白き妖犬が翔る   作:クリカラ

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皆さんの高評価に体が震えてきた作者です

日間ランキングを覗いて見た時に、
同じタイトルの作品が載っているなと思ったら、
自分の作品だったことに、ガチの二度見をしてしまいました

明日あたりで死ぬんじゃないかな……と地味に心配していたりするビビりです


願いの達成、そして彼の名は…

 

 

 

 

 

―――間桐雁夜は、物語()を見た。

 

 

 

 

 

―――物の怪(殺生丸)が、人と妖 二つの姿を様々な時代に残していく記録

 

 

 

 

 

彼は夢を見ながら、この物語の主役である人物に顔を向けていた。

 

長い髪と毛皮を風に靡かせる、召喚した時と何も変わらない姿で其処に存在した。

どれ程の月日が経とうとも、その存在は決して揺るがない。

それが記憶を覗いて視た、間桐雁夜が語る、自分のサーヴァントについての評価だった。

 

(殺生丸)は、どんな状況になっても決して屈すること無く、その勇姿を数多くの人々に魅せた。

 

どれ程の英雄たちが、彼の背中を見たのだろう。

 

どれ程の人間たちが、彼に希望を見出したのだろう。

 

 

 

 

 

―――彼が、小さな頃に憧れた姿が其処()にはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………んっ」

 

雁夜は辺りを照らす、朝日に目を覚ました。

寝ぼけている頭で周りを観察し、何とか此処が自身の部屋だと認識した。

そして、いま自分が見ていた夢が、召喚したサーヴァントのものだと理解した。

 

次に、自分の状況を整理し、召喚を行った際に気絶した事を思い出した。

 

「(……臓硯は俺の記憶が正しいなら、アイツ(サーヴァント)に殺された筈だ。

 蟲たちが大人しいのも、支配者(臓硯)が居なくなったから、俺に命令権が移ったのか)」

 

そこまで考え、一先ずは安堵した。

だが雁夜はここで、一番に確認しなければならないことを忘れていた。

 

彼の目的である、『間桐桜』の安否を確認していなかったのだ。

原因は諸悪の根源である臓硯が死んだ事による、気の緩みだろう。

自身を罵倒したい気持ちを切り捨て、桜の確認を急ごうとした。

 

「待っていてくれ! 桜ちゃん!」

 

確認の為に急ぎベッドから起き上がろうとしたその時、部屋の扉を開ける音が辺りに響いた。

視線をそちらに移すとそこには、心配した桜の姿があった。

 

「桜ちゃん!!」

 

雁夜は急ぎ桜の傍らに近づき無事を確認したが、何処にも異常は見当たらなかった。

寧ろ桜がこちらの心配している姿は、最後に顔を合わせた時より、

表情が豊かになったとすら思えた。

 

そしてこの状況は、桜が本当の意味で臓硯から解放されたのだと、理解させてくれた。

雁夜の目的である『桜を救い出す』ことは、既に果たされたのだ。

 

「雁夜おじさん、大丈夫?」

 

「……あぁ、おじさんは大丈夫だよ、桜ちゃん」

 

こちらを心配してくれる桜の表情は、葵や凛と一緒だった頃と比べると、

少し劣っていたかも知れないが、間桐家で再会した時に見た顔より、

よっぽど人間味溢れる表情だった。

 

今の桜を見て、彼は涙が零れ落ちそうだった。

 

『桜を助けたい』

 

そのためだけに、今まで走り続けてきたのだ。

そして、間桐雁夜のささやかな願いは、いま此処に実を結んだ。

 

桜は、涙を堪え体を震わせる雁夜を見て、何処か痛いのかと勘違いし、

彼の頭を優しく撫でて慰めようとした。

その行いに彼は我慢していた涙が溢れてきてしまい、大人気なくその場に泣き崩れてしまった。

それに驚き、初めはオロオロしていた桜だったが、やがて先ほどよりも優しく、

まるで幼い赤子を慰めるように、彼の頭を撫で続けた。

 

この光景は、雁夜のサーヴァントが彼らを呼びに部屋を訪れるまで続いた。

 

 

 

 

 

大の大人が、少女に慰められている状態は、他者から見たら滑稽だったかも知れない。

だが、小さな救いを求めたこの男を一体、何処の誰が笑えるのだろうか。

何も知らない人間が、間桐雁夜の行いを笑う事は許さない。

後に彼のサーヴァント(殺生丸)は、この光景を見てそうコメントした。

 

それを聞き、雁夜は恥ずかしさの余り、野垂れ死にそうになった。

だが、何よりも憧れの存在にそのように評価して貰えたことが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、彼らは間桐邸の居間に集まっていた。

桜と雁夜は備え付けのソファに座り、殺生丸は二人の対面になる様に座っていた。

 

先ほどの光景を見られた雁夜は、恥ずかしく思い視線を下に向け、

桜も少し頬を染めて恥ずかしそうにしていた。

 

そんな二人の姿を見て、殺生丸は少しだけ表情を柔らかくしていた。

別に、リア充爆発などと思ってはいない。

 

ただ、始め暗い顔をしていた桜が、このような表情を出してくれた事が純粋に嬉しかったのだ。

 

子供は笑顔が一番。

いま、殺生丸が考えている事はそんな所だった。

 

雁夜はこの空気に耐えかねて、わざとらしく咳払いをした後に話を始めた。

 

「召喚して直ぐに気絶してしまったから、お互いの自己紹介もまだだったよな。

 俺の名前は間桐雁夜、まずは礼を言わせてくれ。

 臓硯を倒して、桜ちゃんを助けくれてありがとう」

 

「ありがとうございます」

 

二人は臓硯から解放してくれたことについてお礼を述べた。

それに対して殺生丸は、何気なく言葉を返した。

 

「――別に大した事ではない。

 ただ、彼奴が私を下賤な視線で見下したのが気に食わなかっただけだ」

 

「……そうか、なら礼はこれ以上言わない」

 

一先ず彼は、臓硯の話はここで一端 終わらせることにした。

終わったことについてより、まずは先に優先させることがあったからだ。

 

雁夜と殺生丸は、聖杯戦争の魔術師(マスター)使い魔(サーヴァント)

いつまでもノンビリとして居られないのだ。

 

そう考えて雁夜は、まずは桜を部屋に戻らせようとしたが、桜は頑として部屋に戻らなかった。

逆にその話し合いに参加させてほしいと提案してきたのだ。

 

桜は、臓硯から教えられていた。

雁夜が自分を助けるために此処(間桐)に戻ってきた事、

そして聖杯なる物を巡る殺し合いに参加する事も全て臓硯に知らされていたのだ。

 

教えられた当初 桜は臓硯の言いなりの人形だった為、別段何とも思っていなかった。

寧ろ何故、おじい様に逆らっているのだろうと疑問にすら考えた。

それは、おじい様には敵いっこないのにと桜が達観していた所為である。

 

だが、それは仕方がない事だろう。

幼いその身を蟲に凌辱されて、精神が完全に壊れなかっただけでも桜は凄かったのだ。

普通であれば、ただ生きる人形と成り果てても不思議じゃなかった。

 

しかし、今はこうやって誰かの身を案じられる普通の少女に戻れた。

雁夜はもう、桜を魔術というふざけたものには金輪際、関わらせない事に決めていた。

故に、桜が聖杯戦争のことを知るのを避けたかったのだ。

 

桜は、自分の身を文字通り削って救おうとしてくれた雁夜が、

これ以上危ない目に遭うのは見たくなかった。

 

二人は互いの主張を言い合い、意見を曲げようとしなかった。

 

それを今まで黙っていた殺生丸が見かねて、話に割り込んできた。

 

「雁夜、桜の意見を通してやれ。その子はお前が考えているより強い」

 

「だがッ! 彼女はまだこどm「雁夜おじさん!!」!?」

 

雁夜の言葉は、そこで遮られた。

その時、桜はその瞳に強い覚悟を宿して、彼を見つめていた。

 

「私ね……本当はまだ色んなことが怖いの。

 でもね、おじさんが何処か遠くに行く方が今はずっと怖い……。

 だからお願い、桜をもう一人にしないで……」

 

覚悟を決めたその顔は、次第に不安の顔つきになり、最後には涙を浮かべていた。

其処には、ただ家族の帰りを待つ、小さな少女の姿があった。

 

それを見て彼は、自身の敗北を悟った。

女の子にこんな姿をさせて、駄目だと言える人間では無いのだ、間桐雁夜と云う男は。

 

二人は話し合いの結果、このままの状況で話を続けることになった。

 

聖杯戦争の話に戻る際、雁夜はまず確認しなければならないことを殺生丸に聞いた。

 

「今まで流してきてしまったが、そろそろお前の真名を聞かせてくれないか?

 臓硯が用意した触媒は、アーサー王伝説の円卓関係の聖遺物だった。

 普通なら、円卓の騎士の誰かが出てくる筈なんだが……お前は違うよな?

 一応、自分では既に答えを出しているんだが、お前自身の口から聞いてみたい」

 

今まで彼には聞き出していなかったが、サーヴァントの真名を彼は大体予想がついていた。

 

夢で見たあの光景、召喚の場に在った触媒以外の絵本()、そしてその特徴的な姿。

 

寧ろ召喚した時に気付かなかったのが、不思議でならない。

恐らく、存在感の方ばかりに目がいってあの時は、頭の思考が停止していたのであろう。

故に、今ここで彼の正体を改めて知っておかなければならなかった。

 

「――私の真名か、そういえばまだ自己紹介の途中でもあったな」

 

そう言うと、彼は座っていたその場から徐に立ち上がり、雁夜を見下ろした。

その瞬間、雁夜には召喚した時の様な、威圧感(オーラ)が殺生丸から向けられた。

 

だが、最初程には臆さなかった。

慣れ…ではないだろう、ただ彼がどれだけの存在であるか知識として、

そして夢を見て知っていたからだろう。

 

桜はそんな二人を交互に見比べた後、首を傾げていた。

どうやら、この威圧は雁夜だけに向けられているものらしい。

 

故に、彼は桜のことを気にせず、目の前の英雄に向かい会えた。

 

そして、いま現代にその姿を現した英雄は、静かに名乗りを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――我が名は殺生丸

 

 

 

 

 

―――此度の聖杯戦争に召喚された、使い魔(サーヴァント)

 

 

 

 

 

―――私に役割(クラス)など存在しない

 

 

 

 

 

―――故に、私を呼ぶ際は殺生丸と呼べ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その名乗りは、聖杯戦争の参加者が聴いたら、驚きを通り越して呆れ果てていたでだろう。

まさか、クラスが無く、名を呼ぶ際は真名で呼べなど、参加者を馬鹿にしているとしか思えない。

 

だが、殺生丸(英雄)にはそれが許されるほどの力があった。

 

彼は、大昔に砕け散った秘宝の玉を完成させるべく、

世界各国(・・・・)に飛び散った24個のかけらを永い時を掛けて探し出した。

その過程で、彼は様々な英雄たちの叙事記や伝説に名と姿を残していった。

 

かけらを持った悪に立ち向かう為に他者と共闘し、ある時はかけらを悪用した人間の戦に参加し、

又ある時はかけらの所為で本来 起こりえるはずがない反乱を鎮圧したりなど、

活躍を挙げだしたら切りがない。

 

だが、それだけで彼が大英雄になった訳じゃない。

人々から英雄と呼ばれるのは、彼がいつも弱者の味方だったからだ。

 

 

―――悪を許さず、善を為す

 

 

本来、性質的に人類の天敵である存在の彼が何故、人々に味方したかは正確には分かっていない。

一説によると、幼い少女を救ったのが切欠だったと伝えられているが本当の処は伝わっていない。

 

だが、彼が歩んで来た歴史は、確かに人類を守るかのように刻まれ続けていた。

故に、人々は彼を魔物と知りながら、その偉業から英雄と称えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いや、四魂の玉はマジヤバいって。えっ、それなら探しに逝け? ハッハッハ、君は何を言ってるのかな? ……えっ、母上が仰ったのか? いやいや、嘘はついちゃダメだぞ。お兄さん、そういうのには厳しいからね? なに?母上からの手紙だと? おいおい、これは手が込んだ冗談だな。まあ、ここまでやったんだから、手紙の一つ位は最後に読んで上げようじゃないか。なになに、(拝啓、親愛なる息子 殺生丸へ、妾は四魂のかけらなる物の噂を耳にしたのじゃが、これを集める旅をお主の試練にしようと思ったのじゃ。彼奴(闘牙王)も私の息子ならきっとやり遂げてくれると、妾に賛同してくれたので当分の間は、この地に帰還するのを禁止とする。 追伸、もし何も成果を挙げずに帰ってくるようであれば……分かっているな?)………………嘘だと言ってよ、母上……』

 

 

 

 

 

――――――この時より、殺生丸(オリ主)の永く険しい戦いの歴史が幕を上げた――――――

 

 

 

 

 

………………この物語(連載)……無事に続くかな?

 

 




3話を投稿する事が出来ましたが、話が全然 進んでない……
そして早くもこの作品に終わりが来たか!
冗談です、まだ(・・)続くよ……

と言うか、私は何時の間にパパーダの事を書いていたのか。

プロットを作っている時に気付くべきでしたが、さてどうしよう……
……よし!何も見なかった事にして続けよう!(すっ呆け

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