GAKKOU ~自衛官 彼の地にて、斯く戦えり~   作:tako1125

8 / 21
タグにオリジナル設定って入れたほうがいいのかなぁ?

楽しんでもらえるといいなぁ(願望)


#7 なかま

-----巡ヶ丘市 某交差点-----

 

「ここもダメか・・・」

 

伊丹たちは頭を抱えていた。

というのが、"あの日"起こった交通事故などで車が道をふさいでいたり、建物の一部が崩壊し道が使い物にならなかったりとさまざまなところで足止めを食っていたからだ。

そればかりではない。

街の様子がすっかり変わってしまったせいか、昨日救助した2人の少女も、学校への道がわからなくなってしまっていたのだ。

 

「参りましたねぇ・・・これじゃどこが通れなくなっているのか見当もつきませんよ」

 

運転席の倉田が言う。

一応、助手席では伊丹が地図上に通行できなくなっている箇所をマークしている。

それでも、裏道まで合わせればどこまで通行できなくなっているかは予想ができない。

 

「・・・ま、どのみちあまり土地勘ないんだし。ひとつづつ潰していくしかないでしょ」

 

と開き直る伊丹。

 

とりあえず進むことにした伊丹たちだったがそこで気になる音が聞こえた。

 

ブロロロロロロロ・・・ギュルルルル、パスン

 

トラック用のディーゼル音とブレーキのエアー音だった。

しかもこの市内で走っているトラックと言えば、おそらく自衛隊の73式大型トラックだろう。

 

「停車ァ!」

 

倉田に指示を出す。

 

危うく交差点で自衛隊車両が仲良く顔をつぶしていただろうとどうでもいいことを考えながら、伊丹はトラックの乗員を確認した。

 

「富田!無事だったか!」

 

確認したところ乗員は富田だった。

 

「・・・隊長、よくご無事で・・・」

 

ところが富田の顔はとんでもなく色がよくなかった。

ドーランを塗っているわけでもないのにどうなっているのかと思い伊丹は尋ねた。

 

「おい、富田、どうしたんだお前。顔色がとんでもなく悪いぞ」

 

「・・・」

 

富田は答えない。

しかし目線は荷台に向いていた。

伊丹はそのことに気づき荷台をのぞいてみると・・・

 

「・・・こりゃひでぇ・・・」

 

荷台は民間人の骸で山になっていた。

しかしなぜ富田はこんなもの載せてトラックで走り回っていたのか?

 

「富田・・・この"荷物"どーすんだ・・・?」

 

伊丹は恐る恐る尋ねる。

 

「・・・どこかで火葬してやれたら・・・そう思っています」

 

富田は静かに答える。

 

「・・・そうか、とりあえずお前もついてこい。これから巡ヶ丘高校に行く」

 

「・・・生存者探し・・・ですか?」

 

富田は顔を若干歪めながら伊丹に問いかける。

 

「ああ、そうだ」

 

伊丹はきっぱりと答える。

だが、富田は不服そうだった。

 

「・・・隊長、この状況下で生存者が居ると本気でお思いですか?」

 

富田が少々声を荒げて切り出す。

そして

 

「・・・隊長、もう自分はたくさんなんです!これ以上民間人の無残な姿を見たくはありません!ここには絶望しかない!希望なんか持つだけ無駄なんですy」

 

そこまで言って富田の言葉は途切れた。

それと同時に

 

ゴスッ

 

鈍い音がした。

伊丹が富田を殴ったのだ。

 

「・・・富田、俺たちは"自衛隊"だ。国民の生命と財産を守る"自衛官"だ。そこに希望があるかどうかなんて関係ない。自分が嫌だと思うことなんて国民には関係ない」

 

伊丹は富田を諭すように語りかけた。

 

「やめたけりゃ端から救助に参加しなけりゃいい。だがそれは"自衛官"をやめることだ。俺たちは何のために国民を助けてる?自分のためか?」

 

伊丹はさらに続ける。

 

「どっちなんだ?お前は誰のために"敵"と戦ってるんだ?」

 

「・・・」

 

富田はしばらく黙ったまま動かなかった。

しかし、しばらく経って

 

「すみません・・・隊長、少々取り乱しました。隊長の後に続き高校に向かいます」

 

富田の顔は、伊丹に諭された影響か、若干晴れやかになったように見えた。

しかし、さらに晴れやかにしてくれる情報が、富田の鼓膜を叩いた。

 

「ぁあ、そうそう、言い忘れてたが、俺たちはすでに2人の生存者を救助している。もう生存者が居ないなんて言うな」

 

「・・・そう・・・だったんですか」

 

富田の心は、わずかな希望に揺れていた。

 

-----巡ヶ丘学院高等学校 3F生徒会室-----

 

「ふあぁ、あれ?私何でここで寝てるんだっけ・・・?」

 

私、丈槍 由紀は生徒会室で目覚めた。

もちろん、理由なんてわからない。

ただ、何か嫌なことがあったことだけは覚えてる。

とってもとっても怖いことだ。

横では知らない子が2人とめぐねえが寝てる。

しばらくボーっとしていると、

 

「ふあぁ~、・・・んーーーーーっ」

 

めぐねえが起き上がって大あくびをした。

 

「・・・?あ、おはよう丈槍さん」

 

眩しいぐらいの笑顔で挨拶をしてくれた。

 

「え、あ、うん、おはよーめぐねえ」

 

「もー、めぐねえじゃありません、"佐倉先生"」

 

いつものやり取りをしてめぐねえが私の質問に答える。

 

「えっと・・・いつも丈槍さんが遅刻しそうになるからって今日は早めに来てここでもう一度寝てたのよ」

 

何故か困り顔だし、私自身も覚えがないけど、めぐねえが言うんだからきっとそうなんだろうと思った。

 

「ふーん、まいいや、それよりもめぐねえ~おなかすいたよ~ぅ」

 

「そうね、朝ごはんにしましょう」

 

めぐねえが言い終わると同時ぐらいに、隣で寝てた2人も起きてきた。

 

「ふあぁぁ~、ぁぅめぐねえおはよ~」

 

「おはようございます、先生」

 

「おはよう、恵飛須沢さん、若狭さん」

 

知らない子と挨拶してる。

まあめぐねえ先生だもんね、当たり前か。

 

「めぐねえ、その2人は?」

 

「あ、え~っと、あなたと同じようにそれぞれ用事があって朝早くに来たのよ、ね?」

 

めぐねえはほかの子たちと目を合わせる。

 

「あ~、そうなんだよ!あたしは3年の恵飛須沢胡桃、同い年だな!よろしく」

 

「私は若狭悠里、3年よ、仲良くしてね」

 

くるみ・・・さんは元気な女の子って感じだね。

ゆうりさんはなんかお母さん的なオーラが出てるように見えるよ。

 

「私!3年C組丈槍 由紀!よろしくね!」

 

 

 

最初はほんの数分だった。

しかし、最近丈槍さんの現実逃避時間が若干長くなっている気がする。

言動もどこか幼児後退しているような気もしている。

だが、まだこの生活が始まって2日しかたっていない。

まだ希望を捨てる時ではないと、そう私は自分に言い聞かせた。

そして、昨日中断していたバリケード作りの続きに取り掛かった。

 

「んしょ、よいしょ・・・ふぅ」

 

学生たちの勉強机ってこんなに重たかったかしら。

そう思う程度に心身共に疲弊していたのだろう。

そんなとき、

 

ガタンッ

 

「あぅ!」

 

一緒に机を運んでいた丈槍さんが転んでしまった。

 

「ゆきちゃん!大丈夫?」

 

私は若干慌てながらも、丈槍さんのそばに駆け寄る。

 

「・・・グスッ・・・わたし・・・力ないし・・・頭もよくないし・・・いるだけで迷惑だよね・・・グスッ」

 

丈槍さんは、連日のストレスからか精神的な許容範囲を大幅に超えていたようだ。

 

「そんなことないわ、ゆきちゃんの笑顔に先生はすっごく元気をもらってるもの。迷惑なんかじゃないわ」

 

「・・・でも」

 

泣きじゃくる丈槍さんに私はある提案をしてみた。

 

「先生ね、とっても楽しいことを始めようと思うの」

 

「・・・楽しいわけないよ」

 

「先生ね、みんなと一緒に部活動を始めようと思うの」

 

「・・・ぶ、かつ・・・?」

 

「そう、部長は悠里さん、部員は恵飛須沢さんにゆきちゃん、顧問は私。みんな一緒なら、楽しいでしょう?」

 

丈槍さんは、少し落ち着いたように見えた。

 

「・・・でも私・・・みんなの迷惑にならないかな・・・?」

 

丈槍さんは不安そうな顔をして私に尋ねてくる。

 

「迷惑なんかじゃないわよ、さっきも言ったでしょう?ゆきちゃんの笑顔に元気をもらってるって。だから、ゆきちゃんはゆきちゃんのままいてくれればいいのよ」

 

「私・・・このままでいいの・・・?」

 

「そう、きっとあの2人もそう思っていてくれてると思うわ」

 

「ああ、そうだぞゆき」

 

どこからともなく恵飛須沢さんがやってきた。

 

「お前の笑顔はあたしたちに元気をくれる。いろんなことに対してやる気をくれるんだ。だから、ゆきはゆきのままでいいんだよ」

 

「そうよ、ゆきちゃん」

 

「くるみちゃん、ゆうりさん・・・」

 

「りーさん、でいいわよ」

 

若い子の友情って素晴らしいわぁ。

ちょっと感動してしまったのだが、今はそんなこと言ってる場合じゃない、というかもうこの学校にはこの子たちしかいないのだからお互い仲良くしてくれないと困る。

 

「・・・うん!私、がんばる!」

 

「おいおい、笑顔は頑張るもんじゃねーだろ」

 

「そうねぇ」

 

二人はとても明るく、とても暖かい笑顔で丈槍さんを見ていた。

 

「うふふ」

 

私も、少しばかり気が晴れやかになったような気がした。

 




書き溜めって大事だともう今日この頃、っていうか正直なんでみなさんあんなに早く次回がかけるんですか?(切実)

次回もお楽しみに・・・とかいうハードル上げは絶対しない(笑)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。