原初の機体と神才のインフィニット・ストラトス   作:赤目先生

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光の聖石がなかなか落ちない赤目です。聖石が落ちないせいでカルネの進化ができません!(血涙)

今回は福音、かと思いきやサブタイの人です。人じゃありませんけどね。

ちなみに前後編になりました

それでは第十五話、どうぞ!


第十五話:自律の悲鳴

~マキナside~

 

 臨海学校二日目。今日一日は、ISの各種装備試験運用とデータ取りだ。遊ぶ時間なんてものは皆無だ。しかも、専用機持ちたちは各国から大量の装備があるので忙しいだろう。

 

「全員集まったな。それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速にな」

 

 一同が返事をする。一年生全員が集まっているので、かなりの人数になっている。

 

「それから篠ノ之。ちょっとこっちに来い」

「はい」

 

 打鉄の装備を運んでいた箒が、千冬に呼ばれてそちらに向かう。

 

「お前には今日から―――」

「ちいぃぃぃぃぃぃぃちゃあぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 遠くから砂煙を上げながら何かが走ってくる。千冬の方を見ると、頭を手で押さえながら溜息を吐いている。

 

「会いたかったよ、ちぃちゃ―――へぶぅ!」

「もう少しまともに登場しろ、束」

 

 走ってきたのは、機械で出来たウサミミに、いつものエプロンドレスを着た束だった。千冬からアイアンクローをくらって、宙に浮いている。

 

「生徒たちが困惑している。自己紹介しろ、束」

 

 千冬がそう言うと束は、千冬の後ろに隠れる。その様子を見た千冬が、また溜息を吐いた。

 

「はぁ……まだ治ってなかったのか」

「だ、だって仕方ないじゃん。他人と喋るの怖いんだもん……」

「いいから、さっさと紹介しろ」

 

 そう言って束を引っぺがし、生徒たちの前に突き出す。皆は興味津々といった様子で、束を見つめている。

 

「え…えっと……ISを作った…篠ノ之束です……」

 

 皆が、それだけ? もっと何か言って。 という様な視線を束に浴びせる。

 

「……以上です!」

 

 ズコッ! と音を立てて皆はずっこける。一夏の自己紹介を思い出したわ。

 

「姉さん」

「あっ!久しぶりだね箒ちゃん!」

 

 周りの空気を無視して、箒が束に近付いて行った。そういえば、何で最初に箒も呼ばれたのかしら?

 

「頼んでいた物は?」

「大丈夫! ちゃんと持ってきたよ! さあ、空をご覧あれ!」

 

 束がそう言うと、空からひし形の箱の様なものが降ってきた。それが開くと、中には

 

「これが束さんお手製の第四世代型IS『赤椿』だよ!」

 

 『赤』がいた。どうやら束の新作らしいが、第四世代とは、少しやり過ぎじゃないかしら。まあ、私には関係ないことだけれど。

 

 束が箒に武器の使い方を教えていると、真耶が慌てた様子で千冬の下に駆けつける。話してる内容からして、何か起こったようね。

 

「全員、注目!」

 

 真耶が走り去った後、千冬は声を張り上げて生徒全員を注目させた。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動に移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機。許可無く室外に出た者は我々で身柄を拘束する。いいな!」

 

 皆が返事をして、何が起こっているか分かっていないが、千冬がそう言ったので、全員が慌ててISに接続していた装備を外し、ISをカートに乗せて片付け始める。

 

「専用機持ちは全員集合しろ! 織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識、オリジン! ―――それと篠ノ之もだ」

「はいっ!」

 

 嬉しそうな表情をしながら返事をする箒。新しいものを手にして浮かれているのかしらね。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「では、現状を説明する」

 

 専用機持ちと職員は旅館の一番奥の大座敷に集められていた。室内には大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

 

「いまから二時間程前、米国本土からハワイに向けて試験飛行中だったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

 その説明に、全員が声こそ出さないが狼狽えてるのがわかった。ISの暴走、しかも軍用だ。これを止めるなら量産機などでは無理なことだろう。だから専用機持ちが集められたのだろう。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここの上空を通過することが分かった。時間にしておよそ五十分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった。

教員は学園の訓練機を用いて空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう。

それでは作戦会議を始める。意見のある者は挙手するように」

 

「はい」

 

 まずセシリアが手を挙げた。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

「よかろう。ただし、これらは二カ国の最重要軍事機密だ。決して口外するな。情報漏洩が認められた場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」

「了解しました」

 

 開示されたデータを元に皆が相談を始めた。一夏は、こうした状況が初めてだからか、話に付いて行くのが精一杯といった様子だ。

 

「マキナ、大丈夫?」

「どうしたの簪」

「ううん、朝から元気無いように見えたから……それに、話してるときもぼーっとしてから」

 

 昨日の話が本当だということがわかり、少し傷心ぎみだったから、簪に心配を掛けちゃったわね。

 

「大丈夫だから心配しないで」

 

 これ以上心配させないように、笑顔で語り掛ける。

 

「うん、わかった……」

 

 ちゃんと笑顔は作れたか不安だったが、簪の様子を見ると、作れていたみたいだ。

 

 いつのまにか、一通り作戦会議が終わり、皆が一夏の方をジッと見ている。

 

「作戦は織斑、お前の零落白夜の一撃で決めるのが確実だ。これが現在考えられている作戦で一番成功率が高い」

「お、俺の……」

「織斑、これは訓練ではなく実戦だ。覚悟がないのなら無理強いはしない」

 

 少し困惑した表情を浮かべている一夏だが、覚悟を決めた様だ。

 

「織斑先生、俺……行きます!」

「……わかった。では作戦をまとめるぞ。この作戦は織斑の零落白夜の最大出力で攻撃する必要がある。そこで、オリジン。お前のISは素の状態でどのぐらいのスピードが出る?」

「そうね、全力を出せば福音よりは早いけど、人を運ぶことはできないわ」

 

 そういうと千冬は、当てが外れたのだろう。少し落胆した様子だ。

 

「ならばオルコット。お前の高速戦闘時間はどのくらいだ?」

「20時間です」

「よし、それならばこの作戦の参加者は―――「ちょっと待ってちーちゃん!」……束、何の用だ」

 

 天井から束が降りてくる。会議が始まる前から待機していたようだ。

 

「ここは断然! 赤椿の出番なんだよ!」

「ほう、どういうことだ」

「それはね~」

 

 そう言って赤椿のスペックと、第四世代とくゆうの機能『展開装甲』を使えば、福音にとっても脅威に成り得るので、その方が一夏が零落白夜を決めやすい、とのことだ。

 

「束、その調整はどのくらいで出来る」

「7分あれば十分だよ」

「そうか……やれるか篠ノ之?」

「はい!やります!」

 

 なんか、今の箒を見てると不安になってくるわね。

 

「それでは、織斑、篠ノ之、オリジンは出撃準備をしろ。準備が終わり次第、作戦を開始する!」

 

「マキナ、頑張って」

「ええ、まかせなさい」

 

 簪の激励を受け、出撃地点まで移動する。最後ぐらい、楽しい時間を過ごしたかったけど、仕方ないわね。福音とやらには悪いけど、ストレス発散に付き合ってもらうわよ……

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 作戦が始まって目標である福音に向かって、移動していると

 

『あーあー、マキナー聞こえてるー?』

「ご主人様、どうかしたのですか?」

『なんか今、そっちに福音とは違うIS反応が近付いてるんだよ。しかもそれが、向こうの世界にいるらしい無の天才とかいうヤツが作ったらしいんだよ』

 

 向こうの世界の……しかも天才だと。天才はご主人様がいるのに、それ以外が天才を騙るなどと、さらにイラついてきたわ。

 

『しかもマキナの模造品らしいんだよね。マキナと同じ様に私もムカついてるから』

 

 ご主人様が一息つく、次に聞こえてきた声は―――

 

『ぶっ潰してきてよ』

 

 いつもの明るい口調とは真逆の、絶対零度の様な声で命令を下す。

 

「仰せの通りに!」

 

 その命令を快く承諾する。ここで逆らう様な私じゃない。その模造品―――レプリカとでも呼ぼう―――までの道のりは、ISのミニマップに映っている。その場所に全力で移動する。

 

「マキナ! どこに行くんだ!」

 

 オープンチャンネルで一夏が聞いてきた。

 

「他のISの反応が見つかったから、そっちに行くだけよ。貴方たちは福音を倒しなさい」

 

 そう言ってレプリカの居場所までは、福音とはまったく違う方向になる。一夏たちが、まだ何か言ってくるが、それを無視して一気に移動する。

 

 しばらくすると、黒と白の私とよく似たスーツを着ており、黒色の短いツインテールの髪形をした少女が、顔にバイザーを付け、宙に佇んでいた。

 

 特徴的なのは、二本の浮いている巨大な拳と、肩に付いている球体だろう。

 

「敵機発見 戦闘行動 開始」

「いいわ、戦ってあげる。かかって来なさい」

 

先に動き出したのはレプリカだ。瞬時加速にも劣らない速度で、マキナに掴み掛る。それを後ろに避けて、お返しとばかりに、両手のアウェイク:マキナを、レプリカの左右に放つ。動きを制限されたレプリカに、すぐさま二つのビットで上下からビームを撃つ

 

レプリカは、拳の形をしたビットで上下からのビームを防ぎ、距離を取る。離れた後、すぐにビットを近くに引き寄せるが、指が数本無くなっていたり、装甲が溶けていたりして、ボロボロの状態だ。次に攻撃を受けたら壊れてしまうだろう

 

マキナは左手でユナイティリィ・ラフの準備をし、右手と二つのビットで牽制、残りのビットで攻撃を仕掛ける。牽制に使うビットは、拡散射撃をさせており、牽制というよりは、面制圧になっている。そのせいか、先程からレプリカの被弾が多くなっている

 

「私の模造品って聞いたけど、案外弱いわね。期待外れだわ」

 

そろそろ終わらせてやろう。そう思ったマキナは、右手の射撃をしつつ、全てのビットで面制圧を仕掛けながら、急接近する。レプリカは動くことが出来ず、磔状態だ

 

「これで、終わりよ!」

 

零距離まで近づいたマキナは、レプリカの腹部に、ユナイティリィ・ラフの爆発をくらわせる。それに耐えることが出来ずエネルギーの尽きたレプリカは、海面に真っ逆さまに落ちていく。

 

「……あぁそうだ、福音のこと忘れてたわ。仕方ないから、様子でも見に行こうかしらね」

 

 落ちていくレプリカに目もくれず、福音の所に向かおうとする―――――が、そのとき。

 

「リミッター解除 バーストモード起動」

 

 破壊したはずのレプリカから、そんな声が後ろから聞こえてきた。

 

 声の方を見ると、目を隠していたバイザーが外れ、赤い瞳がこちらを見ている。髪留めと足の装甲の一部が、赤と緑に変わっている。

 

 さらには、肩の球体が四角に変わっており、ビットの数が四つに増えている。それぞれのビットからは、炎、水、風、闇のオーラが、湧き出ている。

 

「なんだ、また戦えたのね。いいわ、どっちかが壊れるまで、()り続けましょうか!」

 

今ここに、オリジン:マキナとレプリカ:バーストの、聖なる扉の為の闘いではなく、自身の為の闘いが、幕を開ける―――――




今回はいかがでしたでしょうか? 次回はレプリカ決着です。え?福音?あれは一夏たちに任せておきます。

感想・指摘・その他諸々がありましたら、気軽に感想欄にお書きください。

それでは、また次回!

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