2度目の高校生活   作:くるぶしおかか

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あー眠い。
ついつい打ち終わったらもうこんな時間に。
明日も仕事か。さっさと寝るデース。


感想、批評お待ちしております。


29話

和菓子屋おのでら。そう、ここが小野寺春ちゃんと小野寺小咲が住んでいる和菓子屋だ。外観は老舗というか中々歴史が感じられる木造の建物だ。入り口がとても古風でお洒落な感じで大変素晴らしい。これはつい通りすがりに足を運びたくなるようなそんな気が湧き起こりそうだ。

 

 

お店の正面に立ってその戸に手をかけ扉を開く。

「ごめんくださーい。」

「ん?学生さんが何の用?こどもは飴でも舐めてな。」

そう店内で出迎えたのは小野寺のお母さん。とても綺麗なのだが、目力が強くちょっと恐いな、てかイケメンだ。姉御、いや姉さんっておもわず呼びたくなる様な風貌だ。てか飴でも舐めてろって?いきなりそんなこと言われるとは大変驚きだ。

 

「すみません、客ではないのですが娘さんに用がありまして。」

「ん?その制服は凡矢理高校か。ってことは小咲に用?確か前にもやしみたいな子連れてきたわね。あの子もなかなかやるじゃない。」

「いえ、用があるのは妹さんの方です。」

「これはまた予想外だね。あの子に男の知り合いがいるなんて。」

「そうなんですか?良い子ですよ。とても。」

「へ~、君の名前は?」

「二見貴一と言います。」

「そうか、覚えておこう。」

「いらっしゃいませ~、って二見先輩!?」

 

と、受付けの方へ出てきた春ちゃん。お店の制服に着替えておりとても可愛らしい。頭になんか白い三角巾、いやバンダナキャップかな?を着けていて白の作務衣を着用している。おもわずフィルムに残しておきたいと思うのだった。そう迷ったときは行動に移そうと思う。

 

「春ちゃん作業衣可愛いね!写真撮ってもいいかな?」

「え!?まあ、良いですけど?」

そう言ったので満足するまで繰り返し写真を撮ることに。

「いいねー、きまってるねー。ちょっとしかんでみてー!」

「しかむってどんな顔ですか!?」

「ほっぺをちょっとふくらまして悔しがる、そういいね!その表情いただき!」

「なんかこうまじまじ見られると恥ずかしいですっ。」

「いやー眼福眼福。」

「私、まだここにいるんだけど。」

「あ、いたんですかお母さん。」

「誰がお母さんだ。」

「それで先輩、何か用があったんですか?」

「おっと忘れてたよ。これホワイトデーのお返しね。クッキー焼いたんだ。」

「お!?ありがとうございます!!」

「へえ、和菓子屋の前で洋菓子を出してくるとはあんた中々良い度胸してるわね。」

「あっれー、本当だ、これまたびっくり。」

「こいつ…!私が認めない限り娘は渡さないからね。」

「ちょ!?お母さん!?先輩とはまだそういう関係じゃ。」

「大事なのは春ちゃんの気持ちですよ、ねえ、お母様。」

「なんだこの童は。」

「お母さんがツッコミに周るなんて。」

「まあ、そういう時もあるのかと。あとハンドクリームも一緒に。これ使いやすくて良い香りするんだよ。」

「本当ですか!?嬉しいです!ありがとうございます!」

「春も男の前ではそんな顔するんだね、このこのー。」

「もうからかわないでよお母さんっ!」

「そうですよ、娘さんもいつの間にか成長するんです。ねえお母様。」

「先輩も悪ノリしないでくださいよー。」

「いや、つい。」

「まあ少年よ。今日はうちの和菓子を買って帰りなさい。」

「そうですね。何か買って帰ろうと思います。オススメはどれですか?」

「そうですね!じゃあこれとかどうでしょう。」

「じゃあそれで!ありがとう。」

「ありがとうございました!二見先輩!また連絡しますね。」

 

ということでお店のオススメの商品を購入して帰ることに。春ちゃんはお店の手伝いが忙しいため、しぶしぶ帰路に着くのであった。風ちゃんの家に寄った時に起こったことの様に何かあるのではないかと期待していた自分もいた。ちょっと残念って思ったのは秘密だ。

 

まあ仕方ないよね。

お店で買ったまんじゅうはとても甘く美味しかった。コーヒーと一緒に召し上がるのであった。

 

 

「甘ぇ……。」

 

 

そして次の日教室にてキョーコ先生の一言からそれは始まったのだ。

 

「はーい、皆さん明日は何の日でしょうか?ピンポン、マラソン大会の日でーす!」

「「「「えー!?」」」

「えーじゃないよ、前々から言ってたでしょ?ちゃんとがんばりなさいよね?」

 

 

マラソン大会かあ、大変懐かしいね。小学生のときは上位に入ると賞状をもらったりするから頑張ったけど中学高校は掲示板にタイムとか張り出すだけで賞品とかなかったのであまりやる気が出なかった思い出がある。まあそれでも持久力には結構自信があったので上位になってはいたのだが。口ではこういうが実は負けず嫌いで頑張っていた記憶がある。

 

 

「わーとうとうこの日が来たか。」

「雨で中止にならないかなー。」

「え?私ちょっと楽しみだけど?」

「マジ?お前すげーな。」

「いまいちやる気上がらないんだよなー。」

 

「ちょっと少しはやる気を出しなさい、特に男子!」

「えーだるいっすわー。」「はげどう。」「なんか賞品ないの?」

「ったく、あなたたちは。…よし!それじゃこうしよう。

男子の部で一位になった奴には賞品として好きな女の子とキス出来るキス券を発行してやろう。」

 

………

「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」」」」

そう湧き上がる歓声!こういう乗せ方…嫌いじゃないぜ。お前らの気持ちよくわかるぜ。俺だってキスしてえよ、子どもじゃない、帰ったら大人のキスをしましょう。そう…みさとさんが言った大人のキスしたいよ。まあここでのキスはほっぺくらいだろう。それでも最高ではあるが、そういえば橘に頬にキスされたのだったな。まあそれはノーカン!ノーカン!にしましょう。

 

 

「ちょっと先生!?それはさすがにあんまりじゃないですか!?」

「まあまあ、ほっぺにチュっくらいでいいからさ。」

「あんた本当に教師かっ!」

「先生御目がグッジョブ。」

「おい貴一。」

「なんということだ。これはまさに千載一遇のチャンス!!」

「この機会を逃すなど考えられない!」

「お前!一位になったら誰を指名するよ!?」

「俺か!?やっぱり桐崎さんを!!」

「俺は鶫さんを!」

「俺は橘さん!」

「小野寺の方が!」

「じゃあ俺はキョーコ先生!」

「貴一お前のその発想はなかった!」

「まあ、お前たち落ち着きたまえ。」

「にししし、貴一よどうしたよ。」

「楽だけには一位を取らせるべきじゃないと思う訳だ。あいつは恵まれすぎている。どうだあいつがこのまま一位を取るのを我慢できるのか?否!桐崎さんという恋人がいながらクラス、いや学年、いや学校でも屈指の美少女達といつもイチャコライチャイチャタクティクス!!果たしてそんな奴にムザムザ一位を取られたらどうだ!すっげー情けなくなるだろ!ならばここは勝利あるのみ!最低でも楽には負けてもらおうではないか!勝った奴に憎みなし。そういうことでいいな?」

「「「「「「「いや、貴一、お前にも勝って欲しくないのだが…」」」」」」

「な…ん…だと!?」

「橘さんと仲良いし」「年下の可愛い子とのデート見かけたし。」「チョコたくさんもらってたし。」「モテるやつは敵だ。」「楽よかマシだがお前もな。」

「お前ら……なんて…」

「「「「「「「「「???」」」」」」」

「嫌いだーーー!!!」

 

そう叫んで走り去った私。ひどいよここは共通の敵を用意して最終的に自分が勝利するビジョンを思い描いていたのだが敵はやはりお前たちだったとは。いいよ、それならば素の力で一番取ってやんよ!お…俺が一位になってやんよ!その時の自分はこのマラソンで一位になったときのオチを覚えていなかったのだ。

 

「二見君急に叫んで走り去っていったけどどうしたのかな?」

「気にしないでいいですわ。」

 

 

そして迎えたマラソン大会。なんだか女子たちそわそわしてんな。まんざらでもないわけか。準備運動、柔軟を済ませスタートまで待つ。俺はね勝負事は負けず嫌いなんですよ。2位じゃだめなんですか?ダメじゃないけど納得できないね!

ってかさあ勝ったら誰を指名しようかなあ。

あえて小野寺とか?褒美としては破格ではあるし、アリだなアリアリ。

 

 

「それでは男子の部スタート位置に集合してください!」

おそらく楽のところに一極的にヘイトが貯まっているハズだ。自分にもおそらく妨害が少しあるはず。橘がなにやらレモンの蜂蜜漬けを配っているな。だがあれは目を凝らすと嫌なオーラを感じる。あれは食してはいけないな。

 

「貴一さんもこれいかがですか?」

「気持ちは嬉しいけど控えることにするよ。」

「あら、そうですの?例えばあなたが優勝したら誰を指名するんですの?」

「え?小野寺だけど?」

「小野寺さん!?てか普通に答えるんかいっ!予想外のチョイスですわね!」

「負ける気しねーわ。マジで。」

「まあ楽様が優勝して私を指名するんですけどね!」

「その幻想をぶちこわすわ。」

 

 

「それではスタートします!よーいどん!」

 

そして一斉にスタート。楽はやはり予想通り妨害工作に嵌ったみたいだ。おそらく作戦立案は集ってところだろう。

 

「よお、集。やっぱお前か。」

「貴一の旦那じゃないっすか。よくここまですんなり来たね。」

「甘いね。チョコラテのように。悪いけど優勝もらうから。」

「熱いっすね、そんなにキスされたいのかい?」

「そうだな、いやそれだけじゃない。誓ったんだ…負けないと…」

「?」

「自分の魂にだっ!!!」

「っていうのはどうっすかね集さんよ。」

「いや、そう言われてもリアクションに困るというか。」

「まあ単なる負けず嫌いさ。」

「でも色々罠用意したんだけど楽の奴ここまで来る感じがするんだよな。」

「まあその予測は当たるとおもうぜ?策士、策に溺れないよう気をつけるこったな。」

 

 

「悪いけど集よ、先に行くぜ。」

「なにをー!負けねえぞ!お前ら貴一を止めろ!」

「別にアレを倒してしまってもかまわんのだろう?」

「ば…お前それは…。」

「じゃお先―――!」

「待てーーー!!」

 

 

ということで先頭を独走中である。周りからの声援も相まってやる気メーターが上がっております。このままゴールまで楽勝かと思いきや、おもわぬ伏兵が現れた。

遠くからスナイパー、鶫が狙撃してきたのだ。まあ当たらなければどうということでもないわ!

「不本意ではあるがお嬢のため邪魔をさせてもらう!」

「へえ…、正々堂々やらないわけ?俺別にまじめにやってるだけなのによー!」

「んぐっ、それはそうなのだが!」

「別に桐崎さんを指名しないよ?」

「…そうか、ならいいか。」

ちょろいなこいつ。だがこれで時間を少し止められたのはまあちょっとしたトラブルだが、こうでなくてはな…。

 

 

ん?後ろから大声が聞こえてきたぞ。

 

「待て貴一~~~!!!」

「ほう…集のやつめ敗れたか。だがあいつは四天王の中でも最弱。」

「いや、四天王って誰だよ。」

「さあかかってきたまえ若人よ。気合だけで勝てるほど我は甘くないぞ!」

「くそっ!ラスボスみたいな台詞吐きやがって!」

 

 

「おっと!戻ってきました!先頭は二見君!続いて一条君!一騎打ちです!」

「「「二見くんファイトー!!」」」

「…楽様!!」「がんばれ一条君!」「…頑張れダーリン!!」

 

ゴールまでの一直線のラストスパート、お互い横並びにいつの間にかなっており、身体スペックでは自分の方が結構上だと思っていたのだが、桐崎さんや小野寺のキスを阻止したいという強い思いが原動力になっているのかここまで同等に競い合っている。きっといつかその思いの力で俺を越えていくのだろう。

でもそれは今じゃない。

 

そう、勝つのはこの僕だ。

 

「ゴール!!1着は二見貴一君!!2着は一条楽君です!」

 

ああ、すがすがしい良い気分だ。自分より前に人がいない、やはり1番というものは心地良いものだ。

「わああああ!!」

「おめでと-!!」

「一条敗れたりー!!」

 

 

「くそっ、負けちまったか。貴一、一体誰を指名すんだろうか。」

負けたけど悔しい気持ちはあまり感じなかった。こう全力で勝負したあとのなにか言葉に出来ないが、妙にやりきった感情が心の中に溶け込んでいた。

 

 

「ほい、これが賞品のキス券ね。」

「なんか熱中しててそれ忘れてたわ。用意してたんですね。」

「当たり前だろ、賞品なんだから。」

「それで貴一さんは誰を結局指名するんですの?」

「キャーーー!!」

「もしかして桐崎さん!?」

 

 

「あーごほんごほん。こらあんたたち、ちょっと勘違いしてるんじゃない?早まっちゃ困るわよ?誰がクラスの女の子から選んでいいって言った?」

 

 

「それでは二見、好きな女の子を選ぶといい。」

そう言って飼育小屋の面々から選ぶというオチに遭遇した。いや女の子ってか、

それってメスじゃん、詐欺だよ詐欺!べ、べつにそんなにキスされたかった訳じゃないんだからねっ!

 

 

「ブーブー詐欺だ詐欺―!!」

「あーら私は最初からこのつもりだったんだけど?」

 

 

そう、これだけは、ひとつだけ言わせてほしい。夕日に向かって太陽にほえろの殉職のシーンを思い浮かべながら、

「あんまりだああああああーーー!!!」

と、叫ぶのであった。

 

 

 




和菓子屋忙しいと思うんですよね。学校卒業してますし
中々繁盛してそうなので、自営業ということもあり、
春ちゃんはお仕事手伝って忙しいのではと短めになりました。

次は春休みからの新学期に流れていくと思います。

感想、批評お待ちしております。


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