***マイスの家***
朝からシトシトと降り続ける雨。窓から見える空は 見るからに分厚そうな雲にさえぎられていて、日は顔を出せそうにもなかった
…とはいっても、外出する用がなかった僕としては 特別困ったりすることはなかったりする
雨は「恵みの雨」。よっぽど規格外な量が降ったりしない限り 何の問題もなく、むしろありがたいことだ
それに、外出し辛いからといって別段ヒマになったりすることは無い。調合や鍛冶、他にもいろんなことの勉強 といったことは いくらでもできるのだから
「うーん、今日は何をしよう…?」
装飾品じゃなくて、久々に武器を作ってみようかな……
でも、これまで作った武器よりも強い武器を作るとなると、
少し面倒にも思えるし 時間もかかりそうだから、最初はあんまりきが進みそうになかった
けれど、よくよく考えてみると 別段他に優先してやらないといけないことがある訳でも無かったから、せっかく思いついたのだから 挑戦してみるのもアリかもしれない
そう思い、家の『作業場』のほうへ行き さっそくとりかかろう……としたときだった
コンコンッ
玄関の扉をノックする音が 雨音に交ざって聞こえてきた
「はーい、すぐ開けまーす!」
「誰だろう?」とか考える前に「待たせちゃったら 雨に
そして、玄関の扉を開けた。すると そこには…
「お待たせしました。あっ、リオネラさん!ホロホロ!アラーニャ!ささっ、いらっしゃい!」
「お、おじゃまします…!」
「ちゃっちゃと 入らせてもらうぜ。これ以上濡れるのは勘弁だからな」
「そうねー」
極力 雨に濡れないようにしていたのだろう。前開きでフード付きのローブのようなものをスッポリとかぶっていたリオネラさん
そして、濡れるといろんな意味で面倒になる 人形のホロホロとアラーニャは、ローブの中で リオネラさんに抱き抱えられるようなかたちで雨をしのいでいた……けど、ローブの大きさ的な問題で、完全に雨を防げていたわけではなさそうで、少し濡れてしまっているようだった
リオネラさんたちを部屋に入れて すぐに僕は 今 必要なものを考える
「すぐにタオルと…その後に 何か温かい飲み物用意するから!ちょっとまってて!」
僕が収納からタオルを出していると、僕の背中に ホロホロとアラーニャから声をかけられた
「おぉーい、部屋の暖炉に チョット 火を入れてもいいか?」
「私たち、しみちゃった雨をちゃんと乾かさないと カビちゃうのよ」
「うん、いいよ!雨で冷えちゃった身体を温めるのにもちょうどいいからね。…あっ、早く乾かしたいからって 近づきすぎてコゲないように気をつけてね!」
「わかってるって」
「それじゃあ、許可も貰えたし 火をつけましょう、リオネラ」
「うん、わかった」
そうして、僕が タオルを十二分に用意して持って行った頃に、ちょうど 暖炉の火もいいくらいに灯っていた
さて、タオルの次は 温かい飲み物だ。…何がいいかなぁ…?
――――――――――――
温かい飲み物…『ホットチョコレート』を 僕とリオネラさんの分 用意して、キッチンから部屋へと運ぶ
ホロホロとアラーニャの分は用意していない。というのも、人形であるふたりは 飲んだり食べたりはできないからだ。…昔、ふたりの分の飲み物をだした時に「イヤ、飲めねぇんだけど…」とホロホロに言われて、その時初めて知ったんだけどね…
「はい、リオネラさん。『ホットチョコレート』だよ。よかったら 飲んで温まって」
僕が声をかけたリオネラさんは、ローブを脱いで その下に着ていた大道芸人としての衣装の姿になっていて、ローブで防ぎきれなかった雨は もうタオルで拭き終えていた
「あっ、うん、ありがとう マイスくん」
リオネラさんは、僕が差し出した『ホットチョコレート』の入ったマグカップを受け取って、暖炉の近く…ホロホロとアラーニャが自身を乾かすためにいる床の その場所のそばに座りこもうとしていた
「リオネラさん、これに座って」
そう言って 僕は いつものテーブルに自分の分の『ホットチョコレート』を置いて、その近くに置いてあるイスの内 暖炉に比較的一番近い位置に設置してあったひとつを、暖炉のそばまで運んで リオネラさんに座るように
最初の一瞬は 少し驚いたような雰囲気を感じさせたリオネラさんだったけど、すぐに 微笑み「うん、ありがとう」と言ってイスに腰かけてくれた
「ホロホロとアラーニャの分のイスも持ってこようか?」
「イヤ、いいって。タオルで
「そうね、もうちょっと暖炉の前で浮いて乾かしておくわ。その後はリオネラの膝の上に座るか 隣あたりでフワフワ浮いとくから気にしないで」
本人(?)たちがそう言っているのだから これ以上気を使っても悪いだろうと思い。僕は 素直に自分の分だけのイスを持ってくることにした
運んできたイスに 僕が座ったその頃、暖炉のほうを向いていたホロホロとアラーニャがクルリとこちらを向いた
「ん?どうかしたの?」
僕の問いかけに答えたのは、ふたりじゃなくてリオネラさんだった
「ううん、たいしたことじゃないんだけど…。そろそろ 反対側を乾かそうかなって思って」
「ああ、なるほどね」
ホロホロとアラーニャをフワフワと浮かせているのは、リオネラさんの
『ホットチョコレート』を少しずつ飲むリオネラさんをチラリと見て確認した後、僕も自分の『ホットチョコレート』に口をつける
予定とは変わったけれど、こうやってノンビリするのも悪くないなぁ…
――――――――――――
『ホットチョコレート』をちょびちょびと飲み始めてから 少し経ったころ、
「それにしても、久しぶりね マイス」
「そうだね。だいたい…10ヶ月ぶりくらいかな?」
「だな。つっても、オレたちは半年くらい前に ココに来たんだけどな」
僕の言葉を肯定しつつ、ホロホロがそう言った
…半年くらい前といったら、あの頃…『アランヤ村』に行っていたころのことだ。リオネラさんたちが来てたことは、帰ってきた時にコオルから聞いている
その時のことを 少し思い出していると、ふと リオネラさんがこっちを見ていることに気がついた。そして、僕もリオネラさんを見ると リオネラさんが口を開いた
「えっと……あの、コオルくんからは「用があって冒険に出てる」って聞いてたんだけど…、その、何かあったのかなーって…」
たぶん リオネラさんは、僕が『アランヤ村』から帰ってきたちょっと後に会ったステルクさんと同じで、そのころ僕は『青の農村』と『アーランドの街』以外に行ったりしていなかったから 遠出をしたことに少なからず驚いているのだろう
なので、ステルクさんの時と同じように、ロロナの弟子であるトトリちゃんのこととかを軽く説明することにした…
「……へぇ…!そんなことがあったんだ…」
「『アランヤ村』にはあれから行ってねぇけど…あのちびっこが『錬金術士』にねぇ」
「なんだか 不思議な縁ね。…でも、あのギゼラさんが……」
一通り話し終えると、三人とも それぞれの反応を返してきた
…補足しておくと、ひとつだけ「ギゼラさんの行方不明」については 知っていることを全部話したわけではなく、外洋へと船で出ていったこと等は言わずに トトリちゃんから聞いた話を中心に話しておいた
「そういえば、ここ最近は あんまり噂を聞かなかったかも…」
「うーん、でもあのギゼラさんだから 何処かで元気にやってる姿しか想像できないんだけどね…」
リオネラの言葉に、僕が
「そうだよなぁ…」
「ねぇ…
「なんだか不思議だけど、そんなに心配にならないかも…」
ギゼラさんの活躍を
ただ、そのリオネラさんの顔はぎこちない笑顔だった
……その理由はほかでもない。ギゼラさんの活躍と言えば大抵半分くらいは人に迷惑をかけたりするものだからだ
…まあ、リオネラさんも被害にあったことがあるってことだ。もちろん僕も
でも、あれはあれで楽しかったと思うけどなぁ…?
原作『トトリのアトリエ』未登場組のリオネラ登場…。彼女の扱いには『ロロナのアトリエ編』でも悩まさせました。好きなキャラなんですけどね……重いんで扱いが(何がとは言わない
相変わらず、お気楽なマイス君。でも、やる時はやる子なんです…
まあ、『RF』の世界では、何かあってもお祭り等のイベントは普通に開催されたりしますし……基本ユルユルな世界ですから…
それにしても、『ホットチョコレート』って 字面で見るととんでもない飲み物に…。レシピも『チョコレート』を鍋で煮つめるだけという