里を捨てた少年   作:落ち葉崩し

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彼の話はただただ凄惨だった。


第3話 家族に

風影とテマリに事の顛末を話し終えたナルトは顔を上げることができなかった。

 

重苦しい空気が部屋に張り詰める。

 

その重苦しい空気を打ち破ったのはテマリだった。

 

「苦しかったな、ナルト」

 

それだけいうとナルトを抱きしめ涙を流しながら続けた。

 

「お前の苦しみをあたしには理解することができない。だけどお前はがんばった、そうだろう、お前は何も悪くないじゃないか、なのに、なのに」

 

 

泣きながらナルトを抱きしめる力が強まる。ナルトも静かに泣いていた。

 

「父上、ナルトを砂の国においておくことはできないかな?こいつをあたし達の家族にできないかな?こいつは我愛羅と昔の我愛羅と同じだ」

 

一通り泣いた後テマリは父である風影に自分の思いを告げた。

 

風影は長考の末返事を下す。

 

「この問題はものすごく難しい問題だ。人柱力は一国につき一人と昔に定められている。だが今現時点で木の葉に戻すということはナルト君の命にもかかわるかもしれない。だからこれはナルト君、君に決めてもらいたいんだがいいかな」

 

風影の問いにうなずき答える。

 

「君は名を捨て、新しい名前で人柱力ということを隠したまま里を離れる覚悟はあるかい?うずまきナルトという名を捨て私の、テマリ達の家族として生きることができるかい?」

 

この風影の問いにナルトは内心驚きを隠せなかった。

なぜなら彼は疎まれすぐに出て行くよういわれると思っていたからだ。

 

「いいのか?俺ってば化け物の子だよ?体に九尾の狐を宿した正真正銘の化け物なのに」

 

 

ナルトは自分を受け入れてくれる彼らに再度確認するかのように声を出した。

彼の瞳からは涙がまたあふれ始めていた。

 

「ナルト、お前は今日からあたしの弟に、なってくれるかい?」

 

隣で微笑みながら自分に問いかけるテマリ。

 

「ナルト君、どうかな?」

 

優しい笑顔で問いかける風影。

 

二人の優しい瞳に映るナルトは瞳から大粒の涙を流しながらも笑顔になっていく。

 

「よろしくお願いします...」

 

笑顔のまま頭を下げるナルト、その頭をテマリがくしゃくしゃなでるとまたテマリはナルトの手をつかむ。

 

「じゃぁテマリ、家まで案内してあげてくれるか?あとナルトは今日からわしの養子ということで手続きしておくが、名前は何がいいかな..?」

 

ナルトはその問いに頭を抱えたが、隣のテマリはこう答えた。

 

「太陽のように明るい髪だから陽光なんてどうだ?」

 

それを聞いたナルトは照れくさそうに頭をかきながらうなずいた。

 

今日から俺は陽光として生きることになった。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

風影の執務室を離れ案内された場所は大きな家だった。

 

「ここが今日から陽光の家になるところだよ」

 

隣に立つテマリは二カッと笑うとそのままドアを開けた。

 

「ただいま」「お帰り」

 

テマリが挨拶すると男の声で返事がある。

 

「おじゃまします」

 

ナルトは内心おどおどしながら中に入労としていると

 

 

「ほらお邪魔しますじゃないだろ?今日からここはお前の家なんだ、帰って来たら『ただいま』だよ」

 

ナルトは頭をくしゃっとなでられると自然と笑顔になれた。

 

「ただいま」「おかえり」

 

ナルトは人生で初めて『ただいま』という挨拶を言うことになった。

 


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