《後》はやはり短くなりました。ご了承ください…
それと、これまでの《後》が3年目が終わってからの話だったのに対し、今回の《後》は3年目の終盤の話になっています
***王宮受付***
『アーランド王国』では毎年 年末に『王国祭』という街をあげての大きなお祭りが開催される。その大きさ
そして、その準備の中心になるのが王宮なのだが……今年は例年とは少し様子が違った…
「今年の『王国祭』は ありませーん……でも、仕事が少なくなるわけじゃありませーん!」
「先輩…何をおかしなことを言ってるんですか」
カウンターに積まれた書類の間にデロンと体を倒し カウンターに
「そんなにやる気無さそうにされると、他の騎士たちにも影響が……」
「んなこと言われたって、早朝から来て作業してたのに まだこれだけ残ってるとか、やる気出せってほうが無理な話よー!」
あと2時間ほどすれば 太陽が最も上にくるころだろう。早朝から、という話を聞いて さすがのステルクも驚き 同情しだしたようだった
「…それにしても、この書類の量……。一体、どういったものなんですか?」
「あー…、勝手に見ちゃダメよ?一応 結構重要な機密に関わる案件の書類なんかも混ざってるから」
それを聞いてステルクは、カウンター上の書類に伸ばしかけていた手を止め 「…失礼しました」と言って手をひっこめた。…が、それとほぼ同時に
「しかし、そんな重要な書類をこんなところでするというのは いささか…」
「……いやね、ステルク君。ツッコミどころはそこじゃないでしょうに」
「…?というと?」
「何で そんな重要な案件が私のところに来るのか、ってこと。普通こういうのは大臣とか もっと上の人……王様なんかが扱うべきものなのよ!」
エスティがビシッと言い放つ…が、対するステルクは「なるほど…」と言いながらも いたって落ち着いた様子だった……ただし、少しコメカミがヒクついていた
「つまりは……また王は抜け出しているということですか」
「そうなのよー。全くもう あの人は…」
「「はぁ…」」
……余談ではあるが、ちょうど同じ時に 大臣の執務室で大臣がため息をついて、とある『アトリエ』にいた王がくしゃみをしたそうな…
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「仕事は増える一方で、長い休みが取れなくて 出会いも無く……このままじゃあ 私、数年後には「私は仕事に人生
「…先輩、何故そんなことを私に言うんですか…?」
「ステルク君が イイ人知ってたりしないかなーって思ってー」
「知るわけないですよ、そんなもの」
「えー、ひどーい」とブーブー言うエスティを横目に見ながら、ステルクは この場を離れようと思い「『演習場』に鍛練でもしに行くか…」と考え始めた その時、ふと視線を向けた 街へと続く扉のほうから、見知った顔がこちらにむかって来ているのを見た
「エスティさん、おはようございます! あっ、今日はステルクさんもここにいるんですね。おはようございます!」
「おはよう、マイス君。元気そうで何よりねー」
「その元気を私にも分けて欲しいわー」と心底
「ああ、おはよう。…私は特に用があるわけじゃなく、先輩の愚痴に付き合わさせていてな……」
「あら、ステルク君?用が無いなら 書類仕事手伝ってくれる?」
「見せられないような重要な案件もあると言っていたのは 何処の誰でしょう?」
「むっ…」
「あははは…、ふたりとも大変そうですね」
マイスがそう言って話を流したことで、ふたりのにらみ合いも 一応は落ち着いたようで、マイスは軽く安堵の息をはいた
「そういえば マイス君は何のようだったの?依頼?」
エスティがそう
「……?なにこれ?」
手渡された 布に包まれたものを見て、エスティは首をかしげながらマイスの問いかけた
「お弁当です!」
「へぇー…お弁当……ううぇ!?」
突然声をあげて驚くエスティ。その声にマイスは驚かされ……そばで話を聞いていたステルクは二重の意味で驚かされていた
「ちょっ、なんでお弁当!?」
そうエスティが聞くと、マイスはいたっていつも通りの様子で「それはですね」と答えた
「ほら、前に エスティさんが鍛練に参加した時があったじゃないですか。その時エスティさんが「鍛練の時にこんなもの食べてるステルク君羨ましい」みたいなことを言ってたのを思い出して…」
「それで…」とニッコリ笑顔で言うマイスだったが、急にションボリしてしまった
「もしかして、もう お昼の準備 出来てたりしましたか…?」
「ううん、そんなことないわよ!むしろ嬉しくて また貰いたいくらいよ」
「そうですか!よかった…。あっ、もうひとつありますから、良かったらステルクさんもどうぞ!」
「あ、ああ、いただこう」
「それじゃあ 夕方にまた来ますから、そのときに包みと容器は回収しますね!」と言って『王宮受付』を去るマイス。その背中を見送っていたエスティとステルクだったが、その時…
キュピーン!
と、何かがひらめくような効果音を ステルクは幻聴し、それが聞こえた気がした方向…エスティのほうへと顔を向けた
「仕事に真面目だし、安定して結構稼いでるっぽいし、優しいし、頼りにできるくらい腕もたつし、無駄遣いしたりしている様子も無い(ブツブツ」
「エスティ先輩……?」
「顔は童顔っぽいけど整ってる部類だし、身長は……まだ成長期よね?私からも手を入れて ちゃんと育てれば…、ということは マイス君って 実はかなりの優良物件!?」
「先輩、さすがに
何かがきらめき、ステルクは反射的に身をそらせた。それとほぼ同時に、コスンッという小気味いい音が聞こえ、ステルクの後ろにあった柱に 小型のナイフが突き刺さった
「ごめんあそばせ、手が滑ったわ。…っていうか、ステルクくんだって人のこと言えないんじゃないの?」
「なっ!?私が彼女を護衛しているのは、騎士として 街の外に出る人を護衛しているだけで、別にそういう気など…!」
「あら?私は「誰」とは言わなかったんだけど……ステルク君は
「っーーー!?し、失礼する!!」
ステルクは小走りで何処ぞへと去っていき、残されたエスティは ひとり
「ふっふっふ!マイス君……その時が来るまで
『王宮受付』に高笑いが響き……たまたま通りかかった大臣によってエスティは怒られた
これまでの『ロロナのアトリエ・番外編』とは違って、これから始まりそうなのは「恋愛」じゃなくて「