基本的に 人を名前で呼ばないステルクさんが、とても面倒でした
原作『トトリのアトリエ』でも、トトリだけでなく 何年もつきあいがあるロロナでさえ名前で呼ばない(というか呼べない?)ステルクさんでしたから…
…
そして、偶然にも目撃情報があった地域の近くに
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「あ、はい。一応『錬金術』のアトリエで…きゃわああああ!?」
「え、あ、わ、その…ごめんなさい!急に 顔が怖い人が来たから、その…」
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…と、
そして、少女の叫び声を聞きつけて 少女の姉らしい人物が現れ……
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「きゃあ!?だ、誰?この顔の怖い人!?」
「さては 人さらいね!?トトリちゃんがあんまりかわいいものだから……そ、そうはさせないわよ!」
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……まあ、散々な目にあってしまったわけだ
そんなこともあったのだが、周辺地域での活動もあったため 私はここ最近『アランヤ村』を拠点にして活動を続けている
その中で、周辺地域の探索の際に 保険として必要となる『薬』類を 個人的な依頼として
これは、
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***アランヤ村***
それは、周辺地域の探索をいったん終え、物資の補給を
「なぁ、頼むよ!おっさんってば!」
「くどい!それと、おっさん呼ばわりはやめろ! 俺の名前はステルクだ。ス・テ・ル・ク!いい加減
「呼び方なんてどうでもいいだろ。なー、頼むってばー」
指摘し 訂正させようとするが、
私が その場を離れようと歩き出そうとするが、少年は背後から 私の着ているコートに
さすがに このまま引きずり続ける気にもなれず、少年をふりほどこうと身体を捻る
「ええい、離せ!私は弟子は取らん!」
そう、この少年は 前に『トトリのアトリエ』で出会った時からずっと私に「オレを弟子にしてくれ!」と言ってつきまとってくるのだ
それからというもの、私を見かける
「やだ!いいって言うまで絶対離さない!オレは、おっさんみたいな強い冒険者になりたいんだ!」
「私は冒険者ではない!騎士だ!」
「『騎士制度』は共和国になった時に無くなったての……ねぇ『自称』騎士様?」という呟きと
そもそも、勝手に『騎士制度』を廃止した
…いや、今は目の前の問題を何とかすることを優先すべきだろう。だが、やはり 少年は掴むその手を離そうとはしなかった
「冒険者でも騎士でも、強けりゃなんでもいい!」
「ああもう……なんでそんなに強さにこだわるんだ」
「世界一の冒険者になるからに決まっているだろ!」
その理論は合っているようで噛み合っていない。第一、目標が「世界一の冒険者」などという漠然としたものである時点で、色々と心配だ。目標は大きいにこしたことはないと思うが、霧のように掴み取れないものであれば 無意味なものになってしまう
「さっきから言ってることが支離滅裂だぞ。大体、強くなりたいだけなら、私より
「だっておっさん、オレ達のこと助けてくれたじゃんか!」
ムッ……そういえば、
「知らん、覚えてない。助けてたとしても、それは偶然たまたま通りかかったというだけだ」
そう、私にとっては「モンスターに襲われている人を助けた」という出来事は、日常茶飯事とまではいかなくとも、それこそ数えきれないほど経験しているのだ。そのうちの一組をしっかりと憶えているかと聞かれても 困ってしまう
どうしたものか……と、ひとり考えていたその
「オレが強かったら、助けてもらわなくてもよかったんだ! でも、弱かったから……わかるだろ、そういうの!」
「それは……わからいでもない、な」
どういう状況で襲われたのか、モンスターと少年との力量差、といった私の知らない部分があるものの 少年の言いたいことは伝わってきた
「もしあの時、誰も助けがこなければ」……もしかしたら 馬車が破壊され、少年や
「それじゃあ、弟子にしてくれるんだな!」
「何故そうなる……それに…」
少年の思いに共感はできるとは思ったが、誰も弟子にするなどとは言っていないだろう…。それに…
私は少年の腰のベルトから下がっている武器に目をやる
その武器は『剣』……ただし、私の使っている『剣』とは ずいぶんと
私の使っている『剣』は、剣先から
そこまで大きさが違えば、当然 重さも違う。さらに言うなら、適切な間合いや むいている戦闘スタイルも異なっている。すると、基礎を教えることは可能だが 応用を教えるのは少し骨が折れるだろうことがわかる
……何が言いたいのかといえば、「せっかく師を得ようというならば 自身の武器・戦闘スタイルに近い人間が
この少年に適しているであろう 手数で攻める戦闘スタイルの 『剣』の使い手……
真っ先に思い浮かんだのは、私の知る限り 最強の剣の使い手である 元・アーランド王国国王の「ルードヴィック・ジオバンニ・アーランド」……だったのだが、そもそも 私がこうして あちこちを旅している理由が、フラッと何処かへ行ってしまった
次に思い浮かんだのは、
私は
「師にするのであれば、『青の農村』のマイスはどうだろうか?キミたちとは顔見知りなのだろう?彼なら キミを
「やだ!絶対にやだー!!」
予想とは異なり、少年はすぐさま私の提案を拒否した。しかも、「絶対」とは……かなり嫌なようだが…
「…何故だ? 確かに、一見 頼り無さそうに見えてしまうかもしれないが、彼は この国でも指折りの実力者なんだぞ」
「そのくらい、メル姉に勝ったのを見た時からわかってるよ……でも、あの後 マイスに「どうやったら アンタみたいに強くなれるんだ!?」って聞いたら……」
少年は 一度口を閉じ、息を溜め……そして 再び口を開いた
「『クワ』をオレにつきだして「
「あぁ……そういうことか…」
少年が嫌がるのも納得できた。…まあ、仮に「強くなりたい!」と言った人が10人いたとして その10人に「畑、耕そうよ!」なんて言ったとすれば、ほぼ確実に10人中10人が拒否するだろう
…そして 一番頭を抱えたくなるのは、自分が、
「…なんというか、すまない」
「……?なんで おっさんが謝るんだよ?」
「なんで」と聞かれたら、「なんとなく」としか答えられない。私自身がやったことではないのだが、何故か 少年に対して申し訳ない気持ちになってしまうのだ
「…仕方ない、という言い方もおかしいかもしれんが……。少しくらいなら手ほどきをしてやる。こちらにもこちらの都合があるので、あまり長い時間は付き合えないがな。ついてこい」
「本当か!?やったー!よろしくお願いします、
「ぬ……その呼び方はやめろ。思い出したくもない顔を思い出す…」
やっと 掴んでいた私のコートから手を離した少年が、嬉しそうに
「師匠」という呼び方……というより、「師匠」と呼ばれていたある人物に対して あまり良い記憶が無いということなのだが…
「えー、じゃあどう呼べばいいんだよ。おっさんもダメ、師匠もダメって」
「普通に名前で呼べばいいだろう!」
鍛練のできるような場所まで移動している最中、ふと とある「『青の農村』の噂」を思い出し 少年に伝えるか少し悩んだが……まあ、どちらにせよ この少年は嫌がるだろうと思い、何も言わないことにした
実は、原作より少し早い ステルクさんのアランヤ村訪問だったりします。…おそらく、特に深い意味はありません