原初の機体と神才のインフィニット・ストラトス   作:赤目先生

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今回の話はセシリアにアンチ要素が入ってると思います。オルコッ党の皆様はご注意ください。


第二話:英国貴族

~マキナside~

 

一限目終了のチャイムが鳴る。それと同時にマキナの目が覚める。

 

 あまり眠れなかったわね。そう思ってログを確認してみる。……結構な回数当てられてオートで答えたらしい。だからあまり眠れなかったのね。

 

「あの~、いいですか?」

 

 隣から声が聞こえる。ふと、隣を見ると一夏がこちらに話しかけてきていた。

 

「何かしら?」

「いや、隣の席だし仲良くしたいなって思ったので。改めてお礼もしたいし……」

「なんだ、そんなこと。いいわ、仲良くしましょう。それと、あの時助けたのは偶然よ、気にしないで」

 

 助けたことに関しては本当に偶然だ。あの時マクスウェル様が助けると言わなければ見捨てていたし、見捨てたとしても千冬が間に合っただろうから、偶然でしかない。

 

「あと、同い年だから敬語もいらないわ」

 

 同い年なのは、ただの設定だ。こうしないと面倒なことになる、マクスウェル様と束が言っていた。

 

「そっか、それじゃあ、一夏って呼んでくれ」

「私も、マキナでいいわ」

 

そこまで話したところで窓側の席からポニーテールの少女が近寄ってくる

 

「……ちょっといいか」

「え?」

 

突然話しかけられた一夏は呆けたような声を出す。その少女は不機嫌そうな顔をして、マキナを少しだけ睨みつけている

 

「箒……?」

(彼女が束の妹の箒ね……なんでこっちを睨んでるのかしら)

 

 大方、久しぶりに会った幼馴染と話をしたいってとこかしら。

 

「私は構わないから、二人で話してきなさいよ」

「いいのか?」

 

 そう聞かれて私は頷く。断る理由もない。

 

「一夏、屋上に行くぞ」

 

 そう言って箒は一夏を引っ張って行った、一夏は抗議の声を上げけど届いていないようね。

 

そして、今度は金髪を縦ロールにした少女がマキナの席まで近づいてくる。 あんな挨拶したのにマキナさん人気っすね

 

「少し、よろしいでしょうか?」

 

 私が振り返るとそこには、金髪縦ロールの貴族の様な雰囲気を醸し出している少女がいた。自己紹介の時に反応した人間か。

 

「何か用かしら?セシリア・オルコットさん」

「あら、知っていらしたのですね」

 

 国の代表やその候補生ぐらいの情報なら知っている。用件は、大方決闘の申し込みだろう。

 

「それなら話が早いですわ。……マキナ・オリジンさん、イギリス代表候補性として決闘を申し込みます」

 

 当たりね。それにしても、入学初日に言われるとは思って無かったわ。

 

「いいわよ、相手をしてあげる。日程はどうするの?」

「それでは―――」

 

言いかけたところで予鈴が鳴った。織斑先生の出席簿の餌食になりたくなかったらもう戻っていた方が身のためだろう

 

「また後で話しますわ」

「分かったわ、それじゃあまた後で」

 

 私がそう言うと、オルコットは自分の席に戻った。その後、一夏達が帰ってきた。思い出話はあまりできてなさそうね。

 

 

 

 

 

 その後、山田先生の授業が始まった。今回は起きていようと思う。授業が始まり私が退屈していると、隣で呻いている一夏の姿があった。

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

 

 そんな一夏の姿を見て、山田先生は不安げに聞いてきた。

 

「先生!」

「ハイ!!なんですか?」

「ほとんど全部分かりません」

「えっ……ぜ、全部……ですか……」

 

 全部分からないって、情報をインストールした私が言うのもなんだけど、あの参考書を読んでいればそれは無いだろう。

 

その後、他の生徒に分からない人はいるかどうかを聞いたら、誰もいない。流石は倍率一万を超えるIS学園に入学した者たちだ

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

「あの分厚いやつですか?」

「そうだ」

「古い電話帳と間違えて捨ててしまいました」

 

 またしても教室内に乾いた音が響く、一夏は今日中に何回叩かれるのかしら。

 

「ったく、何をやっているんだお前は。あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」

「一週間はちょっと……」

「良いな」

 

 千冬が目を鋭くして睨んでいる。あんな目をされたら従うしかないだろう。

 

「はい……」

 

 あらあら、あからさまに落ち込んでいるわね。そんなことを考えていると、千冬がこちらを見てから

 

「はぁ、仕方ない。オリジン、後で教えてやれ」

「なんで私なのかしら?織斑先生」

 

 まさか全部覚えているのがばれたのかしら。

 

「お前は入学主席だっただろう。それに、織斑とも面識があるんだから教えるのに丁度良いだろう」

 

 なんだ、そんな理由か。だったら良いだろう、別に負担になるわけではない。それに教えてやってくれって、目で訴えかけてきてるから無下にするわけにもいかないだろうし。

 

「分かったわ、その話、受けてあげる」

「すまないな、では、授業を続けてください、山田先生」

 

その後、特に問題もなく授業は進んでいった

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

現在、二時間目が終わり、休み時間に入った。そして、一夏の席の近くにセシリアが近づいていた

 

「ちょっとよろしくて?」

「へ?」

 

 何か別のことを考えていたのだろう、横からかけられた声に素っ頓狂な声を上げている。

 

「訊いていますの?お返事は?」

「あぁ、えっと……返事しなかったのは悪かった、だけど用件は?」

「まあ、なんですのそのお返事は?私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないのかしら?」

 

 あぁ、なるほどね。セシリアは今時の人間なのか、一応同じ女としてあんなやつと戦うのは嫌になってくる。

開始数秒で落としてやろうかしら。

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

「なっ!わたくしを知らない!?セシリア・オルコットを!?イギリスの代表候補性にして、入試次席のこのわたくしを!?」

 

 あいつが入試次席だったのか。成績だけならいいんでしょうね、人としては落第でしょうけど。

 

「あっ、質問いいか?」

「ふん!下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしてよ」

 

 どこまであいつは私をイラつかせてくれるのかしら、もう声も聴きたくないわ。そう思って聴覚を遮断しようとしたとき

 

「代表候補性って……なに?」

 

その質問にマキナも含めクラスの生徒たちがずっこけた。例え今までISと関係の無い生活をしていたとしてもそのぐらいの情報は知っていてあたりまえだ。情報源が無いのなら仕方ないのだろうが、一夏はそんな生活はしていないだろう。

そんな一夏の質問にセシリアも茫然としている。

 

「あ……あ、ああ……」

「あ?」

「信じられませんわ!日本の男性というのは、皆これほどにも知識に乏しいものなのかしら!?常識ですわよ!!」

 

 確かに代表候補性すらしらないとは思わなかった。……教えるのが大変ね。仕方ないから教えてあげますか。

 

「一夏、代表候補性っていうのは、国家代表になるかもしれない人間のこと、つまりエリートよ。というか漢字で予想はつくでしょうに」

「あっ、言われてみればそうだな。ありがとなマキナ」

 

 そう言って一夏は屈託のない笑顔を向けてくる。なるほど、これでそこら中の女の子を落としてきたのね。私?私はマクスウェル様しか慕っていないわ。

 

するとセシリアが急に元気良くなって再度、声高々に話しかけてきた

 

「そう、わたくしはそのエリートなのですわ!!本来なら、わたくしの様な選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡!幸運なのよ!その現実を少しは「いいかんげん黙れよ」っ!?」

 

急に発せられた殺気を込められた言葉に身を固まらせるセシリア。その声は一夏の後ろの席から聞こえてきた

 

「お前はさっきから聞いてれば偉そうなことばかり言って何様のつもりだ?たかが候補正如きが頭に乗るな」

 

そこまで言うとマキナは席を立ち、セシリアの眼前まで詰め寄る

 

「お前みたいな女尊男卑思考のやつの言葉を聞くだけでイラついてくるんだよ、そういうのは私の居ない所で勝手にやっていろ。分かったか?」

 

セシリアはその殺気に中てられ声が出せないようだ。代わりにマキナの言葉に頷き返す。

 

「そう、分かったのならいいのよ。賢い様でなにより」

 

そう言ってマキナは薄い笑みを浮かべ席に着いた。そこで休み時間が終わったらしく、予鈴が鳴る

 

「そろそろ、自分の席に着いた方がいいわよ」

 

そう言われてセシリアは呪縛から解放され青ざめた顔で自分の席に着いた。見渡すとクラス全員が冷や汗をかいている人間や、気分が悪そうな人間もいる。

 

(ちょっとやりすぎたかしら?)

 

程無くして入ってきた千冬と真耶が教室の異常な空気に気づく。千冬は眉間にしわを寄せ、真耶は涙目になってしまっている。最悪の空気の中、三限目が始まった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

三限目の授業は空気は多少直ったがまだ悪いままだった。特に問題は起きずに授業が進行していたが、千冬が何か思い出したかのような声を上げる

 

「ああ、そういえば、クラス代表を決めなくてはいかんな」

 

クラス代表とは、言葉通りクラスの代表だ。書類を提出したり、会議に出席したりするが一番大事な役目はそれぞれクラス代表となる生徒同士での対戦だろう

 

「自薦、他薦は問わない。誰かいないか」

 

その言葉を聞いて生徒たちは騒々しくなった。今までの空気が嘘の様である

 

「織斑君がいいと思います!」

「俺!?」

 

 その言葉を聞いた他の生徒たちが次々と一夏を推薦してくる。やっぱり話題性のある男性操縦者を代表にするのは女子がおしゃべり好きだからだろうか。

 

「ちふ……織斑先生、それって拒否権は?」

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権は無い。選ばれた以上覚悟しろ」

 

その言葉を聞き、一夏は項垂れる。今日だけで何度項垂れるのだろうか、しかし一夏が推薦されていく中セシリアが机を叩いて立ち上がった。

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 なんなのあいつ。自分が推薦されるとでも思っていたのかしら。少なくともさっきの休み時間にあんな態度で推薦したいとは思わないでしょうね。

 

「そのような選出認められません!大体、男だからってクラス代表をされたら恥らさしですわ!このわたくし、セシリア・オルコットに一年間その様な屈辱を味わえというのですか!」

 

 まったく、この女は何なんだ一体。こいつは私をイラつかせることに関しては天才だな。

 

「実力からいえば、わたくしクラス代表になるのは必然ですわ!物珍しさを理由に極東の猿なんかに任せないでください!」

 

 極東の猿ねぇ……このクラスのほとんどが日本人だと分かって言っているのかあいつは。

 

「このような島国まで来たのはIS技術の修練のためであり、サーカスをする気は毛頭ありませんわ!大体、文化の後進的なこの国で暮らすこと自体苦痛であり―――「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」―――なんですって!?」

 

 あら、結構上手いこと返すじゃない。それよりも、あいつは自分の言ってることが分かってるのかしら。

 

「あっ、あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

「先に侮辱したのはお前だろ」

 

 売り言葉に買い言葉……まるで子供の喧嘩ね。年齢からすればまだ子供だけどもう少し考えることはできないのかしら。

 

マキナがそう思っている最中にも二人の喧嘩はヒートアップしていく

 

「決闘ですわ!」

「いいぜそれならわかりやすい」

 

 決闘か、丁度いい。私も混ぜてもらおう。

 

「ちょっといいかしら」

 

 その言葉に二人とクラスメイトがこちらに注目してくる。

 

「なんですか?オリジンさん」

「いえ、さっきあなたが対戦を申し込んできたから、あなたたちの決闘に混ぜてもらおうと思っただけよ」

 

その言葉を聞き、セシリアは少し考えた後、口を開いた。

 

「わたくしはよろしいですわ、あなたは?」

 

セシリアは一夏に返事を促す

 

「俺もいいぜ」

 

二人の了承を得たマキナは微笑んだ。一夏には経験を積ませることができ、セシリアを負かすことができてうれしいのだろう

 

「話は纏まったか?対戦は一週間後に行う。勝ったやつが代表になるか決めろ。異論は無いな」

 

一夏とセシリアが頷く

 

「では授業を再開する」

 

 一週間後か、それまでに一夏にISの知識を基本だけでも教えてあげないとね。正直、あんな慢心してるやつに私が負けるとは思えない、どんな風に負かしてやろうかしら。一週間後が楽しみで仕方ないわ。




今回はどうでしたか?次回は初日のマキナの放課後とセシリア戦を書こうと思います。

感想、アドバイスなどがありましたら気軽にお書きください。


それでは、また次回!

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