魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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ジュエルシードに捏造設定があります

この小説オリジナルです


第9話 原作から乖離しはじめました(何を今更)

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、お仕置きにしてはちょいとやりすぎじゃないのか? プレシアさんよぅ?」

 

「私の名を何処で!」

 

「何処だって良いだろ? フンッ!」

 

俺はフェイトを吊っている魔法の鎖を解いた。

 

【次元転送!】

 

魔法陣に包まれるフェイト。そして、姿が消える。

 

何処に送ったかって? 扉の外にいるアルフの所だよ。

 

〈フェイトを連れてどっかに行け!〉

 

〈そ、その声は! 何でアンタが……!〉

 

〈いいから、早くフェイトを連れて転送しろ!〉

 

〈わ、分かったよ……〉

 

そう言って扉の外の気配は無くなった。どうやら転移したと思われる。

 

「あらあら、いきなり来て何のつもりかしら?」

 

「娘を虐待する母親をちょいとお仕置きに」

 

「娘?」

 

「さっきの子は娘じゃないのか?」

 

「あははははは! あの失敗作が娘!? 冗談は止めて貰いたいわ!」

 

大声を上げて笑うプレシア。

 

「そうか……失敗作か……」

 

「そうよ! あんな人形、私の娘ではないわ!」

 

狂気に満ちた表情で俺を見るプレシア。

 

「エヴァ。カートリッジロードだ」

 

【え……アレは……まだ……】

 

「いい。さすがの俺もちょっと頭に来たぜ」

 

【……分かりました。無理はしないで下さいよ? 起爆(エクスプロズィオーン)!!】

 

ベルカ式魔法の真骨頂、カートリッジシステム。一時的に魔力を高めて戦闘力を上昇させるシステムだ。

 

身体にちょいと負担がかかるからいずれは改良しようとしていたのだが。

 

ちょっとこのオバハンにお仕置きしてからだ!

 

「それは! ベルカ式……! 貴方はベルカの騎士!?」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 竜の一撃、受けて見ろ! 竜牙!」

 

左手に持ち替えての片手突き。

 

プレシアの前に防御の魔法陣が現れるが。

 

「その程度で止まると思うか!」

 

一瞬止まったが、魔法陣はガラスの様に砕ける。

 

「くっ!」

 

プレシアは2層目の防御魔法陣を展開する。

 

「無駄無駄無駄ぁ! この突撃を止めたければその3倍の強度の魔法陣を構成するんだなぁ!」

 

あっさりと砕け散るシールド。

 

「く……! 何て言うパワー!」

 

プレシアは3層目の防御魔法陣を展開。

 

「何枚展開しようが!」

 

「ぐ……ゴホッ」

 

その時、プレシアの口から血が溢れ出す。

 

「……」

 

俺は突きを止めてプレシアの前に立つ。

 

「……ゴホッ……どうしたのよ……」

 

「どうしたも、こうしたも。病人相手にお仕置きしてもな」

 

「そう。だから、私には残された時間は無いの……」

 

プレシアは口元を拭う。

 

「さて、1つ聞きたいのだが。ジュエルシードを集めて……何がしたいんだ?」

 

「……貴方に関係無い話よ」

 

「……そうか。そうそう、俺のデバイスはな……古代ベルカで造られた『武神の魔導書』と言う名前らしいんだが?」

 

「っ! まさか……『夜天の魔導書』の双子機として造られた……僅かな文献だけで実在するかどうかも怪しかった魔導書が」

 

「そう言う事だ。昔の古い事も知ってるかもな?」

 

「『アルハザード』。かつて、死者をも復活させた技術を持つ伝説の都よ。私はそこに行きたいのよ」

 

 

 

 

 

 

プレシアから聞いた話はこうだった。

 

事故で死亡した娘、アリシアを復活させたい。

 

クローン人間でフェイトを造ったけどアリシアでは無かった。

 

まあ、確かに同じ遺伝子でも環境が違えば違う人格になるのは当たり前だろう。

 

「なるほどね~」

 

「……で、貴方のデバイスにその記録が載ってるのか知りたいのよ」

 

「どうなんだ? エヴァ?」

 

【ハイ、記録ありますよ?】

 

1秒待たずのエヴァからの回答だった。

 

「お、おおお教えなさい!!」

 

俺の両肩を掴んで来るプレシア女史。目が真っ赤になってますが。

 

「……条件がある」

 

「……何よ」

 

「フェイトを実の娘として接すること。それが条件だ」

 

「……今更……散々ひどい仕打ちをしてきた私に……」

 

「今ならまだ間に合う。このままだとフェイトの心に深い傷が残るぞ」

 

「……でも……」

 

「それと、アンタの後ろの方でフェイトに似た女の子がふくれ面してアンタの事を見てるのだが?」

 

「へ?」

 

口を開けて呆然とした表情で俺を見るプレシア女史。

 

「言ってなかったな。俺の右目は幽霊とか精霊とかそう言ったモノを見ることが出来るんだ」

 

俺は自分の蒼い目を指差して笑った。

 

「え? へ?」

 

「まあ、アンタには見えないだろうが。その子がアリシアと言う子ではないのか?」

 

俺は右手に魔力を込めてアリシアに当て、一時的に普通の人が見える様にした。

 

「お母さん!」

 

「ひっ!?」

 

驚くプレシア女史。ゆっくりと、後ろの方を向いた。

 

そこには両手を腰に当てて頬を膨らませてプンプンと言った感じが似合う様子の金髪の女の子が立っていた。

 

「あ……アリシア……?」

 

「アリシアじゃないよ! って……やっと私の事気付いてくれた~!」

 

アリシアはプレシア女史の方に駆け寄ってきた。

 

抱きしめようとしたが、アリシアはプレシア女史の身体を通り抜けてしまった。

 

「あ、あれ?」

 

「ほらほら、アリシアは身体が無いから……」

 

俺は苦笑いしてアリシアの方を向いた。

 

「そっか、私の身体はアッチの方にあったんだ」

 

舌を出して笑うアリシア。

 

「……どういう事かしら?」

 

「どういう事も。ここに居るのはアリシアの魂だよ。どうやら成仏はしてなくてずっとここに居たみたいだけどな」

 

「え゛」

 

俺の言葉を聞いて顔が青くなるプレシア女史。

 

「そうだ! お母さんにずっと言いたかったんだ! せっかく妹が出来たのにお母さんったら!!!」

 

そこからはアリシアの説教タイム(ずっと私のターン)が始まった。

 

プレシア女史は正座してアリシアの言うことをずっと聞いているのであった。

 

 

 

 

 

小一時間経過したらアリシアの身体が透け始めた。

 

「あ……あれ?」

 

「時間だよ。見えなくなるだけだから」

 

「そっか……」

 

ちなみにプレシア女史は某ボクサーの様に真っ白に燃え尽きていた。

 

横たわって口からエクトプラズム的な何かが出てる様に見えるが。

 

気のせいだろう。

 

「ま、俺はずっと見えるけどね」

 

その言葉を聞いてプレシア女史は俺の足首を掴んで来た。

 

「えっと?」

 

「ずっとここに居る気は無いかしら?」

 

即座に立ち上がって顔を近づけて来るプレシア女史。鼻と鼻が当たってるんですが……。

 

「仰る意味が分からないですが?」

 

「貴方が居てくれたらアリシアと会話が出来る。そうでしょ?」

 

「まあ、確かに。俺はアリシアの姿と声は確認できますが?」

 

「それに……よく見ると……貴方、すごく可愛い顔してるじゃない?」

 

プレシア女史は頬を赤くして俺の頬を撫でてきてるのですが?

 

もの凄く、イヤな予感を感じるんですが?

 

「ますます訳が分からんのですが?」

 

「まあ、単刀直入に言うわ。私の義息子になりたいと思わない?」

 

「なぬ?」

 

「アリシアかフェイト、どちらかをお嫁にあげるから……それとも、2人とも欲しいならあげるわよ?」

 

プレシア女史はアリシアに説教されて頭のネジが外れたのか?

 

『お母さんったら! もう! でも……お兄ちゃんならお嫁さんになっても良いな~』

 

プレシア女史の後ろでは顔を真っ赤にして頬に両手を当ててやたらクネクネ動いてるアリシアの姿が目に入った。

 

見えぬ! 俺には何も見えんし聞こえんぞ!

 

「ま、まて……俺はまだ9歳だぞ?」

 

「あら、婚約と言う形を取っても良いわよ?」

 

「その前に、フェイトの確認くらい取ってから……」

 

「そうね。多分、貴方なら大丈夫だと思うけどね。ま、確認しておきましょ」

 

ニヤリと口元をあげて笑うプレシア女史。

 

確かに大丈夫そうだから恐いんだが。

 

「……ほれ」

 

俺は小瓶をプレシア女史の方に向けて差し出した。

 

無論、魔法のポシェットから出したのだが。

 

「何かしら?」

 

「とりあえず、アンタの胸にある病気を治せ。アリシアが蘇生してもアンタが亡くなっては意味がない」

 

「確かに……。でも、私のこの病気は……」

 

「騙されたと思って、飲んでみろ。治るから」

 

「分かったわ。騙されたと思って飲んでみるわ……」

 

まあ、完治はするのは間違いない。前世で俺とエヴァが2人で共同開発した秘薬なのだから。

 

問題は、言葉に言い表せない位に不味いと言う事だ。水を飲んでも、歯磨きしても最低3時間は口の中に味が残るのだ。

 

良薬は口に苦し。まさにこの事だな。

 

でも、それで病が治るなら良いと思うがね。

 

【あ、お兄様?】

 

「どうした?」

 

【アルハザードに行くにはどのみちジュエルシードがいりますわよ?】

 

「何?」

 

【万全を期すなら全21個で最低でも9つ必要ですわ。元々はアルハザードの門を開ける為の宝石でしたのよ?】

 

「そうだったのか。そう言う事ならなおさら集める必要があるなぁ……」

 

「へぇ……それは知らなかったわね。ところで……貴方、デバイスに『お兄様』と呼ばせてるの?」

 

プレシア女史がニヤニヤしながら寄ってきた。後ろではアリシアが未だにクネクネしていた。

 

 

「……う」

【あ……】

 

 

「まあ、人には色々な事情があるからこれ以上の詮索は止めておくわ」

 

それでもプレシア女史はニヤニヤと笑っていた。

 

「く……俺は帰るぞ。いいか? その薬を飲んでおけよ」

 

「分かったわよ。それじゃ、またお会いしましょう? 小さな勇者さん?」

 

「藤之宮アレス。それが俺の名だ」

 

「分かったわ。アレスちゃん?」

 

プレシア女史、貴女もちゃん付けで呼びますか。

 

「ああ」

 

俺は時の庭園から転送した。

 

 

 

 

 

 

 

「おや?」

 

転送してみたら何故かフェイトとアルフが居た。

 

「な、何でアンタがここに……」

 

フェイトに包帯を巻いているアルフ。フェイトは気を失っていた。

 

「ああ、うっかりここに転移したみたいだな、ハッハッハッ」

 

「ハッハッハッじゃないよ、全く……。でも、アンタにはお礼を言わないとね。ありがとう、フェイトを救ってくれて」

 

「気にするな。たまたま転移したらあそこに飛んだだけだ」

 

「……ま、どこまでがホントかアタシは突っ込まないけどさ。それでも、フェイトを救ってくれた事は間違いないだろ?」

 

「そうだな。結果としてはフェイトを救ってるな」

 

黙々とフェイトの腕に包帯を巻き始めるアルフ。

 

「治癒魔法、使わないのか?」

 

「アタシが魔法を使うと、フェイトに負担がかかるからさ。とりあえず、応急処置だよ」

 

「なるほどね」

 

俺はアルフの横に移動する。

 

「どうしたんだい?」

 

「ああ、せっかくだからちょいと魔法を……リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 汝が為に(トゥイ・グラーティアー)ユピテル王の(ヨウィス・グラーティア)恩寵あれ(シット)治癒(クーラ)』」

 

フェイトの身体が光り、傷がどんどん塞がっていく。

 

「へぇ。凄いじゃないか。あれだけの傷を一瞬で」

 

「まあな。魔法のセンスは無いんだが」

 

「冗談。アレで魔法のセンスが無いって言ったら大半のヤツが魔法のセンスが無いって事になるよ」

 

「それでもだ。フェイトの方が上だよ。魔法の才能は……ね」

 

「ううん……」

 

フェイトからの呻き声。

 

見るとフェイトの目がゆっくり開いた。

 

「ここは……」

 

「自宅だよ、フェイト」

 

「そう……じた……」

 

俺の顔を見て動きが止まるフェイト。

 

「フェイトを助けてくれたんだよ。あの鬼婆の所から転移させて……傷まで治してくれたんだ」

 

「そう……ありがとう……」

 

そう言ってソファーから起き上がるフェイト。

 

「さて、と。他に異常は無いか?」

 

「……ん……無いよ」

 

その時、フェイトのお腹から可愛い音が聞こえてきた。

 

 

「……」

「……」

 

 

「……ま、そっちは正常だな」

 

耳まで真っ赤になってるフェイト。隣ではアルフがニヤニヤ笑っていた。

 

「乗りかかった船だ。飯の準備位してやる」

 

俺は立ち上がってキッチンと思われる場所に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 

 

「……何も無いんだが」

 

俺は冷蔵庫を開けて愕然とした。

 

見事に空っぽだったからだ。調味料1つ存在しない冷蔵庫。

 

いや、奥に消臭剤のキムコはあったが。

 

【さすがのお兄様もこれではどうしようもありませんね~】

 

「……買いに行くか」

 

俺は街に転移した。

 

 

 

 

 

 

適当に食材と調味料を買ってきた俺はキッチンで料理を始める。

 

まあ、それなりに料理は出来る。……が某赤い弓兵の様にはいかないが。

 

「さて、出来た」

 

俺は料理をテーブルに並べた。

 

「わあ」

 

「お、美味そうな肉じゃないか~」

 

テーブルの上に並べたのはサイコロステーキ、ツナを入れたコーンサラダ、ワカメが具の味噌汁に白いご飯。

 

後は豆腐の上にショウガを乗せた冷や奴だ。

 

「ほら、しっかり食べないと大きくなれないぞ」

 

「アンタだって大きくなれないよ?」

 

「やかまし。俺は良いからフェイトの方だろ」

 

「……うん……」

 

そう言って俺達は食事を始めた。

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、アンタの名前って?」

 

アルフが肉をほおばりながら俺の方を向いた。

 

「……言ってなかったか?」

 

「いいや、聞いてない」

 

フェイトの方を見ると首を横に振っていた。

 

俺は顎に手を当てて思い出した。

 

確か、なのはは自己紹介してたけど……俺は言った記憶が無いな。

 

「確かに言った記憶は無いな」

 

「でしょう?」

 

「それでは、改めて。藤之宮アレス。年齢は9歳。こないだ会ったなのはの幼馴染みだ」

 

「なのはって……」

 

「こないだ戦った水色の子だよ」

 

「極悪固定砲台の子だね……」

 

酷い言われようだが、大体合ってる。

 

「それで? 何で、ジュエルシードを集めてるんだい?」

 

「うむ、それはだな……」

 

俺は事情を説明した。

 

 

 

 

 

「なるほどねぇ」

 

「私も……頼まれてるから……」

 

「良いよ。まあ、プレシアさんと話をしてるから俺もフェイトの協力をする。なのはとユーノにも俺から言っておく」

 

その言葉を聞いてアルフとフェイトが目を見開いた。

 

「そんな……あの鬼婆が……」

 

「母さんが……」

 

「ああ、あの後……誠心誠意を持ってプレシアさんとお話したぞ?」

 

「ホントにぃ? まあ、確かにあんたの腕ならあの鬼婆もそう簡単に勝てないだろうけど……」

 

「そう言えば、アレスの魔法って……何か違うね?」

 

フェイトは冷や奴を口に運んでいた。

 

「ああ、俺の魔法はベルカ式と言う形式でフェイトやアルフ、なのはにユーノが使ってる魔法とはちょっと違うんだ」

 

「そう言えば、リニスに聞いた事ある。かつて、アタシやフェイトが使ってるミッド式と二分する位、繁栄してた形式だって」

 

「うん。ミッド式は遠距離、広域魔法とか射撃系が多いけど、ベルカ式はその遠距離と広域魔法を度外視して対人戦、主に近接戦闘向きの魔法だってさ」

 

「へぇ~」

 

「それに、俺は武器を使った戦いなら得意分野だし」

 

「確かにねぇ~。背後からの攻撃でも簡単に避けるんだもん。どうすりゃ勝てるか、アタシは困ったよ」

 

「簡単、簡単。前からの攻撃なら俺の動体視力を上回る速さで攻撃、背後からなら完全に気配を消して空気を全く動かさずに攻撃するとか」

 

俺は味噌汁をすする。うむ、今日もいい感じに出汁が取れてるな。

 

「どうすりゃ空気を動かさずに攻撃しろと。それに、アンタの動体視力はどれくらいなんだ?」

 

「ん? フェイトがよく撃ってる魔法の弾が止まって見える位」

 

「ブーッ!!!」

 

豪快に味噌汁を噴き出すアルフ。

 

「あ、アルフ!?」

 

「こらこら、ドリフのコントしてるんじゃないぞ?」

 

「フェイトのアレが止まって見えるって……アンタの目はどういう作りしてるんだい!?」

 

「どういう作りと言われても……説明しようが無いのだが?」

 

「ベルカの魔法で強化してるとか?」

 

【ベルカにはその様な魔法はありませんよ? お兄様の生来の目ですよ?】

 

エヴァが突然喋った。ってか、もう主様って呼ばないのね?

 

「エヴァ、主様って呼ぶ気は無いのね?」

 

【もう、いいじゃありませんか! お兄様はお兄様なんですから!】

 

エヴァが開き直りやがった!

 

「デバイスにお兄様呼ばわりねぇ……?」

 

「バルディッシュ?」

 

【私は聞いたことありません】

 

レイハさんに続いてバルディッシュ卿もバッサリだった!

 

アルフとフェイトの目が妙になま暖かかった。

 

「まあ、俺とエヴァの関係は置いといて……」

 

「……アンタ、妹が欲しかったとか?」

 

「……何が言いたいのかね?」

 

アルフの口元が妙につり上がってるように見えるのだが。

 

「いや、デバイスにわざわざお兄様呼ばわりさせるなんて……シスコンとか?」

 

「何を戯けた事を。そもそも俺は一人っ子だ」

 

「なるほどねぇ~」

 

アルフは腕を組んでウンウン頷いていた。

 

「一人っ子故に妹が欲しかったと……。うん、そうかそうか」

 

アルフはどこからかハンカチを取り出して目を拭いていた。

 

嘘泣きだろ、コラ。

 

「そっか、アレスも寂しかったんだね……」

 

何故かフェイトにまで同情の眼差しを受けていた!

 

どうしてこうなったんだ!?

 

「うが~! 俺は別に寂しかったわけじゃねぇ!」

 

 

 

 

 

 

食事も終えて後片付けを済ませる。

 

アルフとフェイトは風呂から出てきた所だった。

 

「俺はもう帰るぞ」

 

「ああ、ありがとね」

 

「ありがとう」

 

「そうそう、今度機会があったら一緒にプレシアさんの所に行こうか?」

 

「え?」

 

「誠心誠意持ってお話したから大丈夫だ」

 

「う……うん……そうだね」

 

少し、戸惑ってるフェイト。

 

「ま、もうちょいジュエルシードを集めてからだな」

 

俺の足下にベルカ式魔法陣が展開される。

 

「それじゃ、俺は帰るぞ。しっかり食事取って、体調管理しろよ」

 

「うん……」

 

「分かったよ」

 

俺は自宅に向けて転移した。

 

 

 

 

 

 

 

自室に着いたらリニスさんが体育座りしていじけていた。

 

「……遅いです」

 

「すまん、フェイト達の所に行ってた」

 

「そうですか。元気にしてました?」

 

「ああ。ちょいと顔色悪かったから食事の準備して飯を食ってきた」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

「気にするな。で、俺の母さんから話は聞いたか?」

 

俺はベッドに上着を投げた。

 

「ハイ、一通りは。凄いですね、古代(エンシェント)ベルカ式と言えば滅多にお目にかかれないんですよ?」

 

「そうなのか?」

 

「ハイ。しかも、『武神の魔導書』と言えば存在するかどうか疑わしかった伝説の魔導書。そんなのを持っているなんて……下手したら管理局に狙われるかも?」

 

「まあ、その管理局が来たにしても……ここはそいつらの管轄になるのか?」

 

「いえ、管理外ですね」

 

「なら、大丈夫だろ。来ても撃退するし」

 

「……まあ、アレスさんなら大丈夫そうですけど」

 

「そう言うこと」

 

「そうそう、直美さんがご飯の準備してましたけど?」

 

「なぬ?」

 

【お兄様? 直美さんにご飯がいらない事を伝えてましたか?】

 

エヴァの言葉を聞いて俺は背中に少し、冷や汗が流れた。

 

そう言えば、念話で今日の晩ご飯はいらないと伝えた記憶は……無い。

 

「アレスちゃ~ん? 帰って来たの~? ご飯出来てるわよ?」

 

そう言って部屋に母さんが現れた。

 

「あ……母さん……実は……既に外で済ませたと言うか……」

 

「え……?」

 

母さんの目が見開かれて驚愕していた。

 

そして、ハンカチを口にくわえて言い放つ。

 

「ああ……アレスちゃんが……とうとう反抗期に……外でご飯を済ませて来るなんて……」

 

当然、嘘泣きなのはバレバレなのだが。

 

「だから、うっかり伝え忘れたんだって……」

 

「いいえ。あたしのご飯が不味いからなんでしょ?」

 

「いや、母さんのご飯は美味しいから……」

 

「それじゃ、何が不満なの!? 量? おかずの品数が少ないとか!?」

 

「いや、それも問題ないから……」

 

「分かった! あたしが食べさせてくれないからなのね!? 分かったわ! 今度からあたしが食べさせてあげるから!」

 

「そ、それだけは止めてくれ!」

 

なのはが泊まりに来た時にそれをされたら……どんな要求が来るか! 同じように『あ~ん』させられるに違いない!

 

「それなら、忘れないように連絡頂戴ね? 今度忘れたら……問答無用であたしが食べさせてあげるから♪」

 

そう言って母さんは俺の部屋から出ていった。

 

「……」

 

リニスを見ると……『何この変な親子』と言いたげな表情で俺の方を見ていた。

 

 

 

 

 

さて、リニスを復活させるのだが。

 

この家にはそんな設備は無い。

 

「さて、久しぶりにアレを出すか」

 

そう言って俺はポシェットからダイオラマ魔法球を出す。

 

無論、修業用の部屋もあるが今は使用する気は無い。

 

もっとも、他の部屋を繋げていないから使用出来ないのだが。

 

「ここに設置して……と」

 

俺は部屋の真ん中にダイオラマ魔法球を置く。

 

「時間は……よし、1日1時間のままだな」

 

外の1時間がダイオラマ魔法球の中では1日。便利は便利だが、今回は寿命があるからあまり使用しないようにしようか。

 

床に魔法陣を書いて発動させる。これで中に入れる寸法だ。

 

「あの……これは?」

 

「まあ、中に入って説明するよ」

 

俺はリニスさんの遺体が入った箱を持ってからリニスさんに魔法陣の上に乗るように促す。

 

「分かりました」

 

そう言って俺達はダイオラマ魔法球の中に入る。

 

 

 

 

 

「わ~凄いですね~」

 

リニスさんは城の窓からの景色を堪能していた。

 

青い空にジャングルの様な森、先には青い海も見えた。

 

「これもベルカ式の魔法なんですか?」

 

「う、うん……そんなもんかな……」

 

とりあえず、ベルカ式と言うことにしておいた。

 

説明となると色々と面倒になるし。

 

確か、3階にクローンシステムの設備があったよな。

 

俺は3階に向かって階段を昇る。

 

 

 

 

 

部屋に入ると生体ポッドとかそれに繋がれた、いかにもと言った機械が鎮座していた。

 

「これは……?」

 

「ん、ぶっちゃけ言うとクローン作る機械」

 

「ええ!?」

 

「まあ、リニスさんの身体を復元してそれにリニスさんの魂を定着させる。多分、1週間くらいで出来ると思うよ?」

 

「す……凄いです……プレシアが見たら大喜びするかも」

 

確かにプレシア女史なら狂喜乱舞するかもしれないな。

 

「それでは、リニスさんの身体を……」

 

箱から取り出してテーブルの上に置いた。

 

 

 

 

 

組織片を機械に入れてリニスさんの遺伝子情報を解析する。

 

ちなみに、この機械は前世の前世において未来の人から貰った機械である。

 

本来は身体を失った人の腕とか足とかを復元させる機械なのだが。

 

無論、全身全て復元可能と言うとんでもない機械。

 

故に、あまり人には見せられないんだよね。

 

リニスさんにも喋らないように言っておこう。

 

「あ、リニスさん」

 

「はい?」

 

「ここで見たこと、余り喋らないでくださいね?」

 

「あ、ハイ。分かりました。折角生き返らせて貰うんですからね」

 

そう言ってリニスさんは機械をジロジロ眺めていた。

 

 

 

 

 

暫くすると機械が本格稼働しはじめた。

 

生体ポッドの中に肉片みたいな何かが出来始めた。

 

「これって……」

 

「そう。リニスさんの身体になるんだよ。後は時々様子を見に来るくらいでやることは無いよ」

 

「そうですか」

 

「さて、後は出来るまでは休憩だ」

 

 

 

 

 

3日後(外では3時間)。

 

様子を見に来た。

 

生体ポッドの中には猫らしき生き物が浮いていた。

 

「……そうか、リニスさんは……」

 

「ハイ。私は山猫の素体だったので……」

 

人の身体ならもうちょっと時間がかかったであろうが、山猫ならもうじき完成するかもしれない。

 

【お兄様、出来たみたいですよ?】

 

ディスプレイを見ると100%完了と出ていた。

 

すると、ピーピーと音が鳴って生体ポッドの中の培養液が抜き取られる。

 

「おお、出来た出来た」

 

俺はリニスさんの身体を取り出し、魔法陣が描かれた絨毯の上に置いた。

 

「後は……魔力供給してリニスさんの魂を入れたら無事に復活だな」

 

「えっと……ひょっとして……」

 

「主人はとりあえず俺にしておこうか。まあ、プレシアさんは俺の薬を渡したから病気は治ってるだろうけど……」

 

「あ……そうでしたね。確かに負担をかけるわけにはいかないですし……」

 

そして魔力供給を開始する。

 

ラインは繋がってリニスさんの身体が光り輝いてきた。

 

「よし、後はリニスさんが身体に触れて」

 

「分かりました!」

 

リニスさんは自分の身体に触れる。するとリニスさんの魂は身体に入っていった。

 

すると、目の前の山猫が変化して……

 

「……マジですか?」

 

人間形態で全裸のリニスさんが横たわっていた。

 

「うん」

 

目を覚まして起き上がるリニスさん。

 

凄く……大きいです……じゃなくて!

 

「ずっと山猫形態かと思ってたら! こういうオチかよ!」

 

俺はバスタオルをポシェットから取り出してリニスさんに渡す。

 

「あ、ごめんなさい。私ってずっと人間形態で山猫形態ってほとんどとってなかったから……」

 

そう言ってリニスさんはバスタオルを身体に巻いた。

 

はちきれんばかりの胸は……凄まじい。シグナムと同等かもしれない。

 

そして、視線を下に向けると……。

 

下が隠れて無いんですが。パ○パンなんですか? リニスさん?

 

これ以上はリニスファンに刺される恐れがあるからあえて言わない。

 

見えぬ! 俺には何も見えぬ!

 

「あ~……下で服を探して来ますね」

 

俺は2階に向かって服を探すことにした。

 

 

 

 

 

リニスさんに合うのが紺色のメイド服しか無かったので仕方なくメイド服をリニスさんに渡す。

 

ぶっちゃけ言うと胸のサイズが……メイド服しか無かったのだ。

 

まあ、デザインは古来からのロングスカートタイプで落ち着いた雰囲気が出てる。

 

リニスさんにはお似合いだと思ってる。

 

「ん~……召使いの人がよく来てる服の様な?」

 

知ってましたか、リニスさん。

 

「あ~……まあ、確かに召し使い用の服ですよ?」

 

「そうですよね。私はアレス君の召使いですものね。それでは、不肖のメイド・リニス。夜の奉仕も頑張らせて頂きます!」

 

「ぶ――――――――――――――っ!!!」

 

もの凄くとんでもないことを言い放つリニスさん。

 

「どうされました?」

 

「リニスさん……俺の年齢知ってて言ってるのかな? かな?」

 

「……そう言えば、そうでしたね。アレス君の年齢は……確か9歳?」

 

「ええ。こちらの世界のこの国では成人扱いにされるのは20歳なんですよ?」

 

「でも、実際には子供を作れるのは早い人で11歳とかでも大丈夫なんですよね?」

 

まあ、個人差はあるが……。確かにそれでもアレを迎える人は迎えるよな。

 

ってか、このネコ耳メイド(ネコ耳は生えては無いが)は何を言ってるのだろうか。

 

「ああ、まあ、個人差はあるが……可能と言えば可能なんですが……」

 

「分かりました! それでは来年にアレス君が子供を作れるように夜の鍛錬を私が手伝えば良いのですね!?」

 

『我が骨子は捻れ狂う』もビックリする位の勢いで身体を捻って飛んでいきたいんだが!

 

「そっちの鍛錬はどうでもいい! いいから、リニスさんは普通に過ごして良いですから!」

 

「はい、分かりました。それと、夜の奉仕は冗談ですよ?」

 

そう言ってリニスさんは舌をちょっと出して笑っていた。

 

うぬぅ! からかったのか!

 

「くっ……やられた……」

 

「それとも、ホントにします? 私の舌って、素体が山猫だからザラザラしてるんですよ?」

 

そう言ってリニスさんはしゃがんで来て俺の右手を取り、指先を舐めて来た。

 

確かに、ネコに舐められた様な感覚が指先に広がる。

 

「おぅ……くすぐったいと言うか……ホントにネコの舌なんだ」

 

「これで色んな所を舐められたら……どうなるかな?」

 

リニスさんから妙な色っぽさを感じてくるんですが。

 

【さっきから……黙って聞いていたら。ダメですよ? お兄様は私が奉仕するんです!】

 

エヴァが乱入してきた!

 

大体は黙っているのに……さすがに耐えきれなくなってきたのか!

 

「あら、さっきから気になってたのですが。アレス君は自分のデバイスに『お兄様』と呼ばせてるのですか?」

 

口元がつり上がってるんですが……リニスさん。

 

「いや、これは……」

 

【お兄様はお兄様なのです! ポッと出の使い魔にそんな役目はさせません!】

 

「うふふ」

 

そう言ってリニスさんは立ち上がって俺の頭を撫でて来た。

 

「?」

 

「冗談ですよ。アレス君は私を助けてくれたのです。アレス君の望まない事をするわけないじゃないですか」

 

「また……騙された……」

 

「それにしても……エヴァでしたか? デバイスの身でどうやってアレス君に奉仕するのか……気になりますね」

 

【私はユニゾンデバイスなのです。身体はちゃんと持ってるのです!】

 

「あ! まだそれは!」

 

【あ……】

 

エヴァが暴露しやがった! ドジッ娘属性が付与されてたか!?

 

「わ! そうだったの! それじゃあ姿を見せて~!」

 

もはや言い逃れは出来そうになかった。

 

仕方なくエヴァは姿を変えて本来の姿に戻った。

 

金髪の幼女姿に。

 

ちなみに服装はリインフォースさんと同じ服装なのだ。言ってなかったが。

 

簡単に言うと、エヴァンジェリンがリインフォースさんのコスプレをしてるような感じだ。

 

「わー! 可愛い姿じゃないですか!」

 

そう言ってエヴァの頭を撫でるリニスさん。

 

……まさか、ロリの気は無いですよね?

 

「アレス君の姿も可愛いかな~と思ってたけど、エヴァちゃんの姿も可愛いわね~」

 

ひょっとしたらロリとショタが50対50なのかもしれない。

 

「え~重ね重ね言いますが……エヴァがユニゾンデバイスと言うのは」

 

「分かってます。アレス君が秘密を明かすまで黙っておけば良いのですね?」

 

「お願いします」

 

「うふふ。アレス君と秘密の共有ですか。それにしても、アレス君とエヴァちゃん……並んでも違和感が無いわね」

 

「まあ、確かにそうですが……」

 

「それに、アレス君。君が大きくなった時……少女偏愛(ロリコン)扱いされるんじゃないですか?」

 

「それは。まあ、その時に考えます」

 

来年に成長が止まる事は言わなかった。

 

言う必要が無いしね。

 

あ~、なのはとかアリサとかすずかが少年偏愛(ショタコン)でない事を祈る。

 

桃子さんと母さんは……放っておこう。実害があるのは俺だけだし。

 

「それで、お兄様。リニスさんは……どうなさいますか?」

 

「そうだな。魂と身体が馴染むまで2週間はかかると思うから」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。頭を強くぶつけたらショックで幽体離脱するかも知れないから気を付けてね」

 

「分かりました。大人しく生活しておきます」

 

 

 

 

 

リニスはダイオラマ魔法球の中で2週間位生活することに。

 

彼女の家事能力は高いから1人でも大丈夫だろう。

 

まあ、2週間経ったら外に出るように言ってるし。

 

さて、リニスさんも復活させたし、本格的にジュエルシード集めましょうかね。

 

ってか、俺の役目は転生者を天界に送り返すのが役目なのになぁ。

 

 

 




 

みんな大好きリニスさんですよ~

パ○パン仕様はこの小説オリジナルですw




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