それと、話の区切りの都合で短めです。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、細かい描写の追加、句読点、行間……
✳︎✳︎✳︎街道✳︎✳︎✳︎
「たしか、このあたりだったはず……」
僕は今、『アーランド』の街と『近くの森』とのあいだの街道を歩いている。
街からそう遠く離れてはいないけど、平原だった街道の周囲はまばらではあるが木々が並ぶようになり、森から切り離された小規模な林が離れて点在しているような状況だ。
そんなところで何をしているのかというと、前に探索に来た際に木々の隙間からちらりと見えたモノがあったのだか、それに用があるため探しているのだ。
とは言っても、見つけたときにはそう気にしていなかったので、特に調べようとは思わなかったから、そばまでいかなかったので場所が特定できず探すのに手間取ってしまっている。
「あっ」
街道を歩きながらキョロキョロさがしていると、ちらっと街道脇の林の木々の幹と幹の隙間から探していたモノが見えた。
今いる街道とそのモノの位置関係を憶え、それが見える林へと向かう。
そこに道は無く、木と木の間を縫うように雑草の茂る地面を歩いて行くと……。
「あった……!」
林を抜けた先にあったのは探していたモノーー古びた一軒の家だった。
その家は元々塗装されていたであろう屋根の色はくすんで落ちていて、壁にもところどころツタがはっていた。
家の前には木の生えていないーーおそらく庭だったのであろうーー区域が家の倍近くあるが、膝ほどの高さのある雑草に覆い尽くされている。
よくよく見ると、家のそばに雑草から顔を出すように井戸らしきものも見える。
僕はあたりを見渡してみると、木々は家と庭を囲むように生い茂っており、僕が来た街道側が最も薄く、その反対側は奥が深いように見えた。
「雑草も踏まれたりした様子も無いし、誰もいないみたい……」
けもの道もなさそうで、人はもちろんモンスターの気配も全く感じられないここは、まるで世界から取り残されたようであった。
「さて、場所は特定できたしココのことをエスティさんに聞きにいかないと」
ココはどういうところなのか、何故放置されているような状態なのか……。
それで、もしよかったらココを僕の活動の拠点にしたいのだ。
雑草こそ生えてはいるが広さは十分にあり、『ルーン』を生み出すための畑作りには良さそうな場所なのだ。
「いちおう、本当に誰もいないか中も確認しよう」
雑草の中を家の玄関戸まで歩き、一言「すみませーん、お邪魔します」と言い中へ入ってから家の中を見わたす。
入ってすぐの部屋は板張りの床の、居間と台所を合わせたような大きめの部屋だった。
むかって左手には台所、右手にはテーブルとイスそして扉があった。その左右の空間を半ば仕切るように二階へと上がる階段があり、階段下のスペースに空っぽの棚があった。
荒れていたりはしていないが、階段もどこもホコリが積もっていて掃除と換気が必要だ。
続いては、この部屋から外以外への行先はふたつ、二階と右手の扉だ。
まず気になった二階を見に行ってみたが、二階はひと部屋のみ、そしてその中には一つのベッドがあるのみであった。
階段を降り、残りの玄関から見て右手の扉のほうへと向かう。
その先にあったのは、居間と同じくらいの大きさの石の床の部屋であった。
「ここは……何かの作業場かな?」
そう判断したのは、この部屋にある何やら器具の取り付けられている机。その上に置いてある道具や器具のいくつかは僕の知っているものであり、これが薬品を作るための台だとわかったから。
そしてその反対側にあるのは、これも似たものを見たことのある炉と鍛冶道具。どちらもホコリをかぶっていたり、サビがついていたりするので手入れは必要そうだけど使えそうなものだった。
そして、裏口であろうこの部屋から外に出ることのできる戸のすぐそばには、壊れた道具が入った箱と……古びたクワとジョウロがあった。
「だいたいこんなところかな?」
裏口から出てみると、そこは家に入る前に見た井戸のすぐそばだった。ちょうど死角になっていたようで、先程は裏口があることには気づけなかったのだ。
「それにしても、まだこんなにしっかりしているのに誰も使っていないんだろう?」
雑草の伸び方や室内のホコリの積もり方からして、それなりの長期間手が付いていないことがわかるけど、荒れていたり壊れていたりしていないから不思議である。
「エスティさんに報告するとしても……使ってない理由はさすがにわからないかな」
とりあえず、帰る前に軽くホコリを外に出し、玄関から街道がある方面へぐらいは歩きやすいように雑草を取っておこう。
そう思い、もう一度家の中に入る。
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『シアレンス』で農作業中心の生活をしていたマイスは、久々の「草むしり」という作業に没頭して気づけば日が暮れてしまい、街にその日のうちに帰れなかった。