GAKKOU ~自衛官 彼の地にて、斯く戦えり~ 作:tako1125
いやぁ~すっかり間が空いてしまいましたね。
ほんとに完結すんのかこれ・・・(不安)
楽しんでもらえるといいなぁ(願望)
-----巡ヶ丘学院高等学校 2F職員室-----
「・・・妙だな?」
伊丹が何に気づいたのか、ポツリとこぼす。
「どうしたんです?隊長」
富田が伊丹に尋ねる。
「気づかなかったか?ここに来るまでに俺たちは1発も撃ってないし1回もナイフを振ってない」
「敵が襲ってこなかった・・・ってことですか」
「そうだ、それに見渡す限り2階廊下に敵影がない、3階に上がるまで俺たちは弾倉1本分消化してることを考えたらおかしいと思わないか?」
そこまで伊丹が言うと、倉田が気づく。
「っ!じゃあ、ここにいた連中がどこかに移動したってことですか?」
「ああ、そう考えるのが妥当だと思う。ただ、あいつらが目的もなしに動くとは到底考えにくいし・・・」
伊丹が言い切るか言い切らないかぐらいのタイミングで何か遠くから音が聞こえてきた。
どれほど経っただろうか、その音は近づいたかと思ったら引き返して行ってしまった。
伊丹が校庭を見下ろすと、さっきまで車両に群がっていた奴らも含め校舎に入ってくる様子がうかがえた。
「・・・とりあえず、今は見取り図を探そう、佐倉先生お願いします」
「ええ、たぶんこの辺に・・・あら?」
佐倉先生が書類棚に陳列してあるファイルの隙間から何かビニールに包まれた書類を取り出した。
「うわ、ビニール付きとか、まさか誰かのエロ本じゃないでしょうね」
「馬鹿なこと言ってんな倉田、そんなもんこんな見つかりやすい場所に置かねーだろ」
馬鹿やってる伊丹と倉田を尻目に、富田が佐倉の異変に気付く。
「どうしました?佐倉先生?」
「なに・・・これ・・・」
富田が佐倉の後ろからヌッと顔を出して覗き込んでみる。
佐倉が持っていたものの表紙には
『職員用緊急避難マニュアル』
と書かれていた。
ご丁寧に開封指示付きで。
「ッ!?隊長!」
「ん?どした?」
伊丹が間の抜けた返事をする。
「見てください、あらかじめ何かを予想して設置されていたと思しき書類です!」
富田が若干荒い抑揚で伊丹に報告する。
「・・・中、見てみるか」
伊丹は何でもないような手つきでその書類のビニールをはがしていく。
ビニールをすべてはがし終えてそれぞれが改めて『やけに薄い書類だな』と思った。
「隊長、これマニュアルっていうにはちょっと薄すぎやしませんか?これじゃまるでどu」
「ワーッ!ワーッ!こら倉田ァ!!このシリアスな状況下で何言いだしてんだこのバカヤロウ!!!」
倉田が言おうとしたことを察し、伊丹が全力で制止した。
もちろん倉田も悪気があったわけではないがこの状況下でそれを言うことは甚だ場違いだというものだろう。
「あっ、さーせん!でも隊長にそんな一般常識あったんですnっっっだぁ゛!!!」
倉田が謝ったのだが余計なひと言のおかげで鉄鉾の上から伊丹に89の銃床で小突かれた。
「それにしても・・・、なんでしょうねこれ。まるで元からこんな事態が予想されていたかのようなことが書かれています」
富田の言う通り、そのマニュアルの中には学校の見取り図・各感染系統のウィルスの説明・緊急時の対応法・緊急時における行動原理と心得・緊急連絡先、そしてこのマニュアルがどこかで紛失・内容の漏えいが起こった場合にどう対処すべきかと、あたかもこの事態が予測されていたかのような事項が記されていた。
「まさかね・・・でもこのランダルってのは怪しいかもねぇ」
伊丹が納得したようにうなずく。
「まぁ、もともと何やってるかわかんないような会社見たいですからねぇ」
倉田が思い出したかのように言った。
「ん?倉田なんか知ってんのか?」
「いや、ネットの掲示板で偶然見てたんですけどね、ランダル・コーポレーションってとこは表向きこの巡ヶ丘市の都市開発出資企業なんですが、どーも裏じゃヤバい商売やってる感じの噂が流れてるんすよ。地元民からもなかなかにランダルの建物が気味悪いって最悪の評判ですし」
確かに倉田の言う通りこの話題の掲示板にかなり不穏な書き込みがあった。
曰く、「ランダルってなんか細菌兵器作ってるって話聞いたことあんだけどマジ?」
曰く、「あの建物なんか気味悪いよね。なんか知んないけど会社の建物にしたってのっぺりし過ぎっていうかさ、こう凹凸がないから何か頑丈な壁みたいでさ」
曰く、「裏口をちょっとのぞいたことあるけど、なんかスゲェゴツイ防護服(?)みたいなん着たのがうろうろしてた。あれぜってーヤベェ奴だわw」
と、不確定要素もかなりあるがある意味マニュアルとの関係を裏付ける事実もあるようだった。
「ランダル・コーポレーションって言えば、この学校の提携先も確かそこだった気がするし、この街の一大ショッピングモールの"リバーシティー・トロン・モール"もその会社が運営してた気がするわ」
佐倉はそう漏らした。
このとき、
「ぁぁ・・・これのことだったのね・・・」
と佐倉が何かに納得したようにうなずいていたが、誰の耳にも届くことはなかった。
「うーん・・・なんとも決め手に欠けるが・・・まぁ今そんなこと考えてもしょうがないか」
伊丹はとりあえずこの話題はいったん置いておくことにした。
「とりあえず、車両の周りの奴が捌けたらまずここの物理準備室にあるだろうアルコールを電装品以外に吹っかけて消毒。電装品はアルコールを含ませたウエスで拭いてそのウエスも焼却処分。可能なら3t半の"ご遺体"を供養して荷台を同じく消毒。そのあとは学園生活部のみなさんひっつれて一旦駐屯地を目指そう。弾薬の補給もしないとまずいだろうし、できるなら戦車中隊から74を1台ぐらいいただいて行きたいしね」
伊丹はそう3偵の面子に指示をし、とりあえずマニュアルがほかの人間の目に触れないよう伊丹の背嚢に収納してから部室に戻ることにした。
しかし、この大移動でこれからすぐに苦労する羽目になるなんてことは、このときの伊丹達に知る由はない。
やっと学校出られるかなぁ?
でもこれ原作基準で考えると卒業できないんですよねぇ・・・どうすっかな(ォィ