それでは第八話 どうぞ!
~NOside~
鈴との決闘と、本音・簪・楯無たちへの説明を終え、それからは特に何事も無く時が進んでいき六月。今月からISの本格的な実習が始まる。実習と同時に生徒たちへのISスーツの注文の始まるらしく、教室ではISスーツについて話している
「やっぱりハヅキ社製のがいいなあ」
「え、そう?ハヅキってデザインだけって感じしない?」
「そのデザインがいいのー」
「私はミューレイのがいいなあ」
「アレ、モノはいいけどお高いじゃん」
クラスメイトたちが手にカタログを持って、わいわいと意見を交わし合っている
「そういえば、織斑君のISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」
「あー、特注品だって。男のスーツが無いからどっかのラボが作ったらしいよ。もとはイングリット社のストレートアームモデルだってさ」
ISスーツとは文字通りIS展開時に着る特殊なフィットスーツのことだ。マキナにとっては無用の物であるが、一応着ているといった感じである
「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の弾程度なら完全に受け止めることができます。でも衝撃は消えませんよ。撃たれたら普通に痛いです」
すらすらと説明しながら現れたのは真耶だ。流石はIS学園教師といったところだろう
「山ちゃん詳しい!」
「一応先生ですから―――って、山ちゃん?」
「山ぴー見直した!」
「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです、えへん―――って、山ぴー?」
入学から二ヶ月ほどたった今、真耶にはいくつもの愛称がついていた。慕われている証拠なのだろうが、日頃から立派な教師であろうと頑張っている真耶にはあまり嬉しくないだろう。
そしてこの作品の主人公であるマキナはというと。背を向けた本音を足に乗せ頭を撫でつつ昨日楯無に言われたことを考えていた
~マキナside~
「明日に転校生が来る?」
「そうなのよ。フランスとドイツから一人ずつ来るっていう話よ」
生徒会室で書類の整理を手伝っている中、急にそんな話をしてきた。ちなみに、なぜ生徒会役員でもない私が手伝っているのかというと、楯無に泣き付かれたからだ。
「それで、どんな娘たちが来るの?」
「それがね、ドイツの方は軍人であること以外普通の子なんだけど……」
「だけど?」
「フランスの子が男の子なのよ」
男。そう言われて作業をしていた手が止まる。
「それで?それを私に教えてどうしろと?」
「もしかしたらスパイかもしれないから、注意しておいてほしいのよ」
なるほど。一夏に危害が加えられないように監視をしろ、ということね。
「わかったわ。害が無いって分かったら連絡するわ」
「ありがとう。よろしくね♪」
◇
と、昨日言われたので一応は注意しておこうと思う。十中八九、女だろう。そんなことを考えていると
「諸君、おはよう」
千冬が教室に入ってきた。ざわついていた教室が一瞬で静まり、全員が席に着く。本音の暖かさが無くなるのは惜しいが、痛い思いをさせないために本音を席に帰す。
「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。お前たちのISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れた者は代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それも忘れたら―――まあ、下着で構わんだろう」
今までならそれでもいいかも知れないが、今年は一夏という男性もいるのだから下着はまずいだろう。
「では山田先生、HRを」
「はい。えーと、今日は皆さんに転校生を紹介します。それも、なんと二人です!」
さて、どんな娘たちが来るのかしら。そういえば片方は男の子だったのよね。
「失礼します」
「…………」
楯無の言っていた通り二人来たわね。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
「お、男……?」
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が居ると聞いて本国より転入を――」
シャルルといった子は、人懐っこそうな顔と声は中性的。金髪を背中あたりまで伸ばして首の後ろで束ねている。背も男性としては男性としては低い方だ。―――とそこまで考えたところで嫌な予感がし、聴覚を切って備える。
「「「「「きゃああああああ!!」」」」」
ソニックウェーブと呼んでも差し支えないような歓声が沸き起こった。聴覚を切ってなかったら危なかっただろう。
「男子!二人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形!守ってあげたくなる系の!」
クラス中が歓喜に揺れ、一夏が耳を塞ぎ、千冬が溜息を吐き、真耶がおろおろしていた。
「あー、騒ぐな。静かにしろ」
「み、皆さーん!まだ自己紹介は終わってませんよー!」
さすがに教師二人に言われたからだろう、他の生徒たちは一旦静かになった。
「…………」
「…挨拶をしろ、ラウラ」
「はっ、教官」
ラウラと呼ばれた少女が姿勢を正し、千冬に敬礼する。その様子を見た千冬は面倒くさいという風に
「その呼び方はやめろ。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。織斑先生と呼べ」
「了解しました」
あれはわかっていないわね。教官って呼んでいるということは、千冬がドイツにいた時の教え子かしら。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「…………」
「あ、あの、以上……ですか?」
「以上だ」
「そうですか……」
と真耶が言い終わるとラウラが一夏の前まで歩み寄ってきた。
「貴様が織斑一夏か?」
「ああ、そうだけど―――」
一夏が答えた瞬間、ラウラが一夏に向かって思い切り手を振るうが―――
「いきなり何しようとしてるのよ」
流石に目の前で友人が叩かれるのを黙って見過ごすほど、薄情ではない。
「貴様!何をする!」
「何って。友人を守っただけよ」
そう言うとラウラは私の手を振り払い、こちらを睨み一夏に向き直る。
「私はお前を教官の弟とは認めない!教官の栄誉を傷つけたお前なんかを!」
これは一波乱、否シャルルも含めて二波乱ありそうね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本日最初の授業は、ISの実戦訓練だ。基本的な動作と格闘及び射撃の訓練らしい。私は時間には普通に間に合ったが、一夏とシャルルは時間ギリギリだった。
「まずは、戦闘の実演をしてもらう……凰、オルコット前に出ろ!」
「わ、わたくしもですか!?」
近接機対射撃機の実演かしら?鈴音とセシリアの戦いは見たこと無かったから気になるわね。しかし、呼ばれた二人はやる気がなさそうだ。
「……やれやれ、お前たち耳を貸せ」
千冬が二人に何かを吹き込むと急にやる気が出たようだ。どうせ一夏をダシにしたんでしょうけど。
「それで、わたくしのお相手は鈴さんでよろしいのですか?」
「セシリアが相手?望むところよ!」
「まぁ、待て……相手はアレだ」
千冬が見ている方を見ると、ラファールリヴァイブを装着した真耶が一夏に向かって落ちてきていた。
「どいてくださいーーー!!」
「へ?」
気の抜けた声を上げた一夏に真耶が激突。派手に土煙を上げながらゴロゴロと地面を転がって行く。
煙の晴れた後、そこにあったのは真耶を押し倒し胸を揉みしだく一夏の姿があった。
「い、いえ、その…困ります…こんなみんなが見ている目の前でなんて……あぁでもこのまま結ばれれば織斑先生が義姉ということにっ……それはそれで……」
少々トリップしたことを口走っている真耶である。とそこへ
「うわぁ!」
「あら一夏さん、避けないでくださいませんこと?」
セシリアが恐い笑顔を向けながら一夏にスターライトMKⅢで顔面に向かって撃つ。
「一夏ァ!」
次は鈴音が甲龍を展開し双天牙月を連結させる。
「死ネェッ!!」
そして一夏目掛けて投擲する。さすがにそれは止めようと思い、デウス・エクスを展開し瞬時加速を使おうとした時、二発の銃声がグラウンドに鳴り響き鈴音の足元に双天牙月が突き刺さる。
山田先生が仰向けのまま双天牙月の刃をアサルトライフルの弾丸で弾き飛ばし、正確に鈴音の足元まで戻した。伊達に、元代表候補生ではないということね。
「山田先生は元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」
「む、昔の話です。それに候補生止まりでしたし……」
謙遜しているがあれだけの射撃の腕があるのだから、実際はかなりイイ勝負をしていたのだろう。
「さて、時間が勿体ないからな…さっさと始めろ」
「二対一ですが、よろしいのですか?」
「流石にそれは…」
セシリアと鈴音が困惑した表情で千冬を見つめている。
「安心しろ。今のお前たちではすぐに負ける」
千冬が涼しい顔で挑発する様に言う。その言葉に二人は
「わたくしの勇姿を見せてさしあげますわ!」
「やってやろうじゃん!」
まだ若いからだろう、案の定挑発に乗ってきた。三人が宙に浮き、戦闘準備が整う。そして戦闘が始まった。それと同時にシャルルによるラファールリヴァイヴの説明も始める。
シャルルはデュノア社の一人息子ということもあり、説明もお手の物だ。
(でも、デュノア社に息子なんていたかしら?娘なら知ってるけど……)
それは今は置いておこう。上空では真耶が二人をじわじわと追い詰めている。鈴音の衝撃砲を回避しつつ、セシリアのビットをアサルトライフルで撃ち射線を鈴、あるいはセシリア自身に向けている。
普通の人間が同じことをやろうとしても難しいだろう。私?私はできるわよ。とそこで真耶がアサルトライフルでセシリアと鈴音をぶつけて、グレネードランチャーを発射する。
仲良く爆発した二人は煙から落ちてきて地面に激突する。
「鈴さんが突っ込みすぎるからですわ!」
「あんたが立ち止りすぎなのよ!」
その後も仲良く言い合っている二人。冷静に連携していたら良い所までいけたかもしれないわね。
「これで連携の重要さと、IS学園所属教師の強さが分かったな?以後、教師には敬意を払うように!」
「「「「「ハイッ!」」」」」
「よし。専用機持ちの織斑、オリジン、オルコット、ボーデヴィッヒ、デュノア、凰の六班に別れろ」
「織斑君、手取り足取りよろしくね!」
「うへぇ…セシリアかぁ…負けたのになぁ…」
「やった、シャルル君とだ!」
「凰さん凰さん……後で織斑君のこと教えてね」
各々が各班に別れていく。私のところには誰が来ているのかしら?
「えへへ~マッキーだー。よろしく~」
「あら、本音がいたのね。よろしくね」
本音の他にはナギとさゆか、二組の生徒がいる。他の班は穏やかな雰囲気だが、ラウラの班だけは非常に重苦しい雰囲気だった。
「訓練に使用する機体は打鉄三機にラファールが三機ですよー。早い者勝ちですからねー」
「らしいけど。皆はどっちがいいかしら?」
「どっちでも大丈夫だよ~」
「私たちも大丈夫」
「それじゃあ、ラファールを借りてくるわ」
私はデウス・エクスの武装以外を展開して、真耶からラファールを受領してくる。
「今回は全員にやってもらいますから、フィッティングとパーソナライズは行いません。午前中は、歩行などを行って操作の感覚を掴んでくださいね」
「というわけで、早速装着を始めるわよ」
「はーい」
どうやら本音が一人目のようだ。ラファールを座らせ、装着させる。ラファールの手を取り、立つときの補助をしながら説明していく。
「ISっていうのは、要はパワードスーツよ。視点がいつもより高くなるけど、落ち着いて動かせばバランスを崩す事もないわ。それにISに乗るって思うんじゃなくて、ISを着ていると思った方がいいわ。何が言いたいかっていうと、あまり気負わなくて良いってことよ。それじゃ、手は持っててあげるから歩いてみましょうか」
「は~い」
少しフラフラしているが練習を重ねれば問題なくなるだろう。次第に慣れていたのか歩きが自然になっていく。
「それじゃあ、手を離すわよ」
「おっとっと」
手を離しても少しバランスを崩しただけですぐに立て直した。
「結構上手いわね」
「ありがと~。―――わぁ!」
油断した本音が足を縺れさせて前のめりに倒れてきたのでそれを優しく抱き止める。
「本音、大丈夫…?」
「う、うん。ありがと~」
本音は顔を少し赤らめて、抱き着いたままこちらを見上げてくる。
「落ち着いて歩くのよ」
「わかった~」
その後、一通り歩き終わった本音と交代し、私の班が一番早く終わった。途中、一夏の班がお姫様抱っこで運んだりしていたが、気にする程のことでもない。そんなことより、ラウラの班が一応訓練はしていたが、海軍ばりのスパルタだったらしく、班のメンバーの顔が青褪めていた。
誰かが怪我しそうだから、ラウラをどうにかしないといけないわね……シャルルも何かしそうだから、はぁ。今月は面倒なことになりそうね。
………………書くことないです……………………
というわけで、感想・アドバイス・不満などがありましたら気軽にお書きください!
それではまた次回!