原初の機体と神才のインフィニット・ストラトス   作:赤目先生

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第五話:生徒会長と書いてシスコンと読む

~マキナside~

 

「「「織斑君クラス代表おめでとう!!」」」

 

マキナが簪と会った翌日の放課後、食堂の一部を貸切でパーティーが行われていた。パーティーの主催は一年一組の生徒たちであり、そこには『織斑 一夏君 クラス代表おめでとう』の垂れ幕が下げられていた

そう、これは一夏のクラス代表決定を祝うパーティーだ。そしてその主賓である一夏は、会場の真ん中で苦笑しながらジュースを啜っていた。一夏としては代表決定戦ではセシリアに負けているのに、皆から祝ってもらえるのは、嬉しいがそれとは話が別である……何ともしがたいものがあるのだろう

しかも、よく見れば一組以外の生徒もいた。いつもはあまり見れない一夏をよく見る機会だからだろう、注目度が高くなっている。そのせいで一夏の気まずさに拍車をかけた

 

「これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」

「うんうん」

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

「そうそう」

 

一夏がものすごく気まずく感じている中、クラスの女子たちは口々にそうはしゃいでいた。彼女たちは楽しめれば何だって良いらしい

 

「頑張ってね、織斑君」

「私たちの食券フリーパスのために!」

「織斑君が勝てばみんなが嬉しいから」

 

そう女子たちに応援される一夏は苦笑しながら応じる。殆ど私欲だが、応援されているから一夏は有り難いと思っているのだろう。そこに箒が近づいていく

 

「……人気者だな、一夏」

「本当にそう見えるか?」

 

ふんっ、と言って箒はそっぽを向いてしまう。一夏が周りからちやほやされて拗ねているのだろう

 

「あ、いたいた。織斑く~ん!」

 

そう一夏に声をかけてきたのは、眼鏡をかけた女子生徒だった。胸元には黄色のリボンが付いており、二年生のようだ

 

「えっと、あなたは?」

「私は新聞部副部長の黛薫子です。話題の新入生のインタビューに来ました」

 

世界初の男性操縦者がクラス代表になった。これ以上話題性のあるものは少ないだろう。そして、一夏が前時代的なことを言ったり、薫子が捏造を宣言した所でこの物語の主人公であるマキナが遅れて到着した

 

「遅れてごめんなさいね」

 

 簪と話してたら遅れちゃったわ、意外と話せるのよねあの娘。アニメとか特撮とか。そう考えていると二年生であろう人物と本音が近付いてきた。

 

「こんばんは。私は黛薫子、新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

「あら、ありがとう。それで何か用かしら?」

「男性操縦者の次に話題性のある人にインタビューしようと思って。ちなみに残すはオリジンさんだけだよ」

 

 なるほど、ご主人様は何か質問されたら体の事以外は話して良いと言っていたから、受けても大丈夫ね。

 

「いいわよ。それで何が聞きたいのかしら?」

 

「んーそうねぇ……それじゃあ、マクスウェル博士との関係は?」

 

そう聞かれてマキナの目が否、目だけではなく纏っている雰囲気そのものが変わった

 

「私とご主人様との関係は、切っても切れぬ縁で結ばれていると思っているわ。ご主人様がいなければ、今の私はいないもの。あの方の命令ならなんでも聞くことができるわ。それに―――」

「す、ストップ!そこまでで十分だから」

 

まだまだ話したいことはあるのに。そう言って少し拗ねるマキナ。今のセリフを息継ぎなしで言ったのだ、止めなかったらさらに時間が掛かり、パーティーが終わってしまうだろう

 

「それじゃあ、専用機持ち三人で写真撮影しようか」

 

その後はセシリアが一夏の隣になって顔を赤くしたり、一組の謎の団結力が三人の写真を集合写真に変えたりしていた。ちなみにマキナの隣はしっかりと本音が確保していた

 

 

 

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 次の日の朝。一組はあるひとつの話題で持ちきりだった。どうやら二組に転校生が来るらしい。IS学園に編入してくるとなると入試以上に厳しい試験と国の推薦が必要だ。つまりは―――

 

「中国の代表候補生が来るんだってさー」

 

 ということらしい。代表候補生ということは一夏のデータ取りもしくは、私が狙いだろう。そして我がクラスの代表候補生と言えば、

 

「あら、今更わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら」

 

 今日もいつも通りのセシリアである。

 

「ねえねえマッキー」

「どうしたの本音」

「今回も勝負しろって言われたら戦うの?」

「ええそうよ。それがどうかしたの?」

 

 すると心配そうな顔をしてこちらを覗き込んでいる本音の顔を見えた。まったくこの娘は

 

「心配しなくても大丈夫よ。負けもしないし、怪我もしないわ」

 

 そう言って本音の頭を撫でる。この娘は優しすぎるわね、私が元の世界に戻る時、大丈夫なのかしら。

 

余談だが、本音を撫でてている時のマキナの表情は慈愛に満ちた表情らしい。そのおかげかマキナは本音の保護者と呼ばれている

そして生徒たちがフリーパスがどうたら専用機持ちは一組と四組だけだから楽勝だとか言っていると

 

「―――その情報、古いよ」

 

 声のした方、教室の入り口にみんなの視線が集中する。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないわ」

 

 腕を組み、片膝を立てて、全体的な部分が小柄な少女がドアにもたれ掛かっている。

 

「鈴……?お前、鈴か?」

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

「何かっこつけてるんだ?すげえ似合わないぞ」

 

 一夏の知り合いみたいね。中国の代表候補生と知り合いなんて、意外と顔が広いのね。

 

「んなっ……!?なんてこと言うのよ、アンタは!」

 

 こっちの口調が素らしい。ツインテールを振り乱して憤慨する鈴音の後ろに黒の鬼が見えた。

 

「おい」

「何よ!今こっ…ち…は…」

 

 鈴音は黒の鬼―――千冬が腕を組んで睨んでいる―――を見ると徐々に声が小さくなる。蛇に睨まれた蛙のようだ。

 

「邪魔だ、凰。もうHRの時間だ、早く帰れ」

「ち、千冬さん……」

「織斑先生だ。一発くらいたいか?」

「い、いえ……失礼しました」

 

 そう言って自分のクラスに向かって行く途中振り返って一夏に、

 

「また来るからね!逃げないでよ一夏!」

 

 と言い残して帰って行った。その後は一夏と鈴音の関係が気になった箒とセシリア、他の生徒たちが一夏に詰め寄ったがすべて千冬の出席簿の餌食となった。

 

 

 

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昼休み。マキナは一夏に誘われて、箒、セシリア、本音と一緒に学食に来ていた。久しぶりに一夏達と食べるわね。などと考えていると学食についた。そこには

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

バーン!!と彼女らの前に鈴が立ちふさがった。その手にはラーメンが鎮座しているトレイがあった

 

「鈴、そこだと他の人の邪魔になるぞ。あとラーメンがのびる」

「わ、分かってるわよ!だいたい、アンタを待ってたのになんでもっと早く来ないのよ!」

 

とは言っても、鈴は昼休みに会う約束をしていたわけでもないのに、どうやって待っているのを知れと言うのだろう

そしてマキナ達全員が食事を取り席に座る。箒とセシリアは急に現れた一夏と親しい鈴を威嚇している

 

「鈴、いつ日本に帰ってきたんだ?おばさん元気か?いつの間に代表候補生になったんだ?」

「質問ばっかしないでよ」

 

一夏が鈴にばかりかまっているせいか、箒とセシリアが凄い顔をしている。その顔が凄すぎて周りの生徒たちが、若干引いてしまっている

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明しろ」

「そうですわ!一夏さん、ま、まさかこちらの片と付き合ってらっしゃるの!?」

 

二人は既に我慢の限界らしい

 

「べ、べべ、別にあたしたちは付き合ってるわけじゃ……」

「そうだぞ、なんでそうなるんだ。鈴はただの幼馴染だよ」

「…………」

「鈴?何睨んでるんだ?」

「なんでもないわよ!」

 

またしてもこの朴念仁は悲しみを一つ生み出してしまった。そこで鈴が何か思い出したような声を上げた

 

「そういえばアンタのクラスにオリジンって人いるのよね。紹介してくれないかしら」

「あぁ、それなら」

「それなら私よ」

 

隣から聞こえてきた声に鈴が驚く。しかしすぐに気を取り直しマキナを品定めするかのように見つめる

 

「それで、鈴音は国からの命令で私と勝負したいのかしら?」

「ええ、最初はそれだけだったけど……アンタと純粋に勝負してみたいわ」

 

マキナはクスッと笑い、満足そうな笑みを浮かべた

 

「いいわよ、いつにする?私はいつでもいいわ」

「だったら、クラス対抗戦が終わってからやるわよ」

「わかったわ、それじゃあアリーナの申請よろしくね」

 

そう言ってマキナは既に昼食を食べ終わっていたらしく、食器を片づけに行った

 

その後は、一夏の訓練について言い争いがあったのだがそれはまた別の話である

 

 

 

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放課後、本音と一緒に夕食を摂り部屋に戻る途中、マキナが用事を思い出したと言って本音を先に帰した

 

「そろそろ出てきなさい、生徒会長さん?」

 

 廊下の角から青い髪をしたどこか簪と似ている人間が出てきた。

 

「あらあら、いつからばれていたのかしら」

「入学式の日からずっとよ」

 

 正直言うと、初日から目をつけられてうんざりしていた所だ。

 

「そんなに早くからばれていたなんて、お姉さん自身無くしちゃうわ~」

 

 シクシク、と言いながら手に持った扇子で口元を隠す。誰かに似ている気がする……

 

「それで、更識家の当主が何の用かしら」

「……そんな所までばれていたのね」

 

 楯無が口元を隠しながら目を鋭くしてきた。大方、学校に何かしでかさないか釘を刺しに来たのだろう。

 

「それで用っていうのはね」

 

 この空間に静寂が広がる。その静寂を打ち破った言葉は

 

「簪ちゃんにあまり近づかないでちょうだい」

 

 

 

 

 

 

~楯無side~

 

 私の言葉を聞いたマキナちゃんが呆れたような目をしてこちらを見ている。姉が妹を心配するのがそんなに不思議かしら?

 

「何?学校に手を出すなって釘を刺しに来たんじゃないの?」

「それは別に大丈夫よ。あなたはマクスウェル博士の命令じゃないと動かないんでしょ?博士がここを襲撃するメリットが無いから心配ないわ。そんなことより」

 

 私にとっては学校の心配より簪ちゃんの心配の方が重要だ。

 

「なんで近づいたら駄目なのかしら?」

「それはね……

 

 

 

 

簪ちゃんと楽しそうに話してて羨ましいからよ!!」

 

 またしても場が静寂に包まれる。……私変なこと言ったかしら。

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

 急に何を言ってるのかしらこの人……俗に言うシスコンって呼ばれる人種なのね。この学校、特殊な人種が多すぎないかしら……

 

「そんなに羨ましいなら直接話せばいいじゃない」

 

 すると何か苦い顔をして目を伏せる。

 

「何?何か話せない理由でもあるのかしら?」

 

 暫くして楯無が重そうな口を開いて言ってきた。

 

「実は、簪ちゃんにね―――」

 

 そして楯無が簪になにをしたのかを聞いた。要約すると、更識家の跡取りとして楯無と簪の二人はいつも比べられ続けていた。簪は楯無に比べいつも劣っていたらしい。楯無は当主に、簪は更識家の出来損ない。と呼ばれていたらしい。そんな簪を見た楯無は、『あなたは無能なままでいなさい』と言ってしまったらしい。

 楯無は簪を守るために行ったらしいが、無能なままでいろ、というのはどうかと思うがまだ子供だったからという言い訳をしてくれた。これで要約できたかしら?

 

「そんなの、さっさと仲直りしなさいよ」

「これ以上嫌われたらどうしようかと思ったら怖くて……」

「ヘタレね。それ以上嫌われるわけないじゃない」

 

 楯無がうぅ、と呻き声を上げてさらに落ち込む。

 

「というか簪は貴女を完璧な人間だと思っているから敬遠してるんじゃないのかしら。もっと弱い所を見せたら何とかなるんじゃないの?」

「そんな簡単に言われても……」

 

 折角仲直りが出来るかも知れないというのにいつまでもこのままじゃ埒が明かない。

 

「だったら私が二人の関係を修復してあげるわ」

 

 その言葉を聞き、楯無が勢いよく顔を上げる。そして、さっさと教えろと言わんばかりに近づいてくる。

 

「方法はまだ言わないわ、その時を楽しみして待っていなさい。それじゃあね」

 

 意外と時間が掛かってしまった。本音が待っているだろうから楯無に背を向け少し早足で自分の部屋へと向かう。ふふっ、いつ二人を引き合わせようかしら。短い時間しか生きれない人間にはあまり悔いを残さずに最期を迎えてほしいからね。




今回の話はどうでしたでしょうか?ちゃんと書けてればいいのですが。
次回の投稿は遅れると思います。理由は明日から三泊四日の修学旅行に行くからです。

また次回! そいぎんたー

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