るーちゃん無双   作:るーちゃんLv255

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モール脱出からしばらく日数経ってます。
とある雨の日、誰かさんの退場回です。冒頭だけ貴依さん。


第11話 いきりょう

「ちっくしょう・・・さっさと引き連れてる連中共々下校してくれやがれよ、ポニテェ!」

油断だった。順調に広がりつつあった安全圏に調子に乗ってたんだ。シャワーを浴びて、なんとなく教室の方をふらふらしてて、それで・・・。

気付いたらバリケードは崩壊していて、私はクラスメイトだった連中に追い込まれて教室での立てこもりを余儀なくされていた。これじゃあ由紀達が無事なのかもわからないし、そもそも自分がいつまで安全に立てこもっていられるのかすらわからない。

愚鈍なバケモノ共だけならドアと机で凌げそうだが、今もやらた元気にドアを叩き、攻撃を続けるポニーテールな我が友人。あいつはやばい。一人だけ他より動きがしっかりしているし、生前ほどじゃないんだろうが中々速い。

「き・・・い・・・・・・」

「・・・・・・え?」

あいつの声。私を呼んだ?

「ノートは・・・貸してあげないィ・・・・・・」

喋ってやがる。・・・ひょっとして、あいつ生きてるのか?だから動きがしっかりしていた?

そう思った瞬間、私は急いでドア側に積んだ机を崩し始めた。はやくあいつを中に入れないと・・・。あいつがバケモノに囲まれてしまう、急がないと・・・・・・ッ。

「おいポニテッ・・・

「ガァアアアアアッ!!」

 

 

・・・・・・校舎の中で、机を動かすような音がした。

 

 

 

リーダーを仲間に加えてモールを後にしたるーちゃんご一行は、安全策を主張するリーダー(車酔い75という割と重度のデメリットを持っていた)によって車での強行突破を禁止されており、学校を目指して数日かけて少しずつ進んでいる状態でした。るーちゃん自身も、案外余裕のあるサバイバル生活に慣れてきたため変に急いでモール突撃のような事故を起こすよりも、少しずつでも安全に確実に進んでいこうと決めていたので意見の衝突はありませんでした。どうせ最も遅いゾン子さんに合わせて移動したとしても二週間はかかりません。

 

そんなこんなであちこちの民家などを制圧して泊まりつつ、徐々に学校へと近づいてきた一行ですが、この日はあいにくの雨です。濡れるのが嫌だから動きたくない、この意見は三人とも一致していたため、今日は民家で雨宿りです。恵飛須沢なんて珍しい表札のこの家の住人たちは既に隣人達共々るーちゃんが庭先に埋めてしまったため、この家は安全地帯となっています。

民家を制圧したるーちゃん達はみんな思い思いに暇を潰しています。リーダーさんは食料や使えそうなものを求めて家の中を物色しており、ゾン子さんはこの家の娘さんの部屋と思われる場所に入り込み、漫画を読み漁っています(内容を理解できているかはすこぶる怪しいところですが)。るーちゃんはどうしているかというと、先行偵察を行おうと考えていました。思えば目的地である私立巡ヶ丘学院高等学校の様子はまだ全くわかっていません。姉妹の絆(なのかどうかよくわからない謎の感覚)によってりーねーがまだ生きているっぽいことはだいたいわかるのですが、詳しい状況はやはりあらかじめ知っておきたいものです。

るーちゃんは夕食後くらいから正座して精神を集中し、その魂だけを身体から離脱させました。所謂生霊です。幽体離脱255のなせる人知を超えた高等技能でした。

こうして一時的に魂だけの存在となったるーちゃんは、肉体の護りをゾン子さんとリーダーさんに任せると(日頃の恨みと襲い掛かったゾン子さんは何故かオートで動き出したるーちゃんボディの反撃にあい一度轟沈。後日ノートに防衛する必要はなかったのではと疑問を書き記している)、さっそく学校へ向かっていきました。霊体であるるーちゃんには空中を自在に走り回ることなど造作もありません。学校目指して一直線に空を駆けていきました。

 

さあ、ついにやってきました私立巡ヶ丘学院高等学校。

雨宿りのためなのか、多くの生徒や職員のみなさんが校内にひしめきあっていました。生存者には大変危険な状態です。るーちゃんは生徒や先生方に見つからないようにダンボールを被って忍び込みます。気分は足の無い爬虫類です。待たせたな、にへ。

まずは下から順番に見ていこうと考えたるーちゃん。構造解析255により瞬時に地下の存在を看破すると、シャッターを潜り下へと向かっていきます。しばらく進んでいくと、怪我をした女性が倒れていました。どうやら目の前にある薬箱を開けようとして力尽きたようです。とりあえず箱を開けてみたるーちゃん。多少暗い程度であれば暗視255でばっちり見えるのですが、薬そのものが何が何だかわかりません。薬学255のるーちゃんでもわからないということは、世に出回っている代物ではないのでしょう。これではどれを使おうとしていたのかわからないので、直感に任せて適当にいくつか女性さん(の死体かもしれない。生気は感じられないし、そもそも既に噛まれている)に打ち込んでおきます。きっとこの中のどれかが必要だったのでしょうし、せめてもの手向けです。るーちゃんは女性さんに手を合わせると、他の探索に移りました。もしかしたら生きてたかもですが、るーちゃんはその辺けっこうアバウトです。

周りを一通り調べてみると、この地下には随分とたくさんの食料や資源が溜め込まれていることがわかりました。これなら生存者が15人くらいいたとしても一ヶ月くらい大丈夫だろうなとるーちゃんは判断しました。

あいつらが入り込んで備蓄に悪さをしないようにシャッターをしっかり閉めたるーちゃん。次は校舎の上のほうを見て回ります。再びダンボールを装備すると、階段をかさかさ上がっていきました。

 

上の階へと上っていくと、机の塊が崩れ去っており、あいつらが続々突破していっています。多分バリケードか何かで、生存者はこの奥だなと判断したるーちゃんは早速机を積み直し、バリケードの復旧を試みます。作業音に気付いて廊下や教室、果ては上の階からもあいつらが近づいてきますが、群がってきた奴らは生霊パワーで呪殺します。るーちゃんが怨めしげな表情で睨みつけると、それを見たものたちは次々と泡を吹いて倒れ、痙攣し、やがて動かなくなります。るーちゃんは呪術も255、迷信深いアフリカへ行っても通用します。

一通り邪魔者を片付けると、バリケードの修復をしっかり終えてるーちゃんは先へ進みます。もはやバリケードを突破して進んだあいつらも、中にいるであろう生存者たちもみんな袋のネズミです。るーちゃんからは逃げられない。

そうして三階まで上がってくると、あいつらが群がっている場所がありました。どうやら生存者はあの辺に立てこもっているようです。一つの扉を護るようにシャベルを振り回す人影が見えます。放置して帰ると後でりーねーに怒られそうなので、るーちゃんも謎のダンボールさんとして扉防衛戦に参戦です。群れを体当たりで蹴散らしながら合流すると、シャベルを振り回していたのはジャージ姿の青年でした。腕にけっこう酷い怪我を負っているようですが、今のところは特に問題もなく戦っているようです。・・・ただ、なんか透けてる気がするので若干不安ですが。

とりあえずシャベルでダンボール粉砕されたらたまったもんじゃないので、味方アピールは必須です。群がる邪魔者をポルターガイストして窓からぶん投げてから、るーちゃんですよー、助太刀ですよー、とご挨拶です。例の如く相手の名前は右から入って左へ抜けていったためるーちゃんは把握しませんでしたが、どうやら彼はこの学校に憑いている地縛霊のようでした。霊体仲間です。るーちゃんはとりあえず彼を先輩さんと呼んでおくことにしました。間違いなく彼のほうが霊体歴が長いからです。先輩さんはまだ生きている後輩さんたちを守るためにシャベルを振り回して戦っていたのです。珍しくいい人に会いました。普段会う人がモヒカンとかばっかりなだけかもですが。

るーちゃんと先輩さんはなおも群がってくるあいつら相手に力を合わせて戦います。先輩さんは全力でシャベルを振るい、るーちゃんは剛の拳で闘気を飛ばして敵を粉砕します。波ァ!って感じです。たちまち敵はバラバラに弾け、盛大に吹き飛んでいきます。

数分も戦えばもう敵は3階に残っていませんでした。しかし、先輩さんもるーちゃんもいい感じに消滅しかけています。身体から離れている上に無意味に人間離れした大技ばかり使いすぎたツケがまわってきたようです。先輩さんの場合は単に現世に留まっていられるエネルギーを使い果たしたのでしょう。所詮は人間です。

先輩さんは扉の横に立てかけるようにシャベルを置くと、るーちゃんにみんなを頼むと言い残し、扉の向こうにいるであろう後輩達を一瞥してから消滅していきました。るーちゃんは先輩さんのいた場所に手を合わせると、自分も消滅してしまわないうちに本体が待っている恵飛須沢家目指して再び空中を全力疾走です。

 

るーちゃんが無事に帰還すると、ゾン子さんとリーダーさんがるーちゃんボディの前で仲良くダウンしていました。どうやら何かの拍子にるーちゃんの自動迎撃に引っかかって壊滅したようです。こんな状態では先行偵察の結果を話しても無駄です。

るーちゃんは呆れた溜息をつくと、娘さんの部屋のベッドに潜り込み、すやすやと眠りにつくのでした。




さよなら先輩。・・・というわけで彼の退場回でした。南無。
どこから湧いてきたって?・・・いたじゃないですか、第2話あとがきとか、りーねー回とか・・・


その後の学園生活部
「群がってたあいつらが壊滅してやがる・・・」
「いったい誰がこんな・・・まさか、めぐねえ・・・・・・?」


「・・・へくちっ! ・・・・・・暗い・・・寒い・・・ひとりぼっち、・・・ぐすん」

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