「――話を再開しよう。私が此れより告げる事柄は、全て事実だ。
故に、
「……(コクッ)」
殺生丸はアイリにも聞いて貰う為に改めて言葉に出す。
彼女も今から始まる語りは、確りと自身で聞き届けるつもりであった。
アイリの様子に内心で満足しながら殺生丸は語り出す。
「――先ずは、
「私たちの認識を改めさせる……ですか?」
「――ああ、手始めに聖杯が降臨するシステムについて話そう」
セイバーの疑問に答える為、殺生丸は言葉を選んでいく。
「この地に存在する『聖杯』とは、簡潔に述べれば『万能の願望機』と呼ばれる魔術礼装だ。
「……私たちの魂が必要? つまり、戦いを制した者が『聖杯』を勝ち取れると云うのは……」
「そう、我らが脱落した際に英霊の座に還る魂……膨大な魔力を用いて、
この
「何だとっ! 其れは誠か、殺生丸!」
セイバーに説明していた殺生丸は、予想通りの反応をみせる輩を見遣る。
彼の視線の先には、驚愕を露わにしたライダーの姿があった。
予想通り過ぎる反応に溜息を吐きながら殺生丸は対応する。
「……貴様は大方、他の
「当然である! お主が言った通りだとしたら、余の朋友計画が全てパァーではないか!」
「知らん。貴様は大人しくしていろ」
殺生丸は素っ気ない態度でライダーに対応する。
ライダーはその返しに、(´・ω・`)ショボーンと云った表情になっていた。
だが殺生丸の言葉に反応したのは、何もライダーだけでは無い。
セイバーも彼が告げた内容に戸惑っていた。
「殺生丸。貴方が告げた事が本当なら、私たちの願いは……」
「――安心しろ。願いを叶える程度ならば、自身以外の六騎を敗退させれば事足りる」
「……其れならば、何も問題はありませんね」
セイバーは其れで満足した様だが、其れに納得できない者が居る。
「……殺生丸よ……本当に全てのサーヴァントを倒さなければ、願望を叶える事は出来ぬのか?」
ライダーは説明を受けても、まだ諦めが付かなかったらしい。
征服王である彼の目の前には英傑豪傑が存在しているのだ。
故に、中々決断が出来ないらしい。
ライダーの状況を子供に例えると、二つの玩具を同時に買おうとして、
一つしか手に入らないのを認めたくない……こんな処であろうか?
単純に述べるなら、諦めが悪い奴位の認識で良いだろう。
「――聖杯を願望機として降臨させるには、六騎分が必要だ。潔く諦めろ」
「………………はぁぁぁぁぁぁ………………勿体無い。
………………勿体無いのぉー………………はぁぁぁぁぁぁ」
「(……まっ、
ライダーをスルーの方針で話を進める事にした、
彼は興味が湧かない事は、基本的に無関心なのだ。
そんな殺生丸にアーチャーが問いを投げる。
「――
貴様が告げたい事はそんな事では無い筈だ」
「――そうだな、基本的な話は此処までとしよう。
次の事柄が貴様たちに伝えて於きたい案件だ」
殺生丸は、話の続きを語る。
「――第三次聖杯戦争。アインツベルンが召喚したサーヴァントが全ての始まりだ。
彼奴等は聖杯戦争で確実な勝利を得る為、最悪の悪神を呼び出そうと試みた。
――真名を『
「――なっ!? 神霊の召喚だなんてそんなの無理だわ!
だって聖杯戦争で召喚できるのは英霊までの筈よ!!」
殺生丸が告げた名に激しい反応を示す、アイリスフィール。
彼女の言葉を肯定しながら続きを語る。
「――そう、神霊クラスはこの地の召喚システムでは召喚不可能。
呼び出せたとしても、神としての側面に至っていない状態で呼び出される。
だが、『
それ故、第三次聖杯戦争で召喚された者は悪神では無く……人間であった。
唯の人間ではない、『
「……其れから如何なったのだ?」
何時の間にか復活していたライダーも話に加わる。
「――アンリマユとなった其のサーヴァント、アヴェンジャーは、聖杯戦争が開催されて数日で脱落したらしい。
だが問題は、アヴェンジャーが倒されてから発生した」
「……如何云う事です?」
「――本来『聖杯』の中身とは無色透明であり、力の方向性が定まっていないモノ。
それ故に取得者の
――然し、その無色透明な中身を……
彼は問答で使った杯の中に何処からか用意した、水差しの水を流し込む。
そして水が入った杯に自身の血を一滴零す。
其れだけで無色透明であった水は穢れた。
「――
結果、願いは正しく成就されなくなり、歪んだ結末を生む願望機へと変貌した。
破滅と云う手段でしか所有者の願いを叶えられない……欠陥品へとな」
「――では、私たちの願いは如何なるのだっ!?
話が事実であるならば、この戦い全てが最早茶番ではないかっ!!」
話を聞いたセイバーは、その事実を語った殺生丸に怒りをぶつける。
彼女が荒れる理由は、サーヴァントの中で最も聖杯を欲していたからだろう。
一方のライダーは彼女とは違い、静かに事実だけを告げた。
彼はやっと殺生丸が成そうとしている事を理解したのだ。
「――なるほど、まだ何も入っていない器をお主は如何にかしようとしている訳か。
中身が入っていると調べる際に面倒であるが故に……」
ライダーの答えを肯定する。
「――貴様の言う通りだ、征服王。
私が調べる際、中身が有ると無いとでは作業効率が大きく変わろう。
故、アサシンであっても脱落させる訳にはいかないのだ」
例えば、コップの何処かに
その
逆さにしてコップの底を観るのも手間が掛かる。
中身が入っていたとしても調べる事は可能だが、其れだと征服王が述べた様に面倒。
故に殺生丸は、面倒になりそうな事は極力省いてきた。
彼は興味が持てないモノには、余り力を注ぎたくは無いのだ。
「……其れはつまり、まだ可能性が残されていると云う事ですね?」
「――さてな、
だが生憎とこの身は
もし結果が伴わなければ、最終的には破壊する他あるまい」
「……そうですか」
殺生丸は最悪を想定して次の選択も視野に入れた。
だがセイバーは、殺生丸との会話にまだ希望が在ると解り一端は大人しくなる。
彼は、今の状況にため息を吐きたい気分であった。
「――
殺生丸はそう呟くと天生牙で開いた時空の狭間から、ある箱を取り出した。
見た目的には古めかしい木箱でしかなかったが、何やら清らかな
其れに逸早く気付いたアーチャーは言葉を発する。
「――
アーチャーの問い掛けを無視する様に、殺生丸は木箱を解放する。
其処には仄かな光を発する美しい玉が存在した。
玉の輝きに、その場に居た者たちは魅了される。
セイバーとライダーは生前に於いて四魂の玉のかけらを観ていたが、
玉の完成した姿を見るのは初めてであった。
アーチャーはその輝きに、宝とはこう云うモノで在ってこそと其の貌を歪めた。
アイリとウェイバーはその玉を見詰めていると、自分自身の何だか吸い込まれそうだと感じた。
そしてふと我に返ったウェイバーは、殺生丸の顔を何となく覗き見て絶句した。
殺生丸の表情にはっきりとした驚きが表れていたのだ。
其れは殺生丸を観察してきた中で、ウェイバーが一番の変化が感じ取れる
ウェイバーが驚きの表情で見詰める
「(………………えっ? 懐かしさ次いでに取り出したけど、
何か……玉が微弱に共鳴してるんですけど? ………………ええぇぇぇぇ!?!?)」
絶賛混乱中であった。
一体、四魂の玉に何が起こっているのか?
―――序章は、静かに終わりを迎え
―――物語は、佳境へと至る
ここまで読んで下さった皆様に感謝の言葉を申し上げます
『白き妖犬が翔る』の前半部分は、この話を以て最後になります。
この続きから後半戦へと入る訳ですが、ここで重大なお知らせです
この小説はここで一端ストップです。
……済みません、オリジナルを出す為に後半のネタを作り直したいと思います
アニメで表現すると1クール目が終了して、間を開けて2クール目を放送する手法ですね!
……ハイ済みません、考えもせずに進めた結果こうなりました
最初は原作Zeroと同様に戦わせていき、聖杯を破壊と余りオリジナルは無い作りでしたが、
感想欄にオリジナル展開を望むモノがあったのでこの際やってみようかな考えた次第です
まあ、最初の案も三王vs殺生丸陣営など色々と考えていたので残念ではあるんですけどね
どの位留守にするか分かりませんが、この際に番外編を進めたりしようかなーと考え中。
まあコッチは余り期待しないで下さい、飽くまで番外編ですので……
後、過去編も考えついたら投稿するかもです
……全く新しい作品でも出そうかな
まあ兎に角、この物語は一端の終わりをここに宣言します!
いままで読んで下さった大勢の皆様に感謝を!