ドジっ娘は風紀委員長様のおきにいり!?   作:ひばりの

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ここまではまだ超直感は覚醒してませんが、以前からタイトルが気に入っているのでこのままでいきます。
べ、別に考えるのが面倒じゃないんだからねっ!

あと、前の話のあとがきにしれっとおまけ追加しました。
いやぁ、すっかり忘れてまして、面目ないです。
見なくてもおまけ程度ですからね。
一応見てくれている人は、今回のを読んであ〜くらいには思ってくれるかな?w



超直感の疑問  vorbesc.沢田綱吉

 

 オレ、ツナこと沢田綱吉は、風紀委員長のヒバリさんに咬み殺されて、瀕死の最中だった。

 

 倒れた娘の様子見に来ただけなのに、なんでこんな目にーーー!?

 

 そんなことも口にすることが出来なくて、口から泡を吹いて朦朧とするオレの意識に、ふと女の子の声がする。

 

「――さん…… 沢田さん! しっかりしてください! 大丈夫ですか?」

 

 オレを心配してくれるその声に、なんとか応えたくて、これ以上ない痛みが襲って来る中で意識を覚ました。

 

 身体中の痛みに表情を引き攣らせながらゆっくり顔を上げると、白いもやがちらつきながら、オレを心配するみんなの顔がそこにはあった。

 

 正面には、オレが心配していたはずの花内さんが、オレをじっと見つめて容態を窺っている。逆に心配されてどうすんだよ……。

 

 そんな顔をずっとさせているわけにもいかないから、無理やりな笑顔を作って「もう大丈夫」って返す。本音はすぐに救急車呼んでほしいけど……。

 

 オレがやっと返事をすれば、みんなの表情が緩んだ。どれくらい意識失くしてたんだろうって自分でも怖いけど、京子ちゃんたちまで心配させちゃって、申し訳ないなぁ…… とはいえ、実はちょっと嬉しい。

 

 なんていうか、昔のオレだったら、こうやって心配してくれる友達って、いなかったよなーって。

 

 何言ってんだろ。自分で言って悲しいやっ。

 

「あ、あの…… すみません。私のせいで、沢田さんが……」

「そうだぞ、てめぇ! この腐れアマがッ! てめぇがちんたらしてっから、10代目があのヤローにッ……!」

「キャーーーッ!! ごめんなさいごめんなさいぃぃ!!」

 

 心配してくれているのに、何仇で返しちゃってるの獄寺君ーーー!!

 

 わなわなと拳を握って凄む獄寺君に、花内さんは戦々恐々だった。お願いだから仕事増やすのやめてよ、獄寺君……。

 

 あやふやな意識で獄寺君を宥めると、獄寺君の言葉でここにいづらくなったのか、花内さんはそのまま青い顔で扉の方に一人向かっていく。

 

「それじゃあ、お騒がせしました。沢田さんもお大事に……」

「花内さん……?」

 

 彼女がドアに手をかけると、マッサージ機みたいにドアが小刻みにガタガタ揺れている。そのドア、そんなに立て付け悪かったっけ……。

 

「その、応接室…… 行ってきます……」

 

 それを聞いて、彼女の胸の内を思うと言葉が出なかった。

 

「感想よろしくね」

「薄情者ーーーッ!!」

 

 そんな花内さんに勇敢にも追い打ちをかける女の子とゴタゴタになりながら、なんだかんだで一緒に部屋を出て行った。

 

「ヒバリにさっさと咬み殺されとけ」

「獄寺君!」

 

 すっかり花内さんを警戒している獄寺君にどっと疲労感が残るけど、それより、応接室に向かった花内さんのことが気になっていた。大丈夫かな……。

 

 心配で追いかけようにも、ヒバリさんに咬み殺された後じゃ、今も立ち上がるのもやっとだ。

 

 あー、ホント情けないや……。アイツの言う通り、少しは鍛えた方がいいのかもなぁ……。

 

 心配してくれた京子ちゃんたちも、放課後はケーキを買いにいくってもう行っちゃったし。京子ちゃんにもあんなとこ見られちゃったよ〜〜! 穴があったら入りてぇ〜〜〜!!

 

「今なら白装束もつけとくぞ」

「永遠に埋葬()める気かあぁーーーーッ!!」

 

 毎度のこと神出鬼没な赤ん坊に、ツッコミの勢いのまま振り返る。

 

「ていうか毎度のこと何その格好ーーー!?」

 

 典型的な工事現場のおっさんみたいな格好をして、髭面に似合わないデカい目をこっちに向けてくる。

 

「オレに掘れねぇ穴はねえぞ」

「聞いてねーよ!!」

 

 ツルハシを片手に、ドヤ顔を披露してみせる。

 

 お前の本職ヒットマンだろーがッ! 悪ノリもいいとこだよ!

 

「リボーン! だから出だしから人の心を読むな! 心臓飛び出すだろッ!」

 

 正直読まれてたのがすっげぇ恥ずかしくて、それを当たり散らすようにコイツにつっこむ。ていうか、なんで工事現場のおっさんなんだよ!?

 

「なんだ。ダメツナ。毎回オレの神出鬼没な登場に何今更ビビってんだ」

「日本語おかしいだろーー!! むしろ毎回神出鬼没だからビビるんだろーーー!!」

 

 こんなの慣れるはずないだろーーー!!と心から奴にツッコミたい。

 

 でも、コイツの場合、そんなこと言ったってわかってくれやしない。

 

「マフィアのボスが、こんくれーのことに肝冷やしてたらキリねーぞ」

「誰がマフィアのボスだよーー!! オレはそんな物騒なものになるなんて冗談じゃないからな!!」

「そんな口叩く暇があるなら、ヒバリに咬み殺されねーように鍛えるか」

「ヒィィィィッ!! 学校でパンツ一丁の方が咬み殺されるだろーーー!!」

 

 鋭く光る銃口とご対面して、改めてコイツの無鉄砲さに呆れる。が、それより今は恐怖の方が勝っていて、それどころじゃないーーーー!!

 

「よっす、小僧。小僧も今日は学校に来てたんだな」

「てめっ、馴れ馴れしくリボーンさんに挨拶してんじゃねーよ! どもっス、リボーンさん」

「ちゃおっス。獄寺に山本」

 

 山本と獄寺君がリボーンに話しかけてきて、なんとかコイツの意識が逸れる。九死に一生だよ〜〜。ありがとう、2人共〜〜!

 

「またマフィアごっこか? 最近のおもちゃは凝っててリアルなのな〜」

「山本遊び感覚ーーー!!」

 

 こんなやり取りも慣れたもんだけど、なんかオレの中の本能がこうしてつっこまずにはいられない。オレの役割って……。

 

「まりやちゅあ〜〜ん! おじさん復活だよ〜〜ん!」

 

 そんなところにまた舞い込んで来たのが、例の酔いどれだった。帰ってくんなよ〜〜〜!

 

 オレがそう思ってる間に、辺りを見回して花内さんがいないことに気づくと、火照ってる顔をしかめてシャマルがオレたちに言った。

 

「たくっ、んだよ〜〜。いつの間にかむっせえ男ばっかじゃねーか。神聖なオレの保健室が男共の体臭で汚れんだろ。けーったけーった」

「そもそもおめーの保健室じゃねえだろッ!!」

 

 散々な言われようにムカつきも通り越して呆れると、獄寺君がシャマルに突っかかっていった。頼むからオレの仕事だけは増やさないでよ……。

 

 ヒヤヒヤしながら2人の様子を見ていると、ベッドの上にいたリボーンが、呟くようにこんなことを言った。

 

「なかなかいい素材だな。花内まりや」

 

 ヘルメットの下に隠れる何かの陰謀を秘めたそれに、思わず背筋が震えた。咄嗟に嫌な予感がしたからだ。

 

 オレが問い詰めると、案の定こんなことを口にした。

 

「そろそろ新しいファミリー候補を立ててもいい頃だと思ってたところだぞ」

 

 コイツはぁぁあああああっ!!

 

 最近はすっかり気が抜けていたけど、結局マフィアだのファミリーだの、だからオレはならないって!!

 

「なんだ。おめーもいたのか。リボーン」

 

 オレが呆気にとられている隣で、シャマルがようやくリボーンの存在に気づいたようで話しかけている。さらに隣で、獄寺君の剣幕が凄い。山本が、なんとか相手してくれているけど……。

 

「ああ。お前も随分と気に入ってるようだな」

「ったりめーだろ? このご時世にロリコンだの言われるオヤジの話をあんなに真摯に受け止めてくれんだ。ありゃ〜、将来は有望なキャバ嬢だ」

「勝手にキャバ嬢とか決めつけんなよ!!」

 

 キャバ嬢とか…… 花内さんに失礼すぎるだろーーー! こいつら人をなんだと思ってるんだよーーー!!

 

「人を置いて話進めるなよ! お前は!」

 

 とりあえず、リボーンが言ったさっきの言葉が、下手をしたら取り返しがつかないような気がして、慌ててその話に戻そうとする。

 

 シャマルから視線を戻して、リボーンは、するとオレのさっきの言葉をどう捉えたのか……。

 

「あのヒバリが、眼光らせてる獲物だぞ。上物なのは間違いねーだろ」

「そういうことじゃなくてぇぇぇ!!」

 

 否定するのが精一杯で、コイツに言いたいことを言葉にするのに戸惑っていると、さらにこんなことを言ってのける。

 

「安心しろ。女でもマフィアになれねぇことはねーぞ。裏社会でも潜入捜査や諜報部で活躍の場はいくらでもある」

「だから花内さんはそもそもマフィア目指してないだろーーーーー!!」

 

 お前が勝手に言ってるだけで、花内さんはマフィアと関係ないだろッ!! そもそも花内さんはマフィアの存在も全く知らない一般人だしッ!

 

「ていうか、今更だけどどうしてヒバリさんが!? あの2人ってそもそもどういう関係ーーー!?」

 

 考えてみれば、風紀委員長のヒバリさんとどうしてお互い知ってる感じなの!? さっきもあのヒバリさんとあんなに自然に話してたし、かと思えば咬み殺されそうになってたし、あの2人の距離感がイマイチ掴めない!

 

「さーな。詳しい接点はオレも知らねーが、どうしてそこまで花内まりやのことにいちいちお前が反応してんだ?」

「はッ!? いや、別に、そういうわけじゃないけど……」

 

 花内さんのことは、別にそういう意味で気になってるとかじゃなくて……。

 

 う〜んと答えが出せずにいるオレを、さらに追い詰めるかのように、リボーンがこんなことを言った。

 

「面倒事に自分から首突っ込む奴じゃねえお前が、特にヒバリ絡みのことなんて珍しいじゃねーか」

 

 リボーンに言われて、初めて気づく。

 

 いつものオレなら、こいつの言う通り、ここで自分から突っ込んでいくタイプじゃない。それにヒバリさん絡みなんて、碌なことがないって鼻から知らんぷりするはずだ。だって咬み殺されたくないし……。

 

「それは……」

 

 

 それなのに―― 何も知らないはずのあの娘を、つい心配しちゃうのは――――

 

 

 

「なんだか、放っておけないっていうか……」

 

 なんとなく、口から漏れたのはその言葉だった。

 

 ほんと、なんて言ったらいいんだろう……。

 

「そもそも、オレが巻き込んじゃったもんだからさ、せめてもの償い、みたいな……」

 

 今回はオレの不注意が、花内さんを巻き込んでしまったから…… まあ、勝手に動いたのはランボなんだけどさ。まあ、それも含めてオレの責任だし。

 

 ふと見た奴の目は、腑に落ちないように、真っ直ぐにオレを見て、次の言葉を待っている。そういうことじゃないだろ、それとはまた違うだろ、そうオレに瞳が訴えかけているようだ。

 

 ……そうかもしれない。それだけじゃないような気がするんだ。自分でも。なんだか放っておけない。

 

 それが意味するところは、今のオレにはさっぱりだけど……。

 

「その、困ってるようだから、あの時は自然と身体が動いたし…… 無視するのも酷いだろ?」

 

 考えがまとまらない頭で、そう言った言葉は、こいつに解ってもらえるだろうか。

 

 今までの無鉄砲に放った言葉を補うように、オレはこんなことを言った。

 

「それに、悪い娘じゃないみたいだし……」

 

 結局、そうとしか言えず、望む答えはまだ出せそうになかった。

 

 

「……んにしても、なんなんスかねぇ、あのアマ。よくヒバリといるのを見ますし、野郎が熱出して倒れてた時も近くにいましたし」

 

 ガラ悪く舌打ちしてる獄寺君が、そんなことを言っていた。

 

 たしかに、あの時は状況がわからなくてホントびっくりした。思えば、あの時から変わった娘だった。自分のクラスもわからないって言われて、職員室までの道を案内した。普通は、学校に入る前にクラス表確認するんだけど……。

 

 ホームルームも始まっていたのに、あんなところで倒れていた雲雀さんと遭遇していたのもなんか気になるし、そんな風に頭がぐるぐるしているオレの隣で、リボーンが首を傾げる。

 

「なんのことだ?」

「ああ、小僧はあん時いなかったよな」

「それがっスねぇ、リボーンさん。かくかくしかじかで」

 

 口が軽いのか、相手がリボーンだからなのか、どうでもいいことまでベラベラと話し出す獄寺君に少し遠い目で軽蔑してしまう。

 

 あの後、リボーンに一応その出来事を話したんだけど、花内さんのことは知らないと思ってたし、オレだってあの時は名前も知らない女の子だったし、だから彼女のことは伏せておいたけど……。

 

「なるほどな」

 

 ニヒルな口を釣り上げて、不安を煽るような表情を見せる。

 

 こいつ……! またなんかヤバいこと考えてんじゃないだろーな!? ダメだからな! 絶対!

 

「リボーン! 花内さんに迷惑かけるのだけはやめろよ!」

「おめーと関わった時点で迷惑かけてるようなもんだろーが」

「酷ぇけど正論すぎてなんも言えねーーー!!」

「こんなことになんのもツナがまだまだボスとして未熟だからだぞ」

「こじつけくせぇーー! つーか、何気にマフィアを絡めてくんな…… って、何出してきてんだよーーー!!」

 

 いつの間にか普段のスーツに着替えていて、首からおしゃぶりを提げた奴が、特段黒光りを放つブツを見せつけていた。

 

「この際、お仕置きついでに軽くぶっ放しとくか」

「って、レオンじゃないリアルなやつ出してくんなあぁぁぁぁぁ!!」

「うるせーぞ。どうせ世の中全部リアルで出来てんだ。これくらい死ぬ気で避けてみやがれ」

「無茶言うなよーーー!! うわあぁぁッ!! ちょっ、撃つなあぁぁぁぁッ!!!」

「おいおい、リボーン。保健室の壁に穴は開けねーでくれよ」

「おぉ、わかってるぞ」

「それって肉体に穴開ける気満々かよーーー!!」

「ちょっ! リボーンさん! タンマですって!」

「アハハハッ。なんだ小僧、今日は射的遊びか?」

「山本やっぱり遊び感覚ーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 ――リボーンの弾から逃げるのに必死で、あの時…… まだ眠る直感の中で感じていた彼女への違和感に、思わず目を逸らしていたんだ――……。

 

 

 

 

 花内まりや――――ねぇ、君は何者なの?

 

 


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