw