GAKKOU ~自衛官 彼の地にて、斯く戦えり~ 作:tako1125
楽しんでもらえるといいなぁ(願望)
-----巡ヶ丘市 聖イシドロス大学行き 道中-----
それは一瞬の出来事だった。
<<ガザッ・・・か・・・る・・・こち・め・りがお・・んわん・・ほうs・・きょく>>
気まぐれでスイッチを入れた高機動車のコンソールのラジオから放送音が流れたのだ。
「っ!?倉田、今の」
「ええ、確かに聞きましたよ、さっきの開けた場所で聞こえたとするともっと西かもしれませんね」
伊丹と倉田が意見を交わしあう。
倉田が言う通り、放送が聞こえた地点では西側が開けていた。
「富田、少し西に進路を変えるぞ、そっちもカーラジオ点けとけ」
<<どうしたんです、隊長>>
「急に放送波が掴まったんだ、そっちも聴いといた方がいい」
伊丹は伝令と状況を早口でまくしたてると、倉田に進路を西向きに取らせた。
<<ガサッ・ガーーーーーー・・ぃいや、ワンワンワン放送局はっじまるよー!>>
しっかりとした口調で、人語をしゃべっている。
明らかに生存者だ。
<<隊長、聴きました。やっぱり居るんですね、まだまだ生存者が>>
「ああ!どこかに停車してしばらく聴いてよう。自分で居場所を流してくるかもしれない」
伊丹たちは、四方にそこそこ開けた場所でラジオを聴いていることにした。
<<・・・どんなにつらい日々でも希望と音楽をお届けするよ!じゃ、また明日!・・・ザーーーー>>
「・・・結局居場所は言わなかったな」
伊丹が若干渋い顔をする。
「そうですね・・・でも、明日もするようですし、毎日聴いていればいつか・・・」
「そうだな、とりあえずしばらく移動以外何もすることないんだし、暇つぶしと思ってラジオをかけながら移動しよう」
-----巡ヶ丘市 聖イシドロス大学行き 道中宿営地-----
「ん・・・ぁぁ~よく寝た」
伊丹は目を覚まし、大きくあくびをして天を仰いだ。
「倉田ァ、昨晩はラジオになんかあったか?」
「いいえ、全くもってなにも」
「そっか、ま、今日もゆるりゆるりと行きましょや」
そういいながら高機動車のラジオの電源を入れる。
<<ガザッ・・・おはよう、いい朝だね!外は見てないけど。きっといい朝なんじゃないかな!こちらワンワンワン放送局、今日も一日よろしくぅ!>>
「富田ァ!みんな起こせ!」
そう言うと、学園生活部の面々と共にカーラジオにかじりついた。
<<リスナーのみんな、この放送が聞こえたならこっちに顔を出してくれないかな?コホッコホッ>>
よく聴くとパーソナリティーは咳き込んでいるようだった。
「もしもーし、どこに住んでますか?」
いきなり丈槍がラジオに向かい話しかけた。
「そんなこと言って通じるわけ・・・」
倉田が突っ込みかけたとき
<<コホン、今ならお茶とお菓子もサービスするよー。住所はね・・・>>
なんとタイムリーに住所が放送されたのだ。
「通じた!?」
と、あるはずのない出来事で若狭が驚いていた。
もちろん、この2人以外は
「「「「「「いやいやいやいや」」」」」」
と突っ込んだ。
「うっし、これでわかったな」
倉田が個人用の地図で確認した。
「えぇっと・・・ここ・・・かぁ?」
「こっちでしょ」
倉田が悩んでいたところに、丈槍がさらっと解答を出す。
「ぉ、あ、ありがとう」
「おいおい倉田ぁw大丈夫かぁ?w」
指摘され赤面している倉田に伊丹が追い討ちをかける。
「・・・」イラッ
さすがにイラッと来たのか、倉田は急加速と急停止を助手席の伊丹にお見舞いした。
「おわっ!・・・ちょっ倉田やめっ!悪かった悪かった!」
少しばかり空き地の中で暴れてすっきりしたのか、倉田は車を止めた。
「ったく・・・よしっ!とりあえずさっきの住所を目指そう。全員乗車!」
こうして今日も1日がはじまる。