諸大名や、来賓席にいるたくさんの人々、観客は先の2試合にかなり感心していた。
どちらの試合も見応えがあり、実力も申し分ない。
中忍を選抜する風影、火影も感心しながら見ていた。
「風影殿、先ほどまでの試合で中忍にしても良いと思う忍はおったか」
火影の問いに頷き答える。
「1試合目の奈良シカマル、そして2試合目は両名ともに中忍たる実力はあるだろう。だが最初のくノ一はまだ実戦経験をもう少し積んだ方が良い忍になると思いますが」
その言葉に火影も頷く。
「確かに、その通りじゃな。あとは適性検査なども試みてみるか」
2人の影は談笑を始める。
・・・・・・・・・・・
「それでは第3試合の抽選を開始する」
表示された名前に、ナルトがニヤリと笑う。
「日向ネジVS陽光」
首を鳴らし、歩き出したナルトにマツリが声をかける。
「陽光さん!あ、あの、応援してます!」
笑顔で返すとナルトは飛び上がり、会場の中央に降り立つ。
周りから歓声が聞こえる。
その周りの観客に威圧的な目を向ける。
木の葉の民が嫌いなナルトはこうして我慢をしているのだ。
自分を自分と認めなかった者たちに手を出さない条件で中忍試験を受けている手前、約束を破ることはできない。
そしてそこにネジが降りてくる。
「よう、俺は今むしゃくしゃしてんだ、死なないよう気をつけろよ」
ナルトは殺気を込めて言い放つ。
ネジはそれに反応することなく構える。
「それでは両者自分の力を存分に発揮し、全力を尽くすように。第3試合、開始」
合図とともにナルトは自らの腹の中にいる九喇嘛に話しかける。
『九喇嘛、2発分だ』そう告げると九喇嘛は精神世界のナルトの足元に寄り、チャクラを流し込む。
『あまりやりすぎんなよ、ねーちゃんに怒られるぞ」
そう言いながらもチャクラを渡す九喇嘛はやはりナルトの味方なんだろう。
チャクラを渡し終わると九喇嘛はまた少し離れる。
『またあとでな、九喇嘛』
この間一瞬、合図があった次の瞬間、ナルトの姿は膨大な量のチャクラで隠される。
ネジには見えている。白眼によりその姿を捉えることができるが、これはネジが体験したことなないようなチャクラ量だった。
周りにいた観客には気絶するものまで現れる。
我愛羅は立ち上がり砂を操りマツリたちの前に壁を作る。
「お前たち、この後ろにいろ、今からやつがやる攻撃はかなり危険だ」
そう告げられた3人はおとなしく壁の後ろに下がった。
「陽光さん」
マツリは陽光の無事を願った。
「行くぞ」
チャクラに囲まれたナルトが消える。ネジの白眼でも見切ることができない。
瞬間体が浮くような感覚に襲われるネジ、顎を下からかち上げられた。
そのままナルトは飛び上がりネジの腕を掴み上空から投げつけると、チャクラの塊を作り上げる。
それを見たカカシは隣のガイ達に聞こえるような声で危険を伝える。
「ヤバい!アレはミナト先生が使ってた技、螺旋丸だ!なぜやつがアレを!!このままだとネジが死ぬ、ガイ、アスマ、紅、援護しろ!」
瞬間カカシが陽光めがけて飛び上がったが時すでに遅し、そのチャクラの球体を持ったナルトはネジめがけてその玉を投げつける。
「やられてたまるかぁ、回転!」
ネジはギリギリ体勢を立て直し回転を繰り出すが、螺旋丸のチャクラの回転数の方が上であった。
絶対防御を粉々に砕くとその残りのチャクラの塊がネジの右肩をかすめる。
「ぐあぁぁ!っくぁ」
右肩が外れる痛みを感じる。腕が上がらない。骨も折れているかもしれない。
痛みに耐え切れず膝をつくネジに追撃の一手が打ち込まれる。
「今のを避けるとは思わなかったぜ。でもこれで終わりだ」
つぶやくと先ほどとは形態の違うチャクラの塊が出来上がる。
「はぁぁぁ!」
ネジに向かうのではない、闘技場の中央に向かうナルトの手には平たく圧縮されたチャクラが。これを地面に打ち付けるつもりらしい。
カカシは陽光の着地地点であろうところにいた。
「試合は終わりだ、これ以上はやらせない、雷切!」
カカシの右手が放電を始める。その右手を下から突き上げる。陽光の右手もそこへ伸びる。
「螺旋衝!」
ズガーン!!
けたたましい轟音が響く。
カカシと陽光の手が直撃する直前にネジはガイにより運び出されていた。
そして衝撃的なモノを目の当たりにする。
カカシのいた地面から観客席の壁までの地面が全てえぐれ上がり、真ん中が山のようになっている。
その上ではカカシが左手で右肩を抑え立っており、陽光は我愛羅に取り押さえられている。
「やりすぎはお前だ、あいつを殺すつもりだったのか?」
この惨状を見た我愛羅はたずねる。
「いや、そうじゃないけどよ、あいつが家族を蔑ろにするのがゆるせなかったからちょっと本気を出しただけだってばよ」
ふてくされるナルトに我愛羅はため息をつく。
山の頂上に立つカカシは陽光に尋ねる。
「お前は何者だ?なぜお前がその術を知っている??」
カカシの問いにナルトは答えなかった。
医療班が到着し、カカシとネジは病院へ搬送された。
勝者の名前は宣告されなかったが、この試合は陽光の勝利であった。
そして我愛羅に促されカンクロウの病室へ行くことになったのだが、その時マツリも横へついてきた。
道すがらマツリが陽光に抱きつき話し始めた。
「陽光さん、もうあんな無茶はやめてください、陽光さんは強いけど、それでも何かあったら私は、私は・・・」
陽光の胸に顔を埋め泣きながら話すマツリにナルトは何も言えなかった。ただ頭を撫で泣き止むのを待ってからカンクロウの病室へいった。
病室に入るなりテマリにげんこつをもらうナルト。
「バカたれ!あれほど問題を起こすなと言っただろ!お前は自分をもっと大切にしろ!お前がいなくなったら私たちは悲しいし苦しい!そんなこともわからないのか!」
テマリがまくしたてるのをカンクロウが抑える。
「テマリ、言いたいことはわかるが落ち着け、な?で、陽光、お前もテマリのいったことの意味はわかるな?お前は俺たちの弟で家族だ。だから心配だし、お前のことを大切に思ってるんだ、お前は違ったのか?」
そう聞かれナルトは首を横に振る。
「テマねぇ、カンにぃ、ごめんなさい俺ってば周りにいた奴らが憎かった。だから、ちょっとくらいなら怪我させてもいいと思ってさ、もうこんなことしない。次の試合は棄権してもいい。もう十分だってばよ」
頭を下げ、話したナルトに対してテマリがいう。
「わかったらいいんだよ、あんたはあたしのかわいい弟さ、許してあげるのが姉の勤めだ」
頭を撫でながら話を続ける。
「でも棄権する必要ないよ次はこうならないんだろ?」
テマリはそういうと笑う。
「あぁ、次は大丈夫だってばよ!」
笑うと周りのみんなが笑顔になる。
そして画面の中では我愛羅の協力により会場の地形も元どおりに直り、第4試合の抽選をしていた。
この世界のネジはまだ救われていません。
さぁ、ネジの呪縛を解くのは誰なのか。