それではプロローグをどうぞ
プロローグ
ここは統合世界《ユナイティリア》のとある場所にある、とある研究所。
「ご主人様、食事の用意ができました」
「分かった、今行くねマキナ」
そう答えた少女は統合世界で神才と呼ばれている人物だ。
統合世界とは、精霊たちが住む天界《セレスティア》
人間が住む常界《テラスティア》
魔族が住む《ヘリスティア》
この3つの世界が聖なる扉《ディバインゲート》により交わってできた世界が統合世界である。
「今日の朝ごはんは何作ったの~?」
「今日はご主人様が夜遅くまで開発をしていらしたので疲れが取れるものをご用意しています」
「そんなに気を遣わなくてもいいのに。まぁ、マキナの作ったものならなんでも食べるけどね」
そう言って神才はマキナに向け、明るい笑顔を見せた。
「ありがとうございます。マクスウェル様。それでは行きましょう」
マキナは嬉しそうに少しだけ笑みを浮かべながら廊下を二人で歩く。
マクスウェル。彼女はこの名前で呼ばれていた。この名前といっても彼女は、人間でありながら天界の書記官を務める男と違っていくつもの名前があるわけではない。正真正銘、彼女の本名である。
「それじゃ、さっさと食べて開発の続きでもしようかな」
「でしたら食器を片づけ次第お手伝いにまいります」
「ありがとう、そうと決まったらいそいで食べよう。マキナと一緒にやれば開発も進むかもしれないからね」
そう言ってマクスウェルはドアノブに手を伸ばしてドアを開けようとするが――――――――――
「やあやあおはよう!一日のほとんどを機体の開発と研究に使っている神才ちゃんにその神才に作られた原初の機体ちゃん!気分はどうかな?」
そんな他人をバカにしているような底抜けの明るい声によってその行動は遮られた
「何しに来たの?ロキ」
眉間にしわを寄せてとてつもなく嫌そうな顔で神才は答える。
「そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃん。せっかくこんな所にまで来てあげたんだからさぁ」
「お前なんかに来てほしいなどとご主人様は思っていないわよ。悪戯神」
もう会話が面倒になった神才の代わりに原初の機体がいつでも追い出せるように戦闘態勢に入りながら会話を続ける。
「おお、怖い怖い。そんなに警戒しなくてもいいじゃん。今日はいい話を持ってきたんだからさ」
「いい話?」
「そうそういい話。機体の開発に行き詰ってるらしいね」
「それがどうしたの?」
いい話と聞いてから神才は会話をするぐらいのやる気が回復したらしい。
「こことは違うけど同じ世界に面白いパワードスーツがあってね、新世代機の参考にもなればいいと思ってこの話を持って来たんだよ」
「違うけど同じ世界?」
悪戯神の変な言い回しに疑問を浮かべる原初の機体
「そうだよ、平行世界って言った方がいいかな?」
「それで、その平行世界には何があるっていうの?」
「―――インフィニット・ストラトス」
「「インフィニット・ストラトス?」」
二人が揃えて声をあげる。
「そう、インフィニット・ストラトス。通称ISって呼ばれてるよ。」
言葉より映像の方がわかりやすいから見せてあげるね。そして悪戯神はどこからともなくタブレットを取り出し、
「いや~人間の作ったものは便利な物が多いからいいね」
そう言った後に、これだよこれ。と言いながら映像を見せる。
「「!!」」
そこには彼女たちが今まで一度も見たことがない光景が広がっていた。
1人は、様々な種類の銃を瞬時に切り替えながら相手をかく乱しながら相手を追い詰めていく。
1人は、浮遊しながらレーザーを放つ自律型のドライバのような物を使っている。
1人は、見えない砲弾を360度全方位に向けての射撃を行っている。
1人は、正面に飛来した弾丸などを目の前で止めている。
1人は、ブレード一本のみで相手にまで近づき一振りするだけで戦闘不能に追い込んでいた。
「なに……これ……」
驚きを隠せない様子の原初の機体が声を漏らす。神才の反応が気になり、ふと隣を見ると、
「何これ!何これ!面白い!ロキもっと見せて!」
子供のようにはしゃぎながら目を輝かせている神才がいた。
「これ以上は見せられないよ。後は実物を自分の目で確かめてきてほしいからね」
「自分の目ぇ?どうやってこの世界に行けって言うの?まさか扉くぐったらその世界、とでも言うの?」
バカバカしい。神才はそう一蹴したが、
「そうだよ、そのまさかだ」
「証拠はあるの?」
悪戯神は頷いてから、朝ごはん食べたら表においで。と言って姿を消した。
「どうなさるのですか?」
マクスウェルは一瞬、思考を巡らせ、
「とりあえず、ごはん食べちゃおっか」
そう言ってようやくドアを開けることができた。余談だが、その日の朝食はいつにも増して早く終わったらしい。
「案外早かったね。もうちょっとかかるかと思ったよ」
おどけながら言う悪戯神の後ろには巨大な扉が鎮座していた。二人の荷物は何もないように見えるがロキからもらったタブレットに粒子化され収納されていた。神才はこのタブレットを分解して解析しようとしたが時間が無いからと原初の機体に止められていた。
「珍しいものを見せられてその世界に行ける。なんて言われたら誰だって興味持つでしょ?」
バカじゃないの?とでも言いたげな顔で神才は言い返す。
「それで、この扉をくぐれば向こうの世界に着くのかしら?」
「そうだよ、それでどうする、行く?行か「行くに決まってるでしょ」…………最後まで言わせてほしかったなぁ……」
がっくりと首を垂らせる悪戯神の顔は薄笑いを浮かべていた。
「マキナ、付いて来てくれる?」
かわいらしく首を傾げる神才に原初の機体は、
「もちろんです。あなたの行くところにはどこにだって付いて行きます」
「ありがとね!」
神才は満面の笑みを見せ、
「というわけでロキ、さっさと連れてって」
その言葉を聞いた悪戯神は立ち直り
「よし、決まったようだね。それじゃこのタブレット渡しておくね」
「これは?」
「これはね、ISの基本的な構造やら性能やらが全て入ってる物だよ。これでオリジンにISを作ってあげなよ」
なんでマキナに?言いたそうな顔をしている神才
「なんでって、オリジンが向こうの世界でドライバなんて使ったら面倒なことになるでしょ?だからだよ」
「あ、そっか。じゃあ元から撃てるビームに加えて何か追加したISを作ればいいか」
と、そこである疑問が浮かぶ
「そういえば、こちらの世界と向こうの世界での時間の流れはどうなるのかしら?」
マキナの質問にロキは、変わらず薄笑いを浮かべ答える。
「大丈夫だよ、あっちの一日はこっちだと三時間ぐらいしか経ってないから」
心配せず、楽しんできなよ。と言うロキはさっさと行ってほしそうに話す
「分かった、行ってくるよ。扉開けて」
「はいは~い、それじゃ行ってらっしゃ~い」
ロキが指を鳴らすと同時に扉が開く。そこには真っ白の空間が広がっていた。
「それと、もう1つ。あっちの時代はISの大会、モンド・グロッソの第二回目の開催日だから、その日にいろいろあるから人助けはした方がいいと思うから頑張ってね」
あと、場所はドイツだよ。ロキが説明してる間に神才と原初の機体は扉の前にいる。
「それじゃあマキナ、行こうか」
「はい、行きましょう」
そう言って二人は扉の中へ消えていく。そんな二人を眺めながら悪戯神は手を振って見送る。
これから二人に何が起こり、どんなことに巻き込まれるかは予想はできるが誰一人として決めつけることはできない。
さて、君たち人間にはこれからあの二人にどんなことが起きるのかを見ていてほしいな。こっちはこっちでやることがあってあの二人を見てる暇がないからね。
「さて、邪魔者もいなくなったし、こっちも計画を進めようかな」
楽しみだ。そう言うとロキは最初からそこにはいなかったかのように消えてしまった。
今回はどうでしたか?今回は三人称でしたが次回からは一人称に変えて書こうとおもっています。それでは皆様、またお会いしましょう。
感想もよろしければ書いていただけると幸いです。また次回!