白き妖犬が翔る   作:クリカラ

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前話で急いで完成させると言ったな?
アレは嘘だ!

……すまない、エリちゃんが俺を待ってるんだ……すまない

作者はGOに明日から熱を入れると思うので、
更新は誠ながら遅れてしまうと思います。
大変、申し訳御座いません!

でも……こんな俺でもエリは待っている筈なんだ!

えっ?槍エリちゃん?彼女は愛想を尽かせて出ていったよ……


策謀

 

 

 

 

 

―――冬木空港ロビー

 

「……ねぇセイバー? 何だかわたしたち、周りの人から観られてない?」

 

「――アイリスフィールの容姿に注目しているのでしょう。

 貴女は女性として、とても美しいですからね」

 

「セイバーだって、とても可愛いわよ?」

 

「……複雑ですね、私は王になったその時から女を捨てた身ですから」

 

この場で今、周りに注目を集めている人物が二人ほど存在している。

 

一人は銀髪を伸ばし、その白い肌と対照的な紅い瞳をもった女性。

もう一方は金髪に、翡翠の瞳をもった男装の麗人。

 

冬木には魔術師絡みの件で、国外からの訪問者が思いの外いる。

一般の外国人も観光目的でこの地に訪れたりするので彼女たちの存在は別段、珍しく無いのだ。

其れなのに何故、此れほどの注目を浴びるのかと言われれば、

純粋に彼女たちの容姿が優れていた為だ。

 

銀髪の女性、アイリスフィール・フォン・アインツベルン。

男装の麗人、騎士王アーサー・ペンドラゴン。

又の名を使い魔(サーヴァント)剣士(セイバー)と呼ぶ。

 

彼女たちが今回の聖杯戦争に於ける、最後の一組である。

そして彼女たちの参戦で、冬木の地に全ての参加者が出揃った。

 

 

 

 

 

―――この時より、物語(Zero)が動き出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良くぞ来た。

 今日一日、この街を練り歩いて過ごしたものの、どいつも此奴も穴倉を決め込むばかり。

 俺の誘いに応じた猛者は、お前だけだ」

 

そう言って彼女たちの前に姿を現したのは、2振りの槍を持った美丈夫の男であった。

 

此処は冬木の外れにある倉庫街。

セイバーたちは空港を出た後に冬木の街を二人で散策していたが、

その最中に目の前に居る男に誘いを掛けられた。

彼女たちはその誘いに乗り、この倉庫街にまで足を運んだ。

 

「その清澄な闘気、剣士(セイバー)と御見受けしたが…如何に?」

 

「――如何にも。そう云うお前は槍兵(ランサー)に相違無いな?」

 

「ああ、我が役割り(クラス)はランサーだ」

 

英雄は、仮の名であるが互いに名乗りを上げた。

そんな自身たちの状況に、ランサーは苦笑を魅せた。

 

「……名乗りもまともに上げられんとは、興が乗らん縛りが有ったものだ」

 

「………………」

 

その呟きにセイバーも少なからずの同意はあったが、敢て口に出す事も無いと考え黙していた。

その時、彼らの辺りに声が上がった。

 

『下らない事を喋るんじゃない、ランサー』

 

「っ!」

 

「………………」

 

突然の声にアイリは驚き、セイバーは辺りを静かに探った。

声は反響するかの如くに辺り一面に響いていた。

 

恐らく魔術で風を操り声を反響させているのだろう。

自身の居場所を彼女たちに特定させない為に……

 

彼女たちもそれが解り、姿が見えない敵を警戒した。

 

「――申し訳ありません、我が主よ」

 

『……ふんっ、解ったのなら私が話をする間は黙っていろ』

 

ランサーのマスター(ケイネス)は自身のサーヴァントの会話を早々に終わらせ、

敵であるセイバー陣営に話を振ってきた。

 

『我が名は、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。

 此度はランサーのマスターとして、この聖杯戦争に推参した者だ。

 そして姿を見せない、この様な状況を許してほしい。

 アインツベルンの魔術師(マスター)よ』

 

彼は姿を隠しながら、自身の紹介をするといった奇妙な戦法を取っていた。

だがアイリは、ケイネスの反応を観て自分たちの策が成功しているのを実感していた。

 

セイバー本来のマスターは衛宮切嗣。

アイリスフィールはただセイバーの近くに居るだけ……

つまりアイリがマスターだと敵に誤認させることが彼女たちの作戦だ。

 

アイリは作戦の感触を確かめつつ、ケイネスの返答に応えた。

 

「――初めまして、ロード・エルメロイ。

 私は名前は、アイリスフィール・フォン・アインツベルン。

 貴方ほどの魔術師にその様に言われると恐縮するわ」

 

『――なに、君の家系も歴史に名を残す名家だ。

 貴族ならば最低限、礼儀は弁えねばなるまい』

 

「……ええ、ならその謝罪は素直に受け取らせてもらうわ」

 

其処までの会話を終わらせて、アイリは本題に入ることにした。

 

「それで?私たちに挑発を仕掛けてきた訳は何なのかしら?

 ロードほどのお方が姿を隠しながら、この様な事をしたのには理由が有るのでしょう?」

 

『当然だ。私を其処のお喋りな奴(ランサー)と一緒にして貰っては困る』

 

ランサーはケイネスの言葉には特に反応を示さず、ただ黙していた。

アイリはそれを視界に入れながらケイネスに続きを足した。

 

『君たちは昨夜、遠坂邸で起こった初のサーヴァント戦についての詳細はご存知かな?』

 

アイリは彼の問いにどう答えたら良いのかと思考を巡らせた。

そして素直に此方の状況を話すことにした。

 

「……私たちは、先ほど日本に到着したばかりで貴方が云う襲撃についての詳細は

 持ち合わせてないわ」

 

『――ふむ、嘘は付いてなさそうだな。

 まあ、こんな情報に嘘を付いても仕方ないとは思うがな』

 

そしてケイネスは言葉を続けた。

 

『ならば、君たちには簡潔にその詳細を話そう。

 昨夜の襲撃は、遠坂のサーヴァントだと思しき黄金のアーチャー、

 クラスが不明である白銀のサーヴァント、その2騎による戦いが事の発端だ。

 ……私がこんな姑息な手段を取らざる得ない状況になったのも、

 全てあのサーヴァントたちが悪い!』

 

「……何が不自然なの?

 私には、ただ(・・)サーヴァント同士が戦っただけにしか聞こえないのだけれども……」

 

『……ただ(・・)のだと?

 いや、君たちは視てはいなかったのだな。

 なら、その判断を下すのも無理はないか……』

 

彼は寧ろ、こちらを憐れんでいるかの様だった。

その態度にアイリは少しムカッときて、語尾を強めながら続きを足した。

 

『……先ほどの続きだが、無論ただの戦闘ではない。

 なにせ戦いを観ていたにも関わらず、気づいた時には辺り一帯が吹き飛んでいたのだから』

 

「……はっ?」

 

『言葉の通りだよ、アインツベルン。

 屋敷を中心に周囲100mは一気に吹き飛んだ筈だ。

 それも宝具などの真名を解放せずにだ……』

 

アイリはケイネスの言葉を理解できなかった。

だが其処に、別行動を取っていた切嗣が意見を重ねてきた。

 

『――アイリ、ケイネスが話している内容は事実だ。

 僕も舞弥に見せて貰った映像でそれは確認済みだ』

 

『……なら、ホントの事なのね?』

 

『ああ、間違いない。

 それとアイリ、ケイネスが何を言うのかは知らないが、

 出来るだけ奴に情報を引き出させてくれ。

 僕たちにとって、有益なものがあるかも知れない』

 

『――解った』

 

其処で念話を止めた彼女は、更に情報を聴きだす為にケイネスに問うた。

 

「――貴方が伝えた事は理解できたわ。

 でも、何が目的なのかまだ解っていないのだけれど……」

 

『――単刀直入に告げよう、私たちと同盟を結ぶ気はないかね?』

 

「「なっ!」」

 

アイリはセイバーと共に驚いてしまった。

まさか、彼のロードから同盟の話を持ち掛けられるとは思ってもみなかったのだ。

ケイネスは、そんな二人を無視して話を続けた。

 

『――君のサーヴァントであるセイバーは、パラメーターの数値がオールAに近い最高のものだ。

 私のランサーでは苦戦は免れないだろう。

 だが逆にそれは、君たちの助力を得られればあのサーヴァントたちにも

 勝ち得る布石となる筈だ。

 故に私は君たちを此処に誘い、この話を持ち掛けているのだ』

 

ケイネスはここまで話すと、ランサーに一枚のスクロールを取り出させた。

彼は、スクロールをセイバーに投げ渡した。

 

セイバーは警戒しながらそれを受け取り、アイリに手渡した。

彼女はスクロールの中身を確認して驚いた。

 

 

―――自己強制証明(セルフギアス・スクロール)

 

魔術師同士が違約不可能な取り決めをする時にのみ使用される、呪術契約の一つ。

魔術刻印の機能を用いて術者本人にかける強制の呪いは、いかなる手段用いても解除不可能。

命をさしだしても次代に継承された魔術刻印がある限り、死後の魂すらも束縛される。

 

 

ケイネスが渡してきたのは自己強制証明(セルフギアス・スクロール)であった。

まさか、死後まで束縛されるこれを持ち出してまで同盟を組もうと考える何て、

想定外もいい所だ。

 

アイリは即座に切嗣に指示を仰いだ。

 

『――アイリ、それには何て書いてある?』

 

『少し待って、……要約すると互いのサーヴァントを用いてその2騎のサーヴァントを打倒する。

 その間は互いに敵対行動を取る事を禁じる…って事位かしら。

 後、互いのマスターに害を成す存在が現れた場合は、

 もう一方のサーヴァントを用いて相手の障害を排除するって書いてあるわ』

 

『……駄目だな。

 これじゃあ2騎を倒すまでケイネスを排除できないし、

 僕がセイバーのマスターだとばれてしまう。

 それにこの内容だと舞弥を使って間接的に殺すことも出来ない。

 何よりも旨みが無い』

 

『……そうね、背中を安全に預けられる存在が出来るのは心強いけど、

 あのランサーがどれ位強いのか解らないもの』

 

『――ああ、交渉は決裂だ』

 

アイリはケイネスに自分たちの答えを告げようとした。

だが、それは彼の高笑いで止められてしまった。

 

『――アハッハッハッハッハッハッ!

 ようやく捉えたぞ、この魔術師の面汚しめ!』

 

彼は声高らかに宣言した。

 

ケイネスはこの時を待っていたのだ。

衛宮切嗣が自己強制証明(セルフギアス・スクロール)に意識を向ける、その時を……

 

「何っ!!」

 

これには切嗣も驚き、直ぐ様ケイネスを補足しようとスコープを覗き見たが、

先ほどまで確認できた彼の姿は其処には無かった。

 

そして切嗣は唐突にその場から地面へと飛び降りた。

直後、彼が先ほどまで立っていた場所に鎌鼬の様な風が通り過ぎていた。

後、1秒遅ければ…切嗣の胴は真っ二つだったろう。

 

「何処に往こうと云うのだね、セイバーのマスター(・・・・・・・・・)?」

 

切嗣の目の前に、彼は居た。

ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの姿が、其処には在った。

 

「魔道を穢す、薄汚れたネズミに私自ら特別に指導してやろう」

 

彼は顔を歪めながら、切嗣に告げた。

 

「――光栄に思いたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………ケイネスのパーフェクトまじゅつ教室、はっじまっるよー!

 

 


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