余裕を持ってやりたいですねぇ。
そんなことはさておき、マイロロですよ!マイロロ!!
今回はまだまだスロースターターな気がしますけど、やっとです!
【*10-1*】
***冒険者ギルド***
ロロナに泣き付かれて、仕事を急遽休みにして『
そして、弱腰になってたマイスを叩き直している最中に、急に来たロロナにバトンタッチして……あの後、どうなったのかは、あたしは知らなかった。
だけど……
「――というわけで、そのね? あの後、ええっと……仲直り、できたよって報告を」
もじもじとしながら薄く赤に染めあげた顔をこっちに寄せて、少しだけ声を潜めてそう言ったロロナ。
……その姿・仕草を見れば、あの後、どうなったのか想像するのは容易かった。
「はいはい。言葉選ぶなんて似合わない事しなくっても、大体わかってるわ。そうねぇ……おめでとう、とでも言っておこうかしら?」
「やだなぁ~くーちゃんったら! お付き合いってだけで、そんな……けっ、結婚だなんて~! それはまぁ、早くしたいなーとは思ったりはするけど~」
「ロロナ? 浮かれてるのは分かったけど、あたしはそんなこと一言も言ってなわよー?」
せっかく声のボリュームを押さえていたっていうのに、ロロナの声は一気に普段通りかそれより少し大きいくらいになってしまってた。
これでは、今『
唯一、ホッと息を付けた事もあるにはあった。
あたしのいる受付の隣の受付には普段、
もしも、いたとすれば……色々と面倒なことになってたでしょうね。
だからこそ、今、「二人は付き合いましたー」なんて話を不意打ちに近い形でいきなり聞かせるのは気が引けた。ましてや、噂話とかでならまだしも
「でも、意外ね」
「ふぇ? 何が?」
「
マイスはともかくとして、ロロナは基本的に親しい相手ほど距離がかなり近くなりスキンシップも多めだ。そして、性格・性質的に考えてもホムやトトリなどといった相手に対してそうだったように、
そんなあたしの考えの正誤を示したのは、ロロナが
「ううん、そんなことないよ? さっきまで一緒にいて……今、アトリエでお茶会の準備してくれてるの」
「お茶会? 今から?」
「でも、時間的にそのままお昼代わりにーってなりそうかも? それで、くーちゃんにも声をかけて……ついでに報告もって思って」
そこで「何の話?」と一瞬だけ思ったけど……まあ、つまりは報告ついでに
けど、それに対するあたしの返答は決まっていた。というのも……
「残念だけど、昨日の急遽取った休み時間のこともあって、今日は流石に抜けられないわ」
「そっかー……。ちょっと残念だけど、仕方ないね」
まあ、一応は
と、そんなことを考えてたら、ロロナが何やらゴソゴソとし何かを取り出した。
「こんな事もあろうかと、実はお茶会用に作った『ベリーパイ』おすそ分けに持ってきてました! というわけで、よかったらお昼休みにでも食べてね」
「あら。それじゃあ有り難くいただいとこうかしら」
そう言いながら、ロロナからさし出してきた『ベリーパイ』を受け取る。
『ベリーパイ』は、ただ単純に甘いパイってわけじゃない。確かに少なからず甘さはあるけれど、ベリー類特有の酸味のほうが印象深いだろう。
……ただ、もしもお茶会の誘いに乗っていた場合、目の前でロロナとマイスのやりとりを見なきゃならなくって、『ベリーパイ』さえも甘ったるく感じてしまってたかもしれないわね。
あと、『ベリーパイ』ってことは、十中八九マイスが家で収穫しておいたものを持ってきたベリー類を、ロロナが
そんなわけで、あたしはロロナの誘いを断ったわけだけど……そこまでで用は大体すませたんだろう。
ロロナはあたしに軽く手を振りながら、踵をかえした。
「それじゃあ、マイス君たちが準備して待ってくれてると思うから、私帰るねー?」
やっぱり、なんだかんだ言って
こころなしか早口に言ったロロナを見送………………ん?
「ちょっと待って」
「? どうしたの、くーちゃん?」
「「マイス君たち」って……
いやまあ、あたしに声をかけたってことはすでに他に誰かを呼んでるっていう可能性は十分にある。
ロロナ本人が呼んでるわけだし、ロロナもマイスに何も聞かずに呼んだりはしないだろう。だから、あたしが「あーだこーだ」言うのも変かもしれないけど……なーんか嫌な予感がする。
「うん? ええっとね……トトリちゃんと、ちみゅみゅみゅちゃんと、ちみゅめぅ……ちにゅっ! ……その、ちむちゃんたち」
噛んで、言うの諦めたわよ、
って、あぁなんだ。どうやらあたしの杞憂だったみたいね。
よくよく考えてみれば、ここ最近、またトトリがコッチに来て活動しているみたいだったし……そうなれば拠点にしている『ロロナのアトリエ』にも基本的にはいて当然よね。
「あと、りおちゃんと、ホロくんと、ラニャちゃんと、フィリーちゃんが来てくれてるんだー」
「
「ええっ!? あのね、また噛んじゃいそうだから……遠慮してもいい?」
そんなこと言わないで、もう一回……いいえっ! せめてウソか本当かを……
……まぁ、どう考えても、夢の中の出来事でもなければ、あたしの幻聴ってわけでもないみたいだけど。
「「運良く居なかった」どころか、渦中のど真ん中に居ちゃってるじゃない……」
「なにが?」
「はて?」と首をかしげてるロロナはさておき……。
フィリーが休みで『冒険者ギルド』での
しかも、
……まさかとは思うけど、「マイス君は私がもらったー!」ってアピールのためにロロナがわざとセッティングを?
いや、ロロナがそんなこと…………まあ、その気が無くっても一歩間違えば流血モノになりそうなんだけども。
けど、そのことを知ったからって、あたしがやれることなんて限られてる。
今、出来ることといったら……
「ああ。引き止めちゃってゴメン。……最後に、ちょっといいかしら?」
「うん、それは別にいいんだけど……どうしたの?」
「トトリにね、ちょーっと用があるから『
「わかった! トトリちゃんにそう言っとくね」
マイスやロロナ、フィリーにリオネラといった当事者とも言える面々はまだしも、完全にただ単に巻き込まれちゃっただけのトトリには、ちょっとした逃げ道くらい作ってあげててもいいでしょう?
「……にしても、本当にあの
正直「よくくっ付いたよなぁ」って思ってしまうカップルな気もする。
けど、お人好しなことろとか、自分の好きなことには変に思えるほど夢中になったりとか……なんだかんだ言って似た者同士だし、相性自体はいいんじゃないかしら?
しかし…………ねぇ?
「気になることといったら……やっぱり
あたしは昨日、ロロナとバトンタッチした後の事を……そこで会った、
「変なことさえ
―――――――――
***ロロナのアトリエ***
アトリエから出て行ってから無事帰ってきたロロナ先生。
そして……どうやらマイスさんとは上手く言ったみたいで、帰ってきた時、先生はすっごく嬉しそうにしてた。
それが、昨日のこと。
そして今日、先生の思い付きなのか、昨日のうちにマイスさんと何か話していたのか、お昼前にアトリエでお茶会をするって話になった。
最初、私は先生とマイスさんの邪魔になっちゃうかもしれないから遠慮しようかと思ったんだけど……どうやら、私よりも先にフィリーさんやリオネラさんにも声をかけてたみたいで、それで「先生は本当にただ単に集まって飲んだり食べたりしたかっただけなんだろうな」って思って、私は変に遠慮せずに参加することに。
(やめとけばよかった……)
それが、今の私の心からの気持ち。
「何で?」って、それは……
「ね、ねぇ! マイス君、実はこの前――」
「へぇ! そんなことが――」
「今度しようと思ってる新作の劇なんだけど……その、ちょっと迷ってて――」
「うーん? それなら、この前使ってたあの演出と似たタイプで――」
お茶会の準備を終えて、一段落して休憩しているマイスさん。そして、そのマイスさんと楽しそうに話しているフィリーさんとリオネラさん。
……気のせいか、マイスさんと話している時の二人から
ううんっ、きっとこれは……そう! あれだっ!
ここ最近、どばっとロロナ先生の恋愛関係の色々を見てきちゃったから、頭が勝手になんでもかんでも
……マイスさんは、大丈夫ですよね? いつも通りな感じですし、フィリーさんとリオネラさんが「お付き合いのこと」を知らなくっても、マイスさんは自分のことだから知ってるはずで……! 昨日の今日で浮気だなんて……そんなこと無いですよね? ねっ?
「ただいまー」
私がそんなことをグルグルと考えてる間に、クーデリアさんの所へ行ってたロロナ先生が帰ってきた。
救世主……じゃなくって、不安要素が増えただけな気もするけど、私はいつものように先生に「おかえりなさい」って声を……かけようとしたんだけど、それより先に
「おかえり、ロロナ」
そばに寄った結果、すぐ近くにあったロロナ先生の両手をとって、自分の両手で優しく包み込んだ。
そして、ニッコリ笑ったマイスさんが包み込んだ先生の手を軽くさすりながら口を開いた。
「外、寒くなかった? 手が冷たくなっちゃったりしてない?」
「大袈裟だよ~。もう結構寒くなってるけど、そんなしもやけになっちゃう程じゃないんだから大丈夫! それに……」
先生が
そして、指先がゆっくりと曲げられて……マイスさんの左手は先生の両手でギュっと強く握られた。
「……実は、外歩いてる時に
ほわんっ
そんな感じに、先生とマイスさんの周りが淡いピンク色の光で彩られたように見えた。
……そう思えるほどの何かを、私はその場で目で耳で感じ取っていた。
「ロロナ……」
「えへへっ~。マイス君の手、すごくあったかいなぁ」
向かい合ってニコニコ笑う二人……。
……って、それはいいんだけど……
ちょっとだけ視線をズラせば、そこに見えてくるのは……
「蛙の
「…………っ」ビクンッ ビクンッ
「」
「」
涙があふれ出るどころか、目が何だか暗くなってるフィリーさん。
真顔で白目向いてビクビク痙攣してるリオネラさんと、ソファーに力無く倒れてしまってるホロホロとアラーニャ。
え、ええっと、こういうのって確か…………「死屍累々」?
「って、ええっ!? リオネラさん!? ホロホロ!? アラーニャ!? フィリーさんまでっ!! ど、どうしたんですか!?」
「うわぁ!? もももっもしかして、今日準備したやつに『暗黒パイ』が混ざってたりした!? なんか痙攣してるし、やっぱり毒で……!」
「二人のせいですよ!」っていうツッコミは、私には出来そうもない……。
その前に、胃薬のレシピでも考えよっかなぁ……?
フィリー
「マイス君が先にお茶会にお呼ばれ!? こ、これは接近を阻止したほうが良いんじゃ……!?」※手遅れです。
リオネラ
「むしろ、これを機会にコッチが急接近するくらいの勢いで……!」※繰り返しますが、すでに手遅れです。
そして、まだまだ続きます、このお話。
【10】に……個別ルートにシリアスはもういらないんだ……。もう、今までの分までイチャイチャしとけばいいと思うんですよ、私は。