GAKKOU ~自衛官 彼の地にて、斯く戦えり~   作:tako1125

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書き溜めって大切(確信)

楽しんでもらえるといいなぁ(願望)


#8 到着

-----巡ヶ丘市 某路上-----

 

89式自動小銃の連射音と何かから血でも飛び出すかのような水音が聞こえた。

もちろん、そんなもの使っているのはここには伊丹たちしかいないし、その水音の正体と言えば"奴ら"の骸から大量に噴出する血液の飛沫音である。

ある時はナイフキル、ある時は飛び道具でヘッドショット。

パンピーである後部収容席の2人には、とても衝撃的な画だったであろう。

にもかかわらず、割と2人は平常心を保っていた。

 

「君たち、結構スプラッタな画見ても、あんまりショックじゃないんだね」

 

伊丹が何気なく聞いた。

 

「・・・モールでは、もっと間近で"あいつら"の顔を見ましたから・・・それに比べれば・・・」

 

そう言って保護した生存者の一人は俯く。

 

「あ~・・・その・・・なんだ、無神経なこと訊いてスマン」

 

伊丹は何となくやるせない気持ちになった。

 

相も変わらず"奴ら"はどこからともなくフラッと湧いてくるもので、たまには高機動車の重みでグシャッと嫌な感覚を受けつつも撥ね飛ばし、もしくは轢いていくしかなかったのである。

後続の富田と言えば、やはりこの現実をあまり直視したくないらしく、たまに無線で話しかけてもあまり声色は元気そうではなかった。

そうこうして市街地を突っ切り、少々小高い丘の道を上る手前で伊丹は倉田と富田に停車を指示した。

 

<<どうしたんです?隊長>>

 

富田から質問の無線通話が飛んでくる。

 

「もうじき日が暮れる、暗闇の坂道で奴らに遭遇するのだけはなるだけ避けたい。今夜はここで野宿だ」

 

そう言って伊丹はPTT(プッシュ・トゥ・トーク)ボタンから指を離す。

 

<<野宿ったって、ここじゃどのみち奴らの餌食じゃないですか?>>

 

「そうですよ隊長」

 

富田と倉田から批判の声が上がってくる。

 

「だから俺たち自衛官がしっかり交代で見張り番するんだろう。何のための89だ?」

 

そうあっけらかんと答える伊丹。

倉田は「ダメだこりゃ」と小声でつぶやきながら半ばあきらめた顔でイグニッションキーを「切」の位置に回す。

そのあとに富田もあきらめたのか73式トラックのエンジンを止める。

ローテーションは1930~2330まで富田、2330~翌0330まで倉田、同0330~同0730まで伊丹の順にすることにした。

もちろん「とっとと寝させてくださいよ~!」と倉田が嘆いていたが、富田の運転するものの扱いを考えれば富田が真っ先に寝る権利を得られるのは当然だ。

 

 

 

 

結局、朝まで"奴ら"の襲撃はなかった。

手近な食糧を各々口の中に放り込み、野営地からそそくさと走り出していく。

そして、昨日たどり着いた丘の道を上っていく。

数はそれなりにいるのだが何を目的としているのかあまり伊丹たちに反応を示さない。

反応そのものも顔をこちらに向ける程度で、特に飛びかかってくる様子もなかった。

よく見れば、この一帯にいる"奴ら"はカッターシャツにスラックスという組み合わせや、セーラー服らしき衣類を着用していた。

そのことから考えるに彼らは巡ヶ丘高校に向かっているのではないだろうかと、伊丹は推測した。

 

「倉田、ちょっと急いで行ってみるか」

 

「そうですね、少し飛ばします」

 

そう示し合わせると、伊丹は無線に手を伸ばした。

 

「富田。少し急ぐぞ、遅れるなよ?」

 

<<了解>>

 

少しばかり速度を上げてしばらく走っていると、校門が目視できた。

しかし妙だ。

昇降口と思しき中央のガラス部分は木材で固められていて、挙句の果てには1階から2階のすべての窓が割れている。

しかし校庭を含めこの敷地の屋外には"奴ら"が見当たらない。

 

グラウンドの校門付近で車両を停車させ、全員降りる。

 

「・・・とにかく、生存者の確認だ」

 

倉田と富田がうなずき、3人とも臨戦態勢に入る。

3人はまず突入前の装備準備に入った。

鉄鉾(てっぱち)にはV8、89式のリアサイトのゆがみも確認し着け剣をする、防弾ベストを着用、弾納が3本分、その中にちゃんと予備弾倉が入ってるか確認しすべての準備が整う。

最後に各員の無線機の調子を確認し、これで突入が可能となった。

 

救助した2人を3人で囲み、全周警戒で突入する。

 

今まさに、伊丹たちが巡ヶ丘高校に足を踏み入れた瞬間だった。

 

-----巡ヶ丘学院高等学校 3F生徒会室-----

 

バリケード作りもひと段落し、これから朝食をとる。

今朝はスパゲティのようだ。

調理は若狭さんがしてくれる。

 

「みんな~できたわよ~」

 

調理台から若狭さんの声がする。

 

「はぁい」

 

「今行くよ~」

 

恵飛須沢さんと丈槍さんが小走りで調理台に向かう。

すべてが配膳され、みんなの着席が確認できた。

 

「それじゃあ、みんな?」

 

「「「「いただきまぁす!」」」」

 

一人だけものすごい勢いでスパゲティをすすっている子がいる。

丈槍さんだ。

 

「おいゆき、もっとよく噛んで食べろよ?」

 

恵飛須沢さんが少々呆れたような顔で諭す。

 

「ふえ?」

 

「ほれ、めぐねえを見てみろ」

 

え?私?

私は普通にフォークで2~3本巻き取って食べてるだけなんだけど・・・。

 

「・・・」クルクル

 

「・・・」アー ハクッ

 

おいしい、なんだか目の前が光で満ちてきた気がする。

 

「な?ああやって食べるんだぞ」

 

「おお・・・」

 

恵飛須沢さんが私を手本にするよう勧めていた。

 

「ちょ、ちょっと、私は普通に食べてるだけよ」

 

顔が熱い。

たぶん、真っ赤になってるのかもしれない。

 

「・・・」クルクル

 

「・・・」アー ハクッ

 

「おいしい・・・」ペカー

 

私の真似をしてか、食べた後ものすごく良い顔になる。

え?私ってあんな顔してたの?

 

「そこは真似せんでよろしい」

 

恵飛須沢さんが的確にツッコミを入れる。

 

「ええー!」

 

「ゆきちゃん、普通によく噛んで食べればいいのよ?」

 

若狭さんが補足をする。

 

「ええー!」

 

「もう・・・、ゆきちゃんったら・・・」

 

私は恥ずかしくて顔を伏せてしまう。

あうう・・・地味に恥ずかしいよぉ、こんな年にもなって食べるだけであんな顔になるだなんて・・・。

羞恥心に悶えているうちに朝食は済んでしまった。

 

「さあ丈槍さん、補修、行きましょうか」

 

「ぅー、そだね、めぐねえ・・・」

 

「露骨に嫌がらないで」

 

そんなやり取りをしている、その時だった。

 

正門の方からエンジン音のようなものが聞こえてきた。

 

「?なにかしら?」

 

廊下をまたいで向かいの教室から外をのぞいてみる、すると校庭に緑色の大きな車とトラックが止まっており、そのすぐ目の前に俗にいう迷彩服をまとった人影が3人、それから巡ヶ丘学院高等学校の制服を着た女子が2人、その女子の1人の腕の中に犬がいた。

 

「・・・っ!?」

 

まさか?本当に?救助に来てくれたのだろうか?

 

私は内心舞い上がり、その衝動でみんなのところへ駆けだそうとしていた。

というより駆けだしていた。

 

ガラッ

 

「みんな!救助よ!救助が来たわ!」

 

そう叫んだ。

 




いよいよ着きました、巡ヶ丘学院高等学校!

ただでさえシャベルで無双できる世界なんだから飛び道具なんか持ってたらチート級でしょ
※予備弾倉1本当り30発×3

まあ長物だから槍としても使えるし・・・あれ、これ原作でちゃんと自衛隊が生きてたら普通に無双できたんじゃ・・・?

次回もお楽しみに!・・・なんてハードル上げは絶対(ry

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