マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 活動報告で行っていたアンケート、締め切らせていただきました!
 参加してくださった読者の方々、大変ありがとうございました!

 集計結果は、集計でき次第、本編の前書きと活動報告のほうで順次公開していきたいと思っております。少々お待ちください。



 そして、今回からついに……!?

 ……ここからの共通ルートは「独自解釈」、「捏造設定」のオンパレード。そのうえ、各ルートごとに違和感が発生したりしだします。
 『本編』である『ロロナルート』ですら違和感が所々にありますのでご注意ください。……本筋をまとめていくには仕方ないのです。



『光』

 

 

***青の農村***

 

 

 年の瀬が近づき、日に日に寒さを増していくように思える『青の農村』。

 朝日が顔を見せだしたばかりの時間(ころ)。一日の中でも空気がより冷たい早朝。僕は遠出しているとき以外は毎日の習慣になっている畑仕事をしていた。

 

 痛いほど冷たい……なんて、人によってはそんな表現をしてしまいそうなこの時期の水を()み、畑の水やりのために『ジョウロ』へと移す。

 

 

「ふぅ……やっぱり流石に冷たいなぁ」

 

 冬と言えば雪。

 そんなイメージが定着してるんだけど……『アーランドの街』やその周辺では、四季もあるし寒暖の差も結構ある割には冬に地面が白くおおわれてしまう時期というのはあんまりない。

 気候のせい、なのかな? けっこう内陸に位置するからっていうことも考えられなくはないけど……とにかく、『青の農村』を含めた『アーランドの街』周辺の地域は気候が比較的安定しているみたいなんだ。

 

 雪が作物を覆い尽くしてしまわない、という意味では一応良い点ではあるんだけど……やっぱり冬には雪が積もっていて欲しい気がする。

 まあ、気候が比較的安定してるおかげで『シアレンス』にいた頃は夏場によく発生して困らされていた『台風』、それをそう気にしなくてよくなったのは有り難いけど。

 

 

「それにしても……」

 

 自分ではもうすっかり馴染みきっている気でいるけど、つい先程考えていた「僕の中での冬のイメージ」とも全く関係無いわけじゃない時折ある周りの人との感覚のズレ。

 ここでの生活も12、3年ほどになるけど、それでもむこうでの感覚が抜けきっていないのも不思議な感じがしなくも無い。

 

「まあ、嫌じゃないんだけどね」

 

 

 「さてっ」と意識を切り換えた僕は、家の脇にある井戸から離れ『ジョウロ』片手に畑へと向かって行く……。

 

「ふっ……てりゃー!」

 

 力を溜めて、その勢いを乗せて一面に水を撒く。『ジョウロ』から撒かれる水は大量で広範囲に豪快に……ただし、その水の勢いで葉が傷ついたりしないように優しくむらなく繊細に……そんな風に水を撒く。

 

「次はあっちでもう一回――」

 

 

 

「モコ……」

 

 

 

「――ん?」

 

 ある意味では昔から聞きなれている言葉(?)が僕の耳に入った。

 

 間違い無く『モコモコ』の声だけど……はて? 見ての通り、今の僕は人間の姿で金のモコモコにはなってない。だから、僕の口から無意識に漏れたってことは有り得ないと思うけど……?

 あと残っている可能性はあるにはある、というよりソッチが本命。ほぼ間違い無くソッチだろう。

 

「ん? 今日はいつもより早く起きたのかな?」

 

 普段はもうちょっと後に起きるくらいで、その時間に合わせて僕が『モンスター小屋』に顔を出す、それが最近の生活リズムだった。

 

 って、あれ? 叫んだ感じの大声だったならまだしも、普通に鳴いたくらいの声だったら『モンスター小屋(あそこ)』から家の前の畑(ここ)まで聞こえるはずもない。むしろさっきのはボソッてほどじゃないにしても小声に近い感じがした。

 となると、モコモコ(あの子)がひとりでに『モンスター小屋』から出て結構近くまで来てたってことになりそうだけど……。

 

 活発的になったなら嬉しいことだけど、好奇心のまま一匹(ひとり)で村の外まで行ってしまったら何があるかわからない。見つけて、僕自身がついておくなり、人でもモンスターでも村の誰かに一緒にいてもらったりしないと。

 

 

「あっ」

 

 いた……とはいっても、ちゃんと見れたわけじゃない。

 井戸があるほうとは逆の方……つまりは家の『作業場』があるほうとは反対側、『キチン』のあるほうの家の端から家の裏手に入って行く……そんなモコモコ(あの子)の姿がチラッと見えたのだ。見えたと思ったらすぐに家の陰に入っちゃったんだけど……でも、見間違いだったとは思えない。

 

 僕の家の裏手といったら、『離れ』に『モンスター小屋』、あとは普段は一応は鍵をかけてある『倉庫』がある。

 

「『モンスター小屋』に帰ったならよし。それ以外なら……そのときは、一旦金モコになってお話をしてみてから決めよう」

 

 もしかしたら、何か思うことがあって小屋から出てうろついている可能性もある。なら、不満点やら何やら聞いて出来ることなら解決してあげればいい。もっと別に何かあったり、逆に何も無くっても直接会って話せるのならそっちのほうが良いだろう。

 

 

 そうと決まれば、いますぐモコモコ(あの子)を追いかけよう。急がないと、モコモコ(あの子)があのまま他所へと行こうとしてたら見失ってしまいかねない。

 

「よいしょ……と!」

 

 軽く駆け出し、畑を一応取り囲んである簡易的な木の柵をピョンと跳び越え、そのままモコモコ(あの子)の姿が消えた(見えなくなった)家の裏手へと向かっていく……。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

――懐かしい感覚

 

 

「…………ぁ」

 

 

――見覚えのある『ひかり』

 

 

「モコ」

 

 

――そして『()()()()

 

 

「もしかして、キミは……()()()()?」

 

「モコ~」

 

 

 思い出した……いや、記憶喪失して(忘れて)いたわけじゃない。()()()()()()は今でもよく憶えている。

 ただ、繋がらなかったんだ。

 数多(あまた)存在する『モコモコ』たちのうち、『アーランド(この世界)』に偶然にも迷い込んだであろう一匹(ひとり)。その数百……もっと多いかもしれない数のうちの「1」がまさか()()()()()だったなんて……。

 

 今、目の前にいるのは、僕がまだ『シアレンス』で生活してたころにあの()と共にいた時……秋のダンジョン『オッドワード谷』や冬のダンジョン『インヴァエル川』で遭遇した『モコモコ』だ。間違い無い、はずだ。

 そう、あの()と……

 

 

 

*―*―*―*―*

 

『……ひやかしなら帰って』

 

 初めて会ったころから、まるで僕が怒らせるようなことをしてしまったんじゃないかってくらい、刺々しくて冷たい態度だった。

 

『もうあたしに近づかないで……お願いだから』

 

 でも、接していくうちに僕は知った。

 

 あの娘は本当は感情的な熱さも持っていて、そして人にもモンスターにもとても優しい娘だってことを。そして彼女がそうして壁を作るような態度を取るのかを……。

 

 

『あの光が……みんな、みんな、持ってっちゃうんだよ』

 

 彼女が「呪い」と呼ぶ現象のせいで、ずっと悩み苦しんでいたことを……。

 

 

『だからもう、誰とも仲良くならないって……そう決めたのに…………決めたのにな』

 

『やっぱり、独りは寂しいよ……』

 

 でも、壁を作って、他人と距離を取ろうとしても……自身がどこかで求めていることもあって、どうしようもなく自分の気持ち()の中で板挟みになってし合っていることを……。

 

 

『……もうイヤなの』

 

『やっと見つけたと思ったのに……やっと、掴めたと思ったのに!』

 

『でもね……手を開いたら何も無いの。いつも、空っぽなの』

 

 目尻に涙を浮かべ、まるで自白するかのように目の前にいる僕に言葉を投げかけるあの娘は、いつものツンツンとした雰囲気とは異なり……とても弱々しく感じられた。

 

 

『もう、耐えられない。大事なひとを失うのは、もう…………耐えられないよ』

 

 止まらない言葉。溢れ出す気持ち。

 僕はそんな彼女の言葉を唯々受け止めて……

 

 

 でも、その際中に……僕は一瞬の光と共に前にも感じたことのある()()()()()()を感じた。

 

 その閃光を認識した彼女は、瞬きをして、ジッと僕を見て――

 

『――――思った』

 

『……消えちゃったかと、思った』

 

 あの娘は僕の事を――僕が消えたんじゃないかと気にして――ずっと見ていたからかは気付かなかったけど……光の渦の中から懐かしい感じと共にモコモコ(あの子)が出てくるところを僕は見ていた。

 

 モコモコ(あの子)は以前にあの娘と一緒に冒険に行った『オッドワード谷』の帰り道、懐かしい感じに引っ張られて勝手に体が変身しそうになりその場から離れたから最後までこの目で見ることはできなかったけど……『オッドワード谷』の入り口でその後のあの娘の反応からして不思議な光の中に消えたであろうモコモコ(あの子)だった……。

 

 

 『モコモコ(あの子)』のことも気になったけど、その時の僕はそれよりも先になすべきことがあった。

 僕は言わないといけない。彼女の言っていた消えてしまった「ともだち」たちに変わって「()()()()()()()()」ということを。

 

 そうしているうちに、モコモコ(あの子)は何処かへと行ってしまっていたのだった……。

 

―*―*―*―*―*―

 

 

 

『あたしの近くにいたら、あんたも消えちゃうよ』

 

 あの光の中に消え二度と会えなかったという「ともだち」たちのことを思い出しながら言った、あの()が言っていた言葉。

 

 ……『アーランド』に来てすぐのころ、僕は「もしかして」と思った。

 「もしかして、()()()に呑まれたんじゃ……」って。

 でも、それは違うってことはすぐにわかることだった。

 

 

 あの時『シアレンス』で見た光の渦、そこからは()()()()()()がしていたから。

 

 

 その匂いが何なのか、結局僕は答えを断定()せなかった。考えられたのは「モンスターが本来いるべき場所」である『はじまりの森』。もしくは、僕の思い出せているわずかな記憶の中にある僕の出身地「人とモンスターが供に暮らす場所」。「懐かしい」と感じたことからこのどちらかだと思っている。もちろんその予想が外れている可能性も十分にある……。

 

 けど、僕がいつの間にかいた『アーランド』は、むしろ懐かしさからは程遠い場所だった。

 だから、僕が『アーランド』に来たのはあの光とは無関係だと判断したんだ。

 

 だけど……

 感じる。あの時と同じ匂いを。

 なら、あの光の先にあるのは、()()()()()……?

 

 

 『魔法』でも無理だった。どうしようもない、諦めるしかない、今ここで自分の出来ることを探していくしかない……そう自分に言い聞かせて、気持ちを新たにして改めて初めた『アーランド』での暮らし。

 

 あの時諦めていた望みが叶うかもしれない状況に、今、僕の目の前にあるのかもしれない。

 

 

 ……いや、わからない。絶対なんて言えない。だけど、僕の感覚を信じるなら、間違い無くあの先には僕のルーツとなる何かが待ち受けているはずだ。

 

 

 

 ()()()()()()()()()……?

 

 

 

 僕が自然と目をやるのは、保護していた『モコモコ』。

 『シアレンス』にいた頃にも会ったこの子は、あの時のようにすぐに光に入る様子……は見せず、光の渦から1メートルほど手前に立って僕のほうをジーッと見てきている。

 

「君はいったい……?」

 

 

 

 ピシッ ミシミシッ……

 

 

 

 何か知っているんじゃないかと思いつい口から出た僕の言葉に、視線の先の『モコモコ』が反応を返そうとする……その寸前。

 まるで何かにヒビが入るような音が、僕の耳に確かに聞こえた。

 視線の先のモコモコ(あの子)も驚いたように背と耳をピンッとしてキョロキョロと辺りを見渡して――――

 

 

「……えっ」

 

 

 僕は気づいた。

 モコモコ(あの子)の後ろにある光の渦の動きが止まり……光の塊となったソレの周辺にヒビ割れのような光の線が走っていることに。

 

 パキッ パリンッ! カシャンッ!!

 

「モコッ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

 いや、本当に空間にヒビが入り割れはじめてる!?

 渦巻いていた光によく似た青く淡い光があふれたして……より一層、ヒビが入るのと割れるスピードが一気に増してその光が爆発的に広がってきた!!??

 

 

――危ないっ!

 

 

 何がどうなってるのかは分からなかった。

 でも、今目の前で起きている現象(何か)がとんでもないことだっていうのは、感覚ですぐにわかった。それに……光から感じられていた「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 この溢れ出した光がどこまで広がるかはわからない。でも、とにかく離れないといけない気持ちでいっぱいになってた。

 でも……

 

 

「助けないと……!」

 

 

 モコモコ(あの子)はいきなりヒビ割れ広がった光に驚いていた。

 最初の『光』はまだ大丈夫だろうけど、その後の連鎖的に広がっていってる別のモノに変わってしまった『光』についてはモコモコ(あの子)も想定外の事だったんだろう。

 

 つまり、今モコモコ(あの子)が『(アレ)』に飲み込まれて無事でいられる保証なんてどこにも無いってことだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 気づけば僕は駆けだしていた。

 お決まりのポーズも決めずに、一瞬で身体能力が根本的に底上げされている金のモコモコの姿になって、最高速のスピードでモコモコ(あの子)の元へと直進。手を伸ばして――――――

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 コンコンコンッ

 

「おーい、マイス? 今度の祭りのことでちょっと話があるんだが……」

 

 ガチャ

 

 ノックもそこそこに、剣感を開けてマイスの家の中へと入る、実質『青の農村』ナンバー2である赤毛の青年・コオル。

 

「あいかわらず、鍵は開いたまんま……って、いねぇな? この時間なら、朝飯食ってるころのはずなんだが……?」

 

 はて?と首をかしげたコオルは、踵を返し、一旦家から出た。

 

「畑仕事が遅れて……って、さっき前通った限りじゃあ畑にマイスはいなかった気がしたんだが…………んん?」

 

 首を傾げ、眉間にシワを寄せるコオル。その視線の先には……

 

 

 

 

 

「アイツ、今日どっか外に出かけてるんだっけ? 畑仕事が終わってねぇじゃねぇかよ……にしたって中途半端か?」

 

 ……作業半ばで放り出された状態のマイスの畑だった……。

 

 





 ラブ度が上がって、関係が進展していったらヒロインが失踪すると思った?
 残念! マイス君でした!


 ……マイス君があの娘を口説いてるっぽい? マイス君が消えた(いなくなった)後のあの娘が大変そう? 序の口です。
 でも、大丈夫! アトリエとルーンファクトリーのクロスだよ!

 一応改めて言っておきますと、各ルートごと別世界の話であり、そもそもマイス君は一途です。八方美人なだけです。そんでもってヒロインの数だけ別世界があるのです。

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