黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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しんどい決勝戦

「火神君時間です。」

 

インターハイ予選・予選トーナメント決勝

試合10分前。

 

 

 

「はー疲れたぁ。だって2試合目だぜ。しかも、どっちも王者だし。でも、やっと節目...、ぶっ倒れるまで全部出し切れ!」

「「「おう!!」」」

 

円陣を解き、コートに入る。

 

「まさか本当に決勝までたどり着くとは思わなかったのだよ。だがここまでだ」

 

整列前に、緑間が黒子に話しかける。

 

「負けません、絶対に。」

 

黒子が静かに闘志を燃やす。

 

 

 

 

誠凛スターター

 

PG 伊月

SG 日向

SF 黒子

PF 火神

C 水戸部

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「王者・秀徳と新鋭・誠凛、果たして40分後、勝利を手にするのはどっちか。」

 

観戦に来ていた海常・笠松が整列する両チームを見下ろす。

 

「それはいいんスけど...誠凛のスタメン大丈夫なんスか?」

 

同行していた黄瀬が頬に肘を当てて不満な声を出す。

 

「さあな、だが考えなしにとは思えねぇ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ティップオフ前に火神と緑間が睨み合っている。周りも火神の昂ぶりにあてられているようだ。

 

「ホント火神は見てて飽きないねぇ。」

 

ベンチの英雄が嬉しそうにニヤついている。

 

「カントク、ホントに英雄いなくて大丈夫なのか?」

 

横に座っている小金井が不安気にしている。

 

「博打ってのも分かってるわ。今は皆を信じましょう。」

 

リコも少し不安気な表情を浮かべる。

 

 

 

 

ティップオフ。

 

ボールは誠凛へ。速攻を仕掛けようとするが、

 

「っく、戻りが速い!」

 

流石の王者、状況判断も優れている。

誠凛は主導権を奪う為、黒子を使った奇襲を仕掛ける。

パスは跳んでいた火神に渡り、そのままダンクを狙う。

 

 

パァン!

 

 

緑間のブロックが炸裂する。

 

「ナイス真ちゃん!」

 

秀徳・高尾がルーズを奪取し、速攻。

伊月が足を止めようとするが、木村にパスを出す。

木村のレイアップを日向が必死のブロック。シュートはコースを外れて落ちる。

試合はそのまま均衡状態へと入った。

 

 

互いが波に乗れないまま、2分が経つ。

秀徳の速攻。高尾がボールをリードする。主導権を渡したくない為、伊月が抜かれないDFで時間を稼ぐ。

が、高尾のノールックパスが後方にいた緑間へ渡る。膠着状態において、先制点の価値は多大だ。確実性を求める場面で当然のようにシュートモーションに移っている。

 

そこは3Pラインの外。普通の神経では考えにくい。

 

そんな思惑の中、そのシュートは高く放物線を描きながらリングに向かい

 

 

ザッッシュ

 

 

決まる。

 

 

 

『うおおお!決まった!』

『先制は秀徳だ!』

 

 

今まで沈黙していた観客は一気に沸く。

誠凛・日向らは、先制点を緑間によって奪われショックを隠しきれない。

シュートを外すつもりも無い緑間は、悠々と自陣に戻っていた。

けれど、勘単に終わるつもりも無い。

緑間が振り向いた瞬間。

 

 

ヒュン!

 

 

ボールが緑間の顔付近を通過し、走り込んでいた火神に渡る。

 

 

ガシャン!

 

 

ダンクが決まり、流れを押し戻す。

 

「黒子...。」

 

「すいません。そう簡単に第1クォーター取られると困ります。」

 

 

 

「なんなんだよあれ?」

「コートの端から端までぶった切ったぞ。」

 

観客どころかベンチのメンバーも先程の黒子のパスに驚いていた。

 

「へぇ~なるほどねぇ。」

 

「英雄、知ってたって顔ね?知ってたならはよ言えや!」

 

「ちょ...ま!聞いてただけ!見るのは初!嘘じゃない。一応『言わなくていいの?』って聞いたら『特に聞かれていないので』って。」

 

「あいつは~...。」

 

上手く責任をなすりつけた英雄はほっと息をつき、リコはコートの黒子を睨む。

 

 

 

秀徳の攻撃。

 

緑間にボールが渡り、1度ゴールを見る。シュートを狙おうかというときに、黒子が視界にチラつく。

 

「っく。」

 

シュートを止めてパスを出す。先程の回転式長距離パスが脳裏をかすめて踏みとどまる。

しかし、王者は王者。すぐに切り替えて、インサイドにいる大坪にパスが渡る。

緑間を警戒していた為、大坪のチェックが疎かになっていた。当然シュートは止められない。

 

攻撃的な誠凛も失点を得点で挽回する為、速攻。

黒子の中継パスで得点。

 

 

 

「おーい。高尾・木村、マークチェンジ。」

 

秀徳の監督・中谷の指示。

 

「(どうゆうこと。急に直接的なものになったわね...)」

 

リコも秀徳の狙いを読もうとする。

 

「おいリコ姉。あの10番持ってるよ。いい目をね。」

 

「...!まさか」

 

英雄の一言でリコが驚愕する。

 

 

 

伊月→日向を黒子が中継する。

 

「てぇ!!」

 

高尾が黒子のパスを叩き落す。奪ったボールをそのまま速攻で得点。

高尾は英雄の言うとおりもっていた。伊月のイーグルアイの同質にして上位の視野の広さを持つ『ホークアイ』を。

 

「まじかよ。それじゃあ黒子のミスディレクションが聞かない!?」

 

「...!!」

 

今までになかった状況に驚く誠凛。それは黒子も同様だった。

 

 

 

誠凛はなんとか落ち着こうとタイムアウトを使う。

 

「(結構ピンチ...よね。)英雄、準備して!」

 

「う~ん。そうだねぇ」

 

英雄は、ちらりと黒子を見る。

 

「まさかお前、このままやられっぱなしな訳ないよな?」

 

火神が黒子の頭を鷲掴みにする。

 

「まあ、ちょっといやです。」

 

黒子は、やりこまれていることが、鷲掴みにされていることなのかは分からないが嫌そうな顔をする。

 

「よく言った!カントク、このままやらせてくれ。」

 

「だってよ?リコ姉?」

 

英雄は満足気な顔で、リコに顔を向ける。

 

「え?高尾君には効かないんでしょ?大丈夫?」

 

「大丈夫じゃないです。困りました。」

 

「うん。そう。っておい!どーすんだ!?」

 

 

 

ビーーーー

 

 

 

無常にもタイムアウト終了のブザーが鳴る。

 

 

心機一転で再開しようにも、あっという間にパスカットされて速攻をくらう。

この試合は本日2試合目の為、スタミナの消費も激しい。

 

 

 

「なんかもう息切れ始まってないすか?」

「まだ第1クォーターですよ?」

 

1年の福田・降旗が不安を表す。

 

「大丈夫よ。確かにこの試合は、火神君と黒子君にかかってるわ。でも...。」

 

「まあまあ、黙って見てなって。俺らの先輩は結構すげーよ?この間も『立花』が逝ってたし。」

 

「『立花』?」

 

 

 

「秀徳がなんぼのもんじゃい!」

 

クラッチタイムに入った日向が3Pを決める。

 

そして、秀徳の攻撃。

速いパスを繋ぎ、得点を狙う。坪井からのパス。黒子がミスディレクションを利用しスティールする。

ボールをダイレクトで日向に送ろうとするが、またしても高尾に阻まれる。

そのままボールが緑間に渡る。

 

「こっちは本気なのだよ。もっと本気で守れ。それに....。俺のシュートレンジはそんなに前じゃないのだよ。」

 

緑間がシュートモーションに入る。

 

「(まさか!センターラインから!?」

 

虚を突かれ、ブロックすらできない。ノーマークのシュートは高く上がり、リングを通過する。

 

「そもそも俺のシュートは3点、お前達は2点、何もしなくても差は開くだけなのだよ。」

 

緑間は直ぐに自陣のエンドライン際まで戻る。

 

 

そのシュートを目の当たりにして、火神に火が付いた。

ボールを持った火神は、バックステップで3Pラインの外に出てシュートを打つ。

 

「何!?」

「あいつ外からのシュートは苦手じゃ!」

 

今までのデータにないOFに驚く秀徳。火神は着地後、ゴール下まで走る。

 

「入ればそれでよし!入らなきゃ自分で押し込むまでだ!」

 

リングに弾かれたボールをそのままリングにぶち込む火神。

これ以上、点差をつけたくない誠凛は少し安堵した。

第1クォーター終了まで残り数秒。当然、最後に得点しようと迫ってくると考えていた。

が、何も無い。ただ緑間がエンドライン際で構えていた。

 

「(おい!そこから何mあると...!」

「嘘だろ...!」

 

凶悪なシュートは放たれ、誰もが見上げる中、静かに決まった。

 

 

誠凛 13-19 秀徳

 

 

 

「冗談きついぜ....キセキの世代。」

「あんなんどうやって止める?」

 

誠凛の空気は重い。第1クォーターは秀徳に獲られた。緑間への対抗手段を模索している。

 

「暗い!暗すぎる!!まだ第1クォーター終わったばっかだよ?なにこれ?」

 

「うるせえ。黒子が通じず、緑間の3P、これらを打破しなきゃ勝利はないんだよ。」

 

「いやいや折角、緑間君が底を見せてくれたんだからいいんじゃないすか?後半にあれ出されたら手遅れになってたかも...。」

 

メンバーの雰囲気を無視し話を続ける英雄。

 

「リコ姉、いいよ。次から出る。もう大体わかってきたし。」

 

「なんか考えがあるのね。」

 

「とりあえず...すまん!火神!緑間のマークちょうだい!」

 

「はぁ!!なんでだよ!?」

 

「お前のモチベーションがどこに向かってんのか分かってるけど、お願い!DFだけ!ちょっとでいいから!」

 

「海常の時と同じことをするのね。」

 

「そゆこと~。」

 

「それで行きましょ。火神君、不満なのは分かるけど頼むわ。大坪君をお願い。」

 

「くそ。わかったよ!...です。」

 

火神は納得していないが、勝利の為に従った。

 

「ありがと火神。プレーしながらでいいから、緑間を観察しといて。いつでもマークを戻せるように。俺はあくまでも平面しかないから、直接シュートを止めらるのはお前しかいない。」

 

「そうゆうことか...。」

 

「で、テツに関してなんだけど....。」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

「遂に出てきたっスね~。」

 

黄瀬が嬉しそうに笑う。理由は分からないがスタメンから外れていた男を見ながら。自分と同じキセキの世代を相手にどこまでやるのか、何をするのか、興味が尽きない。

 

「対策ありってところだろ。」

 

笠松は誠凛の対策を読もうとする。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「あれっ?あいつ確か正座してた...誰だっけ?」

 

高尾は交代した英雄を見るが名前を覚えていない。

 

「別に誰だろうが変わらんのだよ。」

 

緑間は興味なさそうにコートに向かう。

 

「彼が例の....。うーん、どうしよっかぁ。」

 

中谷は旧友から、英雄のことを聞いていた。

曰く、『誠凛にトンデモ野郎が入ったぜ。油断してると飲まれるかもよ?』

相田景虎ほどの男が、評価する人物。ただ、情報が少ないし、緑間程じゃないとふんだ。

 

 

 

ティップオフ前

センターサークルに集まり、ボールを上がるのを待つ。

 

「あ、マーク変わったからよろしくねぇ~。俺も1年だから。」

 

英雄が緑間に話しかける。

 

「うるさい黙れ。」

 

緑間は一蹴する。

 

「その眼鏡って特注?ゴーグルにしないの?」

 

こりない英雄。

 

「当たり前だ。全てに対して妥協しないからこそ、人事を尽くすということなのだよ。」

 

「結局話しに付き合ってくれんのね。何気にいい奴なのね。」

 

「ああ~、真ちゃんツンデレだから。」

 

「嘘をつくな、高尾。」

 

「ちょっとこのキャラうらやましい。」

 

「でしょ。」

 

「キミもなかなか、後でアドレス教えてよ。」

 

「お前も変わってんなぁ。まあいいけど。」

 

英雄と高尾の友情度1上がった。

 

「「何してんだ!?」」

 

両チームのキャプテンから突っ込まれた。

 

 

 

 

開始早々ボールをキープした秀徳。早速、緑間に渡り黒子が黄瀬に使用したバックチップを狙う。

がしかし、高尾がスクリーンで妨害する。なし崩しに火神と緑間が1 ON 1になり、緑間が火神を振り切りあっさり3Pを決める。

 

誠凛は焦り黒子にボールを回すが、やはり高尾に防がれる。

すぐさま緑間の3P。

 

 

13-24

 

 

「これって、ホントきっついねぇ。」

 

それでも英雄は笑っていた。

 

「こんなときまで、へらへらしてんじゃねぇよ!」

 

そんな英雄に腹を立てる火神。

 

「だから落ち着けって。俺とお前で止めるんだ。フォローは任せたよ。テツ合わせろ!」

 

 

 

誠凛は自陣に戻り、攻撃する。

今までと同じように、黒子にパスを出す。高尾はマークを外していない。今まで通りスティールを狙う。

黒子にパスが渡った瞬間、高尾が戸惑う。

 

「(ボールがこねえ!)」

 

良く見ると黒子がボールをスルーし英雄がキープ、高尾の横を抜き去る。黒子はパスのモーションをしていた為、そのタイミングにつられてしまった。

英雄のマークの坪井は、インサイドががら空きになるにも関わらず、英雄が外まで走った為、振り切られていた。

ノーマークの英雄はミドルレンジからのシュートを決める。

 

第2クォーター、緑間で点を取ると決めていた秀徳は、緑間にパスしようとする。

エンドラインから木村は緑間を見ると...。

英雄がマークについていた。

 

「さて、根競べをしよーか?俺、我慢強いよ?」

 

黄瀬すらも苦しめた、フェイスガードが緑間に迫る。

 

 

 

緑間にボールを集める、という作戦を変更せざるを得ない秀徳。

 

「そーきたか。あいつ結構やるねぇ。(とは言ったものの、あんなチェックじゃ並みのパスじゃ通らねぇ。大坪さんに切り替えるしか...。)」

 

高尾は緑間から、大坪のインサイドを選択した。

ドリブルからパスを繋ぐ、誠凛も必死に守る。高尾はふと緑間の姿を探す。

そこには、ハーフラインを超えてすらいない緑間がいた。

 

「何!?」

 

緑間は振り切ろうと、英雄は指1本動くことを妨害する。この場面で、緑間は封じられた。パスをするとバイオレーションになる。大坪がシュートを狙い跳ぶ。

火神のブロックが炸裂し、誠凛のカウンター。

緑間をマークしていた英雄にパスが渡る。英雄がオールコートでマークに着く限り、誠凛の速攻は緑間以外には防げない。

 

「ふん。だからといって、俺を簡単に抜けると思うな。」

 

それでもキセキの世代の緑間真太郎、並のプレーじゃ抜けない。

英雄はダックインで緑間の足元低く突っ込む。それでも、緑間は降り抜けない。

 

「ほんじゃま、こんなのはどう?」

 

英雄は進行方向とは違う方向へ、ボールを放った。緑間がボールに目を移した隙を狙い、マークを外す。

緑間は目を疑った。バウンドしたボールがコースを鋭角に変えて英雄の手元に戻っていく。なにかに操られているように。

フリーになった英雄のレイアップが決まる。

着地した英雄は直ぐに、緑間の下にやってくる。

 

「貴様...。」

 

「だから根競べって言ったでしょ?シュートなんか防がなくてもいいってこと。どっちが先に潰れるか...。」

 

「いいだろう。俺がお前に現実を教えてやる。」

 

 

キセキの世代・緑間とファンタジスタ・英雄がぶつかる。




最近、更新が遅れ気味で申し訳ありません。
『立花』は戦国武将の立花道雪のことです。

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