マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 「一、二年目よりもかなり早足に進むこととなります」なんて言っていた三年目ですが、思っていた以上の早さで 終わりへと突っ走っている現状です
 早ければ、次回にも……





※2019年工事内容※
 途中…………


マイス「何事も 計画は早めに越したことはない」

「はぁ…」

 

 ソファーに力無くもたれかかって、僕は ひとつため息をついた

 

 

 別に何か大事(おおごと)があったわけじゃない。…いや、ある意味ではあった…というかなくなったというか

 

「まさか、今年は『王国祭』が無いだなんて…!」

 

 『王国祭』、アーランドで毎年年末におこなわれる大きな行事だ。だけど、詳しい事情は知らないが 何故か今年はそれがないそうだ

 ただでさえ年に一度しかないイベントなのに、それが無いとなると 個人的にやる気がなくなるというか テンションがだだ下がりなわけで…

 

「『シアレンス』にいたころは、少なくとも二週に一回は何かしらの行事があってたから 全然感じなかったけど、なんにもイベントが無いのって 何だか退屈だなぁ」

 

 もちろん、畑仕事等 やれることは色々とあるんだけど、やっぱり 何か別に楽しめることがないと なんだか面白くない

 

 

 

 せめて、何か新しく 熱中出来るような目標でも見つけられたらいいのかもしれないけど…

 

「新しいものを作る……新しいものを探す……うーん、何かないかなぁ」

 

 ただ考えてるだけでは何も思いつきそうになかったので、僕は立ち上がって棚に入っている日記帳の一冊を取り出してみた

 

 この『アーランド』に来てから欠かさずに書いてある日記帳。新しい年になるたびに新しいものに変えていっているので、今は三冊目なのだけど、これらに何か今の状況を打開できるヒントでもないか と探してみることにしたのだ

 

 

―――――――――

 

 

「そういえば このころから『雲綿花』の栽培に挑戦してみたんだっけ」

 

 日記を見返していると、色々とこれまでのことが思い出された。農業をはじめ、鍛冶や薬の調合、料理、建築…そして『錬金術』。いろんなことをしてきたなぁ…

 

 

 そんなことを考えながらページをめくっていると、とある日付の内容に目がとまった

 

「あっ…あれからもう一年以上たったのか」

 

 その内容は ある人が家に来た話

 陽が沈みきった夜中の来客。たくさん食べる人で、荒々しくて大雑把な感じだけど 僕の悩みを聞いて答えへと導いてくれた人との出会い

 

「ギゼラさん、元気にしてるかな?……いや、あの人が元気が無い姿なんて想像できないけど」

 

 ふと 思いついたことがあった

 

「確か、ギゼラさんの家があるのって『アーランド』のずっと南のほうの『アランヤ村』ってところで…いつか見た地図だと 海岸線にある村だったよね」

 

 『アーランド』も内陸部にあるし『シアレンス』も海から離れていたから 海に馴染みがなくて、ちょっと見てみたい気がする……それに

 

「やっぱり、海岸線沿いだと自生してる植物とか 育てられてる作物なんかも違うのかな?」

 

 そのあたりは凄く気になるし、もし違うのであれば『アーランド』周辺には無い 作物の種があるかもしれない

 うん!いいかもしれない!!

 

 

「よし!旅行に行こう!」

 

 そうと決まれば 計画をたてて準備をしないと!

 

 まずは旅行期間だけど、ここから『アランヤ村』までの道のりは詳しくは知らないけど、距離的には二週間ちょっとでつくかな?

 帰りは『リターン』の魔法で一瞬だから滞在期間を考えて……一か月くらいの旅行になりそうかな

 

 だとすると、そのくらい家を空けるわけだから 問題になるのは、畑と なーとウォルフのことだ

 畑のほうは、今ある分を全部収穫した後 畑を休ませておけばいいだろう

 なーとウォルフは、お利口だから ちゃんと日にち分のゴハンを用意してれば大丈夫だ。それに いざとなればホムちゃんに頼み込んでみるのも有りだ

 

 

 そんなことを考えながら、カレンダーを見て 予定を立てていたんだけど…

 

「あれ……?」

 

 畑の作物の成長のことを思い返しながら、もう一度 カレンダーを見て考える

 

「もしかして、来年にならないと行けそうにない?」

 

 うん、やっぱりそうだ。いや 別に急ぐ必要はないからいいんだけど……でも、なんだかなぁ…

 

 

「あっ、長期間 家を空けるんだったら『王宮受付』のエスティさんに言っておいたほうがいいかな?」

 

 最近は 僕を名指しした依頼もあったりするわけだし、そのあたりのことをどうするか 相談するべきだと思う

 まだ先のことになりそうだけど、早めであるにこしたことはないよね

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

***王宮受付***

 

 

「…それで、来年の年始めくらいに ちょっと家を空けようと思ってるんですけど」

 

 少し旅行に行こうと思っていることをエスティさんに話してみたんだけど、エスティさんは何やら唸っていた

 

「う~ん……」

 

「あの…ダメなんでしょうか?」

 

「あっ、いや、いいのよ!?マイス君名指しの依頼がきても 依頼主にこっちから伝えれば問題ないし、全然いいんだけど…」

 

 慌てて否定したエスティさんだったけど、その後すぐに 力が抜けたように頬杖をつきながら「はぁ…」とため息をもらしていた

 

「いやね、羨ましいって思っちゃってね…いーなー旅行なんてー」

 

「やっぱり 最近もずっと忙しいんですか?」

 

「そうねぇ、忙しい時なんかは クーデリアちゃんが手伝ってくれたりするようになったから そうでもないんだけど、丸々二日間休みとかには中々できなくて。特に仕事が無くても ここから離れたらいけなかったり…」

 

 それからエスティさんの口からは どんどん愚痴が出てきて……ちょっと聞いているのが大変だった

 

 

 

 

「って、ゴメンね。マイス君にこんな愚痴言ってもしょうがないのに私ったら…」

 

「あははは、僕は気の利いたことは言えませんから、聞いてあげることぐらいしか出来ませんけど、それでもよかったら 愚痴を吐いてくれてかまいませんよ」

 

「あらあら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」

 

 そう言って微笑むエスティさんに 僕も笑顔を返す

 

 

 と、ふと、何かを思いついたかのように「そういえば…」と口にするエスティさん

 

「その行先にいるっていう、マイス君の知り合い?…その人ってどんな人なの?」

 

「えっとですね、たまたま僕の家に 途中に迷い込んできた旅人の女性で、 少し荒っぽくて大雑把な感じですけど、明るくて 一緒にいると面白い人ですよ」

 

「女の人だったの!?……意外…なんていうか、マイス君の友好関係ってよくわからないところがあるわね」

 

「そうですか?」

 

 エスティさんが言っていることは あまりよくわからないけど……まあいいかな?

 

 

「それで、その人 なんて名前なの?」

 

「ギゼラさんって言うんですけど…」

 

「ふーん、ギゼラさんかぁ……   って!ギゼラ!?」

 

 さっきまで頬杖ついていた手をカウンターに叩きつけるようにしながら飛び上がるエスティさんに 驚きつつも、僕は疑問を投げかけた

 

「エスティさんは ギゼラさんのことを知ってるんですか?」

 

「知ってるも何も、私の仕事を増やす張本人!このあいだなんかは モンスターを討伐したはいいけど近くに架かっていた橋まで落として 人や物流に影響が出て、橋の修復やその他の被害への苦情が 王宮に来たのよ!!」

 

「ああ……なんていうか、ギゼラさんなら やりそうだ…」

 

エスティさんの言い方的には 今回が初めてじゃないみたいだ。まぁあの人は 強くて豪快で…そのくらいのことならやってしまいそうだから、そこまで驚けないけど……

 

 

「あれ?となると修復の費用とか色々必要なんじゃないですか?」

 

「そうなのよ。いちおうは王宮のお金で何とかしてるんだけど。遺跡とか家とか、これまでにも色んな物を壊して 何度も被害が出てて……王宮もそんなに余裕があるわけじゃないから、いい加減 本人から請求しないといけないんだけど…」

 

 「今の今まで 何処の出身なのかも知らなかったからねぇ…」と、疲れたように言うエスティさん

 うーん、やっぱり 大きなものの修復なんかの費用となると、やっぱりかなりの高額なのだろうか。それが複数回にもなれば 王宮としても悩みの種なのかもしれない

 

 

「あの、それって今のところ どれくらいの額になってるんですか?」

 

 そう聞いてみたんだけど、エスティさんは機嫌が悪そうに「聞きたいの…?」といった様子でジロリと見てきた。そして 大きなため息をついた

 

「この前の 橋の一件だけで50万コールぐらいよ。で、それ以前にも沢山あって…」

 

 

 

 

「あっ、それじゃあ 立て替えってことで、僕が今 お金を出しますよ。それで、『アランヤ村』に旅行で行った時に ギゼラさんから回収して、いちおう僕の方から注意しときます」

 

「へっ?」

 

 僕は手元のカゴから『秘密バッグ』のうちのひとつ…お金を収納しているコンテナに繋がっている『秘密バッグ』を取り出して 中を漁る。そして、お金の詰まった袋を取り出す。

 

「えっと、1袋が10万コールになるようにしているから…ヨイショ。これで橋の一件の分で……エスティさん、他の件の金額はいくらですか?」

 

「えっ、ちょ、すストップ!ストーップ!?」

 

 カウンターにお金の入った袋を置いていっていると、エスティさんに大声で制止をかけられた。そんなに血相を変えて…いったいどうしたのだろう?

 

「マイス君…この袋が何だって?」

 

「1袋10万コール入っている袋です」

 

「…それで?そんなにポンポン出して マイス君の生活は大丈夫なの?」

 

「それは何というか……」

 

「そ、そうよねー!だから そんなに無理して出そうとしなくても―――」

 

「貯まっていく一方で、新しいコンテナを用意しないと仕舞う場所が無いくらいには有り余ってて」

 

「いい…ん……だ…」

 

「確か、今 家にある金額は…って、あれ?」

 

 

 なんだかわからないけど、エスティさんが笑顔のまま固まってしまっていた。……うーん…何だか今日のエスティさんは変だなぁ?




 橋の修復費とかの金額は適当です

 なんというか、『ロロナのアトリエ』での『お金持ちエンド』の条件が100万コールなので、「物価とか曖昧だけど、このくらいなら大金なんじゃないかなー」と思いながら考えました

 なので、特に深い意味はありません

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