里を捨てた少年   作:落ち葉崩し

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第58話 暁の男

コンコン

 

シカマルは病室のドアの前で息を整え静かにドアをノックする。中からの返事を待つが返事がない。

 

「失礼します」

 

声をかけ入るとベッドに眠る金髪のくノ一、テマリ。

 

その隣のベッドにマツリが座っており他の2人はそれぞれ違うベッドに横になり眠っている。

 

「あ、奈良上忍。先ほどは助けていただいたようで、ありがとうございます」

 

シカマルが入ってきたことに気づいたマツリは座ったままだがしっかりと頭を上げる。

 

「あぁ、気にするな。あれは木の葉の忍が問題だ。巻き込んじまってすまなかったな」

 

シカマルは頭をぺこりと下げるとドアを閉めテマリが眠るベッドの側の椅子に腰掛ける。

 

「マツリ…何があったのか話してくれないか?」

 

シカマルはマツリに向き合い話しかけるがマツリはうつむき目を閉じ首を横に振る。

 

「すみません、私たちは一瞬のうちにやられてしまって気絶してしまったので何も…」

 

申し訳なさそうな表情で謝るマツリにシカマルが首を横に振り言葉をかける。

 

「そうか、わかった。痛みとかはないか?喉が渇いてたり腹が減ってたりしたら言ってくれ、すぐに用意するから」

 

「シカ…マル?」

 

 

マツリに言葉を告げた瞬間に後ろから聞こえた声に振り返るとテマリが目を開けこちらを見つめていた。

 

「テマリさん、大丈夫、ここは病院で治療も済んでるから。でもかなり深い傷だったからあんま動かないでくださいよ。傷開いちゃいますから」

 

シカマルは椅子から立ち上がりテマリの顔を見つめ優しく頭に手を置きながら話した。

テマリは起きたばかりだからか顔が熱っぽく目が何となく普段と違い不安そうな目をしているような気がした。

 

「シカマル、マツリは、ユカタは、サリは無事か?」

自分が大怪我を負っているというのにテマリは部下である3人の心配をしている。本当に強い心を持っていると感じた。

 

「テマリさん!大丈夫ですよ!私も、ユカタもサリも無事です。2人はまだ寝てますけど」

 

マツリは座ったままテマリの方に顔をのぞかせ声を大きくする。その声を聞いたテマリは安心したように顔を綻ばせ目を閉じた。

 

「そうか、よかった。シカマル…ありがとな」

 

テマリは顔をシカマルがいる方と逆に向きながら礼を告げる。さっきまでよりもさらに顔が赤くなっており照れているのが見て取れる。

 

「あぁ、あんたが無事で嬉しいよ。前は助けてもらったけどよ。今回は助けることができた。あんたを守れてよかった」

 

シカマルは椅子に座りながら告げる。シカマルの顔も赤くなりつつあるがテマリの顔はもはや茹で蛸のように赤くなっていた。

 

後ろで聞いていたマツリも2人のなんとも言えぬ空気に少し参ってしまっていた。

 

「テマリさん、疲れてるとこ申し訳ないんだがあんたを襲った男、何か言ってなかったか?」

 

シカマルは思い出したかのように、さっきまでの雰囲気を取り消すかのようにテマリに話を振る。

 

その言葉を聞いたテマリは天井に向き少し迷ったような表情を見せたが、少しずつ口を開いた。

 

「さっき戦った忍。やつはサソリという男と繋がっている。その男は赤砂のサソリと言ってな。暁の一員であり、砂の里の抜け忍だ」

 

テマリの言葉にシカマルは真剣な表情になり、口に手を当てたまま一言呟く。

 

「続けてくれ」

 

「あぁ、そして赤砂のサソリは傀儡使いだ。そして奴は普段は傀儡の中にいて本体は出てこない。それと同時に奴はかなり残忍非道なやり方で仲間を作るという。さっきの男もその1人だろう。やつは自分の手下を作るために術をかける。そしてその手下になったものはやつへの忠誠心を持ち普段の生活ではそれが出ないように操られている。だが奴が何かしら動くというときにはそれに積極的に参加するらしい。奴もきっとその術をかけられていたんだろうな。話には聞いていたが木の葉にもいるとはな。やつはどうなった?」

 

 

話し終え自分を襲った男の事を尋ねる。自分を圧倒したほどの実力者である彼の現状が気になったのだ。

 

「あいつの脳に何か術式がかけられていて情報を覗こうとしたとたん苦しみ始め息絶えた。多分そのサソリという男の仕業で間違いないだろうな。だがあんたからの話で大体はつかめた。今暁が完全に動き始めた。そして狙いは人柱力にその仲間。多分あんたを利用して我愛羅か陽光をおびき寄せる作戦だったんだろうな。失敗に終わったがな」

 

シカマルの言葉にマツリが尋ねる。

 

「あの、一つ聞きたいんですが暁というのは抜け忍の犯罪集団だと聞きましたがなんで陽光さんと我愛羅さんが狙われるんですか??」

 

マツリは当然の疑問をぶつける。

 

「これはまだ各隠れ里の中でも一部の物しかしない事実だ。誰にも話すなよ」

 

シカマルは暁が人柱力狩りをしている事実を告げる。

 

マツリは言葉を失っていた。

その表情は暗く、何かを恐れているような表情にも見えた。

 

沈黙を破ったのはテマリ。

 

「今回の任務は木の葉の里に協力を要請するために書状を届け火影様からの返事をもらうため。そして何名かの忍を選出して暁の討伐に参加してほしい旨を伝えに来たんだ」

 

シカマルはその言葉を聞いてテマリの前に立ち手を差し出した。

 

「わかった。持っていた書状は火影様宛だったからすでに渡してあるから目は通しているはずだから今から行くぞ。痛むかもしれねぇが急がねぇと内容が内容だからな」

 

そういうとにこりと笑う。テマリはその顔を訝しげな表情で伺っていたが、フッと息を吐きしょうがないと表情を緩める。

 

「そうだな、でもこいつら寝かしたままいけないよ」

 

「大丈夫よ、私とサイが見てるわ」

「えぇ、任せてください。あなたはシカマルと行ってください」

 

ドアを開け入ってきたサクラとサイが言った。

 

シカマルがそっちを見て礼を言うとテマリの手を取る。

 

「行くぞ。テマリさん」

 

テマリはその手を握り返した。そしていつもの表情に戻りシカマルに返答する。

 

「あぁ、行くよ。サクラ、サイ、3人を頼む」

 

痛む身体を奮いたたせ立ち上がる。痛いという事実をなんとか隠すとテマリはシカマルの方に掴まる。

 

「肩貸してくれよな。私は1人じゃ今は歩けそうにない」

 

その言葉を聞きシカマルはテマリを抱え上げて部屋を出る。

 

「な!何してる!そこまでしてもらう必要はない!」

 

病室の外から聞こえる声にサクラとマツリは笑顔でニヤニヤとしていた。

 

 

 

 


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