※2019年工事内容※
誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……
***マイスの家・作業場***
「うん、だいたい こんなものかな?」
家の作業場。釜のそばに置いてある 素材などを置いておくための簡易的な机。
その上には、いくつかの 握りコブシほどの大きさの種が置いてある。それら全ては僕が錬金術でつくり出した『アクティブシード』だ。
「とりあえず、『ぷにぷに玉』と植物系だと『アクティブシード』ができるみたいだね」
今のところ『マメ』や『サボテン』といった僕の知っているアクティブシードで存在する植物でやってみたが、もしかすると他の植物を素材にすれば、見たことの無い『アクティブシード』が創れるかもしれない。
「って、ホントは 普通に育てる新しい作物の種 をつくりたいんだけどなぁ…」
とはいっても、特にピンとくるレシピが思い浮かばない。
もういっそのこと『大根』と『カブ』みたいな似た感じのものを混ぜてみるのも手か……でも、それはあんまり利点は無いしなぁ。
コンコンッ
「あっ、はーい!」
ノックされたのは家の玄関の扉、作業場から玄関のある部屋へと移動し扉を開ける。
そこにいたのは、口髭とアゴ鬚を綺麗に整えた初老ほどであろう男性だった。ピッシリ決まっている服装と携えた杖の印象もあって、シアレンスにはいなかったタイプの人だと感じる。
「お待たせしました、どういったご用件ですか?」
「ふむ……急ですまないが少々喉が渇いてしまってな、よければ飲み物を一杯ほどいただけないだろうか?」
「かまいませんよ! 『香茶』を用意しますから、こちらのソファーに座って少し待っててください」
そう言って男性を家に招き入れテーブルそばのソファーを勧めて、僕は香茶を用意しにキッチンへ行く。
―――――――――
***マイスの家***
「いやあ、すまなかったな。急にお邪魔してしまって」
「いえ、ちょうど作業に行き詰ってて、僕にも良い気分転換になりましたから!」
「そう言ってもらえると助かる。おっと、自己紹介がまだだったな。私はジオ、見ての通り楽隠居の老人のようなものだ」
「僕はマイスっていいます。よろしくお願いしますね、ジオさん!」
「フム」と一言ついたジオさんは手に持っていたティーカップをテーブルに置くと、自分のアゴ髭に手をやりながら僕を見据えてきた。
「実はだな、今日ここに来たのは偶々ではなく君に会いに来たのだよ」
「僕に、ですか?」
僕に用といっても、僕にできることなんて限られているし、ジオさんのような人に何か頼まれるにしても全く見当がつかない。
「知り合いから君の話を聞いて興味が湧いてな。それと……」
そう言うとジオさんは懐から青いスカーフを取り出し、僕に渡してきた。
「なんなんだろう?」と僕はよくわからず、考えていると――
「そこで寝ている『ウォルフ』に着けてあげるといい。そういう目印があれば、ここに来る君の友達や他の人も警戒せずにすむし、家の中だけでなく適度に庭で休養させることもできるだろう?」
「あっ……なるほど」
その言葉を聞いて、いつものように定位置で寝転がっている『ウォルフ』に目を向ける。
確かに その案はいいものだと思う、なので早速ウォルフの首に軽く巻き結んであげた。『ウォルフ』もスカーフを問題無く受け入れてくれた。
「ふむ、ちゃんと似合ってもいるみたいだな」
「はい! この子も気に入ってくれてるみたいで……ありがとうございます!」
それにしても、気になることがいくつかある。
この『ウォルフ』のことを知っているのは、少なくともロロナ、クーデリア、リオネラさん、ホロホロとアラーニャぐらいで、ジオさんの言う「知り合い」というのもこの中の誰かだろう。
それも気になるけど――
「あの……なんで青のスカーフなんですか?」
「ん? ああ、それはだな、ここ最近アーランド周辺で変わったモンスターの目撃情報が何回かあってな……」
ジオさんは目をつむると、軽く「うーむ」とうなった。まるで、何か記憶を掘り起こしているかのようにも思える。
「そのモンスターは他とは違い決して人を襲わず逃げ出すのだ。それだけならまだ唯の「臆病なモンスター」なのだが……」
……。
「とある行商人の話では、モンスターの群れに襲われていたところに見たことの無い小さいモンスターが割って入ってきて群れを追い払ってくれたそうだ。その上、ソイツはどこから手に入れたのか傷薬を置いて去っていったらしい」
…………ん?
「変わっているだろう?人を敵視するどころか助け、人の扱う薬のことも理解しているようなモンスター…。実は私も遠目で見たことがあるのだが、ソイツは人の子供より小さく、体は金色の毛でおおわれていて、小さな帽子のようなものをかぶっていて、そして…何やら首に青い布を巻いているのだよ」
………………それって――
「それで、君の保護したウォルフにも青い布を巻いてみることを思いついたのだ。あのモンスターのように無害なモンスターであることを示すためにな。……ん? どうかしたかな?」
――それって『モコモコ』の姿の僕、だよね…?
「……なるほど、君もそのモンスターに覚えがあるようだな」
「ひ、ひゃい!?」
もしかして気づかれたのではないかと思って、声がひっくり返ってしまい変な返事になってしまった。
「街の外で暮らしていれば、単純に考えても私たちよりも出会う機会は多いのだから当然と言えば当然か」
「そうかもしれませんね。一応、僕は姿を見たことは何度かありますよー」
良かった。そう判断してくれたか……。
あと、僕は嘘は言っていない。鏡や水面に映った姿を見たことがあるからね。
―――――――――
「長くお邪魔しすぎたようだな、これで失礼しよう」
「いえ。……いつでもいるとは言えませんが、また良かったら遊びに来て下さい!」
「ふむ、それではお言葉に甘えてまた来るとしよう」
その言葉通り、ジオさんはたびたび家に来てくれるようになるのだが…。
にしてもジオさん、普段は街で何してるんだろう?
――――――――――――
***王宮受付***
また別の日のこと、僕が王宮受付に依頼を見に行っていたときのこと。
「エスティさんの妹さん、ですか?」
「そう、あの子ったら引きこもりでね」
「何か病気なんですか?」
「いやぁー……そういうのじゃなくて、ただ単に人見知りなのよ」
困ったように、そして呆れたようにため息をつくエスティさん。
が、一転して楽しそうに笑顔を見せた。
「でね、この前ロロナちゃんに相談したんだけど、無理矢理外に出ざるを得ないようにしてみることにしたの!」
「……それって、ちょっと危なくないですか?」
人見知りの人に強要するのは精神的に危なく、取り返しのつかないことになりかねないと思うけど……。
「大丈夫よ。ロロナちゃんもアストリッドさんのおつかいであんな社交的になったらしいから」
「大丈夫かなぁ……」
そんな僕の不安をよそに、エスティさんはまた僕が不安になることを言いだした。
「というわけで、マイス君のお家に おつかいに行かせるから よろしくね!」
「へ? ……いや、そこは普通に街の雑貨屋さんとかじゃないんですか!?」
「それだと、ティファナぐらいとしか会話せずに終わっちゃうじゃない。だから街の外のマイス君の家にして、誰かロロナちゃんあたりに護衛頼んだりするようにすればいいかなって」
確かにそれなら最低でも必要となる会話数は増えるだろうけど……にしたって、突拍子のないことだと思うんだけどなぁ。
「それじゃあ、そのうちおつかいに行かせるから、その時はよろしくね」
うーん、エスティさんはその気みたいだし、こうなったら僕の方で何か考えておくべきかもしれない。
「人見知り」か……。シアレンスでもそんな人がいたけど……
*-*-*-*-*
≪がう~!≫
≪なによっ! かむわよっ!≫
≪ガブッ!!≫
*-*-*-*-*
いや、あんなアグレッシブな人見知りは そうそういないだろう……。
なんか腕が痛む気がする。気のせい、だよね……?
参考になるかはわからないけど、一応何か 人見知り対策を考えておこう。