冒険者ポイントがたまり 免許をランクアップできるようになった私だったけど、「年越しは家ですごそう」と思って、その間 ランクアップはお預けにして『アランヤ村』でのんびり活動をしていた
年を越して 新しい1年が始まって少したってから、ランクアップするために『冒険者ギルド』のある『アーランドの街』まで 村から馬車で出発…
そして、街についてから ランクアップをし、先生のアトリエを借りて錬金術による調合をちょっとして……街に到着してから 1週間ほどたったとき、ふと「そういえば、マイスさんのところに顔出してこようかな?」と考えた
ひとりで調合してて よくわからないところがあったから、そこを『錬金術』のことを知ってるマイスさんに聞けたらいいなー、なんて思いながら『青の農村』に行ってみたんだけど…
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***青の農村***
「うわぁ…!」
この前来た時の のどかさからは考えられない賑やかさ。村にいる人の数も数十人と、比べることすらままならないほど大勢だ
「もしかして、今日って何かのお祭りだったのかな?」
建物とかに付けられている たくさんの装飾や、前来た時は無かった いくつかの露店が出ていることから考えて、きっと間違いないと思う
…でも、こんな中じゃあ マイスさんを探すのは難しそうだ。きっとマイスさんも 家でじっとなんてしてないと思うから……さすがに会えそうにないかな?
でも、マイスさんに会えそうにないからって、このまま何もしないで帰るのも なんだかなぁ……。それに やっぱりこの賑わっている原因を知りたい…
ドッ
そんなことを考えなら歩いていたら 周りをちゃんと見れていなかったようで、何か…いや、ぶつかった時の感触からして…
「あっ!ご、ごめんなさい!ちょっとよそ見してってて…きゃ!?」
とっさに 頭を下げて謝り、ぶつかっちゃった相手の人の顔を見て…驚いた。相手人の目が わたしを射抜かんばかりに鋭くて……って
「…あれ?す、ステルクさん!?」
「キミか……出来れば悲鳴をあげる前に気づいて欲しかったのだが…」
そう言いながら首を振るのは、わたしのアトリエに 何度か調合の依頼をしに来てくれているステルクさんだった
ステルクさんは私の『錬金術』の先生…ロロナ先生と なにやら関係があったそうなんだけど……私は詳しくは知らない。でも、そのあたりの繋がりがあってか こうやってお話をすることもあったりする
ステルクさんは「それにしても…」と腕を組んで 何か考えるような仕草をしながら、わたしをジロリッと見てきた
「まさかキミは 今日のイベントに出場しに来たのか?」
「出場?…わたし、マイスさんにちょっと用があって来たんですけど……今日ってやっぱり何かお祭りでもあってるんですか?」
私が周りをキョロキョロ見ながら答えると、ステルクさんは 珍しく目を見開いて驚いていた
「何も知らずに来ていたのか。それは 運が良いのか、悪いのか……いや、
「えっと、その
「ああ、今日の祭のメインなんだが……
『カブ
「かぶ……がっせん…?」
ええっと、かぶ っていうと…あの野菜の『カブ』のことだよね?『青の農村』は 名前の通り「農村」なわけだから、野菜に関係する催し物があっても おかしくはない…よね?
がっせん……合戦? 合戦は…戦い? 『カブ』が戦うのかな?…って『カブ』が自分で動いたりするわけないし、きっと 『カブ』の品質を競いあったりするんだろう
あれ?でもそれって…
「わたし、参加できませんよね? だって、『カブ』なんて育ててませんし…」
「……?」
「えっ?だって『カブ合戦』って、農家さん同士でするんじゃないんですか?」
わたしの言葉に ステルクさんは首を大きくかしげた。そして、ひとつ息をついてから 口を開いた
「何を想像したのかは わからないが……『カブ合戦』というのはだな、
「投げあう…?って、なんですか それ!?『カブ』って結構硬いですよ!危なくないですか!?」
「ああ。
いや そんな用意をしてまで、わざわざそんな催し物をしなくても……
だって、あの『カブ』を投げ合うんだよね?あの白くて硬い『カブ』を…
ふと、そこで あることに気がついた
「ステルクさん、『カブ合戦』の「合戦」って、もしかして『雪合戦』とかそういう…」
「ん?…ああ、そのイメージであっている。後は 投げるものを『雪』から『カブ』に変えれば完璧だ」
なにそれ怖い。そんな危なそうな催し物に参加する人なんているのかな…?
そんなことを思ったけど、その考えはすぐに否定した
これだけ村に人が来ているんだ。きっと わたしが想像しているものよりももっとちゃんとした催し物なんだろう…
そうわたしは考えたんだけど、ステルクさんは…
「『カブ合戦』はこの村の村長のいた町で行われていた 豊作を願う祭だそうだが……『カブ合戦』の開催は今年で3回目だが、参加は 基本的に「度胸試し」になっているな」
「それでいいんですか…?」
「「鎧にぶつかってもグシャリと潰れない立派な『カブ』だ」…という宣伝になっているから、別段問題無いそうだ」
…本当にそれでいいのかな?
「そもそも、この村の祭は 基本的に「みんなで楽しく・賑やかに」という村長のモットーの
「イベント好き?」
「そうとも。王国時代に開催されていた『王国祭』が無くなった時には かなり気落ちしていた。そして、この村関係で忙しかったころはそうでもなかったが 少しヒマが出来始めると「なんか楽しいことないかなぁー…」と言って だらけてな…」
「あれはあれで面倒だった」と、ため息を吐きながら言うステルクさん。だけど、その後「いや、それでもアイツと比べたら 全然マシか……いや、だが…」と、何かをブツブツ呟きだしてしまった
「そ、その村長さんって、なんだか変わった人ですね」
「…?何を言って……ああ、そうか。彼は自分からは あまり言わんからな」
そう言うステルクさんは、何だか呆れたような…でも「いつものことか」と諦めたような調子だった
「『
「マイスさん!?…あっ、でも なんだか納得かも」
「…まあ、先程キミが行っていた「変わった人」というのは否定できんかもしれんな」
頷くステルクさんに 私は「…ですよね」と返す。……わたしったら、
「…って、あれ?村長!?それじゃあこの前、わたしがマイスさんを連れて行ったのって いけないことだったんじゃ…!?」
「
「それに」とステルクさんは言葉を続ける
「
「は、はぁ。わかりました?」
本当にいいのかな?っと思ってしまうけど……マイスさんが『アランヤ村』に来てくれた時のことを思い出してみると、嫌々付き合ってくれてるって感じではなかったように見えた気がする
「さて…私はそろそろ会場に行って 準備をしなければならない」
「準備って…、もしかしてステルクさん『カブ合戦』に出場するんですか?」
わたしがそう聞くと、ステルクさんは「いいや」と首を振った
「私は
「叩き落とすって…?」
「投げられた『カブ』がそのまま場外へいけば、観客に怪我人が出かねん。参加者の怪我は自己責任と言えるが、他の人間にまで怪我をさせるのはな」
やっぱり危ないお祭りなんだと 改めて認識し、「それでも開催されるのは人気があるからなのかな?」と ちょっと『カブ合戦』への興味が湧いてきた
「催し物の後には、例年通り 『カブ』を中心とした『青の農村』の野菜を使った料理が 無償でふるまわれる。せっかく来たのだ、『カブ合戦』を見学した後 貰うといい」
「では、失礼する」と言って歩き出したステルクさんに、「はい、ありがとうございます」と言葉を返して……さてどうしよう?と周りを見渡す
「とりあえず、『カブ合戦』が見れそうなところに行こうかな?」
お祭りのメインイベントなら、たぶん村の中心あたりの広場なんかでやるんじゃないかな?
そう考えて、わたしは歩き出す
「…でも、せっかくなら誰か……ミミちゃんとか 誘えばよかったかな?」
村に来てから知ったのだから仕方がないっていうのはわかるけど……やっぱり、お祭りは誰かと見てまわりたかったなぁ…
この後、普通にお祭りを楽しんだ