お久しぶりです!
久々更新、皆さんお元気でしたか?
では、続きです。感想。評価よろしくお願いします!
「俺は、千棘のことが好きだ。」
イヤホン越しに聞こえる我が親友である一条楽の声。
その声は少し震えていた、おそらく勇気を振り絞って一世一代の告白をしたのだろう。
ここまで来るのがとても長かった、まるで空を飛び立つ雛鳥を見る親鳥の気持ちだ。
ここから先を聞くのは野暮だな…きっと桐崎さんの返事は自分の思った通りだろう。
ハッピーエンド一托、これに違いないのだから。
「もう充分ですね貴一さん。」
「ああ、二人っきりの空間やし空気読まんとな。」
「まあ、ここにコソコソ聞いてた奴が二人いますけどね。」
「解説者として傍観者として見届けるのが私の役目、生きがいだからね。」
「でましたね実況者のスピードワゴン君っ!」
「パウッ!」
「それ違うっ。」
ーーーーーーー
まさか、こうなるなんてね…10年前の過去の思い出から現在までの道のり。
楽や桐崎、小野寺そして万里花とエトセトラ…ここにひとつの物語、ようやく一条楽の物語に終止符を迎えることになったのだから。
1つの物語が終わり、そして新しい始まりがこれから待ち受けるのだから。
二人のこれからを見届けることとなるだろう。
あの二人ならきっと…。
「貴一さんも…。」
「ん?」
「この展開を想定できていたんですか?」
「まあ、勘?だけどね。」
「あなたの勘はよく当たりますもんね。」
「そうゆうこと。…あ!?」
「急に声を荒げてどうしたんですか貴一さん。」
そうそうわざわざここまで来たのだ。自分にとって縁もゆかりもない場所だとはき捨てるのもなんだかな~と思う訳ですよ。
あえて言うならばここは橘万里花にとっては思い出の場所なのだから。
この高原から空を見上げて星空を見ればきっとロマンティックで幻想的なボーイミーツガールを連想できそうなのだ。
ならばどうするか、まずは本田さんに相談だ。
本田さんを手で手招きして耳元で万里花に聞こえない様にそっとだ。
「本田さん、少し頼みたいことがあるのですが。」
「む。貴一さん何をコソコソしてるのかしら。」
「どうしました二見さん?」
「せっかくここまで来たのですから少し自分も万里花の思い出の地を感じたいかなと思いましてヘリから降ろしていただけないでしょうか?もちろん万里花も。」
「それでしたら大丈夫ですよ、お嬢様も喜ばれますし。」
「話し合いは終わりましたか?」
そろそろこちらの話に混ざりたいのかそわそわとどこかせかしてくる彼女さん。
本田さんに話したことを伝えると、
『私はわかってましたよ。昔の思い出に自分がいなかったことを少し寂しいと思ってたでしょう?心配しなくても私はどこにもいきませんわ。私も貴一さんが小さい頃の思い出とかありましたら聞かせてくださいまし。以前は『過去は振り返るものではない、前を見て生きるのが俺さ。固ゆで卵…ハードマイルドさ。』とよくわからないこと言ってましたけど私、納得してませんからね。」
などとご丁寧に長々としゃべるお嬢様に相槌をうちながら早く終わらないかと瞳のハイライトを濁らせるのだった。
ーーーーーーー
ヘリから降りてちょうどよい草むらに脚をつける。いい風、身体に打ち付ける少しひんやりとした風が実に心地よい。
「万里花、寒くないか?」
「ええ、大丈夫ですよ。もし寒くなったら…。」
「なったら?」
「貴一さんに暖めてもらいますから。」
「つっ!にゃ、にゃにを言ってるのかチミは!不意打ちはいくないっすよ。」
「プププ、ウケますわ。」
「暴力的な可愛さだよな本当…。」
「何か言いましたか?」
「なんでもねーよ。」
「まあ、聞こえてましたけどね!」
「この地獄耳が!」
「私をどこぞの難聴系と同じ括りにしないことですわ。」
「これだからニュータイプってやつは。」
高原を二人並んで歩いて眼下に広がる景色を見ながらまったりと過ごすのだった。そして日も暗くなり本田さんに念のために預かっていたかばんから、レジャーシートを取り地面に広げて作っておいたサンドウィッチを二人横に並んで座ってハムスターのように頬張るのであった。
「こういうのってなんかいいよね。」
「それわかりますわ。」
「なんかこういう大自然を目の当たりにするとさ自分の悩みとか迷いとかちっぽけなように思えてくるよ。海に向かって『このやろー!』と叫ぶのに似てる気がする。」
「ちょっと何言ってるかわかんないです。」
「ちょ、おま!自分でも何言ってんだろって思ったけども。」
「てか貴一さんに悩みとかあるんですか?」
「ないけど?」
「ないんかいっ!」
ーーーーーー
満点の空に君の声が~、なんか歌詞っぽいそれなんてトレモロ。
満月と夜空に散りばめている星たち。
レジャーシートで仰向けになって二人並んで空を見上げているのだ。
「ねえねえ万里花。」
「どうしました?」
「今日は月が綺麗ですね。」
「…でもこの月、少し泣いています。」
「なんでだよ。」
万里花さんがとんちんかんぷんな返しをしたのでおもわず軽くその頭に軽くチョップをしてしまったことを許してほしい誰にとは言わないが。
「む~~。何が不服だったんですか?」
「そこは『ええ、綺麗ですわね。』と瞳を輝かさせて言って、俺が『でも君のほうが綺麗だよ。』なんてくさい台詞はいて咽るまでが1セットじゃないか。」
「いや、そんなん知るかって感じなんですけどさすがの私でも。てか咽るのか。」
「大体恥ずかしい台詞とか無理だっての。少しはかっこつけたくなる時はあるけどさ。」
「見栄を張る必要なんてありませんわ、かっこ悪いところ見せたっていいじゃないですか。ありのままの貴方を私は好きですよ。」
「ぐすんっ。ま、万里花~!」
「フッ、落ちたな。」
「台無しだよ!てかすでに落ちてるわ!」
「知ってますわ。」
ーーーーーーーーー
「結局いつもと変わりませんわね。」
「人はそう変わんないよ、特に根っこの部分はな。」
「ですね、あ!見てください貴一さん!あれですわ!」
「ん?」
そう言って夜空に散らばる星を指差しながら元気よくこの台詞を言ったのだ。
「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」
「君は指さす夏の大三角。って、ばかっ!」
「フフッ、早い者勝ちですわ。」
「くそう…このシチュなら使ってみたい台詞だったんに。」
「考える事は同じだったみたいですわね。」
「だな。手つないでもいいか?」
「ええ。」
恋人と手をつないで夜空を見上げる。これだけでもお腹がいっぱいだよ実際。
プラトニック?な関係とは言えないけれど楽しく付き合ってきたと思う。
時には喧嘩もしたりしたことはあったがいつの間にか仲直りをしているそんな関係。
「ねえ、貴一さん。」
万里花が顔だけ横にこちらに向けて問いかける。
「私のこと、好き?」
まじまじと、でも真剣な表情をしていた。
「好きだよ」
そんなの決まってる、じゃなきゃこれほど一緒にいない。
「私も好きですわ。貴一さんのこと。」
「ありがとう」
「私のどういうところが好き?」
「全部好きだ。好きじゃないところはない。」
「そうなんですね…これは中々…。」
「お前は、僕のどういうところが好きなんだ?」
「優しいところ。私に首ったけなところ。でも中身は意外と大人ぶったこどもみたいで可愛いところ。器用そうに見えて不器用なところ。賢いのにバカなところ。寝顔は紳士なのに寝相は世紀末なところ。」
「おいちょっと待て後半悪口ってか怪しくないか?寝相が世紀末ってなんだよ!」
「いびき、転がりまくり、無意識に服脱ぐ脱がす、まれに歯軋り。もう慣れましたけどね。」
「なんかすまんかった。」
「プハツ!わ、わかればいいんですよククク。」
「あ、万里花の好きなところまだあったわ。あれは忘れられないやつが。」
「んー?一体何なのですか?」
「お酒が少し、ほんの少し入ってたチョコを食べただけで酒癖悪いよっぱらいになり、プロレス技やくだらない駄洒落を振りまくところが最高に好きかな。」
「いやそれ悪口でしょ!そこだけ好きと切り取ったらどんな嗜好やねんと!」
「変人だな。」
「それはお前だー!」
なんだこれは。グダグダじゃないかだがしかしいつもどおりなのだ。
自分の寝相の悪さに関しては諦めがはいっている。なんせ睡眠中で意識が覚醒していない時間だ。自分の身体のコントロールなど出来るのかバカめと。
一緒に寝ているときに被害を受けてしまうのはお嬢さんだから悪いとは思ってるんだよ?でも出来る事と出来ないことがあると思うのです。
一旦落ち着いたのかお互い無言になって夜空をそれぞれ眺めている。
もちろん手はつないだままである。
夏といっても夜はすこしひんやりとしているなんせここは高原なのだから。
「ねえ、貴一さん。」
おっと1人考えていると横から声がかかったようだ。
「ん。なんだい万里花さんや。」
「キスしましょう。」
「ほえ?」
「キスをします。」
「聞こえてるよ、どしたの唐突に。」
「違いますわね。こうじゃない…キスを……キスをして……いただけませんか?キスをし……したらどうな……です……」
「マリー、まさかそれは…。そこらへんうろ覚えなんだよなあ…。」
「キスをしましょう、貴一さん。」
「最終的に、そう落ち着くんかいっ。」
そして重なる2つの影。
元々距離が近い二人だったが、この日は特別距離が近づいたような気がする。
普段とは異なる状況、見慣れない場所、夜空の下の二人きりなど日常とはどこかかけ離れた特殊な状況がそう錯覚させたのかもしれない。
もう少しだけこの時間が続きますように…だなんて思ってしまう自分にすこしおかしくなって思い出し笑いをして相方に怪訝な顔をされたのは解せぬだったかも。
たった1つだけ言えること。
万里花さんは世界一可愛いということだ。
Fateプレイしてて更新できなかった自分がいる。
感想・評価よろしくお願いいたします!
では、また!