白き妖犬が翔る   作:クリカラ

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GOは適度に遊ぶのがコツ、それを学んだ作者です

今回は何時もより、1500文字位少ないです。
済みません、投稿を早めにと心掛けていたら少なくなってしまいました


ランサーの誓い

 

 

 

 

 

―――倉庫街

 

「――くっ! 其処を退け、ランサー!」

 

「その提案には承諾し兼ねるな、セイバー。

 此れより先に往きたいので有れば、我が首級を討ち取ってからにして貰おう。

 ――最も、簡単にこの首を取れるとは考えないことだ」

 

「――ならば、貴殿を即座に討ち果たす。

 其処を押し通らせて貰うぞ、槍使い!」

 

「――其れは俺の望む処だぞ、セイバー!」

 

一進一退。

正に彼らの戦いはそう呼べる代物であった。

 

英傑同士による闘争は、人間では視覚に捉える事は難しい。

現にセイバーに守られるアイリは、目の前で行われる戦いを正しく認識出来ていなかった。

 

縦横無尽に翔る両者の姿を一度確認すれば、

その間に何十と云う剣戟の遣り取りが行われていても彼女は気付けない。

だが、それが当たり前の事なのだ。

 

英霊とは人の形を保ちながら、人を超越した存在。

故に、この戦いにアイリが手助け出来ないのは寧ろ必然。

 

アイリは今が非常に不味い状況だと理解していながら、

何も出来ない自身に苛立ちを感じていた。

ケイネスが切嗣に襲撃を仕掛けたのはこちらでも瞬時に察し、

彼の救援にセイバーを向かわせようとしているのだが思うようにいってなかった。

 

理由は当然、ケイネスのサーヴァントであるランサーが原因だ。

彼は自身のマスターが襲撃を仕掛けると同時に戦闘を嗾け、彼女たちを食い止めていた。

 

彼女は切嗣が襲撃された際、状況を聴きだす為に

念話を彼に送り続けていたが一向に繋がらなかった。

これの状況もケイネスによる仕業だと考えられた。

 

故にアイリは、必要以上に切嗣の身を案じていた。

彼の安全を知る為には、ランサーを倒す他なかった。

 

アイリがその様に思考を巡らせていると同時に、セイバーは目の前の敵について考えていた。

彼女はランサーと武器を交えながら疑問を感じた。

 

セイバーは彼の事を何も知り得て無かった為、初めは相手の策に疑問を覚えなかったが、

こうして獲物を交えると彼からは騎士道に通じるものを感じていた。

 

何故、此れほどの猛者があのような策を弄する必要があったのかと……セイバーは考えたのだ。

そして彼女はその真相を探るべく、互いの間合いに距離が出来た際に問いを彼に投げ掛けた。

 

「――ランサー、貴公ほどの者が何故この様な小細工を弄した?

 剣を交えて貴方がどれ程の力量を持ち合わせているのかは理解した。

 ……貴方も騎士の道を志しているのでは無いのか?」

 

その疑問に、彼は自己を以て応えた。

 

「――確かに俺は、理想とする志を持っている。

 だが、これ(奇襲)は主に強制された訳では無いぞ。

 俺自身の意志で、我が主の方針に賛同したのだ」

 

彼の言葉に嘘は無い。

それはセイバー自身にも理解できていた。

 

もし彼がこの作戦に賛同していなければ、

この場でセイバーと此れほどの戦いを繰り広げられなかったであろう。

迷いを持って打ち合えるほど、セイバーの剣撃は甘く無い。

 

故に、セイバーはランサーの事が解らなくなっていた。

彼女は彼ならば絶対に己が武で敵の首級を討ち取り、

自身のマスターを納得させると思ったからだ。

 

令呪も使わずに大人しく従っているのが不思議でならないのだ。

だから彼女は再度、彼に問いを投げた。

 

「……だからこそ、私は貴公の事が理解できない。

 何故、自身の武だけで主に貢献しようと思わない?

 如何して、マスターの非道な行いに目を瞑っている?」

 

セイバーの言葉に彼は眉を顰めながら返答した。

 

「――その言葉、お前にも当て嵌まるのではないか……セイバー?」

 

「……何だと?」

 

ランサーの物言いが彼女の癇に障った。

それはどういう意味だとセイバーは彼に語尾を強めながら問い続けた。

その態度に、ランサーは何を今更と言った具合で応えた。

 

「――今更、その様な事(暗殺)を隠すこともあるまい。

 お前の本来のマスターが、我が主のお命を蔭ながら狙っていたのは予想できていた。

 故に、我が主は自身の信念を枉げてまでこの様な浅ましい手段を為さったのだ」

 

彼女は彼の言葉に驚いた。

 

「(……キリツグ、貴方はやはりその様な方針を取っていたのですか?

  ……何故、私に剣を預けて頂けないのですか?)」

 

彼女はランサーの話を聴いて、マスターの行いを初めて知る事が出来たのだ。

セイバーは自身のマスターに何故……と心の中で問いかけていた。

そんな彼女の内心など知らずにランサーは言葉を続けた。

 

「――主が決意を固めたと云うのに俺だけが意地を張るなど、お門違いにも程があろう。

 それに、俺は主に聖杯を掲げると誓った身だ。

 ――勝者になる事こそ、今生の主に取って最高の忠義。

 ……俺は勘違いしていたのだ、セイバー。

 ……自身の意固地な意見だけを押し通すのは、真の忠誠と呼ばない。

 主に忠誠を誓うと言いながら、その実…俺は主の事など顧みていなかった……

 ただ、自身の不幸を嘆いていただけの愚か者だったのだ……」

 

其処で彼は言葉を止めた。

現在、彼の表情はお世辞にも良いとは言えず、

寧ろ自身の罪に懺悔している咎人の有様であった。

 

彼は本当に心の底から、今迄の行いを後悔しているのであろう。

セイバーの眼には、少なくともそう感じられた。

 

そんな彼だったが、次の瞬間には変化した。

先ほどとは打って変わり、その顔を穏やかな表情に変えていたのだ。

これには、流石のセイバーも驚いた。

 

あれ程、自身の行いに悔いていた存在が此処まで変わるのかと……

彼はセイバーの変化に気付かずに先ほどの続きを語りだした。

 

「――だが、主はこの愚かな俺に教えてくれたのだ。

『――貴様の忠義は偽物で在ったかもしれない。だが、其れは今迄(・・)の話であろう?

 ならば、この戦いで真に証明しろ。貴様を呼び出したのは、間違いでは無かったのだと』

 ――ああ、主に誓った願いは過ちにはしない!

 このランサー、全身全霊を以て貴方の命に応えてみせよう!

 たとえ他のサーヴァントたちに謗られようとも、

 貴方の信頼だけは――――決して間違いにはさせない!」

 

「――――――」

 

セイバーは、ランサーの誓いに言葉が出なかった。

彼女は、ランサーが己の信念を無理に枉げてマスターの意向に従っていると、

心の何処かで思っていたのだ。

 

だが、その考えは大きく間違えていた。

彼は寧ろ、心の底から忠誠を誓っていた。

 

自身のマスターと心を通わせて、絶対の信頼関係を得る。

それは、彼女が持ち合わせていない代物であった。

 

セイバーは彼らの行いに憤りを覚えていたが、その想いが少し薄れていた。

正直、彼らの在り方に憧れを抱いていたのだ。

 

自分たちとは違う在り方。

強大な敵を眼前にして、主従の絆を固め合う姿。

 

自身に無いものを此れほど魅せ付けられて、嫉妬が無いとは言えなかった。

ランサー陣営を観ていると、その思いが強くなる一方であった。

 

……だが、其れでもセイバーは敗けられなかった。

彼女には、果たさなければ成らない願いがある。

たとえ、マスターとの信頼関係が築けなくとも……彼女は勝たなければいけないのだ。

 

「――ランサー、先ほどの言葉は撤回しよう。

 貴公の想いは尊い。

 故に最早、言葉は不要だ。

 ――貴方の誓いは、我が剣で倒す他無い」

 

「――感謝する、聡明な騎士よ。

 貴公に出会えた事は、我が誇りだ」

 

そこまで言葉を重ねた二人は、理解した。

語り合うのは此処まで、次は互いの生を掛けた全身全霊の闘争。

 

ランサーは2槍の封印を解き、赤槍と黄槍の姿を露わにした。

セイバーは聖剣に施している風の鞘を使用した、特攻の構えを魅せた。

 

両者の間に、一陣の風が吹く。

それを合図に、両雄は翔る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――だが、彼らの勝敗に水を差す存在が戦場に舞い降りた

 

 




すまない……先生は出て来ないんだ、すまない……

先生の活躍はダイジェストじゃダメかな?
えっ?カッコいい先生を観たいだって?

……考えときます!

ってか、展開を考えてみたらまだアニメの4話か5話位なんだよね……
まぁ、色々と状況が変わってますから予定より早く終わりそうです

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