そして、毎度のことですが「捏造設定」等が多分に含まれてます…
***マイスの家***
「うーん…予想はしてたけど、かなり少ないなぁ…」
そう言いながら僕が目をやるのは、テーブルの上に置かれた数冊の本。それらは『アーランドの街』の中を探し回って見つけだした「海」や「船」に関する記述がある本だ。まさか街中を探し回って 片手の指で足りるほどしか種類が無いとは…
「グイードさんにはああ言ったけど、やっぱりギゼラさんのことは気になるわけだし、知っておくに越したことはないだろうからね」
―――――――――――――――
「……まずは一冊。読み終わったけど、この本には あんまり実用的な内容は書いてなかったなぁ…」
なんというか、船は船でも 歴史的な内容なんだけど、ほとんどが 何年前なのかもわからないくらい大昔の記録ばかりで、もはや 機械レベルのロストテクノロジーのようだ
……というか、遺跡で発見された大昔の古代語の記録の
そして、最近の船に関することは、一番最後のほうに「現在 アーランドのある大陸では、大きな川がある地域や海沿いの地域だが、大型の船を造船できるほどの造船技術があるのは『アランヤ村』ぐらいであろう」…と書かれている程度だった
「まあ、考えてみれば 当然のことかな?この大陸で一番発展してるのってアーランドの街で、アーランドの街は内陸にあるから 船とは縁遠いわけだしね」
それに対して、『アランヤ村』みたいな海に近い場所では 育てることができる作物も限られてるから、生計を立てていくには 海で漁をすることになるだろう。すると、必然的に船が必要になって 造船技術があがっていったのだろう
――――――――――――
「さて……次はどれを読んでみようかな…?」
そう言いながら、僕が新たな一冊を手に取ろうとしたときのこと……
コンコンッ
玄関の扉がノックされる音が聞こえてきた
「はーい、ちょっと待ってくださーい」
そう言いながら 僕は玄関へと駆け寄って 扉を開けた。すると そこにいたのは、見知った顔だった
「あっ、ステルクさん!お久しぶりです!」
「ああ、数ヶ月ぶりだな。元気そうで何よりだ」
ステルクさんは 微笑みながら軽く頷いた
…ステルクさんが こんな自然な笑顔でいるのは何気に珍しい事だ……だけど、それを言うとステルクさんは
「どうぞ あがってください!ちょっと散らかってますけど……」
「気にするほどではない……というか、むしろ綺麗だ。それに、この部屋が「散らかっている」と言われるのでれば、彼女のアトリエの状態を何と言えばいいものか…」
そう言うステルクさんへ ソファーに座ることを
そして 戻ってきた時 ステルクさんは僕がテーブルに置きっぱなしだった本たちの一冊を手に取っていた。そして、僕が香茶を持ってきていることを視認した後 手に持っていた本とテーブルの上の本をまとめてテーブル
「あはは……わざわざ、ありがとうございます。先に僕が片付けておけばよかったものを…」
「いいや、いきなり 訪問したのは私だ。……どうやら 勉強中だったみたいだな」
「まあ ちょっと興味が湧いてきたって言うところです。はいっ、香茶です」
「ああ、ありがとう。… 農業に剣術、料理に『錬金術』、医学…そして今度は船か……元々持っているものがあったとはいえ、キミは本当に多才だな」
ステルクさんが香茶を口にしたのを確認した後、僕もイスに座り 自分の分の香茶を飲みはじめる。…うん、今日もいい感じに
2,3
「…見た所 特に大きく変わったりしてる様子はなかったが、何か問題は無かったか?」
前々から思っていたけれど、言動や鋭い目つきで色々勘違いされやすいが ステルクさんは何かと面倒見のいい人だ。いつも僕のところに来た時には 村のことを心配してくれているようなふしがある
それに、各地をまわっているステルクさんだが、自身の目的とは別に 出会った新米冒険者の世話や遭難者の救助をしたりもしているそうだ。おかげで、新米冒険者を中心に 大半の冒険者はステルクさんに何かしら関わったことがあったりするのだ
「ここ最近は 特に何もありませんでしたねー。とは言っても1,2週間前まで 僕もちょっと出かけてたから、その前の1ヶ月くらいのことは 村の人から聞いただけで詳しくは知りませんけど」
「キミが出かけていた…?それは
そう問いかけてくるステルクさんの顔には 少しの驚きが含まれているように見えた。おそらく、ここ最近は『青の農村』と『アーランドの街』以外に行ったりしなかった僕が 出かけたことが驚きなのだろう……
「何かっていうか……あっそうだ!」
僕がそう言いながらポンっと手を叩くと ステルクさんは「どうかしたのか?」といった様子でこちらを見てきた
まあ、たいしたことではない。ただ、「そういえば、きっとステルクさんは 知らないんだろうな」と思っただけだ
「ほら、前にロロナが言っていた『錬金術』の
「弟子?…ああ、そういえば彼女が嬉しそうに 話をしていたな。なるほど、確かに『錬金術』を上手く活用できるのであれば『冒険者』としてもやっていけるだろうな」
「あははは……ステルクさんが言うと、何だか説得力がありますね」
「……まあ 何の縁か、アーランドが誇る 2人の『錬金術士』を間近で見てきたからな。その凄さは 人一倍知っているつもりだ」
ステルクさんは そう言いながら目をつむった。おそらく『錬金術』の…『錬金術士』のことを 記憶の中から思い返しているのだろう
僕もそれにならい、2人の『錬金術士』のことを思いだす
……正直、ロロナに対しては「凄い」って言葉は 何だか似合わない気がする。本人はホワホワしてるし、普段は抜けてて どこか安心できない……でも、やってることは「超一流」だったりするからなぁ…
で、もう1人の『錬金術士』アストリッドさんは……うん、「凄い」。凄いんだけど、ロロナとは別の意味で安心できない。あの人は 本当に何を考えてるか
「……改めて考えてみると、『錬金術士』って変わってる人が多いのかな…?あっ、でもトトリちゃんは特には…」
…うーん、あのフリフリした服装以外はいたって普通だったはずだ。そして、その服はロロナが「『錬金術士』の服っていうのは こういうものなんだよー!」ってデザインから作ってくれたものらしいから、トトリちゃん本人のセンスじゃない
もしかして、僕が知らないだけで トトリちゃんもどこか飛び抜けていたりするのかな?
「逆に 変わった人でなければ『錬金術』が使えないのかもしれん」
僕の独り言に ステルクさんが反応し、答えてくれた。…変わった人っていうのを否定しないあたり、ステルクさんも似たようなことを考えていたのかもしれない
……でも…
「ステルクさん?どうして僕をジロジロ見てくるんですか…?」
「いやなに、そう言えばキミも『錬金術』を使えたということを思い出してな」
「…それは 僕が変わってるってことですか?」
「フッ、私は まだ何も言ってないが?」
……まあ、確かに 僕が元いた『シアレンス』と 今いる『アーランド』では
だけど、ここ数年で もうコッチに
「そんなことは無いと思うが?今でもキミは変わり者だろう。良くも悪くも、な」
「……あれ?口に出てました?」
「いや、顔に出ていた」
ステルクさんは 真顔でそう言ってきた
アストリッドさんにも同じようなことを言われたことがある気がする……うーん、本当にそんなにわかるくらいに 顔に出ているのだろうか?さすがに 自分で見ることができないから調べようがないなぁ…
「えっと 話を戻しますが、そのロロナの弟子の『錬金術士』……トトリちゃんって言うんですけど、『アーランドの街』のずっと南にある『アランヤ村』ってところを拠点に活動してるんですよ」
「『アランヤ村』……確か 前にキミが行った旅行先がそこだったか…。すると、キミと その子は顔見知りだったわけか?」
「はい……とは言っても、まだ小さなころだったので 向こうはちゃんとは憶えてなくてボンヤリといった感じでしたけどね」
「そうか。 フム…今度 近くを通る時に寄ってみるとするか。新米冒険者でもあるなら 少々心配だからな」
そう言いながら腕を組み頷くステルクさん。と、少し身を乗り出し気味の体勢で 先程よりも小さめの声で「そういえば…」と僕に話しかけてきた
「…彼女は 最近アトリエには帰ってきてはいないのか」
「ロロナですか? そうですね、もう1年以上は帰ってきてないと思います。あっ、最近は クーデリアが許可を出して、街に来たトトリちゃんがロロナのアトリエを借りて使ったりしてますから 気をつけてくださいね」
「……気をつけろ、とは?」
「とある人が「アトリエの煙突から煙が出てた!」って、ロロナが帰ってきたんじゃないかと ウキウキ気分でアトリエを見に来てたことがあって……。もうトトリちゃんが街を出た後だったんで、その時のアトリエは無人だったんですがね」
「……?よくわからないが、記憶の端にとどめておこう」