それは三年目で何も描写されなていない時期にもしかしたらあっていたのかもしれない話《前》と、その話があったのならきっとあるであろう後日談ED的な《後》 で構成された短編…
原作『ロロナのアトリエ』でいうところの キャラ別の個別エンドの雰囲気を意識した(というつもり)ものとなっています
※諸事情により、「リオネラ編《後》」は来週3/24更新予定です
なので、中途半端な終わり方に感じてしまうかもしれません。ご了承ください
「リオネラ編」は難産とかそういうレベルじゃないくらい過去最高に書き直しを繰り返しました。一応は今回投稿したもので落ちつきましたが、もしかしたら今後また加筆修正するかもしれません
今回はリオネラ視点となっています
***広場***
「……以上です。あ、ありがとうございました!」
そう言ってアラーニャとホロホロと一緒にお辞儀をすると、周りからは歓声と拍手が沸き上がった。その多さに、「こんなに沢山の人が私の劇を
けど、私は逃げたくなる気持ちを抑えて、背筋をを伸ばしてちゃんと前を向いた
……ここで逃げ出しちゃったら、『おひねり』を貰い損ねてしまい人形劇を最後まで頑張ったのも台無しになってしまう。それは、『おひねり』で生計を立てている私にとっては死活問題だ
……前に経験しただけあって、その事はよく骨身に染みている。あの時は、ホロホロにもの凄く怒られたなぁ……
そんな事を考えながら、私は『おひねり』をくれる人たちに精一杯の笑顔でお礼を言いながら彼らの
――――――――――――
「ふぅ……」
あれから少し経ち、私の人形劇を観てくれていた人も引いて行き、ようやく一息つくことができるようになった
私は人形劇をしていた『広場』の一角……そこから少し離れたところにあったベンチに一人で腰掛けて、さっきまでの高揚感や緊張感を逃がすために大きく息を吐いた
「おう、お疲れ様。まぁ、その分、収穫はがっぽがぽだな」
「ちょっと間が空いちゃってたかしら? いつもよりも少し多めだったわね」
そう言ったのは、私のそばで浮いている
「ふたりもお疲れ様。……みんな、楽しんでくれてたみたいで良かった」
「だな。……ん?」
「……あら。お客さんみたいね」
ふたりが気付くのと
「こんにちは! りおちゃん、ラニャちゃん、ホロくん。今日は絶好調だったみたいだね」
「ロロナちゃん」
そう。私たちのところに来たのは、ロロナちゃんだった。いつものように、私にはマネできないニコニコとした笑顔で私に笑いかけてきてくれていた
「すごかったねぇ! お客さんもいっぱいで、広場
「そ、そんなこと……!? す……すごく恥ずかしいから、言わないでぇ……!」
「ええっ!? そんなに恥ずかしがらないくても……凄いことなんだから、もっと自信持っていいんだよ?」
そ、そんな事言われても……
そうやって、ロロナちゃんが褒めてくれるのは嬉しいんだけど……ううぅ、やっぱりどうしても恥ずかしさが……!
「オイオイ、劇を観に来といて客の感想だけかよ? もっと言う事あんだろー?」
「そういうつもりじゃなかったんだけど……。ホロくんもラニャちゃんも、いつも通り……ううん、いつも以上にイキイキしてて本当に良かったよ。お話のほうもなんだか引き込まれる感じがして、すっごく楽しかった!」
「あらあら、ありがとう。そう言ってもらえるなら頑張ったかいがあったわね。ねっ、リオネラ?」
「ふえぇっ!? う、うん」
いきなり話を振られて少し驚いてしまったけど、ロロナちゃんに楽しんでもらえたのは私にとって嬉しいことなのは確かだから、私は頷いてみせた
すると、ロロナちゃんは「そっか~」とニコニコと笑って、嬉しそうにしていた
「でも、良かった。りおちゃんもラニャちゃんもホロくんも元気そうで……」
そう言ったロロナちゃんの顔はさっきまでとは少し変わって、
その様子を見て、私のそばにいるホロホロとアラーニャがロロナちゃんに言う
「なんだぁ?
「そういうところもひっくるめてロロナの良いところなんだけどねぇ……。でもまあ、ワタシたちからは「心配無い」ってことと……それと、「ありがとう」って言わせてもらうわ」
「ううん、わたしはそんなお礼を言われるようなことは何も……っていうか、結局何もできなかったし……」
少し肩を落として言うロロナちゃん。その姿を見て、私は必死に首を振ってそれを否定する
「そ……そそそ、そんな事無いよ!? 私は、ロロナちゃんのおかげで……ロロナちゃんがいてくれたから……! だ、だからっ!」
「ありがとね、りおちゃん。……それに、さっきの人形劇を観てたらわかったよ。やっぱり、りおちゃん
――――――――――――
あの後、ロロナちゃんは「また何かあったら、遠慮しないで相談してね! 何も無くても、遠慮しないで遊びに来て!」って言って、足早に帰っていった。……ちょっと忙しそうにしてたから、もしかしたら仕事の合間をぬって観に来てくれていたのかもしれない
そう考えると、申し訳なく思いつつもちょっとだけ嬉しい気もする。……今度はその分、ロロナちゃんのお仕事のお手伝いを私も頑張らないと……!
そんな事を考えながらも、ベンチに座ったままさっきまでの会話を思い出して、いつの間にかロロナちゃんが気にしてくれていた事……
―――――――――
それは、私には苦しくて、悲しくて、とても辛い……けど大切な出来事だった
ある日、突然動かなく、喋らなくなってしまったアラーニャとホロホロ
異質な『力』を持っていた私への周りからの視線や心無い言葉から逃れるように飛び出した生まれ育った家。その頃からずっと一緒にいたふたりの身に起きた異常に、私はこれまでにないほど慌てふためいた
必死に声をかけたり、揺さぶったり、ふたりの前で思い切り泣いたり……これまでなら反応があったはずなのに、いくらやっても、アラーニャもホロホロもうんともすんとも言わなかった
もうどうしようも無くなった私は、誰か……誰か助けてくれる人を探した
……でも、そもそも相談できる人なんて限られていて……それに、
そんな中、私の頭に思い浮かんだのは、街のアトリエにいるロロナちゃんだった。私の『力』のことを怖がらないでくれた人の一人で、私の大事な大事なお友達……それに『錬金術』なら私でも全然わからないこの異常事態を何とかできるんじゃないか、っていう希望もあった
アトリエに飛び込んだ私は、凄く慌てたままの私を落ち着かせてくれたロロナちゃんに、涙をこらえながら事情を説明した。ロロナちゃんは私の言葉を聞いて何とかしてくれようとしたけ、原因がわからないみたいで……でも、私と一緒になって真剣に考えてくれた
……そこに現れたのがロロナちゃんの先生のアストリッドさんだった。「こいつらは私が預かろう」と言って、アラーニャとホロホロを自分に預ける様に行ってきた。……ただでさえ不安なのに、ふたりと離ればなれになるのは嫌だった。けど、ふたりを直してもらうには預けるしか無くて、私はアストリッドさんに頼んだ……
そこから、ロロナちゃんに呼ばれるまでの二,三日は、私は不安で不安でしょうがなく……
けど、ロロナちゃんに呼ばれてアトリエに行ってからの……アストリッドさんに何か薬品のようなものを
アストリッドさんと、アストリッドさんの強硬手段(?)によって再び喋りだしたアラーニャとホロホロとが話しだした内容は、それまでとは別の意味で私の心を揺さぶってくるものだった
元々、ふたりは
ふたりは友達がいなかった私が人形に投影したことから形成されていった、
ふたりは「自分たちみたいな変な存在がリオネラのそばにいたら、リオネラのためにはならないから」と、私を受け入れてくれる人がいる『アーランド』にいるうちに自分たちはいなくなってしまおうとしていたこと
……それが、ふたりが突然喋らなくなった理由であり、私が知らなかった私自身のこと
私は倒れたまま、そばでロロナちゃんが驚いている声をまるで遠くのもののように聞きながら、わけがわからなくなっていた
ふたりとはずっと一緒だった
私の事を怒ったり、
なのに
ふたりは私自身でもあって、そこにはいない・いちゃいけない存在だって言って、私の前からいなくなろうとして……
わけがわからなかった。ふたりは私の友達でずっと一緒にいる家族でもあって、いちゃいけない存在なんかじゃ……でも、ふたりが私の中の人格なら、私も頭の中のどこかで同じようなことを考えて……そんなこと…………でも…………だからって……
頭の中がごちゃごちゃしてきて、余計にわけがわからなくなって、何が正しくて何が間違ってるのかもわからなくなってきて……でも、最後まで頭の中に残っていたのは…………
いなくならないで
どこにもいかないで! 一緒にいて! これからも、ずっと、ずっと……!!
動くようになった身体で
アラーニャもホロホロも、困ったように私を
たとえ、「いなくならないで」と言う私の口からそれを否定するような
―――――――――
あの時はアトリエで泣きわめいちゃって、ロロナちゃんに迷惑かけちゃったけど……その後、街で借りている部屋に戻ってからは今後のことについて、ふたりと私と、
そんなとこがあって少しだけお休みしていたから、今日は久々の公演だった……というわけだ
今はもう、そのことについては、いちおう一つの区切りがついた。アラーニャとホロホロも納得してくれてる……はず
……けど、今、私は
「何、似合わねぇ顔してんだよ。余計不細工になっちまうぜ?」
「ちょっと!? まあ、それは言い過ぎにしても……リオネラ、眉間にシワが寄ってるわよ? どうかしたの?」
私が悩んでいることを心配するようにふたりが声をかけてきた
「やっぱり、ワタシたちのことは……」
「ううん! そうじゃない、そういうことじゃなくて……!」
「じゃあ何だってんだよ。もったいぶってないで、ちゃっちゃと言えよ」
ホロホロに
「ふたりのこと……私たちのこと、マイスくんに何て言えばいいのかな、って……」
「……それって、あの子にこの前の事を教えるってこと?」
アラーニャの問いに私は「……うん」と頷いてみせる。すると……
「ヤメとけって。何の得にもなんねぇと思うぞ?」
「そうね。これはワタシたちの問題、あの子まで巻き込まなくてもいいじゃない」
ふたりはそう口をそろえて「言わない方がいい」と言ってきた
「で、でもっ! 私、マイスくんに、隠し事はしたくないの! だって……マイスくんは私たちに教えてくれたよ。記憶のことも、少しだけ戻ってる記憶のことも、『魔法』のことも、『ハーフ』だってことも、むこうの世界のいろんなことも。言い辛い……話したくないこともあったと思うよ? それでも、マイスくんは隠さずに話してくれて……」
だからこそ、自分も隠し事はしたくない……そういう気持ちを口にする
私の気持ちを知ろうとしてくれる、わかり合おうとしてくれる……そんな人だからこそ私は自分もちゃんと向き合いたい、隠し事はしたくない……そう思った
私が言い終えた後、少しの間を開けてふたりが喋りだした
「たっく……変に生真面目になって。一体、誰の影響なのやら」
「それは一人じゃないかもね。……リオネラがそうしたいって言うならいいんじゃないかしら?」
「アラーニャ……!」
「でも、おすすめはしないっていうのは本心よ。あの子、リオネラほどじゃないだろうけど、ワタシたちに思い入れがある……っていうか親身だから。きっとロロナ以上に混乱すると思うわよ?」
「だろうなぁ。会ったしょっぱなからオレたちが「いらない」って言うまで、オレたちふたり分の食べ物まで用意したり、色々気ぃ
ふたりに言われて思い出したけど、確かに最初の頃は毎回律儀に
マイスくんは基本的に、人でもモンスターでも……何に対しても分け
そうやって考えていくうちに、それまでは小さかった心の中の不安が段々と大きくなっていくような感じがしてきた。けど……
「……大丈夫、だよ。マイスくんもきっとわかってると思う。「アラーニャとホロホロはちゃんとここにいる」って」
「おーおー、信用なのか何なのか知んねぇけど、随分とおアツいことで」
「こら、
いつもの調子でふたりは言い、ベンチに座っている私の膝の上にフワリッと降りてきてそのまま座った
そんなふたりを抱きしめるように腕をまわして、私は静かに目を
「あっ! いた!」
「ひゃわぁっ!?」
いきなりの不意打ちの声につい驚いて飛び上がってしまい、バタバタしながらも、なんとか声のしたほうへと顔を向ける。そして見えたのは……
「リオネラさん! ホロホロ! アラーニャ! 大丈夫!? 元気ですか!?」
「な、なななな……っ!?」
……私のほうへと駆け寄ってくるマイスくんだった
そのマイスくんはといえば、そのまま私のそばまで来たかと思うと、私の両手をとって、その中で抱えていたふたりも含めてバッ! バッ! バッ! と見てまわった後、私の顔を直視してきた
「心配してたんだよ!? 何日か前に「ホロホロとアラーニャがなんだか大変なことになったー」ってアトリエにいたロロナから聞いて、一日中街を探し回ったけど何処にもいなくて……」
「あらら、ワタシたちはロロナのお師匠さんのところにいたからねぇ……」
「リオネラはオレらがいない間は引きこもり気味だったからなぁ……」
かなり焦った様子だったマイスくんに押されつつも、アラーニャとホロホロが、マイスくんが言っているであろう当時の事を思い出しながらそう言た
「そ、その……ごめんね、マイスくん」
私がそう謝ると、やっと落ち着いてきたマイスくんは首を振った後、ニッコリと微笑みながら私を見てきた
「ううん。大変だったんだろうし、気にしなくていいよ。それに、ふたりとも元気になったみたいだし……でも今度、何かあったら僕にも言ってくれていいんだよ? 汚れでも、ほつれでも、切りキズでも、なんでもなおしてあげられるから!
「おおぅ……
「え、ええ、そうねぇ……今度、機会があったら頼もうかしら?」
……たぶん、アストリッドさんに会ってなくて、ロロナちゃんから断片的にしか聞いていないんだろう。色々と勘違いをしている様子のマイスくんが、優しく良い笑顔で…………
「なぁ。さっきの慌てっぷりといい……ホントに言って大丈夫なのか、こいつ?」
「えっと、ううぅん……どう、かな?」
「これは、もうちょっと時期を見た方が良いかもね……」
『ロロナのアトリエ編』本編中に消化しきれなかったイベントがあったため、その部分を中心に置きつつリオネラの心境・マイス君への意識を描写する形でまとめてみました
なので、マイス君の出番自体も少ない感じになりました
ふたりの絡み合いは《後》にて描写される予定…………される、かな?(これまでの番外編を見ながら)