『ネルケと伝説の錬金術師たち~新たな大地のアトリエ~』、期待不安いっぱい! 色々書きたいけど、どう考えても前書きじゃ足りません。
ただ一つ、単純にデザインだけならネルケさんドストライクです。
そして今回は【10-4.5】! どうしてこうなった!?
あと、活動報告にてアンケートはじめました!
【*10-4.5*】
***サンライズ食堂***
俺はイクセル・ヤーン。アーランドの街にある『サンライズ食堂』を任されているコックだ。
まだ陽も傾き始めたばかりの『アーランドの街』。昼間のランチ時を過ぎたこの頃は『
それでも時偶に暇を持て余した人が軽いティータイムをしに来ることがある……けど、それも大抵は軽食やデザートが充実した小洒落た店に行くのがほとんどで、そこそこヒマになったりする。
ヒマになったりする…………はず、なんだけどなぁ……。
「多くは語らないわ……とにかく、
「「…………」」
コイツらみたいに、昼間っから酒飲みに来る連中がいなけりゃ、ヒマがあったはずなんだけどなぁ……。
まぁ、一番の問題はヒマ云々じゃかくて、こん後
「今日は私が、そんな時のお酒の飲み方を教えてあげるから、
「「……お、おー……」」
やけにテンションが高いエスティさんに対して、フィリーとリオネラはテンションが低い……つーか、どこか「心ここにあらず」って感じで、まともに気力が感じられない。
けど、双方に共通してる点は「空気がよどんでる」ことだな。長年『
こういうのには関わらないっていうのが鉄則……なんだが、残念ながらここは『
じゃあ、酒飲むのを止めてみるか……って思ったりしなくも無かったわけじゃないが、十中八九無理だろうな。なんでって
何を知ってるのかと言えば、変にテンションが高いエスティさんのことだ。
ここ最近は街を離れてたから店に来なくて会うことも無かったが、前は時々こんなエスティさんを見る機会があったんだ。そういう時は、決まって「良さそうな人がいたのにダメだった」とか「知り合いが結婚した」だとか……まぁつまりは
それに加えて、
無理矢理付き合わされているからあのテンションの低さなんだとも思えなくはないけど、もしや……いや、まさかな?
「恋人がなんだー! 結婚がなんだー! アトリエまで聞こえるくらい騒いでやろーじゃないの!!」
「うう……おねえちゃんの言葉に同意する日が来るなんて……もうヤケクソだよぅ~!」
「そっそれはさすがに悪いんじゃ……? でも……今日はお酒に頼っても……」
「アトリエに迷惑かける前に、ウチが大迷惑被るんだけどな?」
カウンター奥の厨房からの俺の呟きは、テーブル席のエスティさんたちには酒を飲みだした事もあってか聞こえていないようで……ロクなことになりそうにないな、と諦め気味にため息を吐くことしかできなかった。
酒も料理も出さずに追い出すって手も無くはないが、あの調子じゃあエスティさんに文字通り力ずくでどうにかされてしまいかねないから、やはり諦めるしかないだろう。
そして……エスティさん以外のメンツに加え、ついさっき聞こえてきた『アトリエ』って単語から、大体の事情を察し……俺はおとなしく店員としてやり過ごすことに決めた。
―――――――――
あれから数時間経ち陽が暮れた街…………
7組だ。
「何が?」って、今日これまでに店の扉を開けたけど帰って行ってしまった客の数だ。原因? ……言わなくてもわかるだろ?
「結婚……素敵、ですよね。でも、結婚したからって、その先幸せになるかなんて誰にもわからなくって……何がきっかけで、一変するかは……」
「そうよねぇ~。みんながみんな「結婚するのは大事」だとか「あたり前」みたいな感じになってるけど、結婚しない幸せだってあるのよっ!」
「うぇ~、おねーちゃんが言っうと負け惜しみにしか聞こえないよぉ~? あははははっ!」
一応は連中の中でまだ一番
そのリオネラの言葉に、少しズレていながらも相槌を打って自分の意見を主張するエスティさん。
さらに、そのエスティさんの言ったことに対して、
エスティさんは「なんですってー!」と怒りをあらわにしながら、威嚇するようにジョッキを持った手を高々と上げ……中身が空っぽになっていることに気付き、
あーあ。
こんな店内の空気じゃあ普通に飲み食いしていく
まあ、収穫もあるにはあった。
予想した通り、この一件の原因は「マイスとロロナが正式に付き合いだした」ってことみたいだ。
一応俺も、今朝がたも含め、ここ最近それっぽい噂は聞くには聞いていた。つっても、これまではまた噂話が独り歩きしたのかと思ってたんだが……三人の様子やその会話の
それも、ほとんど「結婚を前提としたお付き合い」状態らしく……って、
とにかく、そういうことらしい。
めでたいことだし、俺としては幼馴染として、友人として素直に祝福するところだが…………リオネラやフィリーからしてみれば、割り切れない部分も結構あるんだろうな。
二人の
結ばれちまったのは今更どうこう言うべきじゃないだろうから、ちょっと……いや、かなり迷惑だが、今日のこの酒で踏ん切りをつけてほしい所だな。もしこれ以上
……と、そんなことを考えてたら扉についてあるベルの音が聞こえてきた。出る客はいなかったことを考えると、必然的に外から客が来たことになる。
また、店内を見てすぐに出て行かれる可能性もあったが、ここは当然素直に「いらっしゃいませー」と声を出して迎え入れることにした。
「うわぁ……何アレ」
「……って、なんだ、お前か」
入店してきたのは、俺にとってはロロナと同じく幼馴染の一人であるクーデリア。今現在は『冒険者ギルド』で受付嬢をしてるはずだが……陽も暮れたし、ちょうど仕事終わりだったのか?
クーデリアはテーブル席の一つにいるエスティさんたちを一瞥しながらもスルーし、なるべく入り口に近い方を選ぶようにしてカウンター席についた。
「仕事終わったからアトリエの様子を見に行こうと思ったのに、通り過ぎようとしたらやけに騒がしくて気になって入っちゃったけど……何よ、あいつらは」
「その前に何か注文してくれよ。あいつらのせいで、商売あがったりなんだ」
俺がそういうと、眉をひそめながらも「……何かジュースを一杯」とだけ言ったクーデリア。その注文の品を用意しながら、エスティさんたちの騒ぎ声をBGMに俺は先程の問いに答え始める。
「失恋と先越されの
「あー、そんな気はしてたけど、やっぱり? ったく、トトリが抜け出してからアトリエで何があったのかしらね……」
「なんでも、ロロナんところの親がアトリエに来たらしいぜ? 親公認なったとかならないとか」
「なるほどねぇ。あの人たち、『青の農村』のお祭りにしょっちゅう顔を出したりしてマイスと交流もかなりあったっぽいし、なんだかんだ言いながらもアッサリ認めちゃったんじゃないかしら?」
確かに、クーデリアの言う通りだし、そう心配するようなことにはならないとは思う。ロロナもそうだが、マイスもそう嫌われない性格してるし、よっぽどの事があったりしない限りは門前払いになったりはしないだろうな。
と、用意し終えた『リンゴジュース』を「ほいっ」とクーデリアの前に置く。それを受け取ったクーデリアはソレに口をつけるんだが……なんか、その表情はスッキリしてない感じがした。
「どうしたんだよ? 何か引っかかることでもあったのか?」
「いやね、なんにもないならいいんだけど……」
何事も結構ズバズバ言うタイプのクーデリアにしては珍しくハッキリとしない物言いに内心首を傾げてしまった。
けど、クーデリアは「それが」と言ってからゆっくりと驚くべきことを話し始めた。
「アイツが変なこと言ってたのよ」
「あいつ?」
誰のことだ?
「
「……は?」
いや待て、アストリッドっていやぁ、それはまあロロナの師匠の名前だし知ってるけど……確か、ふらっとどこかに行ったままロロナが探しても行方不明のままで、ここ何年も目撃情報が無かったはずだよな? なのになんで今
「なんだよ、あの人帰ってきてたのか!?」
「帰ってきたかどうかはわかんないけど、
「……なんでマイスん所にいたのかとか聞きたい事もあるが……とりあえず、何してたんだよあの人は?」
「アイツが現れたのはいきなりだったけど、タイミングからしてあたしは最初、ロロナとマイスの事を邪魔しようとして来たんだって思ったのよ。でもなんか「今、割って入ってロロナに嫌われない手段が思い浮かばなくてな」とか何とか言って、結局なんにもしなかったのよ」
……つーか、ロロナとマイスがどうこうなったのって、つい昨日からの話なのか? それにしたって、
けど、今の話からすると急だったから何にも邪魔できなかったって事か? それは何というか、運が良かったんだろうな。
「……あの時、アイツが言ってた「余計なことに時間を取られてた」っていうのは、告白して振られたっていう大臣の調教のためだったってわかったけど、結局のところアッチのほうは……」
「告白? 大臣って……いやいや、調教!? 何の話だよ!? それにアッチって……」
「前半は気にするだけ無駄よ、ただどっかの誰かが気持ち悪いくらい矯正されたってだけのことだから。そんでもって
――――――
「……って。まるで、だから自分から手出しする必要が無いって言いたげにね。これまでのロロナたちの積み重ねも含めて、そんな様子も無くってむしろ順調そのものにしか思えないんだけどね」
「つっても、確かに無視しきれねぇよな。なんたって、あのロロナの師匠が言ったことだし」
俺が頷いて言うとクーデリアは「そうなのよねー……」と悩まし気にため息をついた。
……まぁ、俺にとって悩ましいことは他にもあるんだが……
「そう、だよね……
「大体、何よ! 失恋の一回や二回で一丁前に落ち込むだなんて……人生経験のうちの一端じゃない。もうちょっと頑張りなさいよ!」
「おねーちゃんは、いっつも相手の肩書とか能力とか見た目ばっかり見てて、誰かを本当に好きになったことが無いからそんなこと言えるんだよー!」
「なぁっ!? そういうあんたは自分の好みとマイス君とが全然違うじゃない! 他の人とは話せないからって妥協しちゃったんじゃないの!?」
「違いますー! 妥協なんかじゃないですー! 「大好きな食べ物」と「毎日食べてたい物」とが違うっていうのと同じで、考える時の着眼点がビミョーに違うってだけの話ですー!」
「なによっ!?」
「おねーちゃんこそ!!」
「……百歩譲って騒ぐのはいいけど、店の中で暴れないでくれよー?」
今にも掴み合いになりそうな姉妹に一応そう声をかけるが……ああうん、聞こえちゃいねぇな。
「大変ねぇ、あんたも」
「そう思うなら何とかしてくれ」
「しーらない」
そう言ってまた『リンゴジュース』に口をつけるクーデリア。
……っと、数分ぶりにまた入り口の扉のベルが鳴り響いた。
「いらっ――――――っ!?」
「あらっ、賑やかだと思ったらフィリーちゃんにリオネラちゃん、それに……エスティじゃない」
そう、そこにいたのは……って
「おいっ! なにそそくさと出て行こうとしてんだよ!?」
「ジュース代はツケで……何なら倍額でもいいわよ?」
逃げるように……いや、マジで逃げようとしていたクーデリアを小声で引き止め、カウンターを挟みつつも互いに顔を寄せ合ってコソコソと喋る。
「だからって、逃げるな」
「イヤよ。実際に見たこと無いけど、ロロナから聞く限りじゃあ相当やばいんでしょ?」
「分かってるなら、なんとかするの手伝ってくれよ!」
「そう思うなら、まずあんたが酒を出すのをやめなさい」
クーデリアがズバッと言ってきたことは確かに正論だ。
いや、だがしかしだな……
「んなこと言ったって、
「だからって……ねぇ?」
「断ろうにも
そのまま過去にあった事を離そうとし……話題のティファナさんが、とっくに入り口からいなくなっていることに気付き――――
「「あっ」」
――――いつの間にか、エスティさんたちのいるテーブル席に着いているのが見えて、俺とクーデリアの声が重なった。
あの人達はすでに何時間も
そう、グラスが空いたら頼むってこと意外にも、別の種類の酒を頼むってこともあって……テーブルの上には人数分以上の酒の入ったグラスやジョッキがある。つまりは……
「それじゃあせっかくだしお邪魔しちゃうわよ、エスティ?」
「いいわよー! 今日は思いっきり飲んじゃいましょーティふぁ……な……?」
……時すでに遅し、ってことだ。
―――――――――
その後の事?
酔っ払いが転がったり、目のやり場に困ったり……まあ、いろんな意味で酷かったとだけ言っておく。
前までのお話の中で書いた意味深そうなこと等を少しずつでも回収していくスタイル。とはいっても、今回は結構最近のやつからだけだけども。
今回からアンケート開始です!
お暇がある方は「小実」のページから活動報告へ。そちらで回答をしてくだされば嬉しいです。お気軽にどうぞ!